インバウンドマーケティングとは?メリットや進め方などを解説

マーケティングといえば、訪問や電話、広告を使った営業活動の印象があるかもしれません。ただ、こういった顧客が受け身の手法は、衰退の傾向にあると考えられています。
情報化社会と言われる現代では、顧客の意思を重視するインバウンドマーケティングが主流です。本記事では、昨今注目されるインバウンドマーケティングを解説していきます。

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目次

インバウンドマーケティングの意味

インバウンドマーケティングとは、企業が発信する情報を通じて顧客が商材に関心を持ち、購入に至るマーケティング手法全体のことです。この手法の特徴は、売り手が一方的な営業をする従来の方法と異なり、顧客が企業の情報・商品と自然に出会って興味を持ち、購入する点にあります。

「外から中へ入る」というのがインバウンドの本来の意味ですが、マーケティング分野においては新規顧客にどうやって認知してもらい、購入や問い合わせに繋げるかという方法・働きかけに注目します。例えば、インバウンドマーケティングの手段としては、SEO対策やSNSでの情報発信と口コミ拡散、コンテンツリリースなどが挙げられます。これらに共通することは、「顧客を追う」やり方ではなく、「顧客に見つけてもらう」というアプローチです。

この手法が日本に広まった背景には、インバウンドマーケティングのツールやサービスを提供するHubSpot社の創業者と有名なマーケティング戦略家が出した書籍の影響が大きく、その翻訳版が発売されてからと言われています。

アウトバウンドマーケティングとの違い

アウトバウンドは、「内から外側」という意味がある言葉です。マーケティング分野においては、企業から顧客に向けて積極的に働きかける手法を指します。

インバウンドの場合、関心を持った顧客からの行動で商品の購入などに繋がっていきますが、アウトバウンドでは顧客の意思に関係なくコンテンツや広告などを展開し、認知の拡大や購買に繋げることを目的にしています。代表的な例はテレビCMや雑誌・インターネット広告、飛び込み営業などです。インバウンドが「プル型」、アウトバウンドが「プッシュ型」という説明もできます。

ITなどのテクノロジーが普及していない時代では、アウトバウンドマーケティングが主流でした。しかし、誰もがスマートフォンを持って調べるのが簡単になった現在では、こうした手法は衰退してきています。

コンテンツマーケティングとの違い

インバウンドマーケティングと似た手法に、コンテンツマーケティングがあります。ブログやSNS、動画などでコンテンツを発信して潜在顧客に見つけてもらい、購入までのプロセスに繋げる方法です。コンテンツをコミュニケーションの土台にして商品やサービスの価値を伝えるという特徴があります。

インバウンドマーケティングのプロセスでも同じ手法を使いますが、コンテンツ制作以外のこともします。つまり、コンテンツマーケティングごと内包する大きな概念・手法であると捉えるとよいでしょう。

なお、マーケティング分野の大手企業であるHubSpot社では、「コンテンツマーケティングはインバウンドマーケティングに含まれる」という考えを示しています。同じようにほかのマーケターにも調査したところ、同様の回答が最も多かったというデータが出ています。

参照元:HubSpot社コンテンツマーケティングとインバウンドマーケティングの違いとその重要性

インバウンドマーケティングの種類

インバウンドマーケティングの種類としては、企業を対象とした「ABM」と個人が対象の「LBM」があります。以下では、それぞれの特徴を説明していきます。

ABM(企業を対象としたマーケティング)

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、BtoBに特化したマーケティング手法です。自社にとって価値が高く優良なアカウント(企業)をターゲットとし、そのアカウントのニーズに合わせた戦略をとって売上の最大化を目指します。

ABMのターゲットは個人単位ではなく企業単位となるため、マーケティングの認知プロセスの代わりにターゲット企業が抱える課題の特定作業から開始します。消費者向けと異なり幅広くアプローチせず、初めから絞り込むのが特徴です。

実は日本では、手法として提唱される前からABMのような営業活動をしていました。近年ではマーケティング手法として確立した上に、ITツールによる効率化が可能になったため、BtoBでのアプローチ手法として注目されるようになっています。

LBM(個人を対象としたマーケティング)

