エンゲージメントスコアとは? 測り方や平均、高める方法を解説

エンゲージメントスコアという言葉を耳にしたことがある企業経営者や担当者の方は多いでしょう。従業員のエンゲージメントスコアは、組織の生産性や離職率などにも大きく関わる重要な指標です。
そこで本記事では、エンゲージメントスコアの測り方や平均、高める方法などを解説します。

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働き方や仕事における価値観が変化している昨今において、従業員が自身の日々の仕事に満足できるような体験を提供することで、組織エンゲージメントを高める方法について丁寧に解説。
組織エンゲージメントの向上はなぜ近年、そして今後より大切になっていくのかや、アプリなどのデジタルツールを活用して、従業員の業務を効果的にサポートする方法などを紹介します。

従業員の満足度を上げる組織エンゲージメントの高め方

エンゲージメントスコアとは

従業員の会社に対する愛着や信頼を数値化したものが、エンゲージメントスコアです。
従業員が自社にどの程度愛着を抱いているのか、どれくらい組織に貢献したい気持ちを抱いているのか、といったことを可視化できるのが特徴です。
従業員が会社に強い愛着を抱いていれば、意欲的に仕事へ取り組んでもらえ、生産性の向上や離職率の低下につながります。ただ、従業員が自社にどの程度愛着を抱いているのかは分かりづらく、管理者や経営者が正確に把握するのは困難です。
そこで活用できるのがエンゲージメントスコアです。従業員の愛社精神を数値化すれば、現状における課題が明確になり、リアルタイムに具体的な対策を行えます。
課題に対し素早く適切な対応をとることで、従業員のことをきちんと考えている企業であることもアピールでき、よりよい関係の構築・維持にもつながります。

関連記事:エンゲージメントとは?重要性や成功事例をご紹介。 

エンゲージメントスコアが注目される背景

人的資本の活用が重要視されている

近年、人的資本の概念が日本国内にも広がりつつあります。
企業経営においても、従来のように人材を資源(リソース)としてではなく、事業を営むのに不可欠な資本として投資対象とし、企業価値の向上を図る人的資本経営が注目されるようになりました。

従業員に十分な投資を行えば、エンゲージメントが高まる可能性があります。
エンゲージメントが高い従業員は、組織に貢献しようと意欲的に仕事へ取り組むため、生産性の向上につながります。
その結果、企業価値の向上を図れるのがメリットです。

また、ESG投資(※)がトレンドとなり、現在では投資家が投資先を選ぶ際に従業員のエンゲージメントも重視するようになりました。日本でも人的資本の情報開示が一部の上場企業を対象に義務づけられています。

(※)ESG投資 |ダイバーシティの推進や環境問題への配慮といった、非財務情報を判断基準にして投資を行う方法。環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を取っている。

日本企業のエンゲージメントスコアの低さが問題視されている

日本企業で働く従業員のエンゲージメントスコアは、世界的に見て低くなっています。2012年にアメリカの人事コンサルティング会社「KeneXa High Performance Institute」が、世界28ヵ国を対象に行った従業員エンゲージメントに関する調査では、日本が最下位でした。

参照元:DIAMOND ONLINE世界でダントツ最下位!日本企業の社員のやる気はなぜこんなに低いのか?

また、同じくアメリカの世論調査会社「Gallup」が行った調査でも、従業員エンゲージメントが強い従業員の割合は5%となり、129ヵ国中で128位とほぼ最下位に近い位置です。

労働人口が不足している

日本の人口減少に伴う労働人口不足も、エンゲージメントスコアに注目が集まる理由のひとつです。少子高齢化が深刻な社会問題となっている日本では、人口が減少の一途をたどっています。

厚生労働省の資料によると、1980年には2,751万人だった14歳以下の人口が、2015年には1,611万人まで大幅に減少しました。このまま人口減少が進むと、2030年には総人口が1億1,662万人、2060年には8,674万人と1億人を切ると見られています。

労働人口が減少すると、人材の確保が今まで以上に難しくなることが考えられ、企業にとって大きな問題となります。企業が人材を確保し続けるには、従業員が離職しないよう適切な対策を施すことが重要です。そのためには、従業員の企業に対する愛着や信頼を可視化する必要があります。

