モバイル時代のCRM入門。顧客管理はアプリから始めるのは正解?

顧客ともっとつながりたい、また買いたいと思ってもらいたい――。そう考えるマーケターであれば、「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)」という単語はおなじみのはずです。ポイントカードを作ったり、ロイヤリティプログラムを実施したりと、すでにCRMを活用した施策に取り組まれている企業も多いでしょう。しかしながら、思うように成果が出ない、リソースがかかって効率が悪いという声も耳にします。今回は、「CRMでもっと成果を出したい」「CRMをこれから始めてみたい」と考えている方のために、顧客管理が重要となる背景から、アプリで始めるモバイル時代のCRM手法についてまで詳しく解説します。

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顧客管理とは?

そもそも顧客管理や顧客管理ツールとは、いったい何を意味するのでしょうか。まずはおさらいとして、それぞれがどのような役割を持っているのかを確認しておきましょう。

顧客管理:顧客分析を通じて業績をアップさせる施策

顧客管理とは、顧客を分析して業績アップにつなげるための施策を指します。売上が「増えた」「減った」というのは営業・販売活動の結果です。しかし、なぜ売上が増減したのかを分析・検証するには、顧客のニーズを深掘りしなければなりません。商品を購入した顧客はなぜ買ったのか、買わなかった顧客はなぜ購入を見合わせたのか、企業は顧客の購買行動を詳細に把握していく必要があるのです。こうした顧客の動向を把握するには、一人ひとりの顧客を管理していくことが重要です。リピーターを増やしていくためにも細かく顧客管理を行い、顧客との関係性を築いていくことが今の企業には求められています。

顧客管理ツール:顧客情報の一元管理・活用が簡単に

顧客管理に決まった方法はありません。紙の顧客台帳を活用し、ファイルにまとめて情報を蓄積していくのも古くから行われている顧客管理の手法のひとつです。しかし、その方法では、顧客数が増えていくにつれて顧客情報を有効活用するのが難しくなっていきます。顧客が数百人、数千人と増えていくと、何らかのシステムを活用する必要に迫られるでしょう。そこで活用されるようになったのが顧客管理ツールです。近年ではサービスのバリエーションも増え、比較的安価で導入することも可能に。デジタル施策との相性も良いため、多くの企業が導入しています。

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顧客管理が重要となる背景

続いて、顧客管理が重要となる背景について押さえていきましょう。大きく3つに分けて背景を紹介します。

新規顧客の獲得コストの上昇

新規顧客の獲得には、既存顧客維持の5倍のコストがかかるという「1:5の法則」を聞いたことはないでしょうか?自社の商品・サービスに興味を持つかどうかわからない消費者に向けてメッセージを発信し、購入に至らせるまでには労力がかかります。また、近年ではWebブラウザを提供している各社がサードパーティCookieをブロックしています。これまでWebサイトの広告は、サードパーティCookieを利用して、特定のユーザーの属性をつかみ、関心度が高いであろう広告を配信することができていましたが、今は従来のようなリターゲティング広告が難しい「Cookieレス時代」に突入しているのです。そのため、一度でも自社の商品・サービスを購入・体験したことがある既存顧客との関係維持・強化があらためて注目されているというわけです。

DMやカタログ送付の効率化

企業の80%の売上は20%の優良顧客が占めるという、いわゆる「パレートの法則」をご存じでしょうか。やみくもにDMやカタログを送るのではなく、この「20%」にターゲットを絞ってコミュニケーションをとることができれば、カタログの印刷コスト削減をはじめとする業務効率化が実現できます。購買貢献の高い優良顧客を見つけるためには、データの分析が欠かせません。このデータ分析のために、CRMが必要とされているのです。

1to1コミュニケーションの実現

マス広告とデジタルチャネルにおけるコミュニケーションの大きな違いは、メッセージの内容を伝えたい相手の属性に応じて変えられる点にあります。デジタルチャネルは究極的には、消費者一人ひとりに違ったメッセージを届けることが可能であり、その分大きな効果を発揮できるでしょう。こうした、それぞれのニーズに合わせた最適なコミュニケーションを実施する考えを、1to1コミュニケーションといいます。具体的には、レコメンデーションやメール・DMのカスタマイズ、掲載ページの出し分けなどが該当します。1to1コミュニケーションが発達すると、顧客のスマートフォンの画面にはその顧客に合わせた内容のコンテンツが表示される状態が日常的になります。現代では、顧客を深く分析し、一人ひとりに最適なメッセージを届けられるよう、CRMは技術的に進化しているのです。

以上が、顧客管理が必要とされる主な背景を紹介しました。なお、CRMと似た位置づけのツールにMA(マーケティングオートメーション)があります。CRMが購入・成約後の顧客管理を担うのに対し、MAは購入前の見込み顧客(リード)を対象としており、ターゲットや目的が異なります。

>>MAについてより詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。

マーケティングオートメーション(MA)とは?アプリ担当者が知っておきたいメリットと課題

 