LBM(リードベースドマーケティング)は潜在顧客、見込み顧客のことをリードと捉えて施策を考えます。主に個人を対象にする手法で、不特定多数の人に認知を広げて興味を持ってもらい、購買してもらうというプロセスを踏みます。

ABMと違い、マーケティング活動はリードジェネレーションという認知段階からスタートします。そのため、ウェブサイトやSNS、説明会、資料請求など、顧客からアプローチできる多くの接点を用意することが重要です。そして、顧客情報を獲得したあとにはリードナーチャリングという育成プロセスがあります。これは、顧客が関心を持ちそうな情報を提供するなどして、購入意識を高めるプロセスです。その後、リードクオリフィケーションとして顧客のスコアリングなどを行い、購入の可能性が高い顧客を絞り込んで営業活動します。こうしたアプローチを経て、成約を獲得するのがLBMの主な流れです。

LBMでは、リードに接触する際のやり方によってインバウンド的かアウトバウンド的かの違いがあります。例えば、企業から顧客にアプローチする場合は後者、コンテンツを公開して顧客の問い合わせや資料請求を待つ場合は前者です。

インバウンドマーケティングが注目されている理由

ITが普及する以前は、テレビCMや新聞・雑誌の広告など、アウトバウンド的な手法での情報伝達が主流でした。しかし、インターネットが普及してからは、人々の周りに情報が溢れています。人が情報処理できるキャパシティを超えてしまっているため、アウトバウンド的な伝え方では、そもそも情報を避けられる傾向が強くなっています。

情報過多と関連して、インバウンドマーケティングが注目されているもうひとつの理由には、スマートフォンやインターネットの普及によって口コミなどの商品情報を取得するのが容易になった点が挙げられます。自分が必要なときに調べられるため、求めていない情報や商品を一方的に押し付けたり売り込んだりすることは嫌がられ、時代に適さなくなりました。

主なインバウンドマーケティングの手法

インバウンドマーケティングの手法として展開されることが多い方法や媒体としては、SNSの運用やセミナー・ウェビナーの開催などが挙げられます。それぞれの手法がもつ特徴を理解し、自社に適したものを使い分けることが重要です。

SNSの運用

SNSを使った情報発信はBtoCでよく活用されていますが、適したプラットフォームを選べば、BtoBでも有効です。不特定多数のユーザーの認知を拡大するのに向いており、発信する情報次第では興味関心や口コミによる拡散効果も期待できます。

SNSごとにユーザーの特徴が異なるため、自社の商材と相性のよいプラットフォームを選ぶのが重要です。一般消費者が相手のBtoCや若年層をターゲットにするならTwitterなどが向いていますが、BtoBの場合はビジネス向けのLinkedInや年齢層の高いユーザーが多く利用するFacebookがおすすめです。

SNSマーケティングの基本知識や具体的な実践方法については、以下の関連記事でも解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

セミナー(ウェビナー)の開催

密な環境が避けられるようになった昨今では、オンラインでセミナーを開催するウェビナーで有益な情報を提供する形態が主流になりつつあります。オンライン化によって場所と人数の制約がなくなるため、今まで接点が持てなかった顧客にもアプローチしやすいという特徴があり、会場費用の節約にもなります。

開催する際のコツとして、日頃から潜在顧客や見込み顧客を集める仕組みづくりをしておいた方がセミナーの集客がしやすくなります。セミナー開催後のことも重要で、参加した人を見込み顧客に変えて自社商材の購買に繋げていくような工夫が求められます。

認知獲得手段としてだけではなく、自社商材の理解を深めてもらう手段としてもセミナーは有効です。解決したい課題が明確な顧客に対し、自社の商品やサービスがどのように解決できるかを理解してもらうことで信頼を獲得できます。

オウンドメディアの運営

オウンドメディアは、主に自社で運営するメディアのことを指します。集客やブランディング、商品の訴求、採用活動などを目的に運営され、ウェブサイトやブログ形式で有益なコンテンツを掲載する形態が多いです。SEO対策によってメディアの掲載順位を上げ、必要とされる情報提供を通じて顧客との間に信頼関係を築くことを目標に運用されています。

多くの場合、ウェブサイト単体ではなくSNSやホワイトペーパー、LPといった複数の媒体と組み合わせて活用されます。これは、それぞれの媒体の弱みを補う意図もあります。

