セグメンテーションとは?意味や活用法、企業の実践事例を詳しく解説

マーケティングに携わっていると、「セグメンテーション」という言葉を耳にすることは多いのではないでしょうか。なんとなく意味がつかめていても、明確な定義や活用法を説明するのは難しいと感じる人もいるでしょう。今回は、セグメンテーションの意味や活用法、必要な理由、メリット、注意点などを詳しく解説します。セグメンテーションを活用したことで成功した企業の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。 

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目次

セグメンテーションとは

セグメンテーション(segmentation)は、「区分」という意味を表すマーケティング用語です。市場には多種多様なニーズや嗜好を持った顧客が存在します。顧客をさまざまな観点で分類し、グループ分けすることをセグメンテーションと呼んでいるのです。セグメンテーションを行うことによって、同じような性質を持ったグループに対して有効と思われる戦略を立てやすくなります。例えば、10代の消費者には人気を博している商品であっても、60代の消費者には見向きもされないことは少なくありません。各セグメントに対して効果的な施策を講じる上で、セグメンテーションは欠かせない重要なプロセスといえます。

マーケティング戦略の基本的なフロー

セグメンテーションを理解するには、まずマーケティング戦略のフローを理解する必要があります。扱う商材によって注力するプロセスが変わることはありますが、基本的なマーケティング戦略のフローは、下記のように大きく6つのフェーズに分けられます。 

<マーケティング戦略の基本的なフロー>

  1. マーケティングリサーチ
  2. セグメンテーション
  3. ターゲティング
  4. ポジションニング
  5. マーケティングミックス
  6. 分析

具体的なプロセスの内容について以下で触れていきます。

マーケティングリサーチ

 どのような商材を扱う場合にも、マーケティングリサーチが必須となるのはいうまでもありません。市場調査の結果から、自社がこれから投入しようとしている商材がどの消費者にとって意義のあるものなのかを分析しておく必要があります。このとき欠かせないのがセグメンテーションです。消費者の層(セグメント)ごとに需要に合ったアプローチをすることで、マーケティングの効果は最大化につながります。セグメンテーションは、商材を「誰に」届けるのかの道筋を明確にするためのプロセスといえるでしょう。

マーケティングリサーチとは? 手法や流れを理解してビジネス戦略に活かそう

 

セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング

前述のフローのうち、顧客の分析を通して「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジションニング」を定めていく過程を、「STP分析」と呼びます。STP分析を通じて、市場における自社の位置付けやアプローチするべき市場を見極める必要があるのです。

まず、対象とする市場に存在する顧客を、さまざまな観点からグループ分けします(セグメンテーション)。次に、各セグメントのうち、どの層に狙いを定めてアプローチするべきかを決めなくてはなりません(ターゲティング)。その上で、競合他社や社会的なトレンドなどを踏まえて、狙いを定めた層に対する自社の立ち位置を見極め(ポジショニング)、効果的と思われるマーケティング施策を講じていくのです。

このように、セグメンテーションはSTP分析の一環であり、ターゲティングやポジショニングとも深く関わっています。セグメンテーションは単独で考えるのではなく、マーケティング戦略全体の一部として捉えることが重要です。

 マーケティングミックス・分析


マーケティングミックスは、リサーチ〜ポジショニングを経てプランを「実行」することを表します。
具体的に実行をした後は分析を行い施策の精度を高めていきます。

セグメンテーションが必要な理由

セグメンテーションは、マーケティング戦略において必須のプロセスといわれています。なぜ、セグメンテーションは重要視されているのか、主な理由について見ていきましょう。

消費者ニーズの細分化

現代社会は、消費者ニーズの細分化が進んでいます。かつての大量生産・大量消費の時代には、物やサービスを供給すれば一定数の顧客が買い求めてくれました。しかし、物やサービスは市場に行き渡り、消費者は「必要不可欠だから購入する」というよりも「本当に欲しい物だけを購入する」時代になっています。

企業は、不特定多数の消費者に商材をすすめるマスマーケティングから、個々の消費者のニーズをより詳細にくみ取るためのマーケティング戦略へと舵を切っていく必要があるのです。今や、商材を提供する企業側から見た場合、不特定多数の消費者にアプローチするマーケティング戦略は非効率。より効率的かつ効果的な施策を講じるには、ターゲットを絞って戦略を立てなくてはなりません。消費者ニーズの細分化が進んだことに伴い、セグメンテーションも重要性が増しているのです。

