コミュニティマーケティングとは?目的や手法、成功のポイントを解説

多くの消費者がスマートフォンを手にし、SNSで自由に発言できる現代社会において、情報発信は企業だけが担う役割ではなくなっています。消費者の声がいっそう重視されつつある昨今、注目を集めているのが「コミュニティマーケティング」です。コミュニティマーケティングという言葉は知っているマーケティング担当者の方も、いざ自社で取り組むとなると、具体的な施策を講じるのは容易ではありません。そこで、コミュニティマーケティングの目的や手法、成功させるポイントを詳しく解説します。企業によるコミュニティマーケティングの具体的な事例も紹介しますので、マーケティング戦略の立案にお役立てください。

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目次

ユーザーコミュニティをマーケティングに活かすコミュニティマーケティング

コミュニティマーケティングとは、ユーザーコミュニティをマーケティングに活かす手法の総称です。ユーザー同士の交流から得た情報や知見をマーケティングに活かすのであれば、オンライン・オフラインを問わず、コミュニティマーケティングに含まれます。ここで言うユーザーとは、すでに自社の商品やサービスを利用している既存顧客のことを指します。コミュニティは、企業や商品・サービスを軸に集まった既存顧客同士をつなげる場です。コミュニティマーケティングの対象者には法人も含まれており、一般消費者に限定されているわけではありません。BtoC企業だけでなくBtoB企業においても、コミュニティマーケティングは有効な手法とされています。

 

コミュニティマーケティングと従来のマーケティングやコミュニティとの違い

コミュニティマーケティングを理解するには、従来の「マーケティング」や「コミュニティ」との違いを押さえておくことが大切です。コミュニティマーケティングと具体的にどう違うのか、確認していきましょう。

コミュニティマーケティングと従来のマーケティングとの違い

従来のマーケティングとコミュニティマーケティングの最大の違いには、「ターゲット」が挙げられます。従来のマーケティングでは、企業が初めにアプローチするのは潜在顧客であり、商品やサービスに関心を寄せている、または興味があると思われる層を見込み顧客とみなしてきました。一方、コミュニティマーケティングの対象者は既存顧客です。すでに商品・サービスについてよく知っており、実際に利用したことがある層がターゲットとなります。企業やブランドのファンとなった既存顧客にアプローチし、既存顧客の存在を知った見込み顧客、さらには潜在顧客へとアプローチを広げていくのがコミュニティマーケティングの特徴です。

コミュニティマーケティングと従来のコミュニティとの違い

コミュニティマーケティングが注目を集める以前から、企業がユーザーコミュニティを運営する事例は少なからず見られました。例えば、企業が主催するセミナーや勉強会などはコミュニティの一種といえます。ただし、従来のコミュニティは、企業と既存顧客との「関係強化」に主眼が置かれていました。十分に関係性が構築されてきた折を見て、コミュニティメンバーに対してアップセルやクロスセルを働きかけることが主な目的だったのです。これに対して、コミュニティマーケティングでは、既存顧客との関係強化だけでなく、既存顧客を通じて「新たな顧客を発掘していくこと」にも重きが置かれています。商品やサービスを売る主な対象はコミュニティ内のメンバーではなく、コミュニティ外の見込み顧客や潜在顧客という点が大きな違いと捉えてください。コミュニティの運営そのものがコミュニティマーケティングのゴールではなく、新たな顧客を獲得し販路を広げ、長期的にコミュニティが繁栄していくことを特に目指しているのです。

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コミュニティマーケティングの目的

企業がコミュニティマーケティングに取り組む目的には、どのようなものがあるのでしょうか。コミュニティマーケティングの目的を押さえて、コミュニティマーケティングが目指している理想像への理解を深めましょう。

顧客インサイトの取得

企業にとって、ユーザーコミュニティは新たなアイディアの宝庫です。企業やブランドに期待を寄せる顧客同士によって交わされる言葉の中には、企業の担当者が見落としていた視点も数多く含まれているでしょう。顧客が商品やサービスに対して日頃どのように感じ、何を求めているのかをキャッチするには、ユーザーコミュニティは絶好の場といえます。

