Web3(Web3.0)とは何? 注目されている理由や代表例を紹介

さまざまな領域でICT技術が進歩している現在、Webのあり方は新世代「Web3(Web3.0)」に移行しつつあります。しかし、このWeb3とは何を意味し、これまでとはどこが違うのでしょうか。本記事では、Web3の概要からはじめ、Web3が注目される理由、Web3サービスの具体例などをわかりやすく解説します。

Web3とは

Web3とは、ブロックチェーン技術を用いた次世代の分散型インターネットを表す言葉です。 現代のインターネット環境は、Google・Apple・Facebook・Amazonといった「GAFA」と呼ばれるビッグテック企業がプラットフォームを展開し、顧客データなどを独占した中央集権型の体制であると捉えられます。 しかし、2021年ごろから現代の中央集権型の体制からの脱却を図った「分散型インターネット」が注目されるようになりました。 ブロックチェーン技術を用いることで、今まで特定のプラットフォーマーに集約されていた情報が分散され、ユーザー自身で個人情報などの管理が可能となるのが、「分散型インターネット」であるWeb3の大きな特徴です。 以下では、Web3が従来のインターネットとどのように違うのか理解を深めるために、Web1及びWeb2との違いを解説します。

Web1との違い

Web1は、黎明期である1990年代のインターネットを指します。 Web1の時代は回線速度が現在より遅かったため、容量の大きい画像・動画の発信はほとんどなく、htmlを用いたテキスト主体の静的なコンテンツで構成されていたのが大きな特徴です。 また、情報の発信者と受信者が固定されている点もWeb3との大きな違いです。 ごく少数の人が発信するテキストやコンテンツといった情報を、大多数のユーザーは一方的に閲覧するというスタイルだったため、メールのやり取りはできたものの、インターネット上では双方向的なコミュニケーションはほとんどできませんでした。

Web2との違い

Web1に代わって2000年代に登場したのがWeb2です。 Web2では、テキストに加え、画像や動画などのコンテンツが充実しました。 また、SNSが普及することで、誰もが広く情報発信できるようになり、発信元との双方向的なコミュニケーションが可能になったことも特徴です。 さらにWeb2では、従来のPCに加えて、スマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイスなど、使用端末の多様性が広がりました。 しかもそれぞれの端末は、インターネット上でデータを同期させることが可能で、ユーザーは一貫したデジタル体験を得ることが可能です。 一方で、Web2ではGoogleやAppleなどの巨大企業が運営するプラットフォーマーにデータが集中したため、一部の企業に個人情報が集約されるリスクや、情報漏洩のリスクが問題視されるようになりました。インターネットの活用が社会的に大きく広がった一方で、企業へのサイバー攻撃や内部不正による情報漏洩などが深刻な社会問題となったため、情報漏洩のリスクを防ぐ技術を導入したWeb3への移行が進むようになったと考えられます。

Web3が注目される理由

いま日本でWeb3への注目が高まっているのは、Web2で生じた個人情報の管理に関する問題が解決できるという見込みに加え、仮想通貨の普及や、Web3の到来を大きなビジネスチャンスと捉える経済産業省の取り組みなどが影響しています。それぞれの詳細は以下の通りです。

個人情報の管理

従来はGAFAをはじめとする企業に個人情報が管理されてきたものの、情報漏洩のリスクが大きいことが懸念されてきました。 たとえば、デジタルマーケティングでは各ユーザーの行動ログなどを収集し、そのユーザーの趣味嗜好を反映した広告バナーなどを表示するのが一般的な手法になっていますが、人によっては企業が一体どこからそうした情報を得たのか不審に思った経験のある人も多いのではないでしょうか。 それに加え、昨今ではさまざまな企業で情報漏洩などの不祥事が相次いだことにより、ユーザーは企業へ個人情報を提供することに対して不信感を持ち始めているのが現状です。 そのため、個人情報を企業が管理するのでなく、自分自身で管理できる体制が望まれるようになりました。Web3では最新技術により個人情報の自己管理が可能となるため、近年注目を浴びています。

仮想通貨の普及

Web3への注目が高まった一因には、仮想通貨の普及も挙げられます。 仮想通貨はブロックチェーンを用いることによって、金融機関など特定の企業を仲介せずとも取引を行い、その情報を安全に保存・管理できるのが特徴です。 そしてWeb3も、仮想通貨と同様にブロックチェーンを基幹技術として用いているため、Web3上の取引では仮想通貨の利用が通常です。 仮想通貨の取引が一般的に普及している現状は、Web3の実現を後押しする一因となっています。