マーケティングオートメーション(MA)の活用

MAツールの活用により、見込み顧客に対するマーケティング活動を自動化できます。リードジェネレーション~クオリフィケーションに必要な多くのプロセスを効率化したり、見込み顧客をマネジメントしたりする場合に有効です。

例えば、自社の商材に関心がある顧客の情報収集を行ったり、その顧客の状況に合わせて有益な情報を提供したりするのに役立ちます。スコアリング機能で顧客がもつ興味の度合いが高くなったら、商談に進めるといった判断にも活用できます。ツールによる管理でそれぞれの顧客にパーソナライズした対応を効率的に実施でき、エンゲージメントの向上にも貢献します。

インバウンドマーケティングでは、売る側の都合ではなく購入者側の意思決定が重要です。そこで、MAをマーケティングに取り入れることで顧客の都合をデータで把握しながらコミュニケーションを取れるようになります。これにより、効率的に信頼を獲得しながら商談・成約獲得の段階へ繋げることが可能です。

サービス紹介動画の制作

動画を使ったマーケティングは視覚と聴覚で訴えられるため、文章や静止画を見せるより短時間で伝えられる情報量が多いです。具体例としては、商品の紹介やハウツー動画、関係者へのインタビューなど様々なケースが考えられます。

動画にナレーションを組み合わせると細かいニュアンスまで表現できるため、商品やサービスの魅力を伝えやすいという特徴もあります。集客や販促、ブランディングなど多くの目的に利用でき、リードから既存顧客まで幅広いユーザーに伝える媒体として適しています。必ずしも尺が長い必要はなく、エンタメ性など口コミしやすい要素があれば、短尺動画でもTwitterなどのSNSで拡散される可能性があります。

インバウンドマーケティングの進め方

実際にインバウンドマーケティングを展開していくには、いくつかのステップがあります。以下に紹介する進め方を繰り返し、改善を促すことでブラッシュアップしていきましょう。

目的を設定する

まずは目的や目標の設定、チームが実行すべきことと役割分担を考えていきます。目標設定は短期と中長期のスパンで考え、予算を決めましょう。インバウンドマーケティングを展開する主な目的としてはリードの獲得、ブランディング、商材の訴求などがあります。

目標設定では、新規のリード獲得数など、明確な数値目標を立てましょう。インバウンド手法の目標として、集客や関係構築の度合いが分かるようなものが望ましいでしょう。例えば、PV数や流入数、フォロワー数などが数値目標としておすすめです。定期的に数値やユーザーの動向をチェックして、問題点がないかどうかも考えましょう。

目標が明確になったら自社の現状把握を行います。マーケティング活動をする市場の情報や現在のリード獲得数といったパフォーマンス、顧客に対する理解度などから目標地点と現状とのギャップを確認しましょう。データの蓄積がない場合、自社の顧客像が曖昧な可能性が高いため、担当者や顧客とのヒアリングを通して明確にする必要があります。

体制を整える

目標が定まった次にすることは、ターゲットとなる顧客の選定とリソース・人材の確保です。ターゲット選定では、リードになりそうな顧客属性やセグメントを明確にします。その際には既存顧客の分析も役立ちます。

インバウンドマーケティングのコアとなるターゲットの共感・信用が得られる施策を実施するためにも、顧客理解を深められるペルソナを設定するとよいでしょう。顧客の属性が明確になったら、アプローチの具体的なやり方や認知~購入までのコミュニケーションプロセスを計画します。

インバウンドマーケティングの体制としては、Webデザインやコンテンツの制作・運用ができる人材が必要です。配置は担当者の適性も考えなければならず、相性が悪いなどのミスマッチが原因で人が離れることもあります。向き不向きなどをよく考えて任せるようにしましょう。もし社内に人材がいない場合は、外部の業者にアウトソースすることも有効なひとつの手です。

戦略を設計する

ターゲットとなる顧客像、ペルソナが定まったら戦略設計を考えていきます。カスタマージャーニーマップやサイトに掲載するコンテンツの構成などを主に考えるフェーズです。

カスタマージャーニーマップは、顧客が自社製品を認知して興味を持ち、購入に至るまでの流れを時系列で整理したものです。仮説を設計図に落とし込むようなもので、顧客像の理解度が高いほど精度も高くなります。もちろん計画段階で作成したものは一時的なものであり、顧客理解の深まりやデータの蓄積が進むにあわせて改善していくことも重要です。

