人材不足や感染症対策など、飲食店は多くの課題を抱えています。業務の効率化やデータ分析を担うシステム部門の担当者の負担は甚大です。この記事では注文と会計業務の削減、データの収集と分析の効率化、既存のシステムとの連携も可能な、モバイルオーダーシステムの特長や選定ポイントを紹介します。
目次
モバイルオーダーシステムとは
モバイルオーダーシステムとは、メニュー選びや注文、決済までの流れをスマートフォンやタブレットからの操作で完結できるサービスです。飲食店を中心に普及しています。本記事後半でも紹介するように、数多くのサービスが提供されており、店舗の特色や営業形態に適したサービスを選ぶことでさまざまなメリットを得ることができます。
モバイルオーダーシステムが注目されている背景
飲食店を中心にモバイルオーダーシステムの普及が進む要因となっているのは、以下の3点です。
・感染症対策
・スマートフォンの普及
・深刻な人材不足
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染症対策が講じられました。感染症対策に含まれる「非接触」や「密集の回避」を実施するうえでモバイルオーダーシステムは大いに役立ちます。注文や会計のために店員と接触する必要がなくなり、テイクアウトであれば店員との接触は商品の受け取りのタイミングのみです。また、混雑時に入店や注文のために並ぶ必要もなくなるので、人が密集する状況の回避にもつながっています。従業員と顧客の安全を守るうえで、モバイルオーダーは企業にとって有用なシステムです。
そしてスマートフォンの爆発的な普及により、モバイルオーダーシステムが活用しやすい環境になりました。総務省が公開する「令和3年版 情報通信白書」によると、全世帯の96.8%がモバイル端末を保有し、そのうち86.8%をスマートフォンが占めています。日本のほとんどの世帯でモバイルオーダーを利用できるようになったといえます。利用可能な人が増えたため、多くの企業が導入するようになったのです。(※1)
また、深刻な人材不足も、モバイルオーダーシステムが普及する要因に挙げられます。厚生労働省が公開する「一般職業紹介状況(令和4年11月分)」によると、「飲食物調理の職業」の求人倍率は3.13倍、「接客・給仕の職業」では3.27倍です。飲食店では、調理や接客の業種に就きたい人が3倍以上に増えなければ十分な人材を確保できない状況です。そのため、「注文を取る」「厨房に伝える」「会計」といった業務の削減につながるモバイルオーダーシステムの重要性が増しています。(※2)
※1 参照元:総務省 |「令和3年版 情報通信白書」
※2 参照元:厚生労働省 |「一般職業紹介状況(令和4年11月分)について」参考統計表7-1
モバイルオーダーシステムの主な機能
モバイルオーダーシステムは、以下のような機能を統合したサービスです。
・キャッシュレス決済
・注文
・予約管理
・在庫管理
・ユーザーデータ管理
・多言語対応
キャッシュレス決済
QRコード決済やクレジットカード決済などで、支払いを済ませることができます。大手ハンバーガーチェーン店のモバイルオーダーシステムを例に挙げると、「PayPay」や「R Pay」、「LINE Pay」、「auPAY」などのQRコード決済、VISAやMaster、JCBなどのクレジットカード決済に対応しています。
注文
ユーザー自ら注文したい商品やサービスを入力する機能です。ユーザーは、自身のスマートフォンかタブレットからメニューを見て注文します。システムによっては、イートインであれば来店時時間の指定、テイクアウトの場合には受け取り時間の指定が可能です。
予約管理
ユーザーから受けた注文の予約管理機能です。実際の席や予約の状況をもとに、自動で席予約の可否が判断されます。ただし、すべてのモバイルオーダーシステムに予約機能が備わっているわけではありません。
在庫管理
POSシステムにより在庫管理も行います。POSとは「Point of Sale」を略したもので、日本語では「販売時点情報管理」といい、飲食店や小売店などの在庫管理を効率化するためのシステムです。また、データ収集機能もあり、「どの店舗で」「どの商品が」「いつ」「いくつ」「どのようなユーザーに」販売されたのかといったデータを分析することで、フードロスや在庫過多の抑制、店舗によって主力商品を変更したりするなどの経営戦略などに活用できます。