経済産業省が推進している

SNSなどの出現を伴うWeb2の到来が社会や経済に多大な影響を得たように、Web3の実現もまた大きなビジネスチャンスにもなると見られています。 そのため、経済産業省はデジタル庁などと協力しながら、Web3に対応するための事業環境整備に取り組む旨を2022年に発表しました。 コロナ禍やロシアによるウクライナ侵略などによって国際的に経済情勢が不安定になる中、日本としては今後、自国経済の強化に努めたり、国際的な経済秩序の中で存在感を示したりしていくことが非常に重要です。 このような社会背景の中で、地理的制約や資源的制約に縛られることのないWeb3という新しい市場への参入することは、将来的に大きな国益につながることが期待されています。

Web3を理解するのに必要な用語・技術

Web3の理解を深めるためには、ブロックチェーンや仮想通貨をはじめとする関連用語の知識が欠かせません。
Web3を最低限理解するために必要な用語・技術は、主に以下の通りです。

ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、情報を記録するデータベース技術のひとつで、仮想通貨に用いられる基盤技術です。その堅牢な構造から、ネットワーク上でデータを安全に管理できる利点があります。 ブロックチェーンでは、情報が「ブロック」と呼ばれる単位ごとに保存され、時系列順に管理されるのが特徴です。各ブロックは、それが生成された正確な時間と順序にしたがって完全にリンクされているため、後からブロック内の情報を変更したり、2つの既存のブロックのあいだに別のブロックを挿入したりすることはできません。そのため、ブロックチェーンに保存されたデータの改ざんは非常に困難です。
さらに、「分散型台帳」という特性が、ブロックチェーンのデータ保護能力をより高めています。ブロックチェーンは、許可されたネットワークメンバーのみがアクセスできる一種の台帳として機能しますが、この台帳はノード(端末)ごとに分散されて保存されます。 各ノードに保存された台帳は、お互いに情報の真正性を絶えずチェックしているため、もしもブロックチェーン上の情報を改ざん・破壊しようとする場合は、ネットワーク上にバラバラに分散するノード内の情報を一斉に書き換えなければなりません。 ブロックチェーンは上記のように取引情報の真正性を高いレベルで保護できる上、特定条件を満たした場合に自動で契約を履行する「スマートコントラクト」という仕組みも備えています。これらの機能によって、ユーザーは金融機関などの特定企業を介さずとも、安全かつ確実に取引を行うことが可能です。

仮想通貨(暗号資産)

仮想通貨とはインターネット上で自由に取引されるデジタル通貨です。代表例としては、「ビットコイン」や「イーサリアム」などが広く知られています。 仮想通貨はブロックチェーン技術を使うことで、銀行などの仲介者を必要とせず、時間や場所に縛られない取引が可能です。 仮想通貨にも、国が発行する通貨と同様に価値の変動がありますが、その流動性は非常に高く、投資対象として見た場合はハイリスクハイリターンであるのが特徴です。なお、仮想通貨と暗号資産は同じ意味で使われています。

メタバース

メタバースとは、インターネット上に3Dで構築された仮想世界のことです。 ユーザーはアバターを使ってメタバース上を動き回り、他のユーザーと交流をしたり、遊んだり、経済活動を行ったりと幅広く行動できます。 この経済活動では、たとえばメタバース上で使用するアバターのコスチュームや、家、家具などのデジタルオブジェクトなどを取引対象として見なすことも可能です。 あるいはメタバース内で開催されるイベントの参加費用や、メタバース内の土地などもそこに含まれます。 そしてメタバース上の取引で利用されるのが、ブロックチェーンや仮想通貨、あるいは後述するNFTといった技術です。Web3とメタバースは別物であるものの、どちらもブロックチェーンが利用されているため、両者は地続きの関係だと見なせます。 ユーザーがさまざまな活動をすることが想定されるメタバースですが、データの改ざんが難しいブロックチェーンを利用しているため、情報漏洩のリスクも小さいというメリットがあります。そしてWeb3が一般化すれば、インターネットユーザーはメタバース上でさまざまな活動を行うようになるでしょう。

トークン

トークンは、文脈によって定義は変化しますが、一般的には既存のブロックチェーン技術を用いて生成・取引された仮想通貨を指します。 トークンの活用法はさまざまにあり、たとえばゲームなどの特定のサービスにおいて多様な仕方で使える「ユーティリティトークン」、コミュニティ内で議決権などを行使するために使える「ガバナンストークン」、後述する「NFT(代替不可能なトークン)」などの種類もあります。

