O2Oマーケティングとは?概要から来店促進の成功事例まで詳しく解説

インターネット・マーケティングに関わっている方なら、「O2O」という言葉を一度は目にしたことがあるでしょう。O2OとはOnline to Offlineの略で、Webサイトやアプリなどのオンラインから、店舗などのオフラインに消費者を誘導する来店促進施策のことです。なお、オフラインからオンラインへと誘導するための施策もO2Oマーケティングに含まれます。O2Oマーケティングが注目されている要因のひとつとしては、スマートフォンの普及によって消費者がオンラインにいる時間が格段に長くなったことが挙げられます。また、アプリやソーシャルメディア、QRコードなど、O2Oに活用できる技術が一般化したことも、O2Oマーケティング普及の後押しとなりました。

今回は、O2Oマーケティングとオムニチャネルとの違いのほか、O2Oマーケティングにおいて重要な5つのチャネルについて解説します。併せて、O2Oマーケティングのメリットや、オフラインとオンライン双方を活用して来店促進に成功した事例も詳しくご紹介します。

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O2Oマーケティングとオムニチャネルの違いとは?

O2Oマーケティングとよく似た施策として「オムニチャネル」が挙げられます。オムニチャネルとは、店舗やECサイト、SNSなど、オンライン/オフライン問わず、自社が持っているあらゆるメディアを活用・連携して顧客と接点を作り、購入の経路を意識させずに販売促進につなげる戦略のことです。リアル店舗やWebサイトなど、あらゆる接点を連携させるという意味で、O2Oマーケティングはオムニチャネル・マーケティングの一形態と捉えることができます。まずは、O2Oマーケティングとオムニチャネルは具体的にどのような点が異なるのか、両者の違いを見ていきましょう。

O2Oマーケティングとオムニチャネルの大きな違いは目的

O2Oマーケティングとオムニチャネルの最も大きな違いは、両者の「目的」にあります。O2Oマーケティングは、新規顧客を獲得し、オフラインまたはオンラインのショップへと招き入れることが主な目的です。主なターゲットは見込み顧客となるため、広範囲にわたってアプローチをかける必要があります。見込み顧客を顧客化するための「誘導」が、O2Oマーケティングの狙いと考えてください。一方、オムニチャネルの主な目的は、既存顧客のエンゲージメントを向上させ、ファン化させていくことです。例えば、実店舗に訪れるリピーターに対してオンライン・ショップの活用を促すケースなどは、典型的なオムニチャネルの施策といえます。既存顧客をファン化するための囲い込みが、オムニチャネルの狙いなのです。

■O2Oマーケティングとオムニチャネルの違い

施策 目的
O2Oマーケティング 見込み顧客を顧客化するための「誘導」
オムニチャネル 既存顧客をファン化するための「囲い込み」

 両者は目的が異なるため、得られる効果にも違いがあります。O2Oマーケティングでは見込み顧客がオンラインで見かけた商品を実店舗で手に取ってもらう、または来店者限定のクーポンを使用してもらうための施策などが考えられます。それらの施策は、見込み顧客が購入に踏み切るきっかけとなりやすく、即効性が期待できるのが大きな特徴です。

 一方、オムニチャネルでは、より利便性の高い購入体験を既存顧客に提供することで、「次も購入するならこのショップにしよう」と決めてもらうことを重要視します。O2Oマーケティングのように、新たな購入方法を提案するというよりは、オンラインとオフラインを区別することなく、シームレスに購入できる環境を作ることが重要なポイント。顧客を囲い込むことで長期にわたる売上伸長が期待できる施策といえます。

 

オムニチャネル導入のハードルはO2Oマーケティングに比べて高い?

O2Oマーケティングもオムニチャネルも、「オンラインとオフラインを連携させる」という点では共通する施策です。しかし、一般的にオムニチャネル導入のハードルは、O2Oマーケティングと比べて高いといわれています。なぜなら、オムニチャネルの主なターゲットは、既存顧客に絞られているからです。既存顧客は、店舗の商品やサービスに対する満足度が一定の水準に達しているため、オムニチャネルを成功させるには顧客満足度を一層高めていく必要があります。販売チャネルを拡充したことでかえって購入体験の質が劣化したり、顧客が従来とは異なる購入方法が不便だと感じたりすれば、顧客が離れていく原因にもなりかねません。一方、O2Oマーケティングのターゲットは新規顧客が主であることから、シンプルに「購入が便利になる」ことをアピールできます。実店舗が自宅から遠い顧客や来店する時間が確保しにくい顧客にとって、オンラインでも購入できることはメリットになりうるでしょう。

