従業員の”知識”をどう上げる?本部や企画部署に足りない現場視点とは

あらゆる産業でコモディティ化が進み、競争が激化する現在、実際に顧客と対面し、商品を販売する営業や販売スタッフの重要性が増しています。自社の商品を正しく理解し、顧客のニーズに応じて提案する力が、企業の競争力を左右する鍵となる要素であることは言うまでもありません。

しかし、頻繁に更新される商品内容、商品内容の複雑さ、商品数の多さなど、自社の商品内容を正しく把握すること自体が困難、という現場の声も多いのが事実です。

そうは言っても、営業企画や事業企画など、情報を発信する側も、様々な手段を使って、営業や販売スタッフに情報を届けようと手を尽くしているはずです。紙のカタログや、Webサイト、研修や説明会での口頭説明……

にも関わらず、なぜ「情報が伝わらない」という問題が生じてしまうのでしょうか。

今回は、この問題の原因と、それをデジタルの力で解決する方法、具体的な事例をご紹介します。

現場の環境、理解できていますか?

現場の営業や販売スタッフに情報を伝えようとするとき、その手段は多岐に渡ります。
みなさんも、紙の資料やパンフレット、Webパンフレット、研修など、様々なチャネルを通じて情報を発信されているはずです。これらの更新にもかなりの労力がかかっているはずで、「こんなに力を入れているのに、なぜ商品の理解が深まらないのか」と悩まれている方も多いと思います。

ですが、今の施策/情報発信方法は、受け取り手の状況まで考えた上で実施できているでしょうか?
「商品を覚えきれない」
「知識不足を感じているが、学習に割く時間が足りない」
という営業に、本部からの情報共有が足りないのか?と尋ねてみると、以下のような回答が返ってくることがあります。

「現場にいることが多く、業務中にPCを開いて学習するのは現実的ではない」
「パンフレット、メール、Webサイト、勉強資料など、情報が点在していて探しにくい」

つまり、情報共有自体が足りていないというより、受け取り手の状況に適した、閲覧環境が整っていないことが問題なのです。隙間時間に学べたり、すぐ調べられたりする仕組みが整っていないと、いくら一方的に情報を発信しても、見てもらうことはできないでしょう。

また、「上司が研修で聞いてきた話を又聞きする際に情報に漏れがある」など、いわゆる「伝言ゲーム」が発生することで、現場にインプットされている情報自体に誤りがあるケースもあります。

現在取り組まれている情報発信にもっとも欠けているのは、こうした「現場の視点」だといえるでしょう。

モバイルを活用して、情報伝達の非効率を改善

それでは、どのように「現場の視点」を取り入れて、情報伝達の仕組みを改善すれば良いのでしょうか。
ここで重要なのが、「モバイルファースト」の発想です。近年は、スマートフォンの普及とともにビジネスでもモバイルデバイス活用が進んでいます。

そこで、まずは、伝えたい情報を、モバイルで閲覧できるようにすることを目指すと良いでしょう。具体的には、紙のカタログをスマートフォンに最適化した形で電子化するのがおすすめです。すでにWebサイトに商品情報が掲載されている場合でも、PCだけでなくスマホでスムーズに閲覧できることが、さきほど指摘した「現場の視点」からすると重要になります。

また、せっかく電子化したとしても、見たいときにすぐに見ることができなければ意味がありません。
そこで、電子化したカタログを閲覧するためのアプリを用意するのも一つの手です。スマホのホーム画面上で、そのアプリをクリックすれば、欲しい情報にすぐにアクセスできる状態にすることが理想です。

カタログのアプリ化には、他にも下記のようなメリットがあります。
・ちょっとした隙間時間でも、スマホを開けば自己学習ができる
・様々なチャネルに点在した情報を、ひとつの場所に集約できる
・商品紹介の内容など、更新があった際はプッシュ通知で通知できる
ぜひ、モバイルを活用した情報伝達の仕組みを検討してみてください。

具体的な企業の取り組み3選

最近は、自社アプリを開発して、情報伝達を改善する企業が増えています。ここでは、3つの企業の取り組みを、Before/After形式でご紹介します。

「業務中に資料を読む時間がない」を解消 オルビス株式会社

Before

情報提供は、基本的には「紙」でした。

チーフ会議の資料/勉強会の資料を紙で配って店舗内で回覧していました。しかし、販売スタッフからすると、店舗内でじっくり資料を読む時間を作ることは困難。そのため資料はあるものの勉強することが難しかったのです。

