ECサイトにおけるCRMとは?導入メリットや注意点、活用事例まで徹底解説

顧客との関係を深めるためのマネジメント手法である「CRM」が、ECサイトを運営する企業の中でこれまで以上に注目を集めています。この記事では、CRMの導入を検討している企業のマーケティング担当者に向けて、ECサイトの運用にCRMを導入するメリットや具体的な活用事例などを解説します。

1.CRMとは?

CRMとは「Customer Relationship Management」の略称で顧客管理と訳されている用語です。わかりやすく言い換えると、自社で収集した顧客データの分析を行い、マーケティングなどに活かすマネジメント手法のひとつで、CRMを効率良く、効果的に運用・改善するツールやシステムが開発されたことから急速に普及しました。今では、一般的に「CRMを導入する」=「CRMツールやシステムを導入する」という意味で用いられています。CRMを導入する主な目的として考えられるのは売り上げや利益を上げることですが、CRMは顧客との関係を管理するので、顧客1人あたりの利益は「LTV(Life Time Value)=顧客生涯価値」を指標にして算出します。つまり、ある顧客が生涯にわたって企業にもたらしてくれる利益を指標にするということで、顧客と良好な関係を構築し続け、一人ひとりのLTVの向上を図るのがCRMの考え方です。

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ECサイトにおけるCRM

ECサイトにおいて、CRMを導入する主なメリットは何でしょうか。それは、CRMにより顧客にとって価値のある施策を実行しやすくなり、結果として顧客を効率良くリピーター化・ファン化へと導けること。顧客のリピーター化・ファン化は、ECサイトを運営する多くの企業にとっての課題です。CRMを導入すると、顧客データの分析結果をもとに、顧客一人ひとりに合わせてアプローチできるので、顧客にとって迷惑なアプローチになりにくく、ブランドに対する好感度や顧客満足度の上昇に繋がります。

MAとの違い

CRMと同義語のように扱われる用語に、MA(Marketing Automation)というものがあります。MAとは、顧客情報を元にした効果的なマーケティング施策を、設計&実行まで自動でできるシステムのこと。どちらも「顧客情報の分析によって施策の質を上げていくマーケティング支援ツール」なので、CRMもMAも同じだと思っている方もいるかもしれませんが、両者には明確な違いがあります。それは、アプローチする顧客層の違いです。先ほどご紹介したように、CRMは既存顧客をリピーター化・ファン化するために活用されますが、MAは見込み客を新規顧客に引き上げるために用いられます。なので、もし新規顧客の獲得に大きな課題を持っている場合はMAを検討すべきですし、新規顧客の獲得と既存顧客のリピーター化の両方に課題があるならば、MAとCRMを組み合わせることも珍しくありません。

 

2.ECサイトでCRMを活用するメリット

ECサイトの運用者がCRMを導入する大きなメリットは効率良く既存顧客をリピーター化・ファン化できることとご紹介しましたが、より具体的にどのようなメリットを得られるのかを解説します。

顧客情報を一元化して管理できる

ECサイトでCRMを活用すれば、既存顧客の情報を一元管理できるようになります。数字はわかりやすく可視化されており、人気のCRMならば情報を管理するダッシュボードのデザインやユーザビリティも洗練されているので、誰でも顧客情報を活用しやすくなっています。また、必要な情報はすぐに取り出せるように整理されているため、顧客情報の検索に時間を取られなくなります。さらに購入時期や年齢などの要素を指定して検索できるなど、知りたい情報をピンポイントでピックアップすることもできます。

顧客情報の共有がスムーズになる

CRMで顧客データを一元管理していれば、情報を他のメンバーや他部署へとスピーディーに共有することができます。必要な情報はその時々によって異なりますが、情報のリストアップもすぐにできるので、スケジュールに余裕がない施策の企画時にも無理なく活かせます。また、情報をスムーズに共有し、都度マーケティング施策に反映していくプロセスを通じて、メンバーや部署間の連携が強化されることも期待できます。

顧客に最適なアプローチができる

CRMは顧客データの属性などを細かく分析できるため、顧客ごとに適したアプローチをしたい場合に有効です。例えば、お問い合わせなどの履歴やダイレクトメールの反応率などのデータをもとに、企業からのアプローチに応えてくれやすい時間帯を見極め、その時間に相応しい内容を訴求するなどといったことが可能。単なる思いつきではなくデータに基づく施策を構築できるため、様々な顧客に受け入れられやすい、価値のあるマーケティング施策を実行することができます。

顧客ニーズを把握しやすくなる

実行した様々なマーケティング施策の結果を細かく見ることができ、どの施策に対する反応が良かったかがわかります。つまり、どの施策が顧客のニーズを捉えていたのかを把握しやすくなり、マーケティング施策を企画する際の大きなヒントになります。もちろんマーケティング施策だけでなく、新商品やサービスの開発時にも活用可能。実店舗があれば、接客を通じて顧客が何を求めているのかが見えてきやすいですが、顧客との対面コミュニケーション機会がないECサイトでは顧客のニーズが見えにくくなりがちです。なので、ニーズが「見える化」するCRMは、ECサイト運営時の強力なサポーターになることでしょう。