参照元:厚生労働省「平成28年版 労働経済の分析 -誰もが活躍できる社会と労働生産性の向上に向けた課題-」

課題が明確になる

エンゲージメントスコアを測れば、課題が明確になるため何をすべきかが分かります。
たとえば、従業員の配置を換えた途端にエンゲージメントスコアが大きく下がったのなら、従業員が新たなポジションに大きな不満を抱いている可能性があります。それが分かれば、迅速に改善策を講じて状況の悪化を回避できます。これ以外にも、定期的な調査を行うことにより、表面化しづらい慢性的な不満なども拾い上げることができる可能性があります。

客観的に他社と比較できる

エンゲージメントスコア測定を行えば、結果を他社と比較できます。競合の他社がエンゲージメントスコア計測を行っていることが前提ではありますが、計測した結果を公開しているのなら、自社のエンゲージメントスコアと客観的に比較できます。 そのうえで、自社にどのような課題があるのかを把握できる点がメリットです。競合他社に劣っている部分が明確になるため、適切な対策を行えます。また、他社にはない自社ならではの強みも浮き彫りになるため、今後の経営戦略や採用活動などでその部分をアピールできます。

エンゲージメントスコアが高いことで得られるメリット

労働生産性を高められる

エンゲージメントスコアが上昇すると、労働生産性が高まる効果が期待できます。エンゲージメントスコアが高い=「自社にもっと貢献したい」という意欲が強いことを意味するため、高いモチベーションを保って業務に取り組み、結果的に生産性が高まると考えられます。

生産性が高まれば、これまでよりも少ない人員で従来と同等、もしくはそれ以上の成果を期待できるのが魅力です。
現場を少ない人員で回せるようになれば、コストダウンにもつながるほか、人材不足へも対応できます。

従業員のエンゲージメントスコア上昇によって労働生産性が高まるのは、厚生労働省の資料でも示されています。
同資料によれば、エンゲージメントスコアが1単位あがれば、それに伴い労働生産性が1~2%高まることが分かっています。

参照:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」  P198

離職率の低下につながる

従業員のエンゲージメントスコアを把握し、時と場合に応じた適切な対策を行うことは、離職率の低下につながります。
少子高齢化と人口減少により人材の獲得が困難になっていく今後は、各企業で従業員が離職させない取り組みが必須といえるでしょう。 離職率の低下によって、採用コストを抑えられる点もメリットです。
従業員が離職してしまうと、空いた穴を埋めるために新たな人材を採用しなくてはなりません。人材を採用するには、求人サイトや求人情報誌などへの広告出稿、応募者の選考、面接などのプロセスを踏まなくてはならず、さまざまなコストが発生します。これを抑えられるのは大きなメリットです。

サービス・商品の質が上がる

エンゲージメントスコアが高い従業員は、自社の商品やサービスに強い自信を持っている状態でもあります。
顧客に対し自社の商品・サービスを積極的に勧められるため、業績アップを促してくれると期待を持てます。

また、エンゲージメントスコアの高い従業員は、外部だけではなく内部でも積極的な働きをしてくれます。今まで以上に真剣な姿勢で業務へ取り組み、自社商品やサービスの改善・改良が進む可能性があります。
これにより、より高品質な商品・サービスが生まれることにも期待できます。

組織課題の発見・解決ができる

何かしら課題があると感じていても、それが明確になっていないと具体的な対策を打ち出せません。そのような状態では課題が放置されてしまい、状況がどんどん悪化するおそれもあります。
そこでエンゲージメントスコアを調査すれば、組織課題を発見する機会を得られます。調査の結果、従業員の仕事に対するモチベーションが低下している、パフォーマンスが以前よりも下がっているといったことが分かれば、具体的な対策を行なって課題を解決することも可能でしょう。
また、組織課題は必ずしもひとつとは限りません。いくつもの組織課題が潜在しているケースもあります。このような場合でも、従業員のエンゲージメントスコアを調べれば、どのような課題があるのかを抽出できるだけでなく、どれから改善に着手すべきかの優先度を見極めることも可能です。

チームや組織の連携が強くなる

従業員のエンゲージメントスコアが高ければ、チームや組織の連携が強化されます。「組織にもっと貢献したい」「自社商品やサービスの魅力をもっと多くの人に伝えたい」といった気持ちを抱く従業員が多ければ、同じ気持ちのもと業務に取り組めるため、スムーズに仕事を進められます。 仲間意識で強く結束しているチームはコミュニケーションも活発であるため、迅速な情報共有が可能です。そのため、必要な情報がメンバーに伝わっていないといったミスも発生しません。手の空いている従業員が、業務が遅れている従業員を積極的にサポートするといったことも、自然と行えるようになります。