NFT

NFTは「Non-Fungible Tokens」の略称で、日本語では「非代替性トークン」という意味です。 この非代替性とは言葉通り「代わりが効かない」という意味であり、NFTは複製ができない唯一無二のトークンを表します。 従来のデジタルデータ作品は、複製が容易な点が大きなデメリットです。 そのため仮に芸術家が優れたデジタルアート作品を作ったとしても、一度コピーされてしまえば、元データと複製データの区別が付かなくなってしまい、高い資産価値を付与しにくい現状がありました。 しかし、ブロックチェーン技術を応用したNFTを活用すれば、作品とNFTを紐づけて正真正銘の本物であることを証明できます。仮にデータ自体が複製されたとしてもNFTは複製できないので、本物と複製品の区別が容易になりました。 いくら精巧でも、贋作が本物の価値を超えることはないように、データ自体は同じでも、それがオリジナルであるという証明は、そのデジタル資産の価値を上げることにつながります。 そのためNFTは、web3やメタバースにおける取引で、今後の活用が期待されています。当初はデジタルアートなどを中心に使われていましたが、今ではさまざまなアイテムがNFT化されて売買されるようになりました。

DAO

DAOとは「Decentralized Autonomous Organizations」の略称で、日本語では「分散型自律組織」と訳されます。 DAOの特徴は、通常の会社組織における「上司-部下」のような階層的組織構造を持たず、メンバーそれぞれの自主性が尊重される点です。 DAOには、年齢や性別・国籍などの区別なく参加可能で、組織の行動指針は参加者の投票によって決められます。 そして、DAOとWeb3を繋げるのがブロックチェーンの存在です。 さまざまな人が参加するDAOは、インターネット上で組織運営されることが想定されます。DAOにおける議決権の行使はガバナンストークン(※1)により行われ、投票で決定されたことはブロックチェーンのスマートコントラクト機能(※2)によって自動的に実行されます。 これによって、DAOでは、組織が議決にしたがって動くことを技術的に担保し、中央集権的な管理者がいなくても組織が全体の利益のために動くことを可能にします。

※1 参加者に投票の権利を与えるトークンのことを指す
※2 ブロックチェーン上での契約や取引が実行できるもの

DeFi

DeFiとは「Decentralised Finance」の略称で、日本語で「分散型金融」という意味です。ブロックチェーンを用いて、銀行や仲介者などを介さずに取引ができる金融サービスを指します。 具体的には取引情報の保存や、決済などの処理は、ブロックチェーンの台帳機能やスマートコントラクト機能によって対応する形態です。 Web3ではブロックチェーンや仮想通貨を用いた取引が増えると予想されるため、銀行などを中心とした従来の金融サービスとは別に、このDeFi形式の金融活動が発展してくると予想されます。DeFiを活用するユーザー側のメリットとしては、「銀行へ支払う手数料を節約できる」「地理的制約などを受けない」「当事者同士で素早く取引を完了できる」などを挙げることが可能です。

Web3が関わるサービスの代表例

実際にWeb3が関わるサービスは2023年現在、複数登場しています。以下では、その代表例を紹介します。

Brave

Braveとは、Web3のコンセプトとの親和性が高いインターネットブラウザのひとつです。 Braveでは、広告の表示・非表示をユーザーの意思で設定可能で、強固なプライバシー保護機能があり、広告表示をオンにした場合、ユーザーは閲覧した広告数にしたがって「BAT」という仮想通貨を入手できます。 一方で広告表示をオフにすると、普及率の高いGoogle ChromeやSafariのような現在の主要ブラウザよりも、高速でコンテンツを表示することが可能です。そのほか、プライバシー保護の観点からCookie追跡のブロックはもちろん、EUの一般データ保護規則(GDPR)とアメリカのカリフォルニア州消費者プライバシー法 (CCPA)を厳しく遵守しており、 Web3時代における主要ブラウザ候補としてBraveは強く注目されています。

OpenSea

OpenSeaは、仮想通貨を使ってNFTの売買ができる大手マーケットプレイスで、Web3.0の代表的なサービスのひとつです。 OpenSeaでは会員登録の必要もなく、誰もが音楽や画像などの出品や取引を行えるほか、取り扱うNFTの種類もデジタルアート・トレーディングカード・デジタルミュージックなど多岐に渡ります。使用できる仮想通貨も2023年3月時点でイーサリウム・Klaytnなど8種類に対応しており、今後も発展が見込まれます。 ほかにも、NFTにロイヤルティを設定できるため、NFTが最初の買い手から別の誰かに販売された際に、元々の製作者へも利益が入る点も大きな魅力です。 これによってアーティストは二次流通でも継続的な収入を得られるようになるので、創作活動を続けやすくなります。Web3が拡大しNFT取引がさらに普及していけば、OpenSeaの役割はさらに大きくなっていくでしょう。

