「デジタル接客」で販売員の可能性はこんなに拡がる

 

本記事は、株式会社バニッシュ・スタンダード代表取締役の小野里 寧晃さんにご寄稿いただきました(2020年8月5日)。同社が手がける次世代オムニチャネルツール「STAFF START(スタッフスタート)」は、いまアパレル業界やECの世界でもっとも注目されている「デジタル接客」を支援するアプリケーションです。最新のテクノロジーによって、販売員とお客様の関係はどう変化するのでしょうか?

いま注目されている「デジタル接客」とは?

まず、ファッションビルにある衣料品店を思い浮かべてください。
そこには商品があり、レジがあり、販売員が立っていますよね。

「このトップスだったら、このパンツと合わせて着るとトレンドの着こなしになりますよ」
「このスカートはジャケットを合わせればオフィスでも着れちゃいます」
「今、あそこのスタッフが同じものを着ているのですが……」

と、販売員が商品の紹介やコーディネートの提案をしてくれるのではないでしょうか。

では、次にECサイトを思い浮かべてください。
そこには商品があり、レジ(カート)がありますが、販売員はいません。
商品ページを見てみます。商品を物撮りした写真があり、スタイル抜群のモデルがその商品を着用した写真が並んでいます。

「この服は何と合わせればいいのだろう……」
「私はモデルさんのような体型ではないんだけど、着こなせるのだろうか……」

購入の意思決定をするには、お客様に寄り添った情報が少ないはずです。

そこで有効になるのが、「デジタル接客」です。
デジタル接客とは、ECサイトや、InstagramなどのSNS上で販売員が商品を紹介したり、お客様からの問い合わせに直接応えたりといった、新しい接客スタイルのことです。これまでオフラインで行われてきた「接客」がオンラインの場へ移行することから、「オンライン接客」と呼ばれることもあります。

アパレルを例にとると、今もっとも広く行われているコーディネート投稿では、販売員が自ら考えたコーディネートを実際に着てみた写真に、自分の言葉で商品の特徴やコーディネートのポイントについてコメントをつけて投稿することで、お客様に商品の魅力を伝えています。

デジタル接客は、ECサイトの急速な成長を受け、今後さらに需要が高まると期待されています。

テクノロジーが販売員のポテンシャルを拡張する

デジタル接客は、販売員の活躍の幅を大きく拡げます。

これまではシフトに従い店舗に出勤し、来店したお客様に対し1対1での接客を行っていました。しかし、デジタル接客では時間・空間に縛られることはありません。ECサイトであれば、24時間営業で全国のお客様と接することができます。従来の1対1のコミュニケーションに加え、デジタル上での1対nのコミュニケーションが可能になります。

さらに、デジタル接客はさまざまな販売員に活躍のチャンスを与えています。

例えば地方の店舗に所属する販売員。
商圏が限られ来店客数が頭打ちとなり、なかなか売上を作れずにいた販売員でも、デジタル接客で全国のお客様に対し接客を行うことで、都心の店舗の販売員に負けないくらい実績を残しています。

そして、子育て中のママ販売員。
時短勤務などで店頭に立つ時間が限られていましたが、デジタル接客では時間は関係ありません。むしろ、同じ子育てママたちの共感を集め大きな売上を作っています。

さらには、年齢層の高い販売員。
活躍するのは若い世代の販売員だけではありません。お客様の年代だって幅広いのです。40代、50代の販売員も同世代のお客様に等身大のお手本として支持されています。

ECサイトやSNSといったデジタル上で人気を獲得した販売員にはファンができ、そのファンたちが販売員と会いに店舗へ訪れるといった事例が数多く発生しています。

サブスクリプションビジネスでは、顧客とのコミュニケーションを「ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ」に分類しますが、1対nのテックタッチ的なコミュニケーションには「便利」「効率的」、1対1のハイタッチ的なコミュニケーションには「信頼」「感動」といった特徴があると言われています。つまり、店舗とECサイトやSNSなどのオンラインではそれぞれ得意な接客スタイルが異なり、デジタル接客によって、その両方の特徴を活かしたアプローチが可能になるのです。

