重視するのは技術とユーザー体験。ベイクルーズが自社ECで結果を残し続ける理由

November 28, 2017
約 1 分

不利なことは承知の上、オムニチャネル化のために踏み切ったブランド名変更

– 村田さんの自己紹介をお願いします。

大学卒業後、総合アパレルに入社し、2000年からネットプライスドットコム(現BEENOS)というベンチャー企業に転職しました。ベイクルーズグループに入社したのは2007年なので、今年でちょうど10年になります。現在担当しているのはEC事業と事業支援で、情報システムや物流なども担当しています。

– 御社は去年、ブランド名を「BAYCREW’S STORE|ベイクルーズストア」に一新されました。その際ドメイン名も変えられましたが、SEO的な影響はなかったのでしょうか。

正直にいえば、多少はありました。しかし当社では現在、オムニチャネルを推進するための会員統合などをしている最中で、このタイミングで企業名と衣食住に渡る各ブランドの結びつきを知っていただくためにも避けて通れない道だという認識はありました。リニューアル前、自社ECの成長率は毎年70%、70%、50%と伸びていましたが、リニューアル後も50%弱伸びましたので、売り上げやトラフィックが極端に落ちたことはなかったと認識しています。

アパレルは垂直統合モデル。ベイクルーズが自社ECにこだわる理由

– ECの世界では強力なモールが国内外に存在します。自社ECに苦戦している企業も多い中、御社は常に売り上げを伸ばし続けています。

一番大きいのは、会社としてそういった方針を立て、具体的に目標化し、その達成にはどうすべきかという戦略とアクションプランを組み立てているからだと思います。われわれは製造小売であり、いわば垂直統合モデルです。製造から小売まで一貫してビジネスを回していくことで成長しているため、オンラインにおいてもそうであるべきだという持論が、自社ECを強化している理由です。

業績を伸ばして来られたのは、最近ではオムニチャネルの施策が挙げられます。会員統合、サービス統合をして利便性を向上し、在庫統合によって機会ロスをなくしたのが大きいと思います。

もし今から製造小売型のアパレルビジネスを始める企業があったとしたら、スタート段階では大手モールで出店するにしても、製造小売業としてきちんと顧客までモノを届けられる体制を整えるべきだと思いますね。

– 在庫統合に踏み切ったのはどういった理由からでしょうか。

8年ほど前から、半年ごとにお客さまにアンケートを取っているのですが、「在庫がない」は毎回トップで上がるお声です。特に「モールにあるのになぜ自社ECにないのか」という不満はよく聞かれました。とはいえ、ただ在庫を増やせば解決するわけでもありません。今ある在庫を、無駄なく欲しい人に届く仕組みを作るべきだと考えたのです。

– 具体的には、どのように実現されたのでしょう。

5年前から開始し、現在も段階的に行っている最中なのですが、まずECモールに散らばっている在庫を統合したのが最初でした。当時、それら在庫は全体のシェアからすれば大きなものではなかったため、まずそこで実験をしようと考えたのです。

その結果、当初の予想通り売上を作ることができました。その事実を持って、店舗も含めた全ての在庫を一つのデータベースに統合し、どこからでも引き当てられる状態を作るべきだと提案し、実現していきました。今では、ほぼリアルタイムで在庫データが更新されている状況を実現しています。

– これまでのお話を伺っていると、各種システムも内製されるなどIT技術にとても力を入れているのを感じます。

顧客接点がデジタル化し、インターネット上でビジネスを強化しようと思った時、何を優先すべきかといえばやはり組織です。自分たちの戦場を見極め、そこできちんと戦える組織能力がなければ、まず勝つことはできません。

私自身がネットベンチャーにいたという経験が大きいのかもしれませんが、ネットでビジネスをやっていく上で必要な組織能力として、システム開発は外せないものがあると考えます。何かしらのサービスを思いついた際にそれを具現化できる能力、人材の確保は非常に重要です。

広い意味でのUIやUXを含めたお客さまの体験を改善していく、データドリブンでマーケティングを回していくための仕組みはやはり自社で持っている必要があると考えているため、そこは一番力を入れています。

アプリは現代の一等地。ロイヤルユーザーには価値の高い体験を

– 現在、新しいアプリを開発中だと伺いました。御社のビジネスにおけるアプリの役割を教えていただけますか。

スマートフォン上は、現代において最も価値のある一等地といえるのではないでしょうか。毎日肌身離さずそばにあるスマートフォン上に、アプリのアイコンがある。この価値はとても大きなもので、銀座や表参道に旗艦店を出店しても、それには敵いませんよね。

特に、いわゆるロイヤルユーザーと呼ばれる利用頻度が高いお客さまに関しては、ユーザー体験的に上回るアプリが適していると思います。現在、モバイルでの情報収集は7割がアプリだといわれていますが、使う側もそれに慣れているため、Webになった瞬間に動きがもっさりすると感じるのではないでしょうか。

– ちなみに現在開発中のアプリは、どういったところにこだわられているのでしょうか。

基本的には、UI・UXを含めた自社ECの内容をアプリに移植しています。タイムライン型に情報を提供したり、スワイプでブランドを切り替えられたりといった、ビジュアルメインの設計をしています。あまり詰め込みすぎず、すっきりと見せていければと考えています。

開発には先ほど申し上げた社内のリソースを充てているのですが、作業量が膨大になりがちなAPIの開発などは外注も活用しています。社内リソースはどうしても人数が限られるため、そういった意味ではスケジュールが想定より遅れてしまう部分もありますね。

その点では、Yappliのようなサービスは使い勝手がいいと思います。われわれも、本体となるEC系のアプリはある程度自分たちで開発したいと考えていますが、例えばそうではないもの、気軽に素早く作ってリリースする方が合っているアプリなどがあれば、御社のようなサービスを利用することも選択肢として十分ありえると考えています。

オフラインのデータも活用し、リアルタイムな接客が実現する世界を作りたい

– 企業が顧客にメッセージを届ける方法も多様化していますが、適切なチャネルとタイミングを逸すれば嫌われてしまう諸刃の剣でもあります。CRM戦略にも関わりますが、御社はどのようにお考えでしょうか。

「リアルタイムパーソナライゼーション」をしっかりやっていこうというのが、一番の考え方です。特に弊社の場合、ファッション以外にもフードやカフェといった飲食業も展開しているため、オンライン上のログだけではなく、リアル店舗での行動も重要になってきます。

普通に考えて、アパレルのお店と比べてもカフェの方が明らかに来店頻度は高いですよね。そういったお客さまの生活や文脈を理解していけば、多様なコミュニケーションが実現すると思います。その際、チャネルの振り分けはとても重要になるでしょう。例えば、送信したメールが未開封であればLINEに振り分けるとか、あるいはそれを定期的に入れ替えてみるなど、ある程度自動化していく予定です。

データ活用が進んでいけば、時間や場所、直近の行動といったその瞬間のお客さまの置かれた状況を鑑み、その人に合ったチャネルで情報を届けることが可能になると思います。そのあたりは、良い意味でインターネット専業ではない、実店舗のオフライン情報も持っているわれわれの強みが発揮できると考えています。

プロフィール:
BAYCREW’S GROUP(ベイクルーズグループ)
取締役
村田昭彦
総合アパレル企業、ネットベンチャー企業などを経て2007年に株式会社ベイクルーズに入社。取締役として、グループ全体のEC事業、情報システム、CRM、オムニチャネル推進など、IT領域全般を統括している。
ベイクルーズ公式サイト:http://www.baycrews.co.jp/

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