オウンドメディアをアプリ化するメリット・デメリットとは

さまざまな業界でオウンドメディアを立ち上げる企業が多い中、最近はオウンドメディアのスマートフォンアプリ化がトレンドになってきている。ニュース系メディアだけではなく、EC系アプリの中にもオウンドメディアやブログをアプリで表示するケースが出てきている。

ただしオウンドメディアをアプリ化したいと思っても、「スマホでもブラウザで見られるから十分」という意見が社内で多く、アプリ化が進まない…というケースもあるようだ。

WordPressなどのCMSを利用したオウンドメディアなら、ブラウザでもスマートフォンに最適化された画面表示が可能だ。しかしアプリ化には画面表示だけではないメリットがあるのも事実。

まずはオウンドメディアをアプリ化するメリットとデメリットについて理解しておくと、社内にも説明しやすくなるはずだ。

オウンドメディアをアプリ化する4つのメリット

(1)更新情報を通知しやすい

オウンドメディアのアプリ化で最も大きなメリットと言えば、更新したタイミングでプッシュ通知できる点だろう。アプリのプッシュ通知は、一般的にメルマガと比べて開封率が約3倍高いと言われている。

新しいコンテンツをアップしても読者に気づいてもらいにくい、というのはオウンドメディア運営者が悩むポイントだろう。アプリのプッシュ通知を活用することで、オウンドメディアのアクセス数(特に再訪問率)を上げやすいというメリットがある。

(2)他のアプリとの相乗効果が狙える

オウンドメディアをアプリ化して定期的にコンテンツを更新すれば、アプリの利用機会を増やせる。つまりアプリ自体のアクティブ率向上やアンインストール防止につながるメリットがある。

例えばECサイトでは、商材にもよるが購入ペースが月に1~2回というケースも多い。つまりアプリの利用頻度も同じ程度になるだろう。一方オウンドメディアのコンテンツを高頻度にアップしていくことでアプリの利用頻度を上げられる。その分、他の機能を利用してもらえる機会も増やせるというわけだ。

(3)ブラウザ機能変更の影響を受けにくい

例えばiPhoneの標準ブラウザであるSafariは、iOS11リリースの時点で新しい広告追跡機能が追加されている。こうしたブラウザの機能変更によって、オウンドメディアの掲載内容が影響を受けることも考えられる。アプリならこうした影響を受けないため、画面に載せる要素やレイアウトなどの自由度が高いのもメリットと言えるだろう。

(4)ロイヤルカスタマー向けサービスにできる

例えばスポーツ飲料ブランド「アミノバイタル」のオウンドメディアでは、Webサイトは新規ユーザー向け、アプリはリピーター向けと使い分けを行っている。

オウンドメディアのコンテンツ自体は共通でも、Webサイトでは検索エンジン経由で初めて訪問する人を想定して商品情報を大きく表示。一方アプリでは商品をすでに利用している人向けに、活用法やトレーニング情報がメインとなっている。

アミノバイタルの事例のように、同じオウンドメディアでありながらアプローチ方法を変えて、より広いユーザーをターゲットにできるのもメリットと言える。

参考:「アプリビジネス最新レポート AminoVital(アミノバイタル):アプリだからできるロイヤルカスタマーのおもてなし

オウンドメディアをアプリ化する2つのデメリット

  • アプリのダウンロード促進策が必要

一方でオウンドメディアのアプリ化には知っておきたいデメリットもある。最も大きな問題は、やはりユーザーにアプリをダウンロードしてもらう必要がある点だ。オウンドメディアのコンテンツが読めるという機能だけでは、ダウンロードのきっかけになりにくい。キャンペーンを行うなど、アプリのダウンロードを促進する施策が求められる。

  • Webサイトとアプリの並行運用が必要

また基本的にオウンドメディアをアプリ化しても、100%アプリ経由とはいかない。そのため従来のWebサイトももちろん残す必要がある。ただしアプリ用とブラウザ用で全く別の環境にコンテンツを置いてしまうと、更新作業が二重になってしまうという問題が起こる。

そこで、アプリ開発時にRSSフィードを読み込む設定にする方法も検討したい。これならWebサイトにアップした情報は自動でアプリ側に反映される。そのためアプリ側での更新作業は不要だ。RSSフォード読み込み機能が利用できるアプリ開発ツールを選んでおくと、運用の手間に大きな違いが出るだろう。

オウンドメディアのテーマによっては、アプリよりブラウザ閲覧率が高いことも

オウンドメディアのアプリ化を考える上でおさえておきたいのが、アプリの利用動向。ニールセンが2016年に行った調査によると、テーマによってアプリとブラウザの利用傾向が異なるという結果が出ている。

・「オークション・フリマアプリ」「SNSアプリ」は、ブラウザよりもアプリ利用時間の方が長い人が60%以上。

・「新聞社系ニュースアプリ」「旅行・グルメアプリ」はアプリよりもブラウザ利用時間の方が長い人が80%以上。

出典:「アプリとブラウザを使い分けるスマートフォンユーザー~ニールセン 2016年の動向をまとめた「Digital Trends 2016」を公開~

オウンドメディアのアプリ化は、プッシュ通知が利用できるなど多くのメリットがある一方で、ダウンロードさせるというハードルもある。また、ジャンルによってブラウザとアプリの利用傾向に違いがあるという点も知っておきたい。

とはいえアプリならではのメリットを生かせば、固定ファンとの接点強化につながりオウンドメディアの効果も上がるはずだ。アプリ開発ツールを選ぶ際にも、「既存オウンドメディアのコンテンツをスムーズに流用できるか?」「アプリならではの機能を追加していけるか?」という視点でチェックしておくと、前向きに進めやすいだろう。