ユーザーデータ管理
モバイルオーダーシステムに備わっているユーザーデータ管理機能は、宣伝広告やキャンペーンの周知に有用です。ユーザーはシステムをインストールした後に、会員登録をおこないます。住所や決済方法などを入力し、システムの利用後は履歴が残ります。チェーン展開している飲食店であれば、登録している住所から地域限定メニューをアプローチしたり、注文履歴から需要が期待できるキャンペーンを展開したりするなど、ユーザー情報からさまざまな経営戦略が立てられるでしょう。
多言語対応
入国や出国の規制も緩和し、訪日外国人の増加が期待されています。多言語対応のモバイルオーダーシステムを導入すると、接客担当が外国語を話せない場合でも、注文や会計業務が滞る心配がありません。
モバイルオーダーシステムの3つのタイプ
モバイルオーダーシステムには、以下の3つのタイプがあります。
・店内注文向け
・店外注文向け
・多用途向け
それぞれのタイプの詳細については、以下のとおりです。
店内注文向け
店内注文(イートイン)向けのモバイルオーダーシステムは、席に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取り注文します。メニュー表が不要になり、メニュー変更の際の手間やコストを削減できるメリットもあります。電子決済とPOS機能を備えているシステムであれば、注文から会計までをユーザーのスマートフォン上で完結させられるうえ、在庫やデータまで一元管理できるため有用です。
店外注文向け
ユーザーが自身のスマートフォンを用いて店外から注文するモバイルオーダーシステムです。テイクアウトやデリバリーに適したシステムで、感染症対策による飲食店の営業の自粛や短縮に伴い、急速に需要が高まりました。ユーザーは気が向いた時にいつでも注文できるので、テイクアウトやデリバリーの利用頻度の向上につながります。 また、販促ツールとしても活用できるモバイルオーダーシステムであれば、飲食店は積極的な集客活動に取り組めます。利用頻度や注文商品のデータ分析から、ユーザーがインストールしたモバイルオーダーアプリや連携するアプリにキャンペーン情報やクーポンの配信が可能です。
多用途向け
飲食店以外にも対応した多用途向けのモバイルオーダーシステムです。宿泊施設やイベント、お取り寄せなど、さまざまな分野や業態のニーズにあわせてカスタマイズできます。 特にイベントチケットの購入方法として導入されるケースが増えています。イベントで問題となっている高額転売により、本当にイベントに参加したい人がチケットを入手しにくくなる問題が指摘されています。イベントのチケット販売にモバイルオーダーシステムを導入することで、一人当たりの購入制限が容易になり、転売も困難になるため、転売目的のチケット購入が抑制される効果が期待されています。
モバイルオーダーシステムを導入するメリット
モバイルオーダーシステムは企業と消費者、双方にメリットがあります。
<企業のメリット>
・業務の削減
・効率化
・回転率の維持
・人手不足の解消
<消費者のメリット>
・待ち時間の減少
・メニュー選びが楽
それぞれのメリットについての以下で詳しく解説します。
企業向けのメリット
企業がモバイルオーダーシステムを導入するメリットは3つあり、経営の健全化や問題の解決に有用です。
業務の削減・効率化
モバイルオーダーシステムを導入すると、さまざまな業務が削減されるメリットがあります。「各種電子決済」と「セルフオーダー」機能により、「注文を取る」「厨房に伝達」「会計」の業務が削減されます。会計業務が減少されれば、レジの打ち間違いや料金の計算ミスなどの抑制にもつながるでしょう。「予約管理」機能があれば、電話応対に人員を割かれることはありません。また、予約の取り間違いといった、企業や店舗の信用問題に関わるトラブルも回避できます。 「ユーザー情報管理」や「POS」機能は、データの管理や分析が容易になるため、データに関する業務の労力と時間を削減できます。在庫管理に関する業務が効率的になるうえ、集計ミスなどの人為的ミスが減らせることもメリットです。また、混雑時に外国語を話せないスタッフが日本語を話せない外国人に接客対応すると業務が滞りますが、「多言語対応」機能があれば、そのような問題も解消されます。 モバイルオーダーシステムの導入で上記の業務の削減や効率化につながるため、空いた時間をサービスの向上に充てられます。注文を取ることに意識を向けなくてもいいので、空いた食器を下げるなどの快適に食事を続けられる環境づくりに注力でき、質の高いサービスの提供につながるでしょう。