マップの時系列は購買フェーズとも言い、大まかに整理すると次のように分けられます。

1.関心がない状態から認知段階になる
2.興味関心を持って情報を集めたり比較検討したりする段階
3.購入する段階

ここでは3つに分類しましたが、認識の深度や意思決定のタイミングなども含めると、これ以上に細分化することも可能です。また、カスタマージャーニーマップの縦軸には、顧客がもつ課題やニーズ、有効なチャネルなどの項目を増やして情報を整理します。どの程度まで整理するのが適切かは、把握している顧客の解像度によっても変わってくるでしょう。

顧客がいる時系列ごとにニーズも異なるため、どの段階にいる顧客と接点を持つかによって適するメディアも異なります。無関心の段階なら広告で知ってもらう、関心があるならもっと有益なコンテンツを見てもらうなど、顧客の現在地を意識してアプローチ方法を考えることが重要です。

実施・運用する

設計段階が終わったら、オウンドメディアなどを使って情報発信を開始します。単に公開するだけでは誰も来ないため集客施策が必要です。SEO対策による検索流入狙いだけでは、上位表示が実現するまで誰も見てくれない状態が続くため、SNSや広告を使って勢いをつけるのもよいでしょう。

運用開始の段階になると、コンテンツ更新やキャンペーン、オファーの準備など、業務が多くなってきます。無駄を省き、施策の効果を最大化するためにも、実現可能性があるものを選定し、運用中は適宜分析をしながら効果の高い施策に注力しましょう。

コンテンツは見込み顧客のニーズ充足や購買意欲を高めるために重要なものです。満足度が高ければシェアによる拡散効果も期待できます。また、購入の見込みがある顧客情報を取得するためにも、コンタクトフォームや問い合わせ、資料請求などのアクションボタンを設置するようにしましょう。

改善を行う

運用開始後はPDCAを回し、定期的に改善を実施していきます。初めから大きいコストをかけて運用すると方針変更がしづらいため、小さく始めて成果を積み上げつつ規模を拡大していくやり方がおすすめです。

効果を測定する際には、顧客の反応を表すものとして以下の指標が参考になります。

・セッション数
・PV数
・CV
・MQL数
・目標ページへの移動数(問い合わせ、CV用のページなど)
・問い合わせ数

集客の指標となるのは、ユーザーの訪問を表すセッション数やPV数です。CVや問い合わせに関しては、ユーザーが目標ページへ移動した数と最終的にアクションに繋がった数を確認し、どれくらい差があるかを調べることで取りこぼしが分かります。MQL数は優良な見込み客の人数であり、企業としては囲いたい対象でもあります。こういった指標は、解析ツールなどで分析することで改善の手掛かりが掴めます。

インバウンドマーケティングのよくある課題

マーケティングの実践段階でよく発生する課題はいくつか存在します。インバウンドマーケティングが抱える負の側面を知ることで、その解決策を見つける手掛かりにもなるでしょう。

時間がかかってしまう

広告や営業が主力のアウトバウンドと違い、インバウンドは顧客に見つけてもらう必要があります。そのうえ、意思決定や双方の信頼関係の構築といったプロセスを経て成果に結びつきます。したがって、結果が出るまでに時間がかかることを理解しておきましょう。

特に初めは誰にも見られない状態で情報発信を続けるため、目に見える結果が出るまでが大変です。さらに、やり方が間違っているとまったく効果がでない可能性もあります。基本的なこととして、インバウンドは顧客が情報を見て判断するマーケティングのため、一方的な発信は避けてコミュニケーションを取る意識で伝え、中長期的に考えることが重要です。

費用対効果が分かりづらい

短期間で効果を出すのが難しいこともあり、費用対効果が分かりづらいのも欠点です。費用対効果の予測が可能なほどデータがそろった状態なら話は別ですが、大抵の場合は手探りで進めることになるでしょう。

改善を繰り返していくうちに質の高いリードの獲得に繋がっていきますが、期間や予算、コンテンツ作成とリサーチの労力がどれくらいになるかはマーケティングのノウハウや経験、顧客の理解度次第で変わってきます。予測が立たない点やコストなどを考慮すると、目的や商材などの条件によってはアウトバウンドの方が適していることもあります。