業務の効率化につながる

ここまでにご紹介した「顧客情報の一元管理化」や「顧客情報の共有がスムーズに」といったメリットによって、社員一人ひとりがその時々に応じて必要な情報をすぐ集めることができるので、日々の業務をよりスピーディーにこなせるようになります。この点でおすすめなのが、「クラウド」型のCRMを活用すること。CRMには大きく、システムやシステムを運営するために必要なネットワーク環境なども全て自社で構築するオンプレミス型と、多くの企業が使用可能なインターネットサービスとして提供されているものを採用して運営するクラウド型の2種類があります。クラウド型なら使用しているパソコンのスペックに左右されることなく、ネット環境が整った場所であれば、社内だけでなく外出先や自宅からでもCRMへアクセスできるので、欲しい情報をより手早く確認できます。

 

3.ECサイトでCRMを活用する際の注意点

CRMを活用するにあたって、いくつか注意点があります。その内容について以下で解説します。

構築や運用にコストがかかる

CRMを導入する際は構築にかかる初期費用はもちろん、ランニングコストを考慮しなければなりません。特に先ほどご紹介したオンプレミス型でCRMを一から構築しようとする場合は、費用面だけでなく開発のための人手や時間などのコストも多く必要になってきます。クラウド型のCRMサービスも各社によって費用は様々ですが、初期費用だけを見てCRMを選定するのは失敗のもと。たとえ初期費用が安くても、使い勝手が悪かったりサポート費用が高いなど、運用コストが想像より高くつくこともあるので、導入後の費用対効果も踏まえて検討しましょう。

運用に慣れるまで時間がかかる

CRMは顧客との長きにわたる関係を管理していくツールのため、導入するだけでたちまち効果が出るわけではなく、効果を実感できるようになるまでに時間がかかります。また、CRMは様々な目的に合わせた機能や活用方法が幅広くありますが、その豊富な機能をどう使いこなすのかがポイント。つまり運用する側のスキルによってCRMが自社にもたらす価値は大きく変わってきます。なので、CRMを導入するにあたっては、長期にわたって無理なく運営していけるよう社内体制を整える必要があり、ツールに慣れるまでの時間も長めに設定しておいた方がいいでしょう。

 

4.ECサイトにおけるCRM活用の手順

CRMを運用する際は、以下で解説する手順を踏まえて有効活用しましょう。

STEP1.顧客データを取得する

CRMを活用するための最初のステップは、顧客データを取得すること。十分な顧客データを蓄積できなければ、分析を行っても既存顧客に対して最適なアプローチができません。顧客データを取得できる主なタイミングは、顧客が商品を購入した時。購入した商品や商品ページに至るまでの閲覧履歴などのデータをCRMに蓄積しましょう。例えば商品プレゼントキャンペーンを実施し、その応募時に個人情報を記載をしてもらうなど、商品購入時以外にもデータを取得する方法は様々です。

STEP2.顧客データを解析する

一方で、顧客データを収集して蓄積するだけでは不十分。顧客データを分析し、セグメント化を行いましょう。セグメント化とは顧客データにある様々な情報を細分化してグループに分けるプロセスのこと。例えば商品を購入して欲しいターゲット層が「30代女性」だったとしても、ライフスタイルや価値観が今まで以上に多様化している現代では様々なタイプの30代女性がいるため、彼女たちが持つ具体的なニーズを把握しきれません。なので、セグメント化によって細かくカテゴライズし、各セグメントのターゲット像を明らかにしていくのが重要です。簡単な方法としては顧客の居住地や年齢、家族構成などの「属性」によるセグメント化があり、まずはここから始めるのがおすすめ。他にも商品の購入金額や購入時期、購入頻度などによって細分化する方法などがありますが、分析の難易度も上がってくるので段階的に取り組んでいくのが良いでしょう。

STEP3.顧客データを活用する

分析結果をもとに、セグメント化した顧客に合わせたアプローチ施策を企画・実施していきます。主なアプローチ方法は、アプリによる通知やSNSによる発信、メールマガジン、ダイレクトメールなど。STEP2のセグメント化によってターゲットのライフスタイルやニーズなどがわかりやすくなっているため、反応率が高く、好意的に受け取ってもらいやすい施策をセグメント化した顧客ごとに実施することが可能です。

STEP4.効果計測と改善案の検討を行う

顧客へのアプローチ後はその効果を検証しましょう。具体的には、計測する期間を事前に決めておき、セグメント化した顧客ごとの売上や施策への反応率などの計測・分析を行い、分析結果をもとに改善案を検討します。冒頭で顧客1人あたりの利益は「LTV(Life Time Value)=顧客生涯価値」を指標にするとご紹介しました。なので、施策の実施後は必ず効果計測と分析もセットで行い、PDCAサイクルを繰り返して一人ひとりの顧客の満足度を高め続けていくことが重要です。