回転率の維持
モバイルオーダーシステムを導入すると接客担当の業務が削減されるため、混雑時でも席の回転率を維持できます。なぜなら、調理以外の時間が削減されるからです。モバイルオーダーシステムは注文と会計の業務が不要になり、その分バッシングに時間を充てられるので、次のお客様を席に案内するまでの時間を短縮でき回転率を維持できます。
また、セルフオーダーにより注文の聞き間違いがなくなるため、作り直しの手間をなくせます。作り直しは回転率と顧客満足度を下げる原因ですが、システム導入によりこのような人為的ミスも抑制可能です。 また、飲食店のレジは出入り口近くに設置されている場合が多く、ピーク時はレジ周辺が会計待ちや案内待ちのお客様で混雑しがちです。なかには、混雑している状況を見てその飲食店の利用をあきらめる人もおり、機会の損失になります。モバイルオーダーシステムは飲食店の入り口周辺の混雑回避にもつながるため、入りやすい店作りにも貢献します。
人手不足の解消
前述のように、飲食店の人材不足は深刻です。モバイルオーダーシステムは業務の削減と効率化が図られるため、限られた人数でも飲食店を運営でき、人材不足を解消できます。レジ対応する予定だった人材が調理のサポートに入れるようになれば、少ない従業員でも注文から提供までの時間を短縮できるので顧客満足度にもつながります。また、業務の負担を抑えられるので、離職率の低下にもつながるでしょう。2018年に農林水産省が公開したデータによると、「飲食店・宿泊業」の欠員率は全業種の平均の2倍以上、大学卒業者の就職3年以内の離職率は50.2%です。飲食店や宿泊業では高い欠員率に加え、全業種の離職率32.2%を大幅に上回っています。 大型チェーン店では大学卒業者を、店舗やアルバイトやパートタイムなどの人材の管理者として採用するのが一般的です。ゆくゆくは幹部候補として期待されているケースもあります。企業側としては将来を期待する人材であり、その人材の半数近くが入社してから3年以内に離職しているのは大きな問題です。 モバイルオーダーシステムは現場の業務が効率的になるだけではなく、在庫管理やデータの収集・分析といった管理職が担う業務の負担を削減できます。業務の負担を削減して時間外労働を減らしたり、休暇を取りやすい環境を作ったりすることで、離職率の低下を図れるでしょう。
参照元:農林水産省 食料産業局 |「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」
消費者側のメリット
モバイルオーダーアプリを利用することで得られる消費者側のメリットは、以下の2つです。
待ち時間の減少
消費者が商品を受け取ったり、注文をしたりする際に必要な待ち時間を削減できます。 店外注文向けのモバイルオーダーシステムには、テイクアウト利用時に時間指定ができるタイプとできないタイプがあります。時間指定できるシステムであれば、指定した時間に商品を取りに行くと待ち時間はありません。時間指定できないシステムでも、アプリ上で会計まで済ませた時点で調理を始められるので、店に到着してから注文した場合と比べて待ち時間の短縮が可能です。混雑時に行列ができる店では、注文のために並ぶ時間も短縮できるので、消費者のストレスが減るでしょう。 また、店内注文向けのモバイルオーダーシステムを利用すれば、注文のたびに店員を呼ぶ必要はありません。店員に声をかけたり、注文を取りに来るまで待ったりする時間が不要になることも、モバイルオーダーアプリのメリットです。混雑時は店員を呼ぼうとしても、なかなかつかまらない場合もありますが、そのようなストレスの緩和が期待できます。
メニュー選びが楽