こうした顧客インサイトは、顧客情報に関する定量的な分析や不特定多数の顧客を対象としたアンケート調査などでは、探りきれないケースが少なくありません。企業やブランドに期待を寄せ、より良くなってほしいと本心から思っているファンが集まるコミュニティだからこそ、顧客の本音に迫ることができ、それらの声は既存顧客との関係強化はもちろん、新規顧客へのコミュニケーション設計時にとても役立ちます。精度の高い顧客インサイトを取得することは、コミュニティマーケティングの重要な目的のひとつといえます。

リファラル(推薦)の強化

ユーザーコミュニティに属しているファンは、1人の顧客という範疇から企業運営の一翼を担うメンバーの一員へと意識が変わっていきます。自分自身が商品・サービスを通じて得た体験をより多くの人に知ってほしいと考えるようになり、みずから企業やブランドに関する肯定的な情報発信をするようになるのです。SNSでの発信や口コミを通じてファンの肯定的なコメントが拡散されていくことで、企業は最小限の広告費で新たな顧客を獲得できるようになっていきます。

さらに、顧客が発信した意見が商品開発に取り入れられたり、アイディアが採用されたりした場合、顧客は自身が企業経営に影響を与えている存在であるという認識を、より強めていくでしょう。自身のアイディアが反映された商品であれば、1人でも多くの人に商品を知ってもらいたいと感じるはずです。見込み顧客や潜在顧客としても、それまで接点のなかった企業が宣伝する商品よりも実際に商品を利用した消費者によるレビューのほうが、信頼性は高いでしょう。コミュニティメンバーが自発的に広報活動に取り組み、リファラル(推薦)が強化されていくことも、コミュニティマーケティングに取り組む重要な目的のひとつです。

顧客エンゲージメントの増強

ユーザーコミュニティを訪れる顧客の多くは、すでに商品やサービスに対する思い入れがあります。コミュニティ内に自分と同じような思い入れを持つ人が数多くいることを知り、共通の話題や価値観を軸としたつながりを築いていくでしょう。コミュニティに参加した顧客にとって企業との関わりは、商品・サービスを通じたものから「仲間とのつながり」のような、強固な関係性へと変容していきます。こうした関係性が強固に築かれていくほど、顧客は「他社ではなくこの企業の商品でなくてはならない」といった思いを強めていくはずです。コミュニティマーケティングは顧客同士のつながりを創出し、顧客エンゲージメントを強化する役割を果たしているといえます。

LTV(顧客生涯価値)の向上

ユーザーコミュニティに属し、企業やブランドのファンとなった顧客は、容易に他社の商品・サービスへと乗り換えることがなくなります。顧客にとって重要なことは、商品そのもののスペックや価格だけではなく、「その企業が提供するコミュニティに属していること」へとシフトしていくからです。

こうして、企業やブランドのファンとなった顧客は、たとえ他社からより安価な商品が提供されたとしても、購入の選択肢に入れようとはしないでしょう。必然的に、リピート購入や追加購入へとつながる確率が高まることから、LTV(顧客生涯価値)の向上が期待できます。LTVとは、顧客が取引を開始してから終了するまでの期間にもたらす利益を表す指標です。人口が減少に転じ新規顧客の獲得が難化している昨今、LTVの向上は企業がコミュニティマーケティングに取り組む理由のひとつとなっているのです。安易な価格競争に陥らないためにも、LTVの向上は企業にとって非常に重要な課題といえます。

カスタマーサポートの効率化

ユーザーコミュニティ内では、商品やサービスの使い方や顧客独自のアイディアの交換が行われます。商品のより便利な使い方を知りたいメンバーは、精通しているメンバーにアドバイスを求めるでしょう。新たな知見を得たメンバーは、さらに別のメンバーの役に立ちたいと考えるようになり、ナレッジの共有化が促進されていきます。

個々のユーザーが各自で不明点や疑問点を抱えている状態が解消されないと、企業にとってカスタマーサポートの負担はなかなか軽くなりません。購入後のカスタマーサポートに不満を感じて離脱する顧客も少なくないため、カスタマーサポートをいかに効率良く、かつ効果的に運用していくかは企業にとって重要な課題です。ユーザー間のナレッジ共有を促進し、カスタマーサポート業務の負荷を軽減することはコミュニティマーケティングの目的のひとつでもあるのです。

