D2Cとは?普及している理由やメリット、成功事例を解説

自社で商品の企画から生産・小売までを担い、消費者に直接販売するD2C。卸売などの中間業者があいだに入らないため、中間コストの削減はもちろん、コアなファンの獲得も目指せるビジネスモデルとして注目されています。今回は、アパレル企業のマーケティング担当者に向けて、D2Cが普及している理由や特徴、メリット・デメリット、企業の成功事例などを解説します。D2Cに興味を持っている方は、ぜひ参考にしてください。

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D2Cとは

D2CとはDirect to Consumerの略で、商品の企画から生産・小売までの工程をすべて自社で行うことを意味します。通常、商品は小売店や広告代理店などを介して消費者に販売されるのが一般的ですが、D2Cでは、ECサイトや直営の店舗を訪問した消費者に商品を直接販売します。主にアパレルや化粧品などのブランドで採用されているビジネスモデルです。

D2Cの市場規模

現在、D2C市場はどのくらい拡大しているのでしょうか。デジタルD2C市場規模の動向調査を行った、株式会社売れるネット広告社は、2025年にD2Cの市場規模が3兆円を超えるとの見解を示しています。下記の表は、2015~2019年までのD2C市場規模の実績と、2020年以降の予測をまとめたものです。

■D2C市場規模の実績と予測(※1)

2015年 1兆3,300億円
2016年 1兆4,700億円
2017年 1兆6,200億円
2018年 1兆8,300億円
2019年 2兆0,300億円
2020年 2兆2,200億円
2021年 2兆4,100億円
2022年 2兆6,000億円
2023年 2兆7,700億円
2024年 2兆9,300億円
2025年 3兆0,600億円

 表を見てわかるとおり、D2C市場は着実に拡大し続けており、今後も活況が続くと予想されています。アパレル企業にとって、D2Cは新たな販路を開拓する上で重要な選択肢のひとつとなっていくでしょう。

B2BやB2Cとの違い

D2Cと、B2BやB2Cといったほかのビジネスモデルとの違いについても確認しておきましょう。

B2BとはBusiness to Businessの略で、企業間の取引を指します。部品メーカーが自動車メーカーにパーツを納入するように、一般消費者向けではない取引をイメージするといいでしょう。

B2CとはBusiness to Consumerの略で、企業が一般消費者を対象に商品などを販売するビジネスモデルのこと。B2Cの代表的なものとして、ECサイトや百貨店、小売店などが挙げられます。広い視点で見れば、D2CもB2Cも個人を対象に商品などを販売するビジネスモデルという点では共通しています。

D2CとB2Cの最大の違いは、商品の企画から小売までのあいだに「中間業者が介在しているかどうか」という点です。中間業者が介在しないD2Cは自社で行うプロセスが多いため、B2Cよりも業務の範囲や工程の多さはもちろん、責任が及ぶ範囲も広くなります。

 

D2Cが普及している背景

D2Cの急速な普及は日本国内に限った傾向ではなく、世界的な潮流といえます。D2Cはなぜ注目され、普及が進んでいるのでしょうか。主な理由として、下記の3点が挙げられます。

消費者とのコミュニケーションツールが豊富にあるため

D2Cの普及を後押ししているのが、企業と消費者をつなげるコミュニケーションツールの存在です。例えば、企業はSNSを通じてライブ配信をすれば、商品の特徴や魅力を消費者に直接アピールすることができます。あるいは、インターネットショップのプラットフォーム「Shopify」のようなサービスを活用して、自社ブランドのECショップを手軽に立ち上げることも可能となりました。現在はさまざまなツールを活用することで、卸売・小売店を挟むことなく企業が消費者と直接コミュニケーションを図れるようになったのです。企業と消費者がお互いに“顔の見える”存在となり、距離が大幅に縮まったことがD2C普及の背景といえるでしょう。