競争優位性の確保

市場が飽和状態となっている現代においては、複数の企業が類似する商品を扱っているケースは少なくありません。しかし、できるだけ多くの消費者に選んでもらうためにとすぐ値下げ施策をとってしまうと、結果的に市場全体が価格競争へと突入する事態に陥りがちです。

より建設的に競争優位性を確保するには、他社との差別化を効果的に図る必要があります。例えば、A社の商品が「低価格」「手軽さ」をウリにしているのであれば、B社は「品質へのこだわり」「高級感」がウリになる商品を開発するといったように、アプローチする視点を変えることが重要。セグメンテーションを吟味すれば、自社がどの層にどのようにアプローチするべきかを検討する下準備ができます。競争優位性を確保する上で、セグメンテーションは欠かせないプロセスとなっているのです。

ツールの多様化

消費者にアプローチするためのツールが多様化したことも、セグメンテーションが重要視される要因のひとつです。かつてはテレビや折込チラシなど、ごく限られたチャネルでしか消費者にアプローチすることができませんでした。しかし今日では、WebサイトやSNSをはじめ、消費者にアプローチする方法は数多くあります。消費者のニーズや嗜好に合った提案をする選択肢は、豊富にある状態です。

また、消費者の購買行動や購買心理を分析する、マーケティングツールも充実してきました。企業は不特定多数の「見えない」消費者に対して自社の商材を宣伝するのではなく、商材にフィットする消費者を選んで効率良くアプローチできるようになったのです。

ツールの多様化・充実化が起きているということは、それだけ消費者の層を細分化してアプローチすることが求められるようになっているともいえます。セグメンテーションは、ツールの多様化により、マーケティング戦略の一環として定着したプロセスという一面もあるのです。

マーケティングツールである、MA、CRMについてはこちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。

マーケティングオートメーション(MA)とは?アプリ担当者が知っておきたいメリットと課題

モバイル時代のCRM入門。顧客管理はアプリから始めるのは正解?

セグメンテーションの4つの分類方法

セグメンテーションにはさまざまな分け方があります。そこで、代表的なセグメンテーションの変数として知られる、4つの分類方法をまとめました。下記を参考に、扱う商材に適した変数の優先順位を決めていってください。

地理的変数(ジオグラフィック変数)

地理的変数とは、居住地や勤務先など、地理的な条件にもとづいて分類するための変数です。地理的な要因は気候や人口密度、生活習慣などに大きな影響を与えるケースが少なくないことから、マーケティング戦略を考える上で大切な要素となり得ます。下記に挙げるのは、具体的な地理的変数の例です。

<地理的変数の例>

  • 国や地域:アジア、ヨーロッパ、北米、南米
  • 国内地域:東日本、西日本、太平洋沿岸部、日本海沿岸部
  • 気候:気温、湿度、降雨量、降雪量
  • 地方:北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州
  • 人口密度:大都市圏、地方都市、郊外
  • 人口規模:100万人以上、100万人未満
  • 交通事情:複数路線利用可能、自家用車が必須

人口動態変数(デモグラフィック変数)

人口動態変数は、一般的に「属性」と呼ばれる変数です。比較的測定しやすい上に消費者のニーズと深く関わっているケースが多いため、従来からマスマーケティングではよく用いられてきました。下記は、具体的な人口動態変数の一例です。 

<人口動態変数の例>

  • 年齢:10代、20~35歳、40代以上
  • 性別:男性、女性、その他
  • 世帯人数:一人暮らし、夫婦のみ、子供2人
  • ライフステージ:独身、既婚子供なし、既婚子供あり
  • 世帯年収:300万円未満、300万〜450万円、500万円以上、1,000万円以上
  • 最終学歴:高校、専門学校、短大、大学、大学院
  • 職業:事務職、サービス業、営業職、技術職、研究職
  • 雇用形態:正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主

 

なお、人口動態変数は、消費者の属性を明確にセグメンテーションしやすい一方で、個々の消費者の細かなニーズまでは把握できないケースも少なくありません。例えば、同じ20代・正社員・独身・一人暮らしの消費者であっても、ニーズや嗜好が大きく異なることは十分にありうるでしょう。消費者の傾向を大枠でつかむ上で人口動態変数は役立ちますが、個々の詳細なニーズを把握するには、ほかの変数も併用していく必要があります。

心理的変数(サイコグラフィック変数)

心理的変数は、消費者の価値観やパーソナリティ、ライフスタイルといった内面的な要素によってセグメンテーションするための変数です。人の内面に関する特性のため、従来は計測が困難と考えられてきましたが、現代ではインターネット上の行動から可視化される面が増えてきました。具体的には、下記のようなものが挙げられます。

