ECなどを中心に「商品カタログを紙媒体からデジタルカタログ(電子カタログ)にしたい」というニーズは多い。デジタルカタログの作成・配布ツールは増えているが、スマートフォンやタブレットで見ることを想定するとアプリ化も検討したい。
従来のPDF形式などでデジタルカタログを作成すると、「専用の閲覧アプリが必要」「アップデートしても気づいてもらえない」といった課題にぶつかる。一方でスマートフォンのアプリなら、こうした点をクリアできるケースも多い。
またECなどBtoC企業だけではなく、実はBtoB企業でもデジタルカタログのアプリ化が進んでいる。業務効率化やコスト削減につなげている事例も。
今回はデジタルカタログをスマートフォンアプリ化するメリットとともにECやBtoBでのアプリのデジタルカタログ活用事例を紹介しよう。
目次
従来のデジタルカタログが抱える2つの問題点
まず一般的なデジタルカタログが持つ問題を、閲覧する側と制作する側に分けて解説しよう。
(1)スマートフォンやタブレットで見るときの問題点
ECサイトも若年層を中心にスマホ・タブレットでの利用が進む今、デジタルカタログもスマートフォンやタブレットで見るケースが多い。ここで課題となるのが、デジタルカタログを見るためにはたいていの場合、閲覧用のアプリが別途必要になるという点。
一般的なファイル形式であるPDFでも、スマートフォンで見るときはAdobe Readerアプリをインストールしておく必要がある。
また、ビューワーアプリの中には、スマートフォンに最適化されていなかったり、表示が遅かったりするという課題もある。ユーザビリティが悪いと、当然ながら利用者は減っていくだろう。
さらに自社の公式アプリを提供している場合、公式アプリとビューワーアプリの両方をユーザーにインストールしてもらう必要がある。ユーザーにとっては意外とハードルが高い。
(2)デジタルカタログ制作・管理するときの問題点
PDF形式でデジタルカタログを作るのは比較的簡単だが、一旦ユーザーがファイルをダウンロードすると、その後の修正が反映されないという問題が起こる。せっかくデジタルカタログを更新しても、ユーザーが再ダウンロードしない限り新しい情報に置き換わらない。
また、デジタルカタログ制作ツールの中には、カスタマイズしづらいものもあるので注意したい。特にECの場合、デジタルカタログに購入ボタンはもちろん、口コミ情報やSNSへのリンクなどをつけるのが主流。こうしたカスタマイズができない制作ツールでは、デジタルカタログからECにうまく誘導できない。
またビューワーアプリのアップデートや機能変更も提供元の都合で行われる。こちらでコントロールできないという問題がある。
デジタルカタログをアプリ化する2つのメリット
(1)自社アプリに組み込むことで、シームレスな連動ができる
デジタルカタログをアプリ化することで、アプリにある他の機能と連動しやすいメリットがある。例えばカタログを載せたときにプッシュ通知できれば、より閲覧数のアップにつながるはずだ。
デジタルカタログ内に商品情報や購入、問い合わせなどのボタンを追加して、自社アプリ内で完結できればユーザーがアプリ内にとどまる時間が長くなる。滞在時間が長くなれば、購入など次のアクションにつながりやすくなるはずだ。
(2)デジタルカタログのアップデートが簡単にできる
アプリの場合はデジタルカタログの最新データをアプリ側で読み込むため、カタログの内容を修正しても、ユーザーへ反映できる。つまり管理者側でコントロールしやすく、中にはアプリ化によって、デジタルカタログを毎日更新するという企業もある。
また別途ビューワーアプリが不要なため、デジタルカタログがうまく表示されないといったトラブルも少ない。
アパレルEC系アプリで広がるデジタルカタログの活用
デジタルカタログがよく使われるのが、アパレル系ECサイトだ。シーズンごとのスタイルブックをデジタルカタログにして、アプリに載せるケースが主流。アプリにすることで、従来カタログを手にしないようなリアル接点の少ないユーザーにも提供できる点もポイントのようだ。
さらにデジタルカタログをシーズンごとのキャンペーンやクーポンと組みわ合わせて、相乗効果を狙うところも多い。
デジタルカタログで業務効率化とコスト削減につなげたBtoBアプリ事例
最近ではBtoCだけではなく、BtoBアプリにデジタルカタログを組み込むケースが増えている。例えば富士通パーソナル社の事例では、家電量販店向けの商品説明パンフレット(約60ページ)をアプリで提供している。
BtoBにおいてデジタルカタログのアプリ化は、業務効率化につながるメリットが大きい。富士通パーソナル社でも従来はパンフレットを印刷して全国の店舗へ発送していたが、アプリのインストールだけになり、印刷や配布業務が大幅に効率化できたという。
また修正が入ったときの対応も効率化できる。アプリなら元のファイルを修正すれば、一斉に反映できるという点も大きなメリットだ。
さらに富士通パーソナルのケースでは、制作納期の短縮やコスト削減も実現している。デジタルカタログのアプリ提供によって、年間400万円以上の削減に成功している。
紙媒体ではできなかったデータ分析ができる点もポイント。ダウンロード数や利用データを把握し、改善につなげることも可能だ。