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消費者ニーズの細分化が進んだため

消費者にとって、現代はモノやサービスが飽和している時代です。消費者は必要に迫られてモノを買うのではなく、感情を動かされ「欲しい」と感じたことを購入のきっかけとするのです。消費者に欲しいと感じてもらうには、商品に付随する価値やストーリーに共感してもらう必要があります。モノの消費からコトの消費へと時代が移行したといわれるように、SNSなどでブランドが提供する「価値やストーリーに共感してこそ消費者は商品を購入する」という傾向が高まっているのです。企業と消費者が直接つながることのできるD2Cは、ブランドや商品の価値を伝えたり、固有のメッセージを届けたりするのに適したビジネスモデルといえます。

製造ツールの技術が進化したため

製造業者が使用するツールの技術が進化したことも、D2Cが普及した一因として挙げられます。従来は一定数のロットに満たない製造の発注はしにくい上に、自社で製造設備を整えようとすれば莫大なコストが必要でした。そのため、製造・流通・販売といったように、事業者ごとに役割が明確に分かれています。現在では、3DCADや3Dプリンターを活用することにより、自社で商品の試作品を低コストで制作できるようになりました。さらに、他社ブランドの製品を製造するOEMに対応する事業者も増えており、大企業ではなくても自社商品を製造できる仕組みが整ってきています。製造ツールの技術が進化したことにより、従来は困難だった小ロットの製造が可能となり、D2Cへの参入壁が低くなっているのです。

 

D2Cのメリット

D2Cを採用した場合、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。D2Cの主なメリットについて見ていきましょう。

中間業者を挟まない分、コストを削減できる

D2Cでは、商品の企画から生産・小売までのすべての工程に中間業者が入らないため、中間コストを大幅に削減できることが大きなメリットです。コストが削減されることによって、従来は中間業者への支払いに必要だったコストを商品の開発・改善にあてることもできます。企業はより付加価値が高く、品質面においても優れた商品を、従来よりも手頃な販売価格で提供しやすくなるでしょう。コストの削減は、ビジネスの発展をいっそう加速させる要因となります。

顧客の詳細な情報を取得・活用できる

従来のB2Cには中間業者が入るため、すべての顧客データを社内で保有することが困難で、マーケティングに活用できる情報も限られていたのが実情でした。一方、D2Cであれば、商品の製造や流通・小売のすべての工程を自社で行うため、顧客データを包括的に集めることができます。顧客データを社内で一括管理できる上、顧客ごとの詳細なデータ分析を通じて、ターゲット層に合わせた商品開発やマーケティングなどにも活用が可能となるでしょう。

顧客ニーズを反映した製品を作りやすくなる

D2Cは、顧客と直接コミュニケーションをとれるSNSとの相性がいいため、SNSでの発信や運用によって自社のコアなファンを増やせるポテンシャルを秘めています。具体的には、SNSでブランドのストーリーやコンセプトを発信することで、消費者に提供したい価値を明確に伝えることができるのです。さらには、双方向でのやりとりが可能なSNSの特性を活かして、消費者の意見や要望を吸い上げられるため、顧客ニーズを反映した商品の開発や改善に役立てることもできます。

 

D2Cのデメリット

D2Cを採用した場合、いくつかのデメリットが生じる可能性もあります。具体的なデメリットとして想定されるのは、下記の2点です。

初期段階の仕組みづくりにコストがかかる

D2Cは、従来のB2Cと比べて小ロットでの製造・流通・小売が可能ですが、これらの仕組みを自社で構築するには初期段階でコストがかかります。コストの一例としては、小ロットにも対応可能な生産ラインの用意や、ECサイトの構築などが挙げられるでしょう。自社で柔軟に仕組みづくりができる反面、仕組みが完成するまでの工数は決して少なくありません。初期段階においては、コストがかかることを念頭に置く必要があります。