 

After

スタッフ向けのスマートフォンアプリを導入して、本部から販売スタッフに直接情報を届ける体制を構築しました。

 

当初、個人のスマートフォンにダウンロードすることに販売スタッフから反発の声が上がらないかと、本部側で懸念をしていましたが、販売スタッフからの反応は予想外のものでした。

「早くこういうのが欲しかったです。」という声が大半だったのです。

他にも「資料がいろんなところに散らばっていたのが、集約されている。」「自分が調べたい・見たいと思った時にすぐに探せる。」とポジティブな意見が上がりました。

 

詳しくはこちら:https://news.yappli.co.jp/n/na4dfc7443058#Ko4F8

 

「知りたい情報が見つからない」を解消  株式会社エクシング(JOYSOUND)

Before

カラオケ機器についての新着情報を定期的に発信しているのですが、一番伝えたい営業マンまで行き届かない場合が多かったんです。

紙媒体だけでなく、メールでの案内やインターネット上にマニュアルをアップロードするなど、なんとか閲覧していただける状態を目指していたのですが、逆に情報が散乱してしまって。マニュアルを見ればすぐに解決できるような事象が起きても、情報が散漫し、ヘルプデスクに頼らざるを得ない状況が続いていました。

 

After

「ここさえ見れば疑問や不安を解消できる、営業マンが望む情報が全て集約される場を作ろう」と思いたち、手段としてアプリが一番いいだろうと判断しました。

アプリを導入してから、予想以上にすぐ成果が出ました。リリースから3ヶ月後、ヘルプデスクへの問い合わせ数が昨対比で15%も減少したんです。

これほど早く成果が出るとは思っていませんでしたね。

 

詳しくはこちら:https://yapp.li/voice/joysound.html

「本部から現場へのアナログな伝言ゲーム」を解消 株式会社ダスキン

Before

これまで、本部から現場への情報伝達は4週間に1回実施される会議で行われていました。

会議には約200店舗の事業責任者が集まり、資料を見ながら口頭で情報共有を行い、情報を受け取った事業責任者は、店舗に持ち帰り各リーダーに再び資料と口頭で情報共有します。

そこから各リーダーがお客さま係にご案内するわけですが、こうやって伝言ゲームを重ねていけばいくほど、当然情報の精度は低くなります。結果、異なる情報がお客さまに伝わってしまうケースが度々起こってしまうんです。

After

お客さま係は年配の方も多く、ネット上に情報を掲載してもパソコンではなかなか見てもらえません。

でも、パソコンは見なくてもスマホはよく使われるのではないかと考え、アプリを導入することにしました。

アプリ導入に対し、当初は社内から多くの反対意見が寄せられました。特に「年配だとスマホは誰も持ってないんじゃないか」という意見が多かったので、実際、お客さま係の皆さんに確認してみたんです。すると、皆さん100%スマホを持っていました。これなら確実にいけると。

アプリを導入した結果、お客さま係全員に直接情報を伝えられるようになったので、伝達の精度は大幅に向上しました。結果、4週間に1回の会議が不要になり、会議自体を廃止し、年間だと数千万円単位の経費削減に繋がりました。

お客さま係の皆さんからも好評です。

 

詳しくはこちら:https://yapp.li/voice/duskin.html

 

まとめ

社内の非効率を改善するために、いまDX(デジタルトランスフォーメーション)へ注目が集まっています。
ところが、プロジェクトの難易度の高さから、DXが途中で頓挫していまうケースも多いようです。そのため、まずは上記で紹介したような、身の回りの非効率をデジタルの力で解決することが、即効性の高い施策と言えます。

現場の社員の環境を理解し、学びたいときに学べ、知りたい時に知りたい情報に辿り着ける仕組みをつくることは、知識が向上できるだけでなく、営業力を強化し、従業員の満足度の向上にもつながります。

様々な情報発信チャネルが、混在する現代。
情報発信者は、情報をわかりやすく編集、制作することに加え、受け取り手の環境から、最適な発信方法を模索する視点も持ってみてはいかがでしょうか。