ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリストの伴です。
今回は5月9日〜11日までスペインバルセロナで開催されたSHOPTALK EUROPE2023レポート第二弾です。
”サスティナビリティ”と”プライバシー”について取り上げた前回に続き今回は、こちらも多く語られていたヨーロッパでのアプリを通じた顧客との関係作りについてです。
そんな中でも、近年苦しんでいる、イギリスの老舗百貨店ジョンルイスが起死回生の取り組みとして行っている仕組みを紹介します。
ジョンルイスは、従業員所有事業として成り立っており、企業利益を従業員に再投資て、良好な労働環境と福利厚生を提供することで従業員の満足度を高め顧客サービスの向上につなげるという考え方でビジネスをしている特殊な企業です。
今から10年前の2013年には給料の17%分ものボーナスが出るなどこの手法は注目されていましたが、2017年以降は利益の減少も続き、パンデミックの2020年度は創業以来初の0%となってしまいました。2021年度はパンデミック後の店舗回帰により3%のボーナスが出ましたが、2023年度はインフレの影響もあり2度目のボーナス0%になってしまうなど企業、従業員ともに非常に苦しんでいる状態です。
この状況をどう打開する戦略の中心的な役割をモバイルアプリに持たせています。
まずアプリをブランドのゲートウェイ(ブランドコミュニケーションの入り口)として捉えて、全ての体験のハブとした、ロイヤルティプログラムをしています。
例えばメンバーはフードホールで毎月無料で紅茶とケーキが食べられるなどの特典で、顧客を店舗に誘導しています。
また、使用済み化粧品容器5つと交換で割引が受けられるビューティーサイクルや、衣料品5着のリサイクルで割引を受けられるファッションサイクルなどリサイクルやリユースといった「自分で取り組むサスティナブルはクールである」という最近の顧客の価値観に寄り添ったプログラムでブランディング、店舗来店、そして店舗スタッフとの会話や接客につながる仕掛けを作っているのです。
店舗はデジタルの展示場でもなければ新しい技術をテストする場でもなく、まず販売している物が主役で、その物の価値を正しく伝えるための従業員と顧客のコミュニケーションの場なのだと明確に捉えています。
デジタルに使われるのではなく、デジタルを使いこなすには自社のビジネスにおける人の価値を見直す必要があるのでしょう。