 

5.ECサイトにおけるCRMの選び方

CRMを選定する際は、以下で解説するポイントを考慮する必要があります。目についたものにすぐ決めてしまうのではなく、ポイントを参考にしながらより適したものを選びましょう。

必要な機能を備えているものを選ぶ

CRMにはさまざまな機能が搭載されているものもありますが、自社で必要な機能を備えているものを選定することが大切です。自社に必要な機能を絞り込むためには、そもそもCRMで何をしたいのかを突き詰めておくことが必要。とにかくまずは導入して、実際に触ってみながら目的も明確にしていこうと考える方もいるかもしれません。ただ、CRMはできることが多岐にわたるがゆえに、目的が定まってないまま触ってみてもその豊富な機能にただ圧倒され、結局あまり活用されなくなってしまいがち。なので、最初から「この機能でこういうことをしたい」と明らかにしておくと選定がしやすく、導入後もスムーズに活用できるでしょう。

操作性がよいものを選ぶ

優れた機能を多数搭載しているCRMでも、扱いづらいものを選べばかえって業務の負担になりかねません。なのでCRMを選ぶ際は専門知識やスキルがなくても、直感的な操作が可能かどうかは大きなポイントになります。管理画面を触っている動画コンテンツをチェックしたり、トライアル期間が設けられているなら自ら使ってみるなどして、実際の使用感を確認しておきましょう。

セキュリティ対策が十分なものを選ぶ

CRMを導入する際の懸念点の一つとして、不正アクセスや情報漏洩などの可能性が出てくることが挙げられます。顧客データという、外部に漏れてしまうと多くの損害を生んでしまう重要な情報を取り扱うツールなので、選定する際はセキュリティ対策が充分であるかを事前にチェックしましょう。過去に不正アクセスや情報漏洩がなかったかや、セキュリティ面のアップデート実績、第三者による評価、セキュリティ関連の認証の有無なども比較検討する際の参考になります。

他のシステムと連携できるものを選ぶ

CRMは自社で既に運営している他のマーケティング支援システムや営業支援システムと連携することで、より自社に合わせたカスタマイズがしやすく、効果を生みやすくなります。なので、候補に挙がっているCRMが既存のシステムやツールなどと連携できるかを確認しておきましょう。導入時は特に他のシステムと連携する予定がなくても、CRMを活用するにつれて連携が必要になってくる可能性もあるので、連携の仕様は欠かさずチェックしておくのがおすすめです。

サポート体制が十分なものを選ぶ

操作方法が分からないときやトラブルなどが発生した際のサポート体制もチェックしましょう。サポート体制が充実しているとすぐに対応してもらえるため、業務をスムーズに行えます。チェック方法としては、無料トライアルサービスがあるなら利用し、実際に質問をしてみるのがおすすめ。無料サービスがない場合は、例えばユーザーの使用上のよくある質問に答えるコンテンツがあるかを確かめたり、具体的な活用方法をテーマにしたセミナーを定期的に開催しているかを確認しましょう。

 

6.ECサイトでCRMを活用した事例

ここでは他企業の活用事例を2つご紹介します。ぜひ、実際に活用する際の参考にしてみてください。

人気総合スポーツメーカーのオンラインショップの事例

最初にご紹介するのは日本発の人気スポーツメーカーのオンラインショップの事例。このショップでは、商品がカートに入ったまま購入まで至っていない顧客に対し、購入を促すメールマガジンを配信していましたが、配信する顧客のリストを作成するのに時間と手間がかかることが課題でした。CRMの導入により、対象顧客のリストアップを簡単にできただけでなく、メールマガジンの作成・送信までの工程を全て自動化することに成功。結果的に、メールマガジン経由での売上アップに成功しました。

健康食品を手がける通信販売会社の事例

次にご紹介するのは、健康食品に特化した通信販売を行っている企業の事例です。主力商品のメディアへの露出が増えたことで新規顧客数は増えましたが、一方で新規顧客1件の獲得にかかるコストが大きいことが課題でした。CRMの導入によって、複数の内容のメールを配信し、その結果を見比べる「ABテスト」などを実施。PDCAを効率良く回して効果的なメールマーケティングを実施できるようになり、課題の解決に繋げられています。

 

まとめ

この記事では、ECサイト運用にCRMを導入するメリットや具体的な活用事例などを解説しました。なお、近年ではCRMの方法も多岐にわたり、顧客が普段よく使っているメディアを軸にした新時代のCRMも登場してきています。本メディアを運営する株式会社ヤプリが提供するノーコードCRM「Yappli CRM」もその一つ。スマートフォンアプリを軸にした顧客管理を、プログラミング要らずのいわゆる「ノーコード」で誰でも簡単に実施することが可能です。詳しくはこちら

また、新時代のCRMについて詳しくはこちらの記事もぜひご覧ください。

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