消費者にとって、モバイルオーダーシステムはメニュー選びが楽になるツールです。 イートインの場合に、注文を取りに来た店員を待たせると申し訳ないと感じる人は少なくありません。ゆっくりメニューを決められず、店内が混雑しているとなおさら焦ってしまうでしょう。モバイルオーダーシステムを導入している飲食店であれば、注文を取りに来ることがないので店員を気にせず自分のペースでメニューを選べます。 テイクアウトの場合でも、目の前の店員や後ろに並んでいる人を気にする必要がありません。店に来る前にメニューを見、焦らず注文できます。 また、グループでイートインを利用する際にメニュー表が1冊しかないと、回しながらメニューを選んだり、反対側からメニューを見たりすることになります。どちらの場合もじっくりメニュー表を見ることができません。モバイルオーダーはQRコードなどから各自のスマートフォンでメニューを見られるので、グループでイートインを利用する際にも、効率的にメニューを選べます。
モバイルオーダーシステムを導入するデメリット
メリットが多いモバイルオーダーシステムですが、デメリットもあり導入の際には総合的に判断することが必要です。店舗側と顧客側のデメリットを以下に紹介します。
店舗側のデメリット
店舗側には以下のデメリットがあります。
・コスト
・システムの操作と運用の研修
・システムに不慣れな顧客への対応
・顧客とのコミュニケーションの減少
モバイルオーダーシステムを自社で開発する場合は時間とコストがかかります。提供されているサービスを導入する場合はシステムの開発費用に比べるとコストを抑えられますが、店舗スタッフ用の端末や、厨房で注文を印刷して管理する場合にはプリンターも必要です。モバイルオーダーシステムを導入すると初期費用に加え、自社開発ではシステムの運用・保守費用が、サービスを利用するとシステム利用料が継続的にかかります。
また、モバイルオーダーシステムの操作や運用のために研修が必要です。営業時間中は最低でも一人はモバイルオーダーシステムを操作できるスタッフを配置しなければ業務が成り立ちません。病欠や離職による欠員など、あらゆる状況でもシステムを操作できるスタッフを配置するためには、全スタッフへの研修の実施が推奨されます。在庫管理やデータ分析などの機能も使いこなせる人材を育てなければいけないので、研修には一定の時間とコストが必要です。
モバイルオーダーシステムに不慣れな顧客への対応を考える必要もあります。システムをすぐに使えるようになる顧客ばかりではありません。使い方の説明が分かりにくいと、顧客を失うおそれもあります。「教え方が不親切だな」「使い方が分からないから利用をやめよう」と思われてしまうと、失客につながりかねません。丁寧で分かりやすい説明に関するマニュアルづくりと、顧客への説明を想定したシミュレーションが必要です。
店員と顧客のコミュニケーションが減少することもデメリットとして挙げられます。店員が積極的に顧客とコミュニケーションを図ってメニューを勧めたり、信頼関係を深めたりする飲食店もあります。モバイルオーダーシステムの導入が顧客に対するアプローチの機会減少につながるケースもあるため、接客スタイルとの相性を考慮しなければいけません。
顧客側のデメリット
顧客側のデメリットは3つです。
・不慣れな人には不便
・現金支払いできない可能性
・コミュニケーションの減少
スマートフォンを使っていない、または使っていても不慣れな人にはモバイルオーダーシステムを不便に感じたり、導入した飲食店を利用しづらいと感じたりする場合があります。
また、モバイルオーダーシステムだけで会計対応する店舗では、現金支払いができない事態も考えられます。
店舗側と顧客側のコミュニケーション減少は、双方にとってデメリットになります。注文の際に顧客が店員におススメのメニューを尋ねることもありますが、セルフオーダーでは店員とのコミュニケーションを図る機会は多くありません。店主や店員と積極的にコミュニケーションを図りたい顧客にとっては、モバイルオーダーシステムは不便と感じる可能性があります。
モバイルオーダーシステムの比較ポイント
営業形態に適したモバイルオーダーシステムを導入するには、5つのポイントを比較する必要があります。
・会員登録の有無
・既存システムとの連動
・決済方法
・多言語対応
・店内向けor店外向け
それぞれの比較ポイントの詳細は、以下のとおりです。
会員登録などが不要か
