スマートフォンアプリ開発において容量(ファイルサイズ)は気にするべき?

スマートフォンアプリ開発において、意外と見落としがちなのが容量(ファイルサイズ)。実はアプリのファイルサイズが大きすぎると、ユーザーが増えにくい問題が生じてしまう。

自らプログラミングしないアプリ担当者であっても、容量の問題や対策については知っておきたい。ユーザーが増えないということは、アプリマーケティングにも大きく影響するからだ。そこでアプリの容量で気をつけるポイントを紹介しよう。

スマートフォンアプリの容量(サイズ)が大きいと何が問題?

アプリの容量(ファイルサイズ)が大きいと、なぜユーザー減につながるのだろうか。主な理由は2つある。

(1)アプリがダウンロードされにくくなる

最近ではApp Storeでも、Google Play Storeでもアプリ説明画面にファイルサイズを調べることができる。あまりにファイルサイズが大きいとダウンロードを躊躇してしまうユーザーも出てくるだろう。

またiOS11では、150MB以上のアプリを3G/4G回線でダウンロードしようとすると、警告メッセージが表示される。これはファイルサイズが大きいため、Wi-Fi環境でのダウンロードを薦めるためだ。

Androidの場合はそもそもGoogle Playに掲載できるアプリは100MBまでという制限がある。(※追加ファイルを設けることで、ファイルサイズを増やすことは可能)

(2)アプリのアンインストールにつながりやすい

あるアンケートで「スマートフォンアプリをアンインストールする理由」を聞いたところ、「定期的に使わなくなったアプリはアンインストールしているから」(39.8%)という理由が1位となっている。(※)

※出典:「6割以上は「3ヶ月以上未使用」なアプリを削除対象に【ジャストシステム調査】」(MarkeZine)

スマートフォンの空き容量不足を防ぐため、定期的にアプリを削除しているという行動パターンが考えられる。ファイルサイズが他のアプリと比べて大きいと、先にアンインストールされてしまう可能性も高いだろう。

また、iPhoneではアプリが手軽に削除できる状況になっていることを知っておきたい。従来はアプリを削除すると、関連するデータもすべて消えていた。ところがiOS11から搭載された「Appを取り除く」機能は、アプリプログラム本体のデータのみ削除するもの。セーブデータなどは残すという機能だ。

つまりセーブデータは残るため、「とりあえず今使わないアプリは削除しよう」というユーザーが増えることが考えられる。「Appを取り除く」機能によって、さらに手軽にアンインストールが可能になったと言えるだろう。

アプリ開発において注意したいのは、画像ファイル

アプリのファイルサイズを抑える方法はいくつかあるが、プログラムを自分で組まない人でも対策できるのが画像ファイル。

アプリ内に画像を埋め込む場合、高画質のものを多く使うとアプリ全体のファイルサイズに影響する。特にイントロ(チュートリアル)で画像を多用する場合は気をつけたい

《画像ファイルJPEGとPNGの違いを知っておこう》

一般的にアプリに載せる画像ファイルと言えば、JPEG形式かPNG形式の2つだ。それぞれの基本的な特性を知っておいた上で、使い分けるようにしたい。

JPEG:フルカラー表示が可能で、写真画像に向いている。Webサイトでも広く使われている画像ファイル形式。修正を繰り返すと画像が劣化しやすい点に注意が必要。

PNG:透過処理(背景を透明にする)が可能。アイコンやボタンなどに利用されるケースが多い。フルカラー表示も可能だが、その場合JPEGよりもファイルサイズが大きくなりがちなので注意。

《JPEG、PNG以外の新しいファイル形式も登場》

iOS11では、カメラで撮影したデータは新しいファイル形式「HEIF」での保存がデフォルトとなった。JPEGよりもサイズが小さいと言われているが、まだiOS以外の互換性が低いという問題がある。

一方Googleでは、2010年にWebやアプリ向けの新しいファイル形式「WebP」を発表した。こちらもJPEGよりも、ファイルサイズが小さくできるメリットがある(約2~3割小さくなるとGoogleは発表)。

クックパッドなど一部のアプリでWebP画像は採用されているが(※)、まだ一般に広く浸透しているところまでは進んでいない。

※出典:http://techlife.cookpad.com/entry/2014/12/04/090000

今後こうした新しい画像ファイル形式が主流になることも考えられるので、情報収集はしておこう。

《動画ファイルをアプリに組み込む場合》

アプリ内で動画を載せたい場合は、YouTubeなど外部に動画をアップしアプリ内で読み込むという方式も検討したい。アプリ開発ツールではこうした外部動画ファイルを読み込む「エンベッド動画」機能を持つものもある。

エンベッド動画機能を利用すれば、ファイルサイズを抑えつつ動きのある見せ方も可能となる。

代表的なアプリの容量(ファイルサイズ)を知っておこう

参考までに、代表的なアプリの容量を一覧にまとめた。SNS系アプリやビジネス系アプリは、比較的ファイルサイズが大きい傾向がうかがえる。

<代表的なアプリのファイルサイズ(例)>

SNS系アプリ

・LINE 181.5MB
・Facebook 295.4MB
・Twitter 107.1MB
・Instagram 85.3MB

EC・フリマ系アプリ

・楽天市場 71.3MB
・メルカリ 65.3MB
・Amazon 84.8MB

ニュース系アプリ

・Yahoo!ニュース 40.6MB
・SmartNews 16MB
・グノシー 40.6MB

ビジネス系アプリ

・Evernote 110.5MB
・Dropbox 148.2MB
・Googleドキュメント 157.2MB

※App Store情報欄に表示されているサイズを記載。(2018年3月時点。アプリのバージョンによってサイズは異なる)

上記のような一般的に使われているアプリのほか、競合他社が出しているアプリのファイルサイズについてもチェックしておくと安心だ。