O2O戦略で注目、アプリで来店促進できるiBeacon(アイビーコン)のメリット

O2Oマーケティング戦略に欠かせない施策と言えば、店舗への来店促進。そこで今注目されているのが、スマートフォンアプリにiBeacon機能を組み込む取り組みだ。

iBeacon機能を使うと、ユーザーが店舗に近づいたときにアプリが自動検知。このタイミングにあわせてプッシュ通知を送ることができる。それにより、新たなユーザーを店舗に呼び込んだり、既存顧客の再来店を促したりという効果が期待できる。

とはいえ「iBeaconの仕組みがよくわからない」「アプリの開発が難しそう」というイメージを持つ方も多いかもしれない。そこでiBeaconの基本的な仕組みやメリット、iBeacon機能を搭載したアプリの開発方法を紹介しよう。

iBeacon機能を搭載したアプリのメリットとは?

iBeaconを使ったマーケティングとして、広く使われているのが来店者限定クーポン。ユーザーが店舗に近づくと自動的にクーポンをプッシュ通知で送るというものだ。来店者限定のため店舗へ足を運ぶきっかけになり、来店促進につながりやすい。

iBeaconはアプリが起動していない状態でもOKという点がポイントだ(もちろん、ユーザーがアプリを事前にインストールしておく必要はある)。ユーザーが能動的に操作する必要がなく、店舗に近づくだけで通知できるのは大きなメリットだろう。

またiBeacon機能は屋内で利用でき、位置情報が正確という点もメリットと言える。例えばイベント会場でエリアごとに異なるiBeaconを用意して、各エリアで異なるプッシュ通知を送ることもできる。

iBeaconの仕組みとは?

iBeaconでは、Bluetoothの一種である「Bluetooth Low Energy」(BLE)という無線通信技術を利用している。具体的には下記のようなかたちで機能する。

1.店舗や会場にBLEを発信するiBeacon端末を設置する

2.ユーザーにiBeacon機能搭載アプリを自分のスマートフォンへインストールしてもらう

3.ユーザーがスマートフォンを持って店舗に近づくと、アプリが反応

アプリ単体ではなく、店舗など会場に置く端末とセットで機能するという点を知っておきたい。またiBeaconはBluetooth技術を使っているため、スマートフォン側でBluetooth機能がONになっている必要がある。ここはあらかじめユーザーにアナウンスしておかなければならない点だ。

iBeaconとGPSの違いとは

スマートフォンの位置情報と言えば、GPSを思い浮かべる方も多いだろう。基本的にGPSは衛星を使って位置を特定するため、カバーできる範囲が広く屋外での利用がメインとなる。またGPSでは、おおまかな位置情報を把握するときに使われる。

一方iBeaconは無線を使っているため、カバーできる範囲は狭いが屋内でも使えるという違いがある。iBeaconでは端末とスマートフォンが数センチまで近づいたらアプリを起動するといった使い方もできる。

最近ではこうした違いを踏まえて、GPSを使ったプッシュ通知(ジオプッシュ)と、iBeaconを使ったプッシュ通知を組み合わせて使うケースも出てきている。

iBeaconの普及率と今後の可能性

気になるのが、iBeaconの普及率。インドの調査会社Graphical Researchの調査によると、アジアパシフィック地域におけるiBeaconも含んだBeacon関連の市場は、2017年から2024年まで毎年2倍増を続け、90億USドルに達すると予測されている。

その背景にはアジアでも急速に普及したスマートフォンの存在がある。日本でもスマートフォンのおかげで、iBeaconをマーケティングに活用する環境はすでに整っている。しかし、有用なツールであるにもかかわらず、現状、マーケッター側のiBeaconの認識が低いことなどで、日本での普及もまだこれからの段階だ。

iBeaconのデメリット・課題

普及に弾みがつかないのは、BluetoothをONにしているスマホ利用者が少ないことも一因とされる。つまりスマホ利用者は、iBeaconにより有用な情報を得たり、メリットを感じる経験をしたりしないと、BluetoothをONにする習慣は根付かないとも言える。しかし、マーケッター側が積極的にiBeaconを活用し、スマホ利用者に働きかけることで、この問題は次第に解消されるだろう。今のうちにiBeaconによるマーケティングの経験をつむなど、先鞭をつけておくという手もある。

「BluetoothをONにしてもらう」は、実はそれほどハードルは高くないかもしれない。iBeaconを活用する会場や施設で、アプリのダウンロードを推進し、その特典を伝えられれば、Bluetoothのスイッチは自然に入るだろう。催しものなどでは事前に告知し、あらかじめアプリをダウンロードしてもらっておけば、効果はいっそう高まるはずだ。

iBeaconの活用事例

先ほど述べたようにiBeaconは来店クーポンの送付に利用されることが多いが、キャンペーンにiBeaconを活用した事例もある。例えばアパレルブランドSPINNSのケース。かつて実際の街中で「ウォーリーを探せキャンペーン」を実施したときに、iBeacon機能付きアプリを活用している。

このキャンペーンでは、街のどこかにいるウォーリーに扮した人物を探し当てると特典がもらえるというゲーム要素のある企画。あらかじめ参加ユーザーはiBeacon機能付きアプリをインストールしておく。その後ウォーリーに扮した人物に近づくと、アプリで通知が表示されるという仕組みだ。iBeaconならではの機能を活用した事例だ。

参考:【メディア掲載】 日経MJにSPINNS様とのiBeaconを活用した販促施策が掲載されました

こうした参加型キャンペーンに応用することで、顧客とのエンゲージメント強化につなげることもできる。他にもテーマパークのアトラクションやスタンプラリーなど、iBeacon機能付きアプリが採用されているケースもある。

iBeacon機能付きアプリを開発する方法

アプリ開発ツールを使っている場合、iBeaconによるプッシュ通知機能がすでに用意されていれば、ゼロから開発する必要がないため手軽に導入できる。

iBeaconはもともとApple社が2013年に開発した技術。そのため登場した頃はiPhone向けというイメージが強かった。現在ではAndroidでも利用できるケースは多いが、アプリ開発ツールがiOSとAndroidの両方に対応しているか確認しておくと安心だろう。

また、iBeacon機能利用データを取得できると、貴重なマーケティングデータとも言える。単にiBeacon機能をアプリに搭載するだけではなく、データの分析できるかどうかもチェックしておきたい。

参考:アプリ開発ツール「Yappli」iBeaconプッシュなどの機能一覧はこちら