モバイルオーダーシステムの会員登録が手間に感じ、利用をあきらめる可能性があります。会員登録が必要になるのは、アプリやブラウザを経由して利用するシステムです。ブラウザ型はダウンロードの必要はありませんが、アプリ型は会員登録に進む前にアプリをダウンロードしなければならないため、さらに手間が増えてしまいます。 会員登録の項目数はサービスによって異なり、決済方法の登録だけで済むものや、住所や氏名まで登録するものがあります。登録項目が増えるほど、ユーザーが離脱する傾向にあるので注意しましょう。ただし、登録項目が多いと経営戦略に活かせるデータが多く収集できるのも事実です。登録やダウンロードしたユーザーにポイント付与やクーポン配布などをすることで、ユーザーを増やすよう工夫できるでしょう。 一方、店内でテーブルのQRコードを読み取って利用するモバイルオーダーシステムであれば、会員登録の手間がかかりませんが、収集できる情報も限定的になります。 また、LINEやInstagramなどのSNSに紐づけることで、会員登録の作業が不要になるサービスもあります。 モバイルオーダーシステムの導入を検討する際には、会員登録の有無、方法、項目数などを比較しましょう。顧客側の利便性と店舗側の入手できる情報量のバランスを取ることが重要です。
既存システムとの連携が可能か
モバイルオーダーシステムを比較するうえで、既存のシステムと連携できるかは重要なポイントです。すでに使っているシステムと連携できない場合は、システムや機器を新たに導入したり、データを移行したりする必要があり、コストと手間がかかるからです。特にPOSレジを導入している場合、多くのデータが収集されています。
蓄積したデータと連携できるシステムを選ぶことが重要であり、その選択肢に挙げられるのが、本メディアを運営するヤプリが提供するアプリプラットフォーム、Yappliです。データ連携ができると、既存のシステムや機器を今後も有効活用できます。
参考:ヤプリ| POSやEC、MA、CDPなどとAPIやファイルで簡単にデータ連携が可能
決済手段が適しているか
ユーザーが利用している決済手段にモバイルオーダーシステムが対応していないと、購入をあきらめてしまい機会損失につながるおそれがあります。そのためシステムを比較する際には、対応可能な決済手段にも注目しましょう。より多くの決済方法に対応しているシステムが有用です。従来のクレジットカードに加え、各種QRコード決済にも対応していることが望ましいでしょう。 感染症対策で非接触の重要性が増し、サービスを提供する企業がポイント付与などの普及策を講じたため、キャッシュレス決済の利用率は向上しました。各社が利用率を上げるためにポイントの還元率を競ったり、対応する店舗数を増やしたりするなど、数多くのキャッシュレス決済がしのぎを削っています。 店舗側としても、検討するモバイルオーダーシステムの採用している決済手段が、ターゲット層の消費者に適しているのかを考慮しましょう。例えば、10代~20代前半など若年層がターゲットの場合、クレジットカード決済よりもQRコード決済のほうが利用しやすいかもしれません。
多言語に対応しているか
外国人が利用するケースが多い店舗では、多言語に対応しているかも重要なポイントです。モバイルオーダーシステムによって多言語に対応しているか、対応している場合は何ヶ国語対応なのかという違いがあるからです。第一・第二母国語として使われる機会の多い英語、「爆買い」に象徴されるように中国からの訪日観光客が多いため中国語に対応するモバイルオーダーシステムが多くあります。 しかし、地域によってよく使われる外国語は異なります。人口増加が著しいインドで使われるヒンディー語や、中南米を中心に使用されるスペイン語などに対応したシステムが求められるケースもあるでしょう。 また、多言語対応のモバイルオーダーシステムは、外国人労働者の研修がしやすいメリットもあります。店舗の周辺環境や従業員の構成などを考慮してシステムを比較することが重要です。
テイクアウトか店内注文か
テイクアウトやデリバリーに注力するなら店外注文向けのシステムを、イートインに注力する場合は店内注文向けのシステムを選びましょう。イートインに注力している飲食店であれば、QRコードを読み取るだけで利用できるモバイルオーダーシステムの適性が高くなります。営業形態や注力していきたい経営方針に適したシステムを選ぶことが大切です。イートインとテイクアウトのどちらも注力していたり、経営方針が定まっていなかったりする飲食店は、両方に対応しているシステムが選択肢に入ります。
モバイルオーダーシステムの活用事例