このように、デジタル接客を導入することで、販売員のポテンシャルをテクノロジーの力で拡張することができるのです。

OMO時代に必要な「評価のオムニチャネル化」

これまで、オムニチャネル化を進めるために様々な施策を試してみたもののうまくいかなかった、という読者の方も少なくないのではないでしょうか。
その大きな原因の一つは、販売員の評価制度にあると考えられます。

店舗で売れたものは店舗の売上、ECサイトで売れたものはECサイトの売上と評価が分断されていると、自然に店舗とECサイトの間でお客様や商品の取り合いになってしまいます。たとえお客様が求めていたとしても、店舗の販売員はECサイトでの販売を積極的に促す気になれなかったのです。

そこで、お客様の購買体験だけでなく、「販売員の評価」もオムニチャネル化するという考え方が重要になります。店舗で売れようとECサイトで売れようと、自分で接客した、つまり売上に貢献した販売員を評価するという考え方です。

私たちが手がける「STAFF START」では、どの販売員のどの投稿からいくら売れたのか、ということが可視化され、販売員個人と企業に対してオープンに開示されます。

企業はECサイト上での貢献度の高い販売員を可視化することができ、彼/彼女の評価に繋げることができます。実際に、STAFF STARTを導入されている企業の中には、販売員に対しECサイト上での売上に応じた報酬を渡すインセンティブ制度を設ける動きも現れています。

これにより、販売員のモチベーションが高まり積極的にデジタル接客に取り組んでもらうことができるようになりました。

オフラインとオンラインが融合したOMOの時代には、店舗とECサイトの垣根をなくし、評価制度の仕組みを変えることで、販売員のモチベーションをあげ、お客様の体験価値もまたあげていくことが求められています。

さまざまな業界に可能性が拡がるデジタル接客

ここまで、アパレル業界での事例をもとに解説してきましたが、今後デジタル接客はあらゆる業界で活用されていく可能性を秘めています。STAFF STARTは2020年上半期にコスメ業界とウエディング業界への導入を達成しました。

コスメ業界では、コーセー様を皮切りに美容部員によるデジタル接客が開始されました。化粧品に対して深い知識を持つ美容部員が、メイクアップやスキンケアの紹介をECサイト上で行っています。

そして、STAFF STARTにとってはサービス業で初めて、結婚式場を展開するアニヴェルセル様にもサービス提供を開始しました。ウエディングプランナーは「自分が手掛けた式の演出」、シェフやパティシエは「自慢の料理」や「趣向を凝らしたウエディングケーキ」の写真を投稿し、各自の言葉で解説を加えます。実際に結婚式・披露宴をつくり上げてきた現場のスタッフだからこそわかる想いやアイデアを伝えています。

そのほかにも、書店や食品、家電などの小売業全般、さらには美容院やネイルサロン、旅行などの領域でも活用できると考えられます。現場のスタッフが活躍するあらゆる業界で、デジタル接客を取り入れることができるのです。

2020年の新型コロナウイルス感染拡大がデジタル化をより加速させ、どの業界もアナログな手法だけに頼る時代には後戻りできなくなりました。デジタルテクノロジーの力を活用し、企業の制度や文化を見直すことで、現場で働くスタッフのもつ人の力を最大限に拡張するとともに、お客様の体験価値をより一層引き上げていくことが求められています。

新しい時代を迎えるにあたり、「デジタル接客」という考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール

小野里 寧晃(おのざと やすき)
株式会社バニッシュ・スタンダード 代表取締役
大手Web制作会社にてEC事業部長を担当し、2011年に株式会社バニッシュ・スタンダード設立。EC制作事業に携わる中で「リアル店舗のためのEC」を目指し、販売員のオムニチャネル化を進める”スタッフテック”アプリケーションサービス「STAFF START(スタッフスタート)」を立ち上げる。

▼STAFF START
https://www.staff-start.com/

関連記事

今さら聞けない「オムニチャネル」とは?顧客のメリットを起点に体験をデザインする。

カスタマーエクスペリエンスとは? これからのサービスは「お客様中心」で設計する

店舗がデジタル化を急ぐ、過去5年でアプリ導入数19倍 / 平均DL数はEC・オムニアプリが昨年比1.3倍

関連記事

https://news.yappli.co.jp/n/ne1b7febfe070

https://news.yappli.co.jp/n/nd5ca97b44b28