このように、目的とターゲットが異なることが、オムニチャネル導入のハードルを引き上げる原因になっているといえます。オンラインとオフラインの融合を検討する際は、まずO2Oマーケティングから着手し、将来的にオムニチャネル化を目指してみてはいかがでしょうか。

 

O2Oマーケティングにおいて重要なチャネル

O2Oマーケティングでは、オフラインに誘導するためにさまざまなオンラインチャネルを活用しますが、ここでは特に重要なチャネルを紹介します。下記に紹介する複数のチャネルを組み合わせることで、O2Oマーケティングを強化していきましょう。

ECサイト

時間や場所を選ばず購入できるECサイトは、O2Oマーケティングにおいて重要なチャネルのひとつです。実店舗とECサイトを別々に運営するのではなく、一体化したサービスとして提供すると顧客体験の質の向上につながります。実店舗で取得した顧客データとECサイト上の顧客データを統合し、一元管理していくことが重要なポイントといえるでしょう。

SNS

インタラクティブなやりとりが可能なチャネルとして、SNSの活用は非常に重要です。セール情報などをタイムラインで告知できるだけでなく、顧客からの問い合わせに回答することもできます。SNS上で実際にやりとりをした店舗は記憶に残りやすいため、顧客が実店舗に足を運ぶ強力な動機となるはずです。

アプリ

店舗オリジナル・アプリの導入も、O2Oマーケティングの代表的なチャネルとなります。セール情報やクーポンをプッシュ通知することにより、タイムリーに情報を届けることができるからです。公式サイトを検索してアクセスする必要がなく、顧客の利便性が向上するため、O2Oマーケティングを強力に後押しする施策となるでしょう。

QRコード

店舗のSNSアカウントや会員登録ページのQRコードを店舗に設置することは、顧客とのつながりを強化する施策になります。スマートフォンさえあれば利用できるため、顧客にとっても負担が少なく済みます。店舗としても手軽に取り組め、小規模な店舗でも導入しやすいといえるでしょう。

位置情報

チャネルという括りとは異なりますが、スマートフォンの位置情報を活用する手法も有効です。顧客の生活圏に近い店舗の情報を配信することで、より効果的に来店を促すことが可能。地域を絞ってセール情報などを配信すれば、情報を必要とする顧客にリーチする確率が高まるはずです。オンラインとオフラインをつなげる手法として、取り入れておきたい施策といえるでしょう。

 

O2Oマーケティングのメリットとは?

続いては、O2Oマーケティングのメリットを具体的に見ていきましょう。O2Oマーケティングに取り組む大きなメリットは新規顧客の獲得を促進できることですが、それ以外に挙げられる様々なメリットについても解説します。 

顧客のニーズに応じて展開しやすい

オンラインとオフラインの両輪で顧客接点を持てば、より詳細な顧客情報を収集することができます。例えば、実店舗のみで事業を展開していた場合は顧客の購買履歴や購買頻度など、得られる情報は限定されがちです。しかし、オンラインを組み合わせれば、アクセスログやSNSの閲覧履歴など、参照・活用できる情報が格段に増えます。顧客のニーズをより詳細に把握し、顧客層に応じた施策を展開しやすくなるのです。

即効性が期待できる

即効性が期待できることも、O2Oマーケティングのメリットのひとつといえます。オンラインとオフラインを組み合わせることにより、見込み顧客に情報が浸透するスピードを速めることができるからです。期間限定のクーポンを配信するなど見込み顧客が行動する動機を作りやすく、施策の効果を早期に実感できます。施策によって成果までの時間が短縮できれば、人件費も抑えられます。費用対効果の観点においても、O2Oマーケティングは優れた施策といえるでしょう。

効果測定が簡単で改善点が見えやすい

施策の効果測定が容易になり、改善点が見えやすくなることもO2Oマーケティングのメリットです。例えば、SNSやアプリで配布したクーポンの反応率も数値として可視化されるため、PDCAサイクルを高速化しやすくなります。効果測定を繰り返しながら改善を図っていくことで、より効果的な施策へとつなげられるのです。