長期的なマーケティングへの取り組みが必須

D2Cは、広告代理店をあいだに入れないため、自社で集客を行う必要があります。マーケティングノウハウに長けた代理店の力を使わないため、特に社会的な認知度が低い企業の場合は、自社でノウハウを蓄積しながら長期にわたりマーケティングに注力することが重要です。具体的には、自社のブランドや商品の認知度を高めるためのWebサイトの構築や、SNSで情報を発信するなどの施策が想定されます。D2Cで事業を成功させるには、時間をかけてコアな顧客を育成するための長期的な計画を練る必要がある点は留意しなくてはなりません。

 

D2Cに適している事業ジャンル

D2Cはあらゆる事業と親和性が高いわけではなく、適した事業ジャンルがあります。D2Cに適している事業ジャンルの例としては、下記の3業種が知られています。

美容・健康食品

美容・健康食品は、商品の詳細をアピールすることが他社商品との差別化につながりやすくなります。類似品が複数存在する業界だからこそ、直接説明を受けたり効果に関する感想を聞いたりした商品は、「欲しい」と消費者に感じさせる可能性が高まるのです。消費者が商品に関する疑問点や不明点を事業者に質問して解消できる側面があることから、美容・健康食品はD2Cに向いているといわれています。

アパレル

アパレルは、ブランドイメージや世界観が特に重視される事業ジャンルです。ブランドとしてどのようなメッセージを発信しているのか、世界観に共感できるかといった点が、消費者が購入を決める際の大きなポイントとなります。ブランドメッセージを直接、消費者に届けられるD2Cがアパレルに適しているとされているのはこのためです。ブランドメッセージに共感するファンを醸成し、増やしていく上で、D2Cのビジネスモデルはアパレルに非常に適しているといえます。

食品

食品は安全性や信頼性が問われる商材であることから、生産者の顔が見える安心感が購入の動機となるケースは多いです。生産者が消費者に直接語りかけることで、「誰が作った食品であるか」がわかるメリットは非常に大きいでしょう。消費者に安心して購入してもらうためにも、食品を販売する際にD2Cの仕組みを取り入れることは有効な施策となるはずです。

 

D2Cを成功させるためのポイント

D2Cを成功させるには、いくつかクリアにしておくべきポイントがあります。次に挙げるポイントを押さえて、D2Cの成功率を最大限に高めましょう。

狭く深いペルソナ設定をする

D2Cは、消費者との直接的なやりとりに重きが置かれているビジネスモデルです。そのため、コアなファンをいかに獲得するかが重要なカギを握ります。広告であれば、マスを対象としたものではなく、特定層のファンに商品の魅力を届けることに意義があるのです。ですから、ターゲットを設定する際には、万人受けを浅く広く狙うのではなく、「狭く深い」ペルソナを設定しておく必要があります。実在する一人をペルソナとし、同じような価値観や嗜好を持つ層をターゲットとしていくのが理想です。

ユーザーフレンドリーな販売プラットフォームを構築する

消費者がブランドイメージや世界観に共感を寄せてくれたとしても、販売プラットフォームが難解で使いづらければ購入してくれません。販売プラットフォームは、直感的に操作できるユーザーフレンドリーなUI(ユーザーインターフェース)にする必要があります。現代の消費者は、大小様々なECサイトを利用したことがある人も多く、販売プラットフォームの使い勝手の良し悪しをすぐに見抜いてしまいます。ユーザー目線でUIを設計し、できる限りシンプルで操作に迷うことのない販売プラットフォームを構築しましょう。

消費者とのコミュニケーションを重視する

消費者との接触機会を意識的に増やすことも、D2Cにおいては非常に重要です。消費者はよく目にするブランド、既知のブランドを信頼する傾向があります。大手ブランドに対抗するには、発信頻度をみずからコントロールできるSNSなどで、発信と接触の機会を増やしていくのが得策でしょう。なお、SNSを活用する際には、一方的な発信に終始しないよう、消費者とのコミュニケーションを重視します。自社ブランドに言及したユーザーを検索し、その投稿に対してコメントをするといった地道な活動がファンを醸成していくのです。

