アプリの種類が急増する世の中、使いやすさやユーザビリティの重要性が増している。別記事「アプリのアクティブ率アップに必要なのは、コンテンツとユーザビリティ」でお伝えした通り、ユーザビリティがアプリの成功を左右する時代になってきた。
ユーザビリティと言うと、画面のデザインや操作性をイメージしがちだが、実はそれだけではない。最近はもっと広い概念「UX」を意識するのがトレンドになっている。UXとは、User Experienceの略で、ユーザーがアプリを使う体験全般のことを指す。
こうした取り組みをするには、まずUXの基本的な考え方を知っておきたい。今回はUX向上に成功した無印良品アプリの事例や、具体的なUX向上対策について紹介しよう。
UXがアプリの開発に必要な理由とは
UXを一言で言うと、サービスを通じて得られるユーザー体験全般のこと。使いやすさも要素の1つだが、サービス全体を利用する中で「心地よい」「楽しい」といった満足感が得られるかがUXでは重要なポイントとなっている。
《UXの基本概念を表す「UXハニカム」》
UX概念図として有名なのが、ピーター・モービル氏が発表した「UXハニカム」。以下の7つの要素があり、ハチの巣状(ハニカム)で表して相互に影響し合うことを表現している。
・Useful(役に立つか)
・Usable(使いやすいか、便利か)
・Findable(探しやすいか、迷わずに目的地に着けるか)
・Desirable(好ましいか、魅力的か)
・Accesible(誰でも見られるよう配慮されているか)
・Credible(信頼できるか)
・Valuable(新しい価値があるか)
つまり使いやすさの他にも、信頼性や新規性も影響することわかる。例えば「提供元がはっきりしないアプリ」「アップデートは多いのに新機能が少ないアプリ」はUXの観点で見ると問題あり、となる。
なお、アプリ制作においてUXが重要な理由は2つある。
(1)UXを意識しないアプリは、いずれ使われなくなる
アプリの場合、少しでもユーザーが不便・満足しないと感じるだけでアインストールされやすい。またUXに重大な問題があるとアプリ説明画面のレビューの評価が低くなってしまう。つまりダウンロード数が減少する影響もある。
(2)アプリの印象がブランド全体に影響する
UXはユーザーの購入体験全般に関わるため、アプリだけではなく企業イメージやブランドにも影響する。次々とアプリに参入する企業が増える中、アプリに大きな不満があるだけで他のブランドに流れてしまう可能性も。顧客と接点が持ちやすいツールだからこそ、アプリが与えるブランドへの影響は大きい。
無印良品アプリ「MUJI Passport」がUXを改善したポイントとは
UXを意識したアプリ事例としてよく知られているのが、無印良品の「MUJI Passport」アプリ。国内700万以上のダウンロード数を誇る無印良品アプリが、UXで意識しているポイントは2つある。
(1)ターゲットを明確にしている
無印良品はECサイトも展開しているが、実は「MUJI Passport」アプリではECへの導線は少ない。「店舗を訪れるユーザー」というターゲットに絞り込み、ニーズを明確にすることでUX向上につなげている。
例えば「MUJI Passport」アプリの商品検索機能では、各店舗に在庫があるかどうかを調べることができる。また、店舗で大型商品を購入して配送を依頼する場合、アプリに表示されるバーコードを提示すれば配送先を指定できる。つまりユーザーは伝票に自分で配送先を記入する手間が省けるというメリットがある。
(2)シームレスな体験ができる
「MUJI Passport」アプリにはさまざまな機能があるが、ユーザーが商品を店舗で購入するまでの流れで常にアプリが使えるような設計ができている。
・商品を検索
・店舗を検索
・来店してチェックイン
・購入
来店や購入で「マイル」というポイントが貯まる仕組みになっているが、このマイルの管理もアプリで行うことが可能。さらに店舗のセール情報やクーポンなどもアプリでチェックできる。つまり無印良品の店舗利用者に必要な機能がアプリにまとまっている。
アプリでUXを向上させる2つのポイント
具体的にアプリのUXを向上させるには、どんな対策をしていけばよいだろうか?代表的な3つのポイントを紹介しよう。
(1)情報の一元管理
チャネルが多様化する中「さまざまな情報をまとめて見たい」というニーズは高い。無印良品アプリでも、店舗やECで購入した履歴をアプリで一括で見られる機能を提供している。
他にもTwitterやInstagramなど複数のSNSに載っている情報を、アプリ上でまとめて見られる機能なども有効だ。
(2)パーソナライズ化
ユーザー目線で考えれば「自分が欲しい情報だけ送られてくる」という点もUX向上には重要だ。実際に無印良品アプリも、かつてリニューアル時にパーソナライズ化を実装。お気に入りに登録した商品に関するニュースが届くなどの対応を行っている。
アプリのパーソナライズ化するには、セグメントしたプッシュ通知機能が有効だ。自分の属性や嗜好にあう情報だけが届けばユーザーの満足度はアップするだろう。
(3)スピーディーな機能追加・修正
今はユーザーニーズもどんどん変化する時代。そこでUX向上のためには、アプリ機能の修正や追加をしていくことも必要だ。スピーディーに対応できるアプリ開発環境が求められると言える。