 

O2Oの代表的な手法5選

では、O2Oは具体的にどういった形で施策展開をすれば良いのでしょうか。顧客がオンラインの情報をもとに実店舗に足を運ぶ場合、何らかのインセンティブが得られるから、という理由が一般的ですが、企業が顧客に提供できる価値はクーポンなどの割引サービスだけにとどまりません。代表的な方法を5つご紹介します。

クーポン型

最もポピュラーなO2O施策がクーポンの提供です。クーポンは即効性があるため、新規店舗への集客などに効果的です。オンラインでのクーポン提供はきめ細かく発行し分けるのに向いているため、クーポンの利用条件を工夫することでアップセルやクロスセルといった顧客単価の向上につなげることもできますし、特に力を入れたい顧客セグメントに向けて、より価値の高いクーポンを発行して、顧客のロイヤリティ向上を図ることもできます。

O2Oといえばクーポン、と連想される方も多いかもしれません。もちろんクーポン以外にもO2Oの手法はありますが、確かにクーポン提供は多くの業種で活用が可能で、効果を実感しやすく、マーケティング上で非常に有効な手法だといえます。

アプリゲーム型

顧客に提供するインセンティブを、割引などの金銭的なものでなく、ゲーム的な楽しみとすることも考えられます。

アプリやサイトの構成を工夫して、地域内の店舗ごとにスタンプを集める、あるいはチェックインするスタンプラリー的な活用や、Webサイト上のゲームクリアの結果を店舗に持参することでノベルティが貰えるといった施策で店舗集客を図ることができます。

オンラインショップ連動型

O2Oの考え方はもともと顧客の「店舗で商品を確認してECサイトで購入する」というショールーミング行動への対策として始まりました。しかし近年はショールーミングの逆、Webサイトで商品を探したうえで、在庫のある実店舗での購入する「ウェブルーミング」という行動が見られることがあります。

Web上でじっくりと商品の詳細を検討して候補を絞り込んだうえで、最終的に店頭で商品を決めたい、すぐに商品を手にしたいので、配送に時間のかかるECでなく店頭購入を選択するといった理由でウェブルーミングは行われます。

そこで、顧客のウェブルーミングを支援するためにECサイト側の構成を工夫することが有効な施策となります。顧客が関心を持った商品の店舗在庫がすぐ分かるようにする、さらに店舗取り置きができるようにするといった機能を設けることで、機会損失を防ぐ効果があります。

位置情報活用型・ジオプッシュ

スマートフォンは企業と顧客を結ぶチャネルとして必須のものとなっています。その強みの一つに、スマートフォンのネイティブアプリで位置情報が利用できるということがあります。

アプリユーザーの許可が必要ではありますが、位置情報をもとにプッシュ通知を活用することで、店舗の近くのエリアにいる顧客に来店を促す通知を配信する、あるいは店舗利用後の顧客がエリアを離脱した際に来店御礼の通知を送るといったことが可能になります。アプリをオフライン送客や顧客ロイヤリティの向上ツールとして活用できます。

SNS型

SNSも顧客とのチャネルとして重要です。企業のSNSアカウントからキャンペーン情報を発信するといった単純な利用のほかに、顧客によるフォロー・リツイート・ハッシュタグ付きの投稿に対してクーポンを提供するといった施策もよく行われます。

 

O2Oマーケティングの具体例

次にオンラインとオフラインの垣根を超えて来客を促す施策について、具体的に3つの事例をご紹介します。

O2Oマーケティングで顧客の利便性を高め、来客を促す

オフラインでの行動を促すインセンティブとしてポピュラーなのは、先述した割引などの施策かもしれません。しかし、インセンティブは必ずしも割引などの金銭的価値でなくても構いません。例えば、顧客にとっての利便性の向上も、インセンティブのひとつになりえます。従来、レストランを予約するには、顧客が営業時間中に電話をする必要がありましたが、「OpenTable」などの予約サービスを使えば、24時間いつでも予約が可能になりました。配車サービスの「Uber」も、スマートフォンを使って顧客の待ち時間を解消したという意味で、O2Oマーケティングの一例とされています。