 

コミュニティマーケティングの代表的手法

コミュニティマーケティングの裾野は広く、さまざまな手法が知られています。ここでは、代表的なコミュニティマーケティングをご紹介しますので、自社で実践できそうな手法を考える際の参考にしてください。

コミュニティサイトを運営する

コミュニティマーケティングの手法としてよく知られているのが、コミュニティサイトの運営です。ユーザー専用のコミュニティサイトを設置し、相互の交流を促す手法が数多くの企業で活用されています。コミュニティサイトの一部だけを外部から閲覧できるものや、すべてのコンテンツが公開されているものなど、企業ごとに運営方針はさまざまです。

コミュニティサイトには、大きく分けてコンテンツ投稿型と課題解決型の2つがあります。コンテンツ投稿型とは、それぞれのユーザーが商品の活用法などを投稿し、ほかのユーザーが参考にするというもの。課題解決型は、あるユーザーが投稿した不明点や疑問点に対して、別のユーザーが回答してくれるタイプのコミュニティです。コミュニティサイトが用意されていれば、コミュニティに属していないユーザーもカスタマーサポートの代わりに活用することができます。より詳細な情報を知りたいユーザーや継続的に情報を得たいユーザーは、積極的にコミュニティに加わっていくでしょう。カスタマーサポートの労力を軽減する意味においても、コミュニティサイトの運営は優れた手法といえます。

ライブ配信を行う

ライブ配信は、ライブ動画を配信して視聴者からリアルタイムでコメントを受け付ける手法です。企業がコメントに対して返信をしていくことで、企業・ユーザー間での双方向のやりとりが可能となります。ユーザーは企業やブランドをより身近に感じると同時に、配信されている時間内にリアルタイムでコメントを受け付けてもらえるというプライオリティによって、「次回も視聴したい」という思いを抱くようになるでしょう。

ライブ配信は、消費者の疑問に対してその場で回答できる即時性の高さから、新たな物販の手法としても知られています。実店舗の店頭で店員と会話を交わしながら購入する商品を決めていくように、消費者の購買心理の「揺れ」を捉えられるのが大きな特徴です。ライブ配信を通じて商品を販売する手法は、特に「ライブコマース」と呼ばれることもあります。コミュニティマーケティングの手法の中でも、ライブ配信は即座に売上へ直結しやすい施策のひとつです。

SNSのハッシュタグを活用する

TwitterやInstagramなどのハッシュタグを活用して、商品やサービスの関連キーワードに関心のあるユーザーを集める手法もあります。ユーザーは、ハッシュタグを通じてSNS内のコンテンツを横断的に検索できるため、潜在層にアプローチしやすい手法といえます。また、企業側もハッシュタグ付きの投稿を検索することで、シェアや「いいね」といったリアクションをユーザーに届けることができるのです。

SNS上には、すでに膨大な数のユーザーが存在しているのも、ハッシュタグ付きの投稿を行うメリットのひとつといえます。ハッシュタグの内容や投稿するタイミングによっては、爆発的に拡散されることも珍しくありません。既存顧客にハッシュタグ付きの投稿を呼びかけるキャンペーンを実施するなど、活用範囲の幅広い手法といえるでしょう。

オフラインイベントを開催する

顧客を実際に集めて開催されるオフラインイベントも、コミュニティマーケティングの手法のひとつです。展示会や即売会ではなく、ファンミーティングなど純粋にファンが集い交流するための場を設けることがポイントといえます。気に入っている商品やブランドといった共通の話題があることから、オフラインイベントを通じてファン同士に新たな交流が生まれることも少なくありません。参加するファンの側にも、価値観が合う仲間を作ることを目的としている人が、数多くいるはずです。

さらに、前述のハッシュタグ発信と組み合わせることで、オフラインイベントの認知度を高めることもできます。企業やブランドよりも先にオフラインイベントの存在を知り、商品やサービスを購入するきっかけとなることもあるのです。

 