モバイルオーダーを導入している3つの企業の活用事例を、以下に紹介します。
マクドナルド
大手ハンバーガーチェーン店のマクドナルドは、公式アプリと連携するモバイルオーダーシステムを開発しました。イートインやドライブスルー、デリバリーと注文方法が多岐にわたる飲食店なので、モバイルオーダーシステムもそれぞれの注文方法に対応しています。イートインでは注文のために並ぶ必要がなく、席に着いてスマートフォンからセルフオーダーすると店員が商品を届けてくれます。モバイルオーダー専用の駐車スペースが設置されている店舗では、ドライブスルーのレーンに並ぶ必要はありません。駐車スペースまで店員が商品を持ってくるので、ドライブスルーが混みあっていても待たされる時間が減り、顧客満足度の向上につながります。 モバイルオーダーシステムからクーポンを利用できたり、多くの電子決済に対応したりするなど、顧客の利便性を追求したシステム活用例です。
すき家
イートインでのセルフオーダーだけではなく、お持ち帰りの事前予約ができるすき家のモバイルオーダーシステムです。牛丼屋ならではの「つゆだく」や「つゆぬき」などのオプションも付いています。お気に入りメニューの登録や注文履歴を確認できる機能が備わっていたり、自動的にクーポンを使用した最安値が適用されたりするなど、利用頻度の高いユーザーの利便性が追求されたシステムです。 駅名や住所から店舗を検索する機能もあり、駐車場の有無の確認もできます。持ち帰りの場合、最長1ヶ月先の予約、30分前までなら予約のキャンセルが可能といった細かい気配りがされています。
スターバックス
並ばず注文したり、ドライブスルーができたりするスターバックスのモバイルオーダーシステムは、待ち時間が削減され利便性が向上しています。また、カスタマイズの種類が多いことで知られるスターバックス。店員を目の前にすると焦ってしまう人でも、モバイルオーダーシステムであればゆっくり考えて注文できます。 アプリも提供されていますが、WEB版のモバイルオーダー&ペイもあるので、ダウンロードせず手軽に利用できます。
モバイルオーダーシステム10選
上記の活用事例で紹介した3つの企業は、営業形態や提供する商品に適したシステムを自社開発しています。とはいえ、コストも時間もかかる自社開発はハードルが高く、導入に二の足を踏む企業も少なくありません。 提供されているシステムを利用する場合、自社開発に比べて導入のハードルは低くなりますが、営業形態との相性を見極める必要があります。提供されているモバイルオーダーシステム10選を以下に紹介しますので、特徴を比較してみてください。
LINEミニアプリ
「LINEミニアプリ」はLINEの機能の一部として備わっています。ダウンロードや会員登録をしなくても手軽に利用できるため、期待できるユーザー数が多いサービスです。飲食店だけではなく、美容院などにも対応しています。注文や電子決済はもちろん、整理券の発券や会員証の発行など幅広いニーズに応えられる機能が備わっているモバイルオーダーシステムです。
Okage Go
店内注文に対応した店内版と、テイクアウトに対応した店外版がある「Okage Go」。LINEミニアプリと連携した場合、会員登録は不要です。手間のかかる登録作業がなく、インストールするだけで利用できるので、ストレスフリーに導入できます。専用の管理端末は、導入した企業のアプリやSNSとも連携できる汎用性の高い集客ツールです。
QR Order
「QR Order」は数多くのチェーン店や個人店が採用しているモバイルオーダーシステムです。複数の店舗も一括管理できることが、多くのチェーン店に支持されている理由として挙げられます。食べ放題や飲み放題の残り時間、売り切れを表示する機能があり、現場のスタッフの負担を減らすメリットがあります。LINEのユーザーIDの取得が可能です。
L.B.B. Cloud
飲食店だけではなく、イベント会場の物販や小売業、宿泊施設などの幅広い業種に対応し、カスタマイズできるモバイルオーダーシステムです。会員データと購買情報を紐づけてデータ分析ができるので、経営戦略に活用できるうえ、顧客へのメルマガ配信も行なえます。 最短1週間で導入できる対応の早さも魅力です。店内・店外注文、できあがり通知、1週間先予約など必要な機能を網羅しています。LINE連携も可能です。