人材の配置が難しい

インバウンドマーケティングでは、継続的な情報発信が生命線です。潜在顧客へのアプローチやコミュニケーションはコンテンツを介して行うため、有益な情報を公開し続ける必要があります。

コンテンツ制作にはリサーチやメディアの設計、記事を作成するライターなどの人材が必要です。ノウハウや経験が不足している場合は、学習期間や担当者への教育などのコストもかかります。それらを乗り越えて公開段階に至ったとしても、コンテンツ制作やメディア運用の人的コストが継続的に発生するデメリットがあります。担当者の負担が大きい、日常業務に支障が出るなどの場合、コストはかかりますが外注できる部分はアウトソーシングするのもひとつの手です。

インバウンドマーケティング成功のポイント

顧客からやってくるインバウンドマーケティングを成功させるためには、押さえておきたいポイントがあります。以下で紹介するアプローチを取り入れ、施策を成功へと導きましょう。

問い合わせには迅速に対応する

問い合わせがあったときなど、顧客からのアプローチがあってすぐのタイミングが一番興味の度合いが高い状態です。時間が経つほど関心が薄れていくため、相手からアクションがあったら素早く対応するようにしましょう。対応が遅いよりも早い方がすぐに疑問を解消できるため、安心感やカスタマーエクスペリエンスを充足できます。

また、資料請求などのアプローチがあった際は、アクセス解析などから顧客がどういう状況にあるのかを把握した上で情報提供をした方が満足度の高い顧客対応になります。

部署間の連携を強化する

インバウンドマーケティングでは、コンテンツ制作や顧客対応など各部門で役割分担があるため、成果を出すには部門同士の連携も重要です。

マーケティング部門はコンテンツ制作やメディア運用という役割をもちます。部門間の連携も、マーケティング部門が調整することがよくあります。特に営業には、どのようなリードを渡せばいいか、渡したあとどうなったかなどの情報共有をすることでマーケティングを改善するヒントが得られます。

営業部門は、マーケティング部門に顧客の声などをフィードバックしてマーケティングの改善に活かします。とはいえ連携が上手くいかないことも多く、その原因はリードに対する認識の違いや共通のKPIがないなどが挙げられます。成果に繋げるためにも、部署間の認識の違いがないようにコミュニケーションをよく取るようにしましょう。

外注を上手く活用する

普段の業務と並行して施策を実行し続ける必要があるため、リソース不足に陥ることがよくあります。2018年に株式会社Nexalが実施した調査によると、国内企業のマーケティング部署設置率は11.7%というデータがあり、専門部署を抱えている企業の方が少ないというのが実情です。

参照元:NEXAL社発表:国内企業のマーケティング部署設置率(2018年5月)

現在では、アウトバウンドからインバウンドへの移行やデジタル化が進んでいるため、マーケティングの重要性に気づく組織も増えていることでしょう。マーケティングをこなせるだけの人手がある場合は問題ありませんが、そうでない場合はマーケティング業務が新たに増えると人手に余裕がなくなる可能性があります。

特に自社にノウハウがない場合、少ないリソースをやり繰りしながら、慣れないコンテンツの作成や新しいツールの利用は手間取ることも多いはずです。マーケティング担当者の負担軽減や業務効率化のためにも、すでにノウハウがあるビジネスパートナーに外注して知見を活用し、早期の成果獲得を目指すのもおすすめです。

インバウンドマーケティングのメリット

課題もあるインバウンドマーケティングですが、取り入れることで様々な効果が期待できます。時間がかかるのがネックであるものの、軌道に乗れば大きなメリットを得られるでしょう。

自社独自の資産になる

インバウンドは成果が出るまで時間もコストもかかりますが、一度結果が出ればメディアはウェブ上に残って潜在~見込み顧客に価値を提供し続けられます。顧客側の興味関心が高い状態でアクションしてもらえるので、顧客獲得に繋がる確率も高いでしょう。

一方、アウトバウンドでは広告が集客の入り口であるため、出稿をやめると流入が途絶えます。顧客獲得のためには常にコストがかかり、必ず回収できるとも限りません。こういった違いから、インバウンドマーケティングで構築したメディアは資産と捉えられます。