コミュニティマーケティングの注意点

コミュニティマーケティングに取り組むにあたっては、注意しておきたい点もいくつかあります。効果的な施策を講じるためにも、下記の4点を押さえておきましょう。

コミュニティ形成を急がない

コミュニティマーケティングは、短期間で効果が見込める施策ではありません。コミュニティを立ち上げて一定数のメンバーを集めれば、成果がすぐに現れるわけではない点に注意しましょう。コミュニティを立ち上げてからコミュニティが機能するようになるまでの流れは、概ね下記のとおりです。

<コミュニティが機能するまでの流れ>

  1. 初期メンバーが一定数集まる
  2. メンバーがコミュニティ内で発言するようになる
  3. メンバーがコミュニティの目的を理解する
  4. コミュニティの目的がメンバー間で共有される
  5. メンバー間での情報交換が活発化する
  6. コミュニティ運営を自分事として捉えるメンバーが増える
  7. メンバー間での信頼関係が醸成される

 このように、コミュニティを立ち上げてから個々のメンバーが当事者意識を持って参加するようになるまでには、少なからず時間を要します。参加するメンバーにとって有意義な場にならなければ、コミュニティの母数増加は見込めません。コミュニティ形成は急がず、まずは参加者にとって有意義な場にしていくことを最優先する必要があります。

コミュニティマネージャーを慎重に選定する

コミュニティ運営に携わる人員を選定する際には、コミュニティの仕掛け役として適任の人材かどうかを慎重に検討しましょう。必ずしも、コミュニティ専任のマネージャーを配置できるケースばかりではないでしょうが、ほかの業務と兼務する場合もコミュニティ運営が片手間にならないよう、注意しておく必要があります。

コミュニティメンバーの中には、運営者の人柄に惹かれてファンになっていく人も現れるはずです。メンバーにとって、コミュニティマネージャーは企業の「顔」となるため、コミュニティのまとめ役として適任かどうかは、しっかり検討することが重要です。テキストベースでのコミュニケーション能力やリーダーとしての適性などを考慮した上で、コミュニティマネージャーを選定してください。

コミュニティメンバーをインセンティブで釣らない

重要なポイントとして、コミュニティメンバーによるあらゆる活動は、「無報酬」を徹底する点があります。コミュニティはユーザーによって、自主的に運営されているからこそ価値があります。仮に、運営企業から報酬が出されたならば、その時点で企業側の意図が入り込む余地が生まれ、コミュニティの自主性は損なわれてしまうでしょう。すべてのメンバーが利害関係を離れて発言しているという共通認識が、コミュニティへの信頼確保につながります。

なお、報酬は金銭的な価値に限りません。例えば、コミュニティメンバーを増やすために紹介特典などを付与した場合、特典が目当てで知り合いを紹介するメンバーが現れることが予想されます。インセンティブが目的で参加したメンバーはアクティブ率が低くなりやすく、主体的に参加しようとしないメンバーが増える原因となるのです。コミュニティメンバーは、無報酬で活動してもらうことが大前提と捉えてください。

効果測定は定性的な要素も重視する

コミュニティ活性化の度合いを測定する際には、定量的な情報からは判断できない要素も重視しましょう。例えば、コメントの発信数が多いからといって、その人がメンバーにとって有益な発言をしているとは限りません。反対に、コメント数は限られていても有益な発信をしているメンバーが増えれば、コミュニティが着実に活性化していく可能性は十分にあります。

従来のマーケティング施策では、PVやアクティブ率といった定量的な情報がしばしば重宝されてきました。そのため、マーケティング施策に詳しい人ほど、定量的な情報を参照する傾向があります。しかし、コミュニティマーケティングにおいては、定性的な情報を重視することは欠かせません。従来の手法との違いを運営に携わる人員に周知し、コミュニティ運営の方針が揺らぐことのないよう注意してください。

 

コミュニティマーケティングを成功させる運営ポイント

コミュニティマーケティングを成功させるには、運営の方針・スタンスが非常に重要な位置を占めています。下記のポイントも押さえていき、コミュニティマーケティングの成功率を高めましょう。

