ファンマーケティングはなぜ重要?具体的な手法と実践ポイントを解説

マーケティングの手法について調べたことがある方なら、「ファンマーケティング」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ファンマーケティングは、現代のビジネスにおいて重要な戦略のひとつとして、幅広い業界で注目されつつあります。今回は、ファンマーケティングの概要や注目されている理由、具体的な手法を詳しく紹介します。ファンマーケティングに取り組むメリットや注意点も併せて解説しますので、ぜひマーケティング施策を検討する際の参考にしてください。

昨今、ファンに愛されるブランドを作ることは、短期的に売上を求めること以上に重要視されているポイントです。
ヤッホーブルーイング様は、そんなファンマーケティングの施策を長年にわたって行なっている企業です。
彼らは、ただ施策を行なっているのではありません。顧客と自社を徹底的に見つめ続ける、地道な努力があったのです。

本資料には、そんなヤッホーブルーイング流のファンマーケティングに関する極意をまとめています。
サクッと読める量ですので、ぜひご覧ください。

ヤッホーブルーイングに聞いたファンマーケティングの極意

ファンマーケティングとは、熱烈な支持者を育成する戦略

ファンマーケティングとは、企業やその商品・サービスに対するファン(熱烈な支持者)を育成するための戦略です。企業にとっての顧客は、企業との関わりの深さや愛着の度合いによって、下記の6段階に分類することができます。

■6段階に分類される顧客の状態

段階 顧客の状態
潜在顧客 企業や商品について知らない
見込み顧客 企業や商品について一応知っている、または購入を検討している
新規顧客 実際に商品を購入したことがある
リピーター 商品が気に入り、2回以上購入したことがある
優良顧客 リピーターの中でも、とりわけ購入回数が多い
ロイヤルカスタマー 優良顧客の中でも、特に企業や商品に対して愛着がある

 ファンマーケティングが目指すのは上記のうち、「ロイヤルカスタマー」の育成です。ロイヤルカスタマーは企業やその商品に対して愛着を感じており、他社の類似商品は選択肢に入りません。より安い商品が他社から提供されたとしても、愛着のある商品を使い続けてくれるのです。

 

ファンマーケティングが注目されている背景

近年になって特にファンマーケティングが注目されているのはなぜなのでしょうか。その背景として、主に下記の2つが挙げられます。

人口の減少

人口が増え続けていた時代は、新規顧客の獲得を優先するマーケティング施策が主流でした。しかし、2011年以降、日本国内の人口は減少に転じています。人口が減少へと転じたことで新規顧客の獲得は困難になりつつあります。そのため、今のマーケティングで重視されているのは、既存顧客とのつながりの強さです。顧客が取引を開始してから終了するまでの期間にもたらす利益を表すLTV(顧客生涯価値)を高めるためのマーケティング施策が、企業には求められているのです。

SNSの浸透

SNSが社会に浸透し、SNSユーザーが増えたことによって、情報発信の在り方は大きく様変わりしました。顧客はみずから情報を発信できるようになり、情報源もテレビCMや折り込みチラシといった企業発信の情報のみならず、顧客同士で情報交換をすることも簡単にできるようになりました。むしろ、企業からの発信よりも、その商品やサービスを実際に利用している顧客からの口コミの方が重宝されやすい傾向すらあるため、ポジティブな口コミが生まれやすい雰囲気を醸成することが企業にとっての大きな課題になっています。そこで、ファンマーケティングを通じて、ポジティブな情報を発信してくれるロイヤルカスタマーを醸成していくことが、LTV向上や新規顧客獲得のための重要な戦略となりつつあるのです。

 

ファンマーケティングの手法

一口にファンマーケティングといっても、さまざまな手法があります。ファンマーケティングの代表的な5つの手法について見ていきましょう。

ファンミーティング

ファンミーティングとは、企業と顧客が交流するための場を提供する手法です。ファンミーティングという名のとおり、参加できるのは特定の顧客のみに限られており、招待制になっていることも少なくありません。ファンにとって特別な機会であり、自身が企業から優遇されていることを実感する場ともいえます。