<心理的変数の例>

  • 価値観:権威やステータスを重視、環境問題に関心が高い、流行に敏感
  • パーソナリティ:社交的、内向的、野心的、控えめ
  • ライフスタイル:新しいものを取り入れる、伝統を重視する

 

前述した人口動態変数で同じセグメントに属していている消費者の中には、心理的変数が大きく異なる人も含まれています。例えば、世帯年収や最終学歴は同程度であっても、新しいものを好む人もいれば慣れ親しんだものを好む人もいるのです。心理的変数は消費者の特性を深掘りできる傾向があるため、ほかの変数と組み合わせて活用されるケースがよくみられます。

行動変数(ビヘイビオラル)

行動変数は、消費者の行動パターンや反応をもとにセグメンテーションする際に用いる変数です。ECサイトやSNSの利用状況から、消費者の行動パターンが推測できることがあります。前述の行動変数が内面的な要素からセグメンテーションしていくのに対して、行動変数では顕在化した行動にもとづいてセグメンテーションしていく点が大きな違いです。具体的には、下記のようなものが挙げられます。

<行動変数の例>

  • 利用シーン:毎日利用する、朝と夜によく利用する、週末に利用する、特定の季節にだけ利用する
  • 利用頻度:ライトユーザー、ミドルユーザー、ヘビーユーザー
  • ロイヤリティの状態:まったくない、普通、強い、熱狂的
  • 購買意思:なし、ややあり、あり、購入希望、購入準備段階

 

行動変数には、商材に対する習熟度や利用経験が反映されやすいため、顧客ロイヤリティに合わせた施策を講じることができます。例えば、同じ地域に居住している同年代・同水準の年収の消費者でも、一度だけ購入した経験がある人と過去半年間に複数回購入した経験がある人に対しては、有効な施策が大きく異なってくるでしょう。

 

セグメンテーションの指標となる4Rの原則

セグメンテーションに用いる変数を精査したら、次にセグメントの区切り方を決めていく必要があります。区切りが大雑把だとセグメンテーションの意味が薄れてしまいますが、反対に細かすぎると分析しにくくなりがちです。そこで有効な働きをするのが、セグメンテーションの指標となる「4Rの原則」です。下記より、4Rの原則を構成する要素を確認していきましょう。

優先度(Rank)

Rankとは、重要度にもとづいてセグメントをランク付けすることを指します。優先順位が高いセグメントを重点的にターゲティングすることで、より効果の高いマーケティング戦略を立てられるからです。重要なポイントとして、優先度を決める際の基準は「自社にとっての重要度」という点が挙げられます。一般的な重要度ではなく、商材の特徴やボリュームゾーンとなる顧客の属性をもとに判断することが大切です。

例えば、富裕層とそれ以外の消費者では、一般的に前者のほうが重要な顧客と捉えるケースが多いでしょう。しかし、自社の商材が中程度の価格帯であれば、メインターゲットとなる顧客は後者となる可能性もあるのです。このように、優先度を決定する際には、商材の特徴や事業方針も踏まえて考える必要があります。

有効性(Realistic)

Realisticとは、市場規模の有効性という意味です。仮にターゲティングした場合、売上や利益を確保できる見込みが十分にある市場かどうかを見極める際に用いられます。購買行動につながる確率が高いセグメントであっても、売上や利益を確保するために十分な市場規模が見込めないようであれば、除外の対象となります。

注意点としては、市場が「存在するかどうか」ではなく、「規模が十分かどうか」を重視することです。あまりにニッチな市場に狙いを定めてしまうと、目標とする売上を達成できないおそれもあります。有効性を判断する際には、特定の地域などに限られた市場ではないかどうかも視野に入れてください。例えば、「カーシェアリングサービスを日常の買い物に利用する30代主婦」は大都市であれば一定数存在するかもしれませんが、自家用車を所有している世帯が大多数の地方では市場が成り立たないでしょう。

到達可能性(Reach)

Reachとは、ターゲットに対してアプローチするための手段があるかどうかを判断するための指標です。ターゲットが実際に存在し、適した商材を提供するための準備を整えたとしても、対象者にアプローチする手段がなければ購買行動につなげることはできません。例えば、子供向けの学習サービスをオンラインで提供する場合、実際に契約するのは子供自身ではなく保護者のはずです。このケースでは、子供に対して商品を訴求しても直接的な成果にはつながりにくい可能性があります。