コミュニティの目的を明確に打ち出す

コミュニティはユーザーによる自治運営が基本ですが、最初期段階でコミュニティの目的を明確に打ち出すのは運営者側の役割です。例えば、「ユーザー同士で交流を深めてもらう」といった漠然とした目的でコミュニティスペースを設置してしまうと、集まったユーザーはコミュニティ内で何を発言すれば良いのかわからず、戸惑ってしまいます。コンテンツ投稿型のコミュニティであれば、「商品の便利な使い方を共有する」などの目的が考えられます。課題解決型のコミュニティなら、「商品の操作方法・活用方法に関する質問・回答を共有する」といった目的を明示することが大切です。

また、自身の目的にそぐわない発言が多いと感じると、ユーザーはコミュニティを離脱する可能性があります。コミュニティの目的が複数ある場合には、目的ごとにルームを分けるなどして、ユーザーが目的に合わせて参加できるよう配慮しましょう。

顧客との関係構築に重きを置く

コミュニティは、ユーザー同士が交流するための場であると同時に、企業と顧客がコミュニケーションを図るための場でもあります。顧客の発言にこまめに反応したり、顧客の疑問に回答したりといったリアクションを通じて、コミュニティ参加の有益性を感じてもらうことも大切です。企業から反応が返ってくることによって、コミュニティメンバーは自分たちが大切に扱われていると感じるようになり、積極的に発信するユーザーを育てることにもつながるはずです。

顧客との関係性を重視する施策は、コミュニティの初期段階だけに注力するのではなく、継続的な実施が重要です。コミュニティに参加し始めたユーザーを積極的にフォローするなど、メンバーを大切にしていくスタンスを崩さないようにしましょう。

コミュニティ内で広告宣伝を行わない

コミュニティ内で広告宣伝を行わないことも、重要なポイントのひとつです。仮に、企業側から新商品のPRなどをコミュニティ内で実施した時点で、それは一方通行の「売り込み」になってしまいます。「このコミュニティは売り込みのために用意されたものではないか」とユーザーが感じるようなことがあれば、コミュニティそのものに対する信頼性が損なわれる原因にもなりかねません。

コミュニティはあくまでも、「ユーザー同士や、企業・ユーザー間のコミュニケーションの場」として運営されていることが大切です。双方向性が失われることのないよう、広告宣伝は慎むようにしましょう。直接的な広告宣伝はもちろんのこと、宣伝ではないかと疑われる表現も控える必要があります。コミュニティ運営に携わるスタッフ間で「広告宣伝はNG」というルールを徹底し、コミュニティにふさわしくない発言を未然に防止することも大切です。

 

コミュニティマーケティングの事例

続いては、実際にコミュニティマーケティングに取り組んでいる企業の事例について見ていきましょう。企業によって施策内容はさまざまですが、顧客同士の交流を促すことに成功しているという点では共通しています。自社でコミュティマーケティングを始める際のヒントが見つかるかもしれません。

Snow Peakの事例:オンラインとオフラインの両輪でコミュニティマーケティングを実施

アウトドア用品の総合メーカーである「Snow Peak」は、オンラインコミュニティとオフラインイベントの両輪でコミュニティマーケティングに取り組んでいます。オフラインイベント「Snow Peak Way」は、オートキャンプブームが落ち着き始めていた1990年代の終わりからスタートし、キャンプブームに再び火をつけたことで有名です。オフラインイベントではテントの設営方法に関するレクチャーを受けられたり、焚火を囲みながら顧客同士が交流できたりと、キャンプ初心者から上級者まで楽しめる内容となっています。オフラインイベントの様子がオンラインコミュニティで共有され、キャンプイベントに関心を寄せる見込み顧客をさらに取り込むことにも寄与しているのです。