普段は顔が見えない従業員と顧客が直接交流できることが、ファンミーティングの大きなポイントです。顧客はそこで商品やサービスに対する感想や意見・要望などを伝えることができます。また、企業側からファンに対して、感謝の気持ちを伝える場としても有効です。

ファンコミュニティ

ファンコミュニティは、企業のファン同士が交流するための場を提供する手法です。商品のユーザーであると同時に企業の熱心な支持者が集まるため、そこでは商品に対するポジティブな意見が交わされる傾向があります。顧客はほかのユーザーの声を聞く機会を得ることができ、肯定的な意見を目にしていく中でさらに企業への帰属意識を高めていくのです。

前述のファンミーティングは企業とファンが交流する場であるのに対して、ファンコミュニティは純粋にファン同士が交流するための場として提供されるのが大きな違いです。企業はファンコミュニティにはできるだけ介在せず、ファンによって自治運営されていくことが理想的な形といえます。

SNSでの交流

企業の公式SNSアカウントを通じて、ファンとの交流を図る手法も有効です。顧客にとって企業の「中の人」の様子がわかれば親近感がわくだけでなく、気軽に質問もできるといったメリットがあります。投稿のシェアやDMによるやりとりを重ねていく中で、顧客にとってその企業は他社とは異なる特別な存在になっていくのです。

SNSアカウントの作成や運用には大きなコストがかからないこともあるため、SNSでの交流は初期投資を抑えて取り組めるファンマーケティングの手法といえます。フォロワーが増えていけば強力な告知媒体にもなりうるため、コストパフォーマンスに優れた手法といえるでしょう。

会員制サービス

会員制サービスは、会員顧客のみが利用できる特別なサービスを提供する手法です。会員限定セールや会員限定商品の提供といったサービスが想定されます。顧客にとっては会員になったメリットを感じられると同時に、自身が優遇されていると実感する要因となり、企業やブランドへの思い入れをより深めてもらうことができるのです。

月額利用料のみで使い放題となるサブスクリプション型サービスも、広い意味での会員制サービスといえます。サブスクリプション型サービスは他社への乗り換え防止に役立つだけでなく、安定的な売上の確保にもつながる手法です。継続的な提供が見込まれるサービスであれば、サブスクリプションを導入することも有効な施策となります。

サンプリング体験

サンプリング体験は、限られた顧客にサンプル商品を送り、実際に使ってもらう手法です。SNSキャンペーンを利用したり、モニターサイトを通じて体験ユーザーを募ったりする方法が想定されます。実際に商品やサービスを利用する体験を通じて商品への理解を深めてもらい、SNSなどで肯定的な発信をするファンを育成していくことが主な目的です。

サンプル商品を届けるだけでなく、レビューやSNSへの投稿を呼びかけることでも、より高い効果が期待できます。商品やサービスへの認知度があまり高くない段階において、ファン層を形成するためのきっかけとしてよく利用される手法のひとつです。

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ファンマーケティングに取り組むメリット

ファンマーケティングに取り組むことによって、企業は具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットを具体的に見ていきましょう。

広告宣伝費を抑制できる

ファンマーケティングに取り組めば、広告宣伝費を抑制する効果が期待できます。企業や商品の熱心な支持者は、自身が気に入っている商品やサービスをより多くの人に知ってほしいと考える傾向があります。企業が広告費を投じて販売促進をしなくても、顧客が自発的に商品やサービスを宣伝してくれるのです。

顧客によるレビューの投稿は、ほかの消費者にとって有力な情報源となります。実際に商品やサービスを利用したことがある人の意見のため、企業による自社商品の宣伝よりも信頼できるからです。商品の詳細情報が顧客のあいだで共有されていけば、広告宣伝費のさらなる抑制につながります。

ユーザーのニーズを把握しやすくなる

商品について言及する顧客が増えるにつれて、企業はユーザーの率直な意見や感想を把握しやすくなります。顧客が商品のどのような面に満足しており、どういった点を改善してほしいと感じているのか、リアルな声を聞けるからです。