物流の仕組みを確立する

D2Cを成功させるには、物流の仕組みを確立していくことも大切です。消費者にとって、「商品が無事に届く」ところまでが購買体験となります。せっかくブランドイメージに好感を抱いても、注文した商品が予定どおりに届かないなどのトラブルが生じるようでは、ブランドイメージの悪化につながりかねません。梱包の丁寧さ、正確な出荷フローに加えて、顧客宛てのメッセージカードを添えるなどの趣向を凝らすことが他社との差別化につながるでしょう。

 

D2Cの成功事例

続いては、実際にD2Cを取り入れた企業の成功事例を見ていきましょう。D2Cで成功した3つのブランドの事例をご紹介します。

17kgの事例:SNSの積極的活用とインフルエンサーをブランドモデルに起用し、D2Cで成功

「17kg(イチナナキログラム)」は、レディースファッションを扱う韓国のブランドです。韓国系ファッションに特化しているブランドで、Instagramを活用したプロモーションで成功し、10代の女性から高い支持を得ています。ユーザーに人気のインフルエンサーをブランドモデルに起用したことも成功の一因です。

BASE FOODの事例:SNSの公式アカウントの発信で、コアなファンの獲得に成功

「BASE FOOD」は、人体に必要な栄養素がすべて含まれている完全食を提供する食品ブランドです。たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が詰まったパンやパスタを販売しています。SNSの公式アカウントで画像付きの投稿を頻繁に公開することで、消費者から厚い信頼を得ているだけでなく、コアなファンの獲得につなげているのが特徴です。

Glossierの事例:ユーザーの声を取り入れた製品づくりで、若い世代の女性の心を捉えることに成功

「Glossier」は、ファッション誌「VOGUE」のスタイリストでファッションブロガーの人物が創業したニューヨーク発のコスメブランドです。ほかのコスメブランドと一線を画している特徴としては、ユーザーの声を取り入れて製品を作っている点が挙げられます。シンプルで飽きのこないパッケージがSNS映えするなど、若い世代の女性の心を捉えたD2Cの成功事例といえるでしょう。

D2Cを成功させるならアプリの活用が重要

D2Cを成功させるためには、新規顧客や既存顧客とのコミュニケーションが欠かせません。顧客とのコミュニケーションに有効な施策として、特におすすめしたいのが、スマートフォンアプリの活用です。アプリは既存顧客との関係を構築する上で有効な媒体とされており、自社アプリを介して顧客との関係性を継続的に強化できるというメリットがあります。アプリを自社で開発する場合は、本メディアを運営する株式会社ヤプリが提供する「Yappli」の活用がおすすめです。Yappliは最新技術が盛り込まれたアプリプラットフォームで、40種類を超える豊富な機能が標準装備されています。ドラッグ&ドロップのシンプルな操作で、画像の入稿にも対応可能。アプリ開発に必要な工数をできるだけ削減し、いち早くD2Cを実践するためにも、Yappliを活用してみてはいかがでしょうか。

 ECサイトやSNS、アプリなどを上手に活用し、D2Cを成功させよう

D2Cは、モノからコトへ変化した消費行動に対応するビジネスモデルです。D2Cを成功させるには、ECサイトやSNS、アプリなどをうまく活用して、顧客とのコミュニケーションを深め、タッチポイントの頻度を高めていきましょう。

そして、Yappliはノーコード(プログラミング不要)でiOSとAndroid対応のアプリを高速開発できるアプリプラットフォームです。ユーザー行動・アクションにもとづいたデータ分析や、自社データとの統合も行えます。本記事を読んでアプリ開発が気になったならば、まずは気軽に資料請求をしてみてください。アプリをマーケティングに活用する手法や、データ活用の方法、CRMのヒントなど、様々な無料eBookもご用意しています。

参考記事
※1 https://ecnomikata.com/ecnews/27562/

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