顧客管理で取り扱うべき情報

一口に顧客管理といっても、管理したほうがいい情報は多岐にわたります。具体的には何を管理すればいいのか、項目ごとに見ていきましょう。

顧客の属性

顧客の属性(基本情報)は、顧客をセグメント化する際に重要な指標となります。また、顧客にDMなどを送付する際にも不可欠となるため、確実に収集しておきたい情報といえるでしょう。管理するべき顧客の属性の一例は下記のとおりです。

<管理するべき顧客の属性情報>

  • 氏名
  • 性別
  • 生年月日
  • 勤務先名・部署名・役職
  • 連絡先(電話番号・メールアドレスなど)
  • 住所

購買履歴

顧客の購買履歴は、アップセルやクロスセルに向けた施策を講じる際に重要なカギを握る情報です。例えば、半年前に1回だけ商品を購入した顧客と過去3ヵ月間に複数回購入している顧客では、近日中に再度購入する確率が大きく異なります。いつ何を購入したのか、購入金額はいくらだったのか、できるだけ詳細な情報を記録しておくことが大切です。管理するべき購買履歴の一例は、下記のとおりです。

<管理するべき購買履歴の情報>

  • 購入日
  • 購入商品
  • 購入価格
  • 購入した数量
  • 支払総額
  • 支払方法
  • 販売担当者

収益性

顧客ごとの収益性は、マーケティング施策の優先順位を決める上で重要な指標となります。月1回のペースでリピート購入している顧客が複数名いるとして、1回あたりの平均購入金額が1,000円の顧客と1万円の顧客では、収益性が大きく異なることは明らかです。より収益性の高い顧客に対して集中的にアプローチすることで、マーケティング施策の効果をいっそう向上させることができます。管理するべき収益性の一例は下記のとおりです。

<管理するべき収益性>

  • 顧客ごとの累計売上
  • 顧客ごとの累計利益
  • 平均購入単価
  • 平均購入頻度
  • LTV(顧客生涯価値)

 

顧客管理のメリット

顧客管理を行うことで具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?下記に、4つのメリットを紹介します。

豊富なデータを蓄積・携帯できる

CRMを導入すれば、顧客の情報は一元管理することができます。データドリブンでマーケティング施策のPDCAを回していくためには、社内に分散している顧客情報を一元管理する必要があります。また、個々の従業員が各自の所有する顧客情報をもとに個別にコミュニケーションをとっていては、業務が属人化してしまうでしょう。しかし、CRMがあれば、そのような属人化を防止することも可能になります。

顧客情報の社内共有強化

蓄積したデータは、営業、マーケティング、カスタマーサポートなど、各部署の担当者で共有することで、最大の効果を発揮します。その点、アプリであれば顧客情報をスピーディーにリアルタイムで社内共有することができます。なお、CRMで共有される顧客情報は種類ごとに分類されるのが一般的です。前述した「顧客管理に取り組むべき項目」のうち、顧客の属性は性別、年齢、住所などの属性情報であるデモグラフィック情報に、購買履歴や収益性はRecency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary (購入金額)の指標で顧客をグループ分けするRFM分析の要素として格納されていきます。

顧客体験の向上

CRMはより正しく、より深い顧客理解を可能とするため、適切なコミュニケーションを実施すれば、顧客体験も向上します。顧客体験(CX)とは、顧客が企業と関わるすべての接点で感じる価値・経験のことです。例えば、コーヒーを飲むときにスターバックスを選ぶユーザーは、単にコーヒーの価格や味だけではなく、店内の雰囲気や、そこで過ごす時間にも価値を感じているはずです。スターバックスには「Starbucks® Rewards」というスマートフォンで使える会員プログラムがあります。このプログラムにより、顧客はお得な特典を受けることができるため、さらに顧客体験が向上するというわけです。

売上アップにつながる

顧客分析を通じて従来よりも的確なターゲティングが可能となり、企業は顧客にとってストレスの少ないアプローチがしやすくなります。こうしたマーケティング施策の最適化と顧客体験の向上が実現すれば、売上アップにつながる可能性は十分にあるでしょう。顧客管理の本来の目的を達成し、売上増強へとつなげる上で、顧客管理アプリの導入は有効な施策といえます。

 

顧客管理の注意点

顧客管理によって多くのメリットを得られるのは前述のとおりです。一方で、顧客分析の質が低いと十分な効果が得られない可能性もあります。特に顧客管理ツールを導入する際には、下記の点に十分注意しておく必要があるでしょう。

導入や運用にコストがかかる

顧客管理ツールの開発や導入そのものに期間を要したり、膨大なコストがかかったりすると、費用対効果の観点においてデメリットとなりがちです。顧客管理ツールは導入すること自体が目的ではなく、効果的に活用して顧客体験の向上や売上増強につなげていくことが本来の目的です。ツールの導入・運用にかけるコストは、できるだけ抑えたほうが望ましいでしょう。