企業の信頼が高まる

エンゲージメントスコアを高める取り組みを行えば、従業員から信頼を得られます。従業員の愛社精神をただ調査するだけでなく、発見した課題の解決へ真剣に取り組んで成果を出すことで、従業員からの信頼感を高めていけるでしょう。

また、顧客などの外部からも信頼を獲得できます。自社の製品やサービスに詳しく、自信を持ってそれを伝えられる従業員には、顧客も安心して接することができるでしょう。自社の価値向上に貢献したい従業員は顧客の声にもよく耳を傾ける傾向にあり、ニーズに合ったアイデアを出しやすい状況にあります。これを活用してサービスや商品の質を上げていけば、顧客からの信頼感も相乗効果で上がっていきます。

さらに、採用力の強化につながる点も見逃せません。企業の信頼が高まれば、「この会社で働きたい」と考える人も増えます。その結果、求人への応募が増加し、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。求職者側から「働きたい」と手を挙げてもらえるのは、企業として大きなメリットとなるでしょう。 これらの要素が生み出す好循環は、最終的に企業が大きく成長することにつながっていきます。

エンゲージメントスコアの計測方法

従業員サーベイ

従業員サーベイとは、企業が従業員を対象に行うさまざまな調査のことです。職場の人間関係や労働環境などについてどう考えているのか、問題は発生していないか、不満を抱いていないかなどを把握するための調査です。

従業員サーベイには、従業員のモチベーションを高めるヒントを得るモラールサーベイをはじめ、組織の状況を把握する組織サーベイ、簡単なアンケートを短期間で繰り返すパルスサーベイ、企業と従業員の絆を確かめるエンゲージメントサーベイなどがあります。
従業員サーベイは一般的にアンケート方式で実施するため、質問項目の設定が必要不可欠です。そのため、まずは何を把握したいのかという目的を明確にし、そのうえで質問項目を設定しましょう。
効率的に調査を行いたいのなら、サーベイツールやシステムなどの利用がおすすめです。オンラインでアンケートの配布や回収、分析ができるため、取り組みが効率的になります。また、外部の専門会社に依頼して実施する方法もあります。

エンゲージメントサーベイ

エンゲージメントサーベイは、従業員と企業との絆や関係の深さなどを数値化する調査です。従業員が自社にどの程度の愛着を抱いているのか、貢献度は高いのか、といったことを定量的に把握できます。 エンゲージメントサーベイも、アンケート形式での実施が一般的です。調査項目には、従業員ロイヤルティの計測に適したeNPSや、エンゲージメント診断に適したQ12などを活用してみましょう。 エンゲージメントサーベイを実施したあとは、必ずフィードバックを行うことが大切です。調査だけ実施し、フィードバックもアクションもないとなれば、かえって従業員の反発や不満を招きかねません。

パルスサーベイ

パルスサーベイは、従業員が日常的に取り組んでいる業務に満足しているか、現場で問題は発生していないかといったことを把握するために行われます。 パルスサーベイの特徴は、短期間に何度も調査を繰り返す点です。週1~月1回程度のスパンで行うため、従業員や現場の状況をスピーディーに把握できます。なおかつ、パルスサーベイは1回あたりの質問数があまり多くありません。企業やシーンによるものの、だいたい10問前後の質問しか設けないため、従業員に過度な負担をかけずに回答してもらえます。 さらに、回収後の集計や分析も容易に行えます。調査票の作成にもあまり時間がかからず、企業側も低コストで調査を実施できます。

センサスサーベイ

センサスサーベイは、長期スパンで実施するエンゲージメント調査です。頻度は年に1~2回と少ないものの、1回あたりの調査で50~100問程度の質問項目を用意する点が特徴です。 質問数が多いことによるメリットは、より多角的な視点から正確な状況把握を行える点です。従業員のエンゲージメントはもちろん、満足度や組織との関係性などを可視化でき、潜在している課題の抽出にも有効です。 一方で、分析結果を出すまでに一定の時間を要するため、具体的な施策を実行するまでに時間がかかります。そのため、他の業務に追われたりすると、アンケート調査を行っただけで終わってしまうという事態になりかねません。調査は結果を分析して施策に活かすことで価値を発揮するため、分析結果は必ずフィードバックするように意識しましょう。 なお、質問数が多ければ回答時間も長くなるため、回答率が低くなる傾向が強いことにも注意が必要です。また、集計担当の負担が増加する点にも要注意です。