広告の押し付けになりにくい

アウトバウンドは、売り手の都合で一方的に情報提供を行うため、嫌がられることがあります。一方で、インバウンドマーケティングは情報発信しつつ顧客からアプローチしてくるのを待つ戦略です。

有益な情報を得ようと、顧客側からメディアなどにアクセスするため、押し付けられている感覚がなく、基本的に嫌われることもありません。反対に、有益な情報をくれるという印象からファンになることもあります。

データが蓄積される

マーケティングツールを活用することで顧客データの蓄積が可能です。自社に興味があるユーザーの行動などを分析できるようになり、継続してデータが集まるほど効果の高いマーケティング施策を打ちやすくなります。

例えば、アクセス解析ツールを活用すれば、ウェブサイトのどのページが成約に貢献したのか、集客の効果が高いページはどれか、どこからの流入が多いのかなどの行動データを取得でき、それをもとにより効果的な施策を考えられます。

SNSとの相性がいい

潜在顧客は、SNSの検索やハッシュタグから自分がほしい情報だけを取得しにいきます。そのため、SNSで情報発信をするときはハッシュタグや検索キーワードを意識することで、興味を持ってくれた潜在顧客を自社メディアに誘導しやすくなります。さらに、有益な情報ならSNSでの拡散も期待できるため、大きな集客効果も見込めるでしょう。

営業が効率化しやすい

インバウンドマーケティングで集客すると、購買意欲が高い顧客を獲得しやすいという特徴があります。リードを獲得してナーチャリングプロセスでコミュニケーションを取り、購買意欲が十分高まった段階で営業部門にリードを渡せば、その後の営業活動も円滑に運ぶでしょう。

アウトバウンドの場合、営業は顧客の関心に関係なくテレアポなどから始めるため、断られる可能性も高く、担当者の心理的な負担も大きいはずです。しかし、インバウンドなら顧客自ら温度感を高めて接触してくれるため、購入意欲が高く、担当者もストレスなくセールスが可能でしょう。また、効率化が進めば、重要な顧客のみにリソースを集中しやすくもなります。

インバウンドマーケティングで必要なツール

施策を実行する際にITツールを活用すれば、業務の効率化に繋がります。以下で紹介するツールの特徴を比較し、自社に合ったものの導入を検討してみてください。

MAツール

MAツールは、リードジェネレーション~クオリフィケーションに必要な一連のプロセスを自動化するツールです。見込み顧客のマネジメントをする際などに有効です。

対応機能は製品によって異なりますが、主な機能としては以下のものが挙げられます。

・顧客との接点となるフォーム、チャットボットなどの作成
・見込み客とコミュニケーションを取るメール機能
・絞り込みに役立つスコアリング機能
・アクセスログの取得
・レポート作成

MAツールを使用するメリットとして、顧客情報や対応状況がツール内に集約される点があります。社内のメンバーへ円滑に必要な情報が共有され、属人化の防止に繋がります。顧客データの蓄積やレポート機能の利用で、数字や履歴に基づいた判断も可能です。購入意欲の高い見込み顧客の選定もしやすくなります。

CRMツール

CRMツールは「顧客関係管理」と言い、自社の顧客情報を一元管理できるツールです。顧客のデータからニーズを把握し、そのときの状況に適したコミュニケーションやアプローチを実行するのに役立ちます。

ツールには、顧客の基本情報・属性・好みなどの情報管理、購買履歴管理、営業管理、問い合わせ管理などの機能が備わっており、データに基づいて顧客のニーズを予測し、効果の高いマーケティングを実施するのに便利です。ツールによっては、既存顧客以外に成約前の見込み顧客を管理できるものもあります。

CRMのひとつであるYappli提供の「Yappli CRM」では、アプリのダウンロードのみで簡単に顧客管理を導入でき、データをベースにした顧客のスコアリングやリアルタイムな施策をサポートします。そのほかにも多数の機能を搭載しているため、詳しく知りたい方は以下のページをご参照ください。

CMSツール

CMSは、コンテンツの管理や保存をするためのシステムです。コンテンツの作成を効率化するツールでもあります。CMSを使わないサイトはウェブページをひとつずつ作成する必要がありますが、CMSを使うとウェブページを簡単に生成可能です。