ファンから寄せられる意見の中には、商品やサービスをより良くしてほしいという期待が込められたものもあるでしょう。ユーザー向けにあらためて調査をするまでもなくニーズを把握できることは、ファンマーケティングに取り組むメリットのひとつといえます。

安定的な売上につながる

ロイヤルカスタマーとなった顧客は、よほどの理由がない限り他社商品に乗り換えようとはしなくなります。より安価な商品やサービスが他社から提供されていたとしても、「このブランドでなければいけない」という強いこだわりがあれば、乗り換える動機には至らないからです。

ロイヤルカスタマーは企業やブランドの支持者であると同時に、良質なリピーターともいえます。容易に他社へ流出しない顧客が増えていけば、安定的な売上確保へとつながります。

 

ファンマーケティングの注意点

さまざまなメリットを得られるファンマーケティングですが、取り組むにあたって注意しておくべき点もあります。企業やブランドへの「愛着」という顧客の感情に関わる施策である以上、下記の2点については十分に注意しましょう。

効果が現れるまでに時間がかかる

ファンマーケティングは即効性が期待できる手法ではありません。顧客が商品への理解を十分に深め、愛着を感じるに至るまでには、時間を要するからです。

例えば、一時的に商品を気に入ってリピート購入しているからといって、その顧客が即座にロイヤルカスタマーになるとは断定できないでしょう。「近所の店舗で購入しやすい」「特に理由はなく習慣的に使っているだけ」といった理由でリピート購入されているケースもありえます。

ファンマーケティングに取り組むのであれば、成果を急ぐのは禁物。特定の商品を使い続けている時間の長さが、顧客の商品への愛着に影響を及ぼすことも十分にありうるのです。ファン層の形成までには期間を要することを織り込んでおきましょう。

閉鎖的なファン層が出来上がらないよう注意する

企業やブランドのファン層を形成していくファンマーケティングは、閉鎖的なファン層の醸成につながるリスクも併せ持っています。コミュニティ内で独自のルールや文化が形成されていくにつれて、新たなファンがそこに参加することに対して、心理的な抵抗感を強めてしまう可能性はあります。

ファン層の風通しを良くし続けるには、コミュニティ内でヒエラルキーが形成されにくい仕組みを整えることが重要。あらかじめホスト役として架空のキャラクターを設定しておくことや、交流の場を複数用意することなどが有効な対策として考えられます。

炎上リスクがある

ファンマーケティングは従来のマーケティング手法よりも、顧客とより近い距離感で直接コミュニケーションをとっていく手法です。ファンマーケティングに積極的に参加してくれる顧客は、企業としてのインフォメーション的な発言より、企業の中にいる人のリアルな声を聞きたい願望が大きい傾向にあり、これがSNSでも「中の人」が人気を集めやすい理由の一つでもあります。

一方で、企業の中の人としてのリアルな声というのは、インフォメーション的な発信よりも、発言する人の考えや思想が混ざりやすいため、たとえ意図的ではなかったにせよ、特定の人たちから反感を買う可能性があります。

そのため、ファンマーケティングの担当者には、発言に対する繊細な気配りが求められます。ファンコミュニティは大なり小なりプライベート感があるため、この気配りをつい見落としてしまいがちですが、コミュニケーションの相手はいち顧客であることを忘れずにしましょう。

また、どんなに配慮していてもやはり一部の方々から思わぬ反応が出てしまうこともあります。なので、万が一炎上してしまった時にどういう対応をするのかを、あらかじめ社内で取り決めておくことも大切です。

 

ファンマーケティングを実践する5つのポイント

ここからは、ファンマーケティングの施策を進めるにあたってのポイントを紹介します。下記に挙げる5つのポイントを押さえて、効果的なファンマーケティングを実践していきましょう。

ファンの定義を決める

ファンマーケティングに取り組む際には、自社のファンとはどのような人物を指すのか定義を決めておくことが大切です。一般的なイメージでは、「ファン=購買金額が大きい顧客」と思われがちですが、単純に金額で判断できない面もあります。中には、他社商品に気に入ったものがないといった理由で、致し方なく購入しているケースも少なからずあるからです。