OpenTable

消費者をオフラインに導く、オムニチャネル時代ならではの百貨店の施策

O2Oマーケティングの施策は、前述のような新たなプラットフォームの活用にとどまりません。各企業が工夫を凝らした施策を行っています。例えば、アメリカの百貨店「Nordstrom」では顧客が店舗で試着したい服をアプリから予約できるサービスを提供しています。顧客はオンラインで下見をしてから店舗に足を運び、予約した商品をそろえた専用のフィッティング・ルームに向かうだけで、気になる商品を確実に、かつ効率良く試すことができるのです。Nordstromではほかにも、在庫を持たず試着や服の修理のサービスだけを提供する店舗を実験的に立ち上げるなど、オムニチャネル時代の新たな百貨店の姿を切り拓こうとしています。


Nordstrom

モバイル・オーダー導入でオフラインの売上が向上

「スターバックス」では、スマートフォンアプリから商品の注文ができ、店舗での待ち時間なく商品を受け取れる仕組みを導入しています。注文だけでなく決済までアプリで完結できるため、店舗では商品を確認して受け取るだけです。通勤中に電車が会社の最寄り駅に近づく頃に注文し、最寄り駅近くのスターバックスで素早くコーヒーを受け取って会社に向かうといったことを可能にしています。コーヒーは飲みたいものの、時間はかけたくないという顧客のニーズをすくい取ったことにより、アメリカではモバイル・オーダーによる注文が売上の10%に達したそうです(※1)。こうした仕組みは、「マクドナルド」や「タコベル」など、ほかの外食チェーンでも導入されています(※2)。

 

オフラインからオンラインへ…オムニチャネルは双方向に展開

これまで、オンラインからオフラインへ誘導する施策を紹介してきましたが、オフラインからオンラインに誘導する施策が有効な場合もあります。それらの施策も具体的に見ていきましょう。

オフラインとオンラインを横断させた、ファッション・ブランドの新たな施策

イギリス発のファッション・ブランド「TOPSHOP」は、2014年の中国進出時にリアル店舗を持たず、中国のファッションeコマースサイト「Shangpin.com(尚品)」にカテゴリを立ち上げました。TOPSHOPとShangpin.comは、ローンチ時、北京のショッピングモール「The Place(世界天階)」に期間限定で開設されるポップアップ・ストアをオープンし、そこから顧客をオンライン・サイトへと誘導したのです。こうして、少ない投資で効率良くスタートを切ったTOPSHOPは、その後、リアル店舗の設置を実現しています(※3)。

オフラインでQRコードを活用し、オンラインの売上を増加させたスーパーマーケット

イギリス発のスーパーマーケット「TESCO」は、韓国でのシェアを向上させるべく、非常にユニークな試みを行いました。地下鉄のホームに巨大なディスプレイを設置し、商品の棚を再現。商品ごとにQRコードをつけて、スマートフォンをかざせばオンラインで買い物ができるようにしたのです。顧客は電車の待ち時間に買い物ができるようになり、登録ユーザーは76%増加、オンライン売上は130%増加しました(※4)。

 

まとめ:O2Oマーケティングを実施するなら店舗アプリの導入を

O2Oマーケティングは、主に見込み顧客を顧客化するための誘導を目的とした施策です。顧客に多様な購入チャネルを提供し、購入体験の質を向上させることで新規顧客を獲得できる確率を高めることができます。今後、どれほどネットが普及したとしてもすべての購買行動がネットに移行するとは考えにくいでしょう。特に、宿泊業や飲食サービス業などでは、購買は基本的にオフラインで行われているのが実情。これらの実態を踏まえると、オンラインとオフラインの架け橋となるO2Oマーケティングは、今後も重要性を増していくと考えられるでしょう。

>>O2Oマーケティングにおける店舗アプリの活用方法を知りたい方には、下記の記事がおすすめです。

店舗アプリとは?集客のための機能、導入のメリット・デメリット、事例を紹介

参照:
※1:https://investor.starbucks.com/press-releases/financial-releases/press-release-details/2017/Starbucks-Reports-Q4-and-Full-Year-Fiscal-2017-Results/default.aspx
※2:https://techcrunch.com/2017/03/15/mcdonalds-begins-testing-mobile-order-pay-ahead-of-nationwide-launch/
※3:https://www.ft.com/content/e35a5850-c395-11e6-9bca-2b93a6856354
※4:http://www.wired.co.uk/article/tesco-home-plus-billboard-store

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