同社をはじめ、アウトドア用品メーカーの顧客は、商品そのものに興味がある人ばかりとは限りません。キャンプをよりいっそう楽しみたい、未経験の状態からキャンプを始めてみたいといった顧客の潜在的なニーズをコミュニティマーケティングで捉えた事例といえます。

mineoの事例:コミュニティサイトの活用で、価格競争ではなくユーザーから選ばれる企業に

オプテージが展開している携帯電話・データ通信サービス「mineo」には、コミュニティサイト「マイネ王」があります。元々スタッフ・ブログとしてスタートし、ユーザーからコメントが届くようになったことを契機に、コミュニティへと発展していきました。コミュニティ内には、ユーザーからのアイディアを募る「アイディア ファーム」を設置。ユーザーから届くアイディアは毎月100件を超え、中にはオリジナルアプリの新機能など、実装を実現したものもあります。また、ユーザー間で質問・回答ができる掲示板も用意されており、カスタマーサポートの効率化にも寄与しているようです。

mineoユーザーのうち、約半数はマイネ王に登録しているとされ、同社が提供するサービスの一環としてその存在感は大きなものとなっています。価格競争に陥りやすいサービスであっても、ユーザーとのコミュニケーションが深まることで、選ばれる企業になった好例といえるでしょう。

LEGOの事例:オンラインコミュニティで、年齢や国籍を問わず幅広いユーザーを獲得

ブロック玩具で知られる「LEGO」は、オンラインコミュニティ「LEGO IDEAS」を提供しています。同サイトには、LEGOで作られた精巧な作品画像の数々が掲載されていますが、これらはすべてユーザーが制作したものです。ユーザーが各自の作品を発表し合い、優れた作品には投票やコメントができる仕組みになっています。人の作品を見ることで「自分も作ってみたい」と感じるきっかけになったり、「LEGOでこんなこともできるのか」といった新たな発見につながったりするのです。

LEGOは元々子供向けの玩具ですが、オンラインコミュニティを見ると成人のユーザーも非常に大勢いることがわかります。視覚に訴える作品であることから、言語の壁を越えて世界中のユーザーの作品を楽しむことができるのも大きな特徴です。年齢や国籍にかかわらず、幅広いユーザーの獲得に寄与した事例といえるでしょう。

Salesforceの事例:グループごとに自治運営されているコミュニティの好例

顧客関係管理ツールのCRMや営業支援ツールのSFAで知られる「Salesforce」では、課題解決型コミュニティ「Trailblazer Community」を運営しています。同社の製品について知りたいこと・疑問に感じていることを過去の回答から探せるほか、新たに質問してほかのユーザーから回答を得ることも可能です。Trailblazer Communityの大きな特徴として、地域や業種、商品への習熟度などに応じて、多数のグループが用意されていることが挙げられます。各グループにはユーザーが務めるリーダーが配置され、グループ内のイベント開催などを担っているのです。企業はコミュニティの「場」を用意しているものの、コミュニティ内はグループごとに自治運営されています。

これは、ユーザーが主体となって運営されていくべき、コミュニティの理想的な姿といえるでしょう。Sales Forceの事例は、自治運営が成立するコミュニティを目指す企業にとって参考になるはずです。

AWSの事例:20人のメンバーから始め、オフラインミートアップ参加数延べ1万人まで成長

「AWS」は、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。AWSには、日本国内向けのユーザー会「JAWS-UG」があり、ボランティアによる勉強会や交流イベントが開催されています。イベント参加時には会員登録や企業登録は不要で、誰でも参加できるオープンな仕組みになっている点が大きな特徴です。オフラインミートアップは年に約300回開催され、延べ1万人以上が参加しています。

JAWS-UGが立ち上げられた2010年当時、初期メンバーは厳選された20人だったそうです。初期メンバーはそれぞれがリーダーとフォロワーとしての役割を持ち、コミュニティの基礎づくりに寄与したことで、現在の発展の礎を作りました。コミュニティの立ち上げから軌道に乗るまでの仕組みづくりに成功した事例として、ぜひ参考にしてください。

 

まとめ:コミュニティマーケティングによって築かれたコミュニティは、企業にとって貴重な資産となる

コミュニティマーケティングは従来のマーケティングと大きく異なり、コミュニティの存在を通じて見込み顧客や潜在顧客にアプローチしていく手法です。コミュニティが形成され、具体的な成果につながるまでには時間がかかりますが、企業やブランドのファンによって築かれたコミュニティの存在は、企業にとって貴重な資産となるでしょう。ぜひ、今回の記事を参考に、コミュニティマーケティングに取り組んでみてください。従来のマーケティング手法では見えてこなかったユーザーの動向が見えるようになり、事業をよりいっそう発展させるためのヒントを得られるはずです。

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