「Putmenu」は、フードコートの利用に特化したシステムです。呼び出しベルの機能も備わっているため、用意する呼び出しベルの数や利用頻度を減らすことができ、交換頻度も下がってコスト削減につながります。日本語を含めて12ヶ国語に対応(2022年1月現在)。カンボジア語やベトナム語などにも対応しているので、言葉の壁を取り払い、現場のスタッフの負担の削減が期待できるシステムです。
Samurai Order
自社のオリジナルアプリを作れるサービスです。自社のみで利用できる「ハウスマネー」の運用ができるため、顧客の囲い込みに大きな効果を発揮します。アプリのPUSH通知を使用した販促活動やリピートを促すスタンプカードの発行など、集客力の向上が期待できるモバイルオーダーシステムの開発が可能です。オリジナルアプリを作成するため、導入までには最短でも1ヶ月かかります。
UZ apps for LINE モバイルオーダー
LINEから注文できる「UZ apps for LINE モバイルオーダー」は、「テイクアウト」「デリバリー」「テーブル」の3つのシーンに対応した注文機能が備わっているシステムです。売上の傾向を分析する機能もあり、仕入れ量や配置する人材の最適化が図れるため、経営の健全化にもつながります。メニュー登録を代行するサービスもあるので、導入の手間を削減できます。
テイクイーツ
「テイクイーツ」は、テイクアウトに特化したモバイルオーダーシステムです。テイクアウトのほか、自社デリバリーや通販にも対応していて、配達のエリアや配送料金の設定などの機能も備わっています。飲食店だけではなく、ケーキ店やお取り寄せの多い店舗でも導入されています。検索エンジンで上位表示させるためのSEO施策も行なえて、マーケティング活動の効率化が期待できます。
Linkto モバイルオーダー
イートインやテイクアウトに対応した注文機能が備わっている「Linkto モバイルオーダー」。ダウンロードの必要のないWEBアプリで、注文から会計までをスマートフォン上で完結できます。駐車場にQRコードを設置することで、車から降りずにテイクアウト注文が可能です。駐車場番号や車両ナンバーなどを入力すると店員が商品を車まで届ける機能を提供しており、接触機会の削減や利便性の向上が期待できます。
ユビレジ QRオーダー&決済
POSレジシステムを提供する「ユビレジ」が手がけるモバイルオーダーシステムです。在庫や売上、顧客情報を管理する機能の連携、多店舗の一括管理など、現場と経営の両方の効率化が図れるシステムです。指定のプリンターから注文が印刷されるため、注文の伝達ミスの抑制が期待できます。日本語以外には、英語、中国語、韓国語に対応しています。
Yappliならアプリの連携もスムーズ
ユーザーの購買意欲を刺激するうえで、近年は「シームレスな購買体験」が重要視されています。リアルやネット店舗、スマートフォンやパソコンなどの端末、WEBやアプリなど環境が異なっても途切れなくスムーズに買い物できることを指します。 「Yappli」は、シームレスな購買体験を実現できるスマホアプリ開発ができるサービスです。
アプリの企画提案から運用・集客を支援する初期政策支援のサービスまでも提供しています。飲食店だけではなく、自治体、教育機関、メディア、イベントなど幅広い団体や企業にサービスを提供し、デジタル技術を経営に活用するノウハウを有しているため、さまざまな業態の店舗へのサポートが可能となっています。顧客情報の分析から経営戦略を立てたり、新規事業を模索したりするなど、同業他社との競争に有用なシステム開発が可能です。 ユーザーの利便性を追求した直感的で分かりやすい操作方法は管理画面にも適用されているため、更新や管理作業の効率化が図れるでしょう。
まとめ
モバイルオーダーシステムとは、注文やキャッシュレス決済、データ管理や多言語対応といった機能を統合したサービスです。企業にとっては業務効率化や人材不足の解消、消費者にとっては待ち時間の減少など、多くのメリットがあります。現在数多くのシステムが提供されていますが、シームレスな購買体験の提供も大切なポイントのひとつです。
参考記事:実店舗もECも関係ない!アプリの成功には「シームレスな購買体験」が必要だ
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