ですから、アプローチすべき保護者に対して、サービスを活用するメリットや有効性を訴求する手段があるかどうかを検討する必要があります。このように、到達可能性を判断する際には、実際のアプローチ方法とその難度を十分に検討することが大切です。

測定可能性(Response)

Responseとは、ターゲットにアプローチした結果を効果測定できるかどうかを判断するための指標です。消費者の反応を確認し、次の施策へと反映させていくことは、マーケティング戦略において重要なポイントといえます。その際、消費者の反応を知るための手段がなければ、有効な改善策を講じることができません。測定するべき指標を具体的に挙げ、測定が可能なツールが存在するかどうかは十分に検証しておきましょう。

例えば、顧客の購買力をセグメンテーションの指標とした場合に、購買力を把握するための手段が「購買頻度」しかないとすれば、測定可能性は低いといえます。購買頻度が低い要因は「商品に満足しなかった」「他社商品のほうが魅力的だと感じた」など、顧客の購買力以外にも複数想定できるからです。どういった数値をどのように測定するのか、具体的な行動レベルまで詰めておく必要があります。

 

セグメンテーションのメリット

セグメンテーションは、的確に行うことでさまざまなメリットを得ることができます。セグメンテーションのメリットとしては、下記の3つが挙げられます。

効果的なマーケティング施策を講じやすくなる

ニーズや嗜好、価値観が類似する消費者のまとまりごとにマーケティング施策を講じることで、より精度の高い戦略を立てやすくなります。例えば、見込み顧客と新規顧客とでは、アプローチ方法を変えることも可能となります。セグメンテーションを活用すれば、不特定多数の消費者に向けてアプローチする場合と比べて、施策が効果を発揮する確率が高くなるでしょう。

広告費や製品・サービスの供給量の最適化を図ることができる

セグメンテーションを行えば、ニーズが高い層に絞ってアプローチをすることで、広告費や製品・サービスの供給量が最適化しやすくなります。従来は、反応が薄い層も含めてアプローチせざるをえなかったところを、ニーズがより確実にある層に絞った施策へと転換できるからです。製造やサービス提供の適切な供給量が可視化され、無駄を削減することにもつながるでしょう。 

利益率の最大化につながる

ターゲットを絞ったマーケティング戦略を立てることは、コスト削減にも効果を発揮します。余計な広告費を投じたり、過剰供給に陥ったりするリスクを低減できるからです。よりコストを抑えて利益を確保することができれば、利益率の最大化にもつながるでしょう。企業にとってセグメンテーションは、「攻め」の面だけでなく「守り」の面においても有効な施策といえるのです。

 

セグメンテーションの注意点

セグメンテーションを行う際には、いくつか注意しておくべき点があります。セグメンテーションの効果を最大限に引き出すためにも、下記の点を意識しましょう。

セグメンテーションを誤るリスク

セグメンテーションを誤ると、マーケティング施策が非効率になりかねません。典型的な例として、セグメントを細部化しすぎたことで各セグメントへのアプローチの違いが複雑化してしまうケースが挙げられます。セグメンテーションが大雑把では効果が期待できませんが、反対に細分化しすぎても非効率になりがちです。適切なセグメンテーションを見極めるためにも、実際に講じるべき施策の種類は現実に即して想定しておく必要があります。

マスに対するアプローチが有効な施策では効果が薄い

セグメンテーションは、マスに対するアプローチが有効な施策では、十分な効果を発揮しない場合があります。例えば、商品の値下げなど大多数の消費者にとってメリットがある施策の場合、セグメンテーションを行う意義は薄いでしょう。マスに対するアプローチの場合は、あえてセグメンテーションを行わないのもひとつの考え方です。

適宜修正する必要がある

セグメンテーションは、一度設定すれば永続的に変わらないものではありません。時間の経過とともに消費者のニーズや嗜好、価値観は移り変わっていきます。変化の要因は複数あり、トレンドや社会情勢の影響を受けることもあれば、消費者一人ひとりの興味関心が移り変わることもありうるのです。市場は常に変化していることを意識し、適宜修正する必要があります。

 

セグメンテーションの成功事例

ここでは、セグメンテーションがマーケティング戦略に成果をもたらした事例を紹介します。5つの事例を通じて、セグメンテーションが新たな市場の開拓につながることを具体的に理解していきましょう。