My Crypto Heroes

「My Crypto Heroes」とは、日本企業が提供するNFTを利用したゲームです。このゲームの特徴は、キャラクターや武器などのアイテムがNFTで作られていることにあり、ユーザーはゲームを進めていく中で各NFTを獲得できます。 さらに興味深い点は、そうしてユーザーが手に入れたNFTは、他のユーザーとのあいだで仮想通貨を使って売買できるという点です。ゲームであるにも関わらず仮想通貨という現実的な利益を得られるという斬新さからMy Crypto Heroesは多くの注目を集めています。

Web3のもたらすメリット

Web3は私たちのインターネット体験を大きく変えると共に、次のようなメリットをもたらすと期待されています。

ユーザーがデータを保持できる

まず、Web3の普及によりユーザーが自分自身でデータを保持できるようになります。 従来のWeb2では情報の発信者がデータを保持しているため、あるプラットフォームで電子書籍や動画などを購入・ダウンロードしたとしても、それらのコンテンツはプラットフォームを運営している企業が削除してしまえば、ユーザーも利用できなくなってしまいました。 Web3では、ブロックチェーンを利用した分散型ネットワークによって複数のユーザーがデータを共有できるので、データの破損や改ざんを防ぐことが可能です。 そのためユーザーは、一度購入したデータを自分で保持できるようになります。

仲介を介さない表現ができる

Web3では、インターネット上で言論の自由がより確保しやすくなると期待されます。従来の情報発信は、プラットフォーマーが用意したガイドラインの範疇での発言しか許されませんでした。 もちろん、公序良俗に反する過激な発言を防ぐための公共性に配慮した措置でもありますが、プラットフォーマーの匙加減によって自由な発言がしにくくなるのも確かです。 その点、Web3では仲介者を介さずにデータのやり取りができるようになることから、ユーザー間で自由に表現してコミュニケーションを取ることが可能です。また、仲介者を必要としないことは、これまで取引をする際に仲介業者へ支払っていた仲介料をなくせることも意味します。

セキュリティが向上する

Web3では、個人情報保護などのセキュリティが向上することも大きなメリットです。 Web3なら自分の個人情報を企業へ提供しないで済むようになります。その結果、知らないところで自分の個人情報が使われたり、企業を狙ったサイバー攻撃によって自分の個人情報まで流出したりすることを防ぐことが可能です。 また、先述のようにWeb3で広く利用されることが予想されるブロックチェーンは、情報の破壊や改ざんに対して非常に高い堅牢性を持っていることも重要な点として挙げられます。

Web3における注意点

上記のようなメリットがある一方で、Web3が実現することで新しい課題が生じてくることも考えられます。Web3に関係したサービスを利用する際には、以下の点に注意が必要です。

利用は自己責任である

Web3では個人情報を企業や仲介業者に預けることなく利用できるため、情報漏洩のリスクが軽減されるメリットがありますが、裏を返せば、個人で情報管理をしなければならないため、データの流出や取引でのトラブルはすべて自分で対処する必要があります。 たとえばWeb3では、悪質な詐欺などに遭って仮想通貨を失ったとしても、それは自己責任です。したがって、Web3ではユーザーのネットリテラシーが今まで以上に問われることとなります。

ハードルが高いイメージがある

上記のネットリテラシーとも関係しますが、Web3でのインターネット体験はハードルが高いイメージがある点もネックです。 たとえば、Web3では仮想通貨の利用機会が増えると予想されますが、現状では仮想通貨を始めるにはある程度の知識が必要です。Web3に対応するには、ユーザー側で仕組みへの理解を深めなければなりません。

法整備が不十分である

Web3はまだ歴史の浅い概念であるため、そのサービス利用などに関する明確な法整備がまだ進んでいないことも不安な点です。 たとえば、すでに一般化しつつある仮想通貨取引にしても、2017年に成立した仮想通貨法によって一応の体裁が整えられた程度で、まだ十分な状態ではありません。そのため、何かしらのトラブルや不当な不利益に遭ったとしても、法的な支援を得られないリスクがあります。 先述のように、日本ではいま経済産業省を中心にWeb3の到来に備えた成長戦略をスタートさせ始めたところです。今後どのくらいのスピードでWeb3に向けた法整備が行われていくか、政府の取り組みから目を離せません。

まとめ

Web3とはブロックチェーン技術による分散型ネットワークを活用した次世代のインターネットのあり方です。Web3ではビッグテックによる中央集権型の情報体制が終わるなど、インターネット体験が大きく変わることが予想されます。
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