「マイクロモーメント」とは、人が「何かをしたい」と思ったとき、目の前にあるスマートフォンやタブレットなどのデバイスを用いて、行動を起こす瞬間を指す言葉です。Googleが2015年に提唱しました。このマイクロモーメントを的確に把握し、顧客のニーズを理解することで、企業には大きなビジネスチャンスが生まれます。
本記事では、マイクロモーメントを把握する方法や、マイクロモーメントから顧客ニーズを知る方法についてご紹介します。また、マイクロモーメントに対応するためにアプリ開発を行う企業も増えています。その理由についても解説します。
目次
マイクロモーメントの4分類
マイクロモーメントは、大きく4つの「モーメント(瞬間)」に分類されます。この4つのモーメントとはどのようなものなのか説明しましょう。
知りたい(I want to know)
知りたい(I want to know)のマイクロモーメントは、何かを「知りたい」と思った際に、行動に移す瞬間のことです。物事について知りたいと思ったら、手元のスマートフォンなどを使って、その物事について調べるでしょう。
例えば、「お菓子のテレビCMが気になったから、ちょっと検索してみよう」「電車の乗り換えに最適な車両は、前から何両目か調べてみよう」といった具合です。
行きたい(I want to go)
行きたい(I want to go)のマイクロモーメントは、どこかに「行きたい」と感じ、その場所を探す瞬間のことを指します。
例えば、「友人との待ち合わせ場所を確認するために、スマートフォンで検索する」「近くのおいしいレストランを探すため、スマートフォンで周辺情報を検索する」といった行動です。この「周辺情報(near me)」検索の数は、年々増加しています。
したい(I want to do)
したい(I want to do)のマイクロモーメントは、何かしらの行動を起こしたいときや、やり方などについて調べる瞬間のことです。
例えば、「ワインを飲みたいから、コルクの開け方について調べる」「動画を作りたいので、編集のコツを検索する」といった具合です。なお、Googleの2015年3月の調査によると、Googleのユーザーの91%は、「したいこと」をするための方法について、スマートフォンを活用して調べています(参照)。
買いたい(I want to buy)
買いたい(I want to buy)のマイクロモーメントは、何か欲しいものがあり、買い物をしようとする瞬間のことを指します。
例えば、「新しい冷蔵庫を買いたいと思ったとき、比較サイトで機能や値段を調べる」「急に洋服が欲しくなり、トレンドのデザインを検索する」といった行動です。グローバル・マーケティング・リサーチ会社のイプソスによる2016年4月の「マイクロモーメント調査」では、8割のモバイルユーザーは、店舗での買い物の最中にスマートフォンで商品などについて検索したことがあることがわかっています(参照)。さらに、買い物中に商品を検索したユーザーのうち、7割が検索結果を商品購入の参考にしています。
マイクロモーメントを把握するための方法とは?