JINSの事例:新たなセグメントに着眼し、新しい消費者を掘り起こした

アイウェア販売店の「JINS」は、「眼鏡を必要とする消費者=視力に問題を抱えている」という従来の概念を大きく変えた事例として有名です。セグメンテーションに「視力に問題がない」消費者も加えることで、アイウェアの市場を拡大することに成功しました。

顕著な例が、ブルーライトカットレンズです。PCやスマートフォンを日常的に使用する消費者が増えている中、視力を矯正したい人以外にも「目の健康を守りたい」という潜在的なニーズがあることに着目しました。従来、サングラスや伊達眼鏡にはファッションの要素が大きいと考えられてきましたが、ここに「目の健康」を求める人々という新たなセグメントを加えたことにより、眼鏡を新たに買い求める消費者を掘り起こすことができたのです。

ユニクロの事例:あらゆる世代や性別に共通する切り口で、好みや世代に左右されない商品を開発

機能的でシンプルなファッションアイテムを、世界規模で提供している「ユニクロ」。そのマーケティング戦略は、従来のアパレル業界の常識を覆す新たな潮流を作ったとされています。これまで、ファッションブランドのターゲティングには、年齢層や嗜好が大きな位置を占めていると考えられてきました。しかし、ユニクロは商品を主軸に心理的変数を分析し、あらゆる世代や性別に共通する「着心地」という切り口を見いだしたのです。

日常的に身につける衣類は、直接肌にふれるものも多いことから、着心地の良い商品を求めるのは万国共通の価値観といえます。同社はセグメンテーションに「着心地の良さを求める層」を加えたことで、消費者の好みや世代に左右されにくい商品の開発を実現しました。

ハーゲンダッツの事例:経済的に余裕のある年齢層をセグメントし、市場を開発

アイスクリームメーカーの「ハーゲンダッツ」は、従来のアイスクリームと比べて高価格帯の商品ラインアップで知られています。ハーゲンダッツが日本に上陸する以前、アイスクリーム市場は主に子供をターゲットにしていました。価格帯が安価で、親が買い与えやすい商品が多くを占めていたのです。

一方、ハーゲンダッツは大人の消費者をメインターゲットとし、高品質で価格帯がやや高めの商品を投入しました。経済的に余裕のある年齢層をセグメントに加えることで、アイスクリームに高級感という価値を付加することに成功したのです。ハーゲンダッツの商品パッケージは暖色系の落ち着いたデザインになっており、店頭でもほかのアイスクリームとは一線を画す独自の存在感を放っています。

メルカリの事例:独自の心理的変数をセグメントに加え、市場を開拓

フリマアプリで知られる「メルカリ」は、独自の心理的変数によって従来のオークションとは異なる利用者層を発掘した事例として知られています。従来のオークションには「高く売りたい」人と「安く買いたい」人のマッチングという側面が色濃く表れていました。メルカリはここに、「出品者や商品への共感」という新たな心理的変数を取り入れたのです。

メルカリの商品説明には、出品者が商品を出品するに至った経緯が詳しく書かれているものが多く見られます。取引価格ばかりを強調するのでなく、自身が使ってきた品を大切にしてくれる人に譲りたいという思いを届けられる仕組みになっているのです。独自の心理的変数をセグメントに加えることで、従来のオークションとは異なる市場を開拓した成功事例といえるでしょう。

パナソニックの事例:ターゲットを極力絞り込むことで、独自性の高い商品というブランドを構築

パナソニックが製造・販売しているノートPC「レッツノート」は、法人利用・営業担当者利用というセグメントに特化した製品です。従来、ノートPCは個人利用に加えて法人向けでも活用できる製品を販売する手法が主流でした。しかし、同社はあえてターゲットを絞り込むことで、営業担当者にとっての使いやすさを追求したのです。

レッツノートは豊富なインターフェースを備え、さまざまな機器に接続することができます。外回りの営業担当者が出先でさまざまな外部ディスプレイに出力できるよう、アナログ・デジタル映像出力のどちらにも対応可能です。また、長時間のバッテリー稼働や屋外でも見やすいディスプレイなど、外勤の営業職にとって使いやすい仕様となっています。同製品はターゲットを極力絞り込むことで、独自性の高い商品という認識を持たれることに成功したセグメンテーション事例といえます。

まとめ:セグメンテーションを行なってマーケティング施策の精度を高めよう

セグメンテーションは、ターゲティング・ポジショニングと併せて、マーケティングの基盤となる重要なプロセスです。消費者のニーズが細分化しつつある今日、よりパーソナライズされたマーケティング施策を講じるためにも、セグメンテーションは適切に実践していきましょう。