多くのCMSには、サイト構築用のテンプレートが備わっているため、サイト作成の専門知識がなくても本格的なウェブ制作や更新ができます。自社運用が簡単に実現するため、外注コストの削減に繋がるでしょう。SNSとの連携も簡単で、コンテンツがシェアしやすい導線もサイト上に作れます。

CMSにはオープンソース型やパッケージ型、クラウド型などの種類があるため、選定の際は自社の要件や使いやすさを確認するようにしましょう。

インバウンドマーケティング企業の成功事例

インバウンドマーケティングを取り入れて、成果をあげた企業は数多く存在します。以下では、具体的な成功事例を3社紹介しますので、自社で導入する際の参考にしてください。

パナソニック株式会社

パナソニック株式会社では、重要な顧客リストの属人化が大きな課題となっていました。情報共有のExcelファイルは存在したもののメンテナンスが行き届いておらず、各部署に顧客情報が散らばり、誰も全体を把握できていなかったそうです。加えて、従来の営業スタイルが足を引っ張って、営業フローが十分に効率化されず、デジタル化も遅れていました。

上記の課題を解決するために、導入されたのがMAです。2ヶ月の導入期間を経て稼働した結果、マーケティングプロセスの見直しと施策改善が行われ、リード獲得数が4倍になりました。

MAの導入によって顧客がどのページを見たか把握することが可能になり、ニーズを理解した上でアプローチできるようになっています。また、改善にあたってはセミナー申込みフォームの構築、ポップアップ施策などのインバウンドマーケティングに関する手法が取り入れられています。MAツールの導入時は、現場に浸透するかどうかという懸念もありましたが、使いやすいツールを選んだおかげで円滑に利用が進んでいます。

 

パーソルホールディングス株式会社

パーソルホールディングス株式会社では、オウンドメディアの運用で発生したマーケティングの課題をインバウンド手法で解決しています。

同社は、もともとイベント出展や広告出稿などがメインだったところ、コロナ禍をきっかけにメディア運営を始め、検索流入を増やすSEO対策を強化してきました。しかし、ノウハウがなかったため、具体的に何をすればよいか分からなかったそうです。手始めにコンテンツマーケティングから開始しましたが、問い合わせや商談に繋げるにはどうすればよいかという点でつまずいていました。

この課題を解決するために、成果から逆算してメディアの運営を開始します。ただ単にコンテンツを作るのではなく、商談や受注などのアクションが期待できるキーワードに絞りつつ、コンテンツ作成を行いました。

KGIを定めた上でPDCAを回し続けた結果、1年で流入が3倍、CV数は5倍以上という成果が出ています。特にCVに繋がりやすいキーワードを意識してコンテンツ作りをしたおかげで、成果に繋がる上位表示が実現したとのことです。

株式会社ウィルオブ・ワーク

株式会社ウィルオブ・ワークには、テレアポ文化が根強く残り、オウンドメディアの運営ノウハウがないという課題がありました。インバウンドマーケティングの手法であるオウンドメディア運営においては、理解の浅さからPVが伸びるだけで成果が出ないという壁に直面しています。

「事業に結びつく成果が出ない」という課題の解決方法として、まずは認知拡大とリード獲得という成果目標を設定した上で、PVの多い記事を削除することから始めました。それは、PVは多くても認知拡大やリード獲得に繋がらない記事だったためです。成果にまったく繋がらないものを「負債コンテンツ」と呼び、公開していても悪影響になります。

その後、求める成果から考えてメディア設計をやり直し、潜在顧客とのコミュニケーションの入り口になるような記事の作成を実施します。その結果、BtoBオウンドメディアにおいてリード獲得件数が約30倍に急成長しました。以前は毎月4、5件だった問い合わせ件数が、月130件に増えています。もともとアウトバウンド的なやり方が根強く、受注率が苦しかった組織にもインバウンドマーケティングという新しい風が吹いたそうです。

まとめ

顧客の意思決定を重視するインバウンドマーケティングは、誰でもすぐ調べやすくなった時代に適したマーケティング手法です。成果が出るまでに時間はかかりますが、顧客の獲得コストが低くなるなどのメリットがあります。自社に合ったツールを用いながら、顧客側から来てくれるようなSNSや自社メディアを運営しましょう。