以上の4つのマイクロモーメントは、いずれもスマートフォンと強い関係性があります。マイクロモーメントを適切に把握し、顧客のニーズを理解するには、スマートフォンユーザーの行動を分析する必要があるのです。
続いては、ユーザーのマイクロモーメントを把握するための具体的な方法をご紹介します。
モバイルでの主要な検索キーワードを探る
まず行うべきは、スマートフォンなどのモバイルデバイスにおける主要な検索キーワードを検討することです。
顧客がスマートフォンで検索するキーワードの多くは、マイクロモーメントに紐づいているといっても過言ではありません。自社のビジネスに関係するキーワードの検索ボリュームをチェックし、顧客が何を求めているのかを4つのマイクロモーメントにあてはめて分析しましょう。
ユーザーの動向を探る
マイクロモーメントから探り出すべき要素のひとつが、ユーザーの声や動向です。特に、自社のビジネスに関連するキーワードで、「~とは」「いつ」「方法」などを含む検索キーワードに着目してみてください。これらは、ユーザーが疑問に感じたことを、検索して解決しようとしている可能性が高いことを示すキーワードです。
こうしたユーザーの疑問を解消できるようなコンテンツや商品、広告を提供すれば、自社のビジネスを拡大することができるでしょう。
消費者調査を積極的に活用する
マイクロモーメントの分析に有効なのが消費者調査です。消費者調査のためのツールとしてGoogleは、「Google サーベイ」を提供しています。
消費者調査で確認するのは、ユーザーが「いつ」「なぜ」「どこで」スマートフォンを使って調べているのかという、マイクロモーメントの背景となる点です。
例えば、ある地域で働く人の多くが、平日にスマートフォンでランチのための店を検索しているのであれば、その地域で働く人はランチに行く店について、何らかの不満や課題を抱えていることがわかるはずです。こうした調査を理解し、自社のアプローチを検討していきましょう。
カスタマージャーニーから消費者インサイトを分析する
ユーザーが認知から購入に至る一連のプロセスを、カスタマージャーニーといいます。例えば、店舗で商品を認知したら、ウェブサイトで他社商品と比較検討し、通販サイトから購入に至るという流れです。
このカスタマージャーニーから、消費者インサイト(潜在的欲求)を分析し、マイクロモーメントを見つけ出しましょう。「知りたい」「行きたい」「したい」「買いたい」という4つのマイクロモーメントが、どの段階で発生しているのかを見極めることが大切です。
店頭インタビューを行う
実店舗を持つビジネスの場合、店頭で消費者にインタビューを行うのも有効なマイクロモーメントの分析方法だといえるでしょう。消費者は店内でも積極的にスマートフォンで他店の価格や商品の口コミ、レビューを調べています。
このような消費者に対して店頭で実際にインタビューすることで、消費者が必要としている情報など、貴重なデータを得ることができます。
ユーザーのマイクロモーメントに応えるアプリの活用方法
ユーザーのさまざまなマイクロモーメントに応え、ビジネスを拡大するためには、スマートフォンアプリの活用がおすすめです。
続いては、なぜマイクロモーメントに応えるために、アプリが適しているのかについてご説明します。
企業やブランドの認知率を上げる
スマートフォンアプリを導入することで、企業やブランドの認知率を上げることができます。
マイクロモーメントが発生し、多くのユーザーがスマートフォンで情報を得ようとしたとき、真っ先に目に入るのはアプリのアイコンでしょう。アプリのアイコンは大抵の場合、企業のロゴやイメージカラーなど、そのブランドを象徴するビジュアルになっているはずです。
つまり、アプリのアイコンを見ることで、ユーザーはそのブランドを自然に思い浮かべるようになるため、認知率を向上させることができるのです。
ユーザーが求めている情報を的確に提供できる
アプリならではの特性として、ユーザーが求めている情報を的確に提供できる点が挙げられます。
例えば、アパレルブランドのアプリであれば、男性ユーザーにはメンズの商品だけを表示します。小売店のアプリの場合であれば、ユーザーが店をお気に入りに登録している店舗の情報を真っ先に表示するといった具合です。
意図的にアクションを起こすことができる
スマートフォンアプリのプッシュ通知機能を使って、ユーザーに意図的にアクションを起こす方法もあります。プッシュ通知機能は開封率が高く、店舗などの情報を配信するのに有効な手段です。
特に、ユーザーが端末の位置情報をオンにしている場合、「ジオプッシュ」がマイクロモーメントの想起に役立ちます。ジオプッシュとは、指定したロケーションの近くにユーザーが来たとき、プッシュ通知を配信するという機能です。店舗やイベント会場といった場所へ、ユーザーを誘導するのに効果的です。
マイクロモーメントを把握してビジネス拡大につなげよう
マイクロモーメントとは、人が何かを「したい」と思ったときにスマートフォンなどで行動を起こす瞬間を指す言葉です。「知りたい」「行きたい」「したい」「買いたい」という4つに分類されます。
マイクロモーメントの活用に有効なのが、スマートフォンのアプリです。ユーザーのマイクロモーメントに応えるためにアプリを活用し、自社のビジネス拡大につなげていきましょう。