エンゲージメントスコアの平均

エンゲージメントスコアを高める取り組みを始めたいと考えているものの、そもそも他社はどれくらいの数値なのか、と疑問を抱く企業経営者や担当者の方もいるかもしれません。
実は、全業界のエンゲージメントスコアデータがインターネット上に公開されています。 データを公開したのは、東京に拠点を構える「株式会社アトラエ」です。
株式会社アトラエは、同社が提供するエンゲージメント解析ツールの利用企業2,240社を対象に調査を実施し、全体の平均が70.3点であったことを2022年に公表しています。

参照元|株式会社アトラエ【Wevox】2021年度 業界別のエンゲージメントスコアの特徴を発表〜8,820万件超えの回答データを徹底分析〜

エンゲージメントスコアを高める方法

エンゲージメントスコアに関連する要素の理解

エンゲージメントを構成する要素を理解していないと、調査を実施しても、その後の効果的な改善につながりません。そのため、いきなり調査を始めるのではなく、まずはエンゲージメントスコアに関連する要素について理解を深めましょう。
要素としては、待遇への満足度や管理職のリーダーシップ、業務に関する権限や裁量、教育・研修の充実度などが挙げられます。アメリカの「コーンフェリー社」が、エンゲージメントスコアを大きく左右する12の項目をピックアップしているので、参考にしてみましょう。

企業内のコミュニケーションを活性化

企業内のコミュニケーション活性化を図るのも、エンゲージメントスコア向上に有効です。
コミュニケーションが活発でないと、従業員の不平や不満を汲み取れません。
その結果、従業員を置き去りにした経営戦略やビジョンを打ち出し、エンゲージメントスコアが低下する、といった悪循環を生み出すおそれがあります。 このような事態を避けるべく、従業員の言葉にはきちんと耳を傾けなくてはなりません。

また、企業としてのゴールやビジョンを従業員に周知し、理解してもらうためにもコミュニケーション活性化に取り組む必要があります。 コミュニケーション活性化のアイデアとしては、フリーアドレス制やビジネスチャットツールなどの導入が考えられます。社内SNSの運用も有効です。

管理職のマネジメント力の向上に力を入れる

従業員のエンゲージメントスコアを向上させるためには、管理職に高度なマネジメントスキルが求められます。管理職が従業員と適切に交流を図り、組織のビジョンやゴールを示すことで、エンゲージメントスコア向上を実現できます。 そのためには、管理職自身がエンゲージメントスコアの重要性を正しく理解しておかねばなりません。必要に応じて、管理職を対象とした研修を実施するのもひとつの手です。

外部に向けて自社の魅力を発信する

従業員のエンゲージメントスコアを高める取り組みが成功すれば、その事実を外部へ向けて発信しましょう。
自社の公式HPやブログ、SNSなどを用いて積極的に情報を発信します。 素晴らしい取り組みと成果を発信することで、企業が高く評価される可能性が上がります。その結果を受けて、従業員たちはより誇らしい気持ちになれ、さらにエンゲージメントスコアが高まります。そのような情報から求人への応募数が増えたり、新たな取引先が増えたりする効果も期待できます。

インナーブランディングを行う

インナーブランディングは、組織内部を対象としたブランディングです。自社商品やサービスの魅力を従業員に紹介して好きになってもらえれば、従業員が自発的に商品やサービスの魅力を発信してくれます。 手法としては、商品やサービス、ブランドの従業員向け紹介動画作成や、社内SNSを活用した情報発信などが挙げられます。

継続して計測する

エンゲージメントスコアは、継続的な計測によってより大きな成果が期待できます。一度計測して終わりではなく、定期的かつ継続的に計測を実施しましょう。
無論、エンゲージメントスコアを測るだけでは意味がありません。調査で得た結果をどう活かすかが重要です。調査結果に基づいて、課題を解決するための具体的な施策を立案し、実行しましょう。調査と分析、施策の実行を繰り返すことで、従業員に「きちんと対策してくれている」と実感してもらえ、さらにエンゲージメントが高まります。

社内アプリを用いてイキイキした組織を!

エンゲージメントスコアを高めるには、社内システムを使いやすくする工夫も求められます。たとえば、自社アプリケーションを開発し、従業員が直感的に業務へ取り組みやすい環境を構築するのもひとつの手です。

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