利用されなくなるおそれがある

顧客管理ツールそのものの使い勝手が良くないと、実際にツールを利用するスタッフが効果やメリットを実感しにくくなる可能性があります。使い方がよくわからないツールや複雑な操作が必要なツールは敬遠される傾向があるため、せっかく導入しても利用されなくなっていくおそれがあるのです。導入する際には、直感的な操作が可能かどうかなど、使い勝手の精査が重要となります。

即効性はあまり期待できない

顧客管理は、一定期間継続することで徐々に効果が表れてくる施策です。顧客管理ツールを導入した直後から劇的な業務改善の効果が表れたり、短期的に売上伸長へとつながったりする施策ではありません。ですから、中長期的な取り組みとなることをあらかじめ周知し、ツールを活用し続けていくことを社内で共通認識として持っておくことが大切です。

 

顧客管理にアプリが適している理由

先述した、顧客管理で取り扱うべき情報は、いざ管理しようともそもそもデータを得ることができないと始まりません。顧客にとっても負担や苦にならず、かつ多くの顧客情報を得られるコミュニケーション媒体が必要不可欠です。そこで注目を集めているのが、スマートフォンアプリ。ここでは、スマートフォンアプリはCRMにどのような影響を与えるのか見ていきましょう。

これまでのCRMの問題点

テクノロジーの発展やツールの進化に伴って企業側で取り組むことができる施策は格段に増えています。一方で、本来は顧客体験の向上を目指していたはずのCRMが、かえって顧客が迷惑に感じる原因となっているケースも見られます。頻繁に送られてくるメールマガジンや一方的なセールス電話はその典型でしょう。CRMを語るときによく使われる「囲い込み」という言葉は、まさに企業都合であり、顧客視点がないがしろにされている実態を象徴しています。

こういった問題の原因には、不十分なデータをもとに施策を実施していることが挙げられます。顧客管理の目的は、新規顧客をロイヤル顧客に引き上げて良好な関係を維持することです。しかし、すでに何度も商品・サービスを購入しているロイヤル顧客と比べて、新規顧客には1回分の購買データしかありません。たった一度の購買行動をもとに購入した品目や購買時期、購買チャネルを分析しても、深いインサイトが見つからないのは当然でしょう。その結果、「購買者にはクーポンを発行してまた買ってもらおう」と安易に考え、単にクーポンを乱発する施策に陥ってしまいがちです。

CRMで成果を出すためには購買後データが重要

そもそも「購買行動」は顧客にとってスタート地点に過ぎません。購入後に商品・サービスを使用し、「用事を解決」して満足することが顧客にとってのゴールなのです。CRMの本質は「顧客視点でエンゲージメントを高め、長期的関係の中で顧客満足と企業利益を両立させること」ですから、企業は購入後に顧客が満足しているか、という部分にまで寄り添うべきでしょう。そのためにも、「購買後」のデータを取得することが重要となります。

そこで役立つのがスマートフォンアプリを起点としたデータ取得です。スマートフォンは、どの年代層の顧客も日常的に使うものだからこそ、新規購入後のアクションデータが取りやすいメリットがあります。また、スマートフォンアプリを通じて顧客が行ったアクション、例えば顧客が反応した施策、閲覧したコンテンツ、アンケート回答などに加え、位置情報や写真などアプリの特性を活かしたデータも獲得可能です。こうした行動データを取得することで、成果につながるCRMが実現できるのです。

 

アプリ×CRMの成功事例

アプリ×CRMには先進的な事例もあります。ここでは、「NIKEアプリ」の事例についてご紹介します。「NIKEアプリ」が日本でスタートしたのは2018年12月のことです。ナイキは、このスマートフォンアプリを新たなCRM戦略のプラットフォームとして位置づけていました。具体的には、ユーザー属性や購入データだけでなく、Webサイト閲覧なども含めた顧客の行動データも統合。NIKEアプリをプラットフォームとして、徹底的なパーソナライズを目指しています。

特にトレーニングアプリ経由で集めたユーザーのトレーニングデータは、ナイキならではの情報といえるでしょう。ユーザーのトレーニング状況に応じて最適な商品や購入時期を予測し、NIKEアプリで通知するということも今後は実現するかもしれません。

ECアプリとしての機能が強いNIKEアプリですが、コンテンツにも力を入れています。トレーニングやスポーツに関する情報だけではなく、アスリートに関する情報もアプリで配信し、ユーザーの再来訪につなげているようです。この事例は、アプリの豊富な機能を活用することで、顧客との接点強化を実現している好例といえます。

 

まとめ:アプリを起点としたCRMには「Yappli CRM」も役立ちます

顧客管理は、必要とされている背景や注視すべき情報、メリット・デメリットを理解した上で取り組むことが重要です。中長期的な取り組みとなるからこそ、本記事で紹介したような情報はしっかり押さえておきたいところです。また、世の中の情報量が増加し、加速化し続けている現代においては、アプリを起点としたCRMが、顧客管理の強力なツールとなることもぜひ覚えておいてください。

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