ファンを定義する際には、売上と顧客ロイヤリティの両面から判断することを意識しましょう。SNSで自社商品について肯定的な発言をしたことがある顧客や、肯定的な商品レビューを投稿したことがある顧客は、ロイヤルカスタマーとなる可能性があります。定量的な購買金額だけでなく、定性的な顧客ロイヤリティも十分に考慮することが大切です。

タッチポイントと誘導方法の整理

顧客が自社のファンになるきっかけは、商品やサービスの利用だけとは限りません。SNSでの発信内容を見かけてフォロワーとなり、購入に踏み切ることもあります。顧客とのタッチポイントが少ないと、こうした機会を逃しやすくなるかもしれません。複数の媒体で自社や商品に関する情報を発信し、顧客とのタッチポイントを増やしていくことが大切です。

また、各タッチポイントでの発信の際には、自社の主要メディアへの誘導も忘れないようにしましょう。WebサイトやLP、オウンドメディアを訪問する機会を増やせば、企業やブランドについてより深く顧客に知ってもらうことができます。

アナウンスでなくキャッチボールを

一方的な情報発信に終始するのではなく、ファンとの交流や双方向のやりとりを活性化していくことがファンマーケティング成功の秘訣です。SNSで自社のエゴサーチも行い、ブランドや商品に言及している投稿に対して「いいね」で反応するなど、企業側から顧客に働きかけていくことも密なコミュニケーションを生みます。

商品に対して肯定的な投稿をしてくれた顧客に対しては、お礼のメッセージを返信することも大切です。多くの顧客は、企業担当者が自分の投稿を見て反応することをあまり想定していないため、「返信してもらえた」ことをうれしいと感じるでしょう。こうした密なコミュニケーションが他社との差別化につながり、ファンの形成へと寄与していくのです。

ファン同士のコミュニケーションを促進

先述したように、ファン同士が交流できるコミュニティの場を用意することも有効ですが、たとえ用意したとしても、そこでのコミュニケーションが活発でないと意味はありません。また、活発でないからと言って企業が積極的に介入し過ぎると、コミュニティではなく、単なるインフォメーションの場になってしまうので、ファン同士のやりとりが盛んになるようなコミュニティデザインが重要です。

例えば、思わず語り合いたくなるテーマを設定したり、コミュニティ内での発言が多いファンにはインセンティブを与える設計にするなど、その方法は様々。その商品やサービスが好きという共通点があるにせよ、ファンの方々も初めて会ってすぐに打ち解けることは難しいので、企業側が程よくサポートするよう意識しましょう。

ニーズの把握

一定数のファンが集まったら、ファンのニーズをくみ取っていくことも大切です。具体的な手法としては、商品やサービスに関する満足度調査や、新商品のモニターを募集する方法がよく用いられています。商品・サービスの開発や改善に自身の意見が取り入れられれば、顧客の一人から企業の協力者・支持者になったという心理的なステップアップを感じてもらう効果も期待できるでしょう。

ファンのニーズをきめ細かく把握していけば、商品・サービスの改善につなげるだけでなく、「お客様の声から誕生した商品」の開発も可能となります。ファンのニーズを把握することは、同じようなニーズのある潜在顧客に訴求する上でも効果的な施策といえます。

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まとめ:ファンマーケティングによるロイヤルカスタマーの増大が、事業の成長を後押しする

新規顧客の獲得が難化していく中で、既存顧客をロイヤルカスタマー化していくファンマーケティングの重要度が増しています。ファン層が形成されれば、広告宣伝費を抑制できるだけでなく、ユーザーのニーズをきめ細かく把握することができ、安定的な売上の確保にもつながるでしょう。

今回ご紹介したファンマーケティングの手法や実践ポイントを参考に、ぜひロイヤルカスタマーの育成に取り組んでみてください。企業・ブランドに愛着を持つロイヤルカスタマーの存在が、事業の成長を強力に後押ししてくれるはずです。

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