ITの進化があなたの職を奪うとは限らない!生き残りの鍵はたゆまぬアップデートにあり

Writer 御堂筋 あかり
スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。

 

ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」

 

この仮説、というよりはすでに現実世界で証明されつつある事実と言っていいと思うが、そこに反作用があるとすれば、一部の人々にとっては自らのキャリア形成に影響が生じるということだろう。

 

技術の進歩により陳腐化するスキルが出るのは、ある意味避けがたい話。

IT化のメリットがどれほど大きいとしても、それに伴い仕事がなくなると感じる方は、得てしてDXに懐疑的な姿勢をとったり、はたまた「抵抗勢力」となったりしがちなものだ。

筆者とて、ITの進歩に追いすがるのが精一杯の者であるからして、実を言うとその気持ちは分からなくもない。

 

だが同時に、現在世の中のさまざまな面で進む情報化の流れが、必ずしもわれわれの職を奪い去るものとは限らないとも、強く感じている。

当然、相応の努力は必要だが、己の仕事に進んでITを取り込むことにより、新たな価値を生み出すことは難しくなく、むしろそこに現代を生き抜く鍵があると考えるのだ。

 

必要なのはスキルのたゆまぬアップデートと、IT感度を目いっぱい磨くこと。

機械に仕事を奪われると恐れるのではなく、むしろ任せる部分は任せることで、よりクリエイティブかつ時代が求めるワークスタイルを模索していただきたいーー

 

そのような思いを込めて、ここでは筆者が考えるDXとの付き合い方について語ってみたい。

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IT化の必然性は早く気付いた者勝ち

自分は編集者・ライター業を生業とする中で、IT化の波をもろに食らってきた者であると自覚している。

そのプロセスは今でこそ笑い話だが、実際は生存競争以外の何物でもなく、振り返れば波に乗れなかったかつての同僚、戦友たちの顔が浮かんでは消えてゆく。

 

そもそも自分が業界入りした際、最初に渡されたのはフィルムカメラとリボンインク式のワープロだった。

それが数年としないうちに原稿の入稿は全てデータ化され、写真も時間差はあったとはいえ次第にデジタルに切り替わった。

 

この変化に適応できなかった先輩方は、もれなく脱落を余儀なくされた。

業界を去る者、はたまた管理部門に回る者などさまざまだが、どこに行こうがその先でも結局はアナログからデジタルへの移行が進んでいるわけで、四の五の言わずにIT化を受け入れることが現役であり続けるための必要条件。

その厳然たる事実に早く気付いた人ほど、自らのキャリアをいい方向に伸ばすことができていたように思う。

 

例えば、カメラマンという職業の場合、フィルムカメラからデジタルカメラへの移行はマストだったわけだが、それだけでなくIT化のアンテナを最大限研ぎ澄ましてきた者たちは、たいがい今も現場に立っている。

 

今やスマホを使えば誰でも簡単に写真や映像を撮れて、しかもネットやSNSという発表の場すら用意されている世の中。

カメラマンを生業とする筆者の友人が言っていたことだが、最近のモデルはプロのカメラマンが撮った写真より、自分でアプリを使って加工したものを好む傾向にあり、かつてに比べて作品を見せても反応が薄いという。

 

「昔は撮影現場でモデルさんのモチベーションを上げるのに可愛く撮れたカットを見せたものだけど、今はその手があまり使えない。

『写真をSNSに使っていいですか』とか言われて渡しても、見てみたらアプリ加工がされていたりするんだよね。

だったら最初からこっちで加工してあげた方がいいんじゃないかと思って、レタッチの勉強を始めたんだけど、これは今考えても正解だったと思ってる。

あの人ならレタッチまで任せられるっていうので仕事が増えたし、今もカメラで食っていけてるしね」

 

これは言わばアプリの進化に負けじと、新たなスキルを身に付けていった事例。

 

また、ジャーナリズムの世界で主に紛争取材に携わってきた友人のフリーカメラマンは、ITの進化に伴う世の移り変わりに合わせ、仕事のスタイルを変えていった。

スマホの普及によって誰もがスクープカメラマンとなる可能性を秘めている現在、世界の紛争地域からは玉石混交とはいえ、さまざまな生の情報がSNSに上がってくる。

 

速報性という面では、その現場にいる一般人がスマホで撮ったものには絶対に敵わない。

それでもテーマ設定をして掘り下げた取材となれば当然、プロに強みがあると考えた友人は、あまり金にならないフォトジャーナリズムではなく、尺の長い映像による報道に仕事をシフトしていった。

 

まず第一に、スピード勝負ではなく腰を据えた取材で現地の実情をレポートし、断片的情報と完全に差別化を図って自分の仕事の価値を高めたこと。

そしてもう一つ、TV局に売り込めば高い単価が見込める上、配信にも使える映像メインにすることで採算面の問題もクリアした。

 

むろんそこに至るまでには機材の入れ替えや新たなスキルの習得、何よりも今までのやり方を変える大きな決断が必要だったわけだが、凝り固まったプライドを持たず、柔軟な思考の持ち主だった彼はそれらをクリアした。

 

この友人もまた、最初はフィルムカメラからキャリアをスタートさせた者。

それが「今はもう、これでも十分撮れるんですよ」と言って、紛争取材でスマホを使って撮影することもあれば、撮ったものを現場でクラウドにアップし、すぐさま編集に回すこともある。

 

時代の変化が早い昨今、彼らのごとく進歩を拒否せずむしろ積極的に順応していくことが求められている。

 

面倒は機械に押し付けて生まれた時間をクリエイティブに生かす

さて、話を筆者の本業である編集に戻すと、IT化の流れに乗るのは苦労が伴ったとはいえ、そのメリットは確かに大きかった。

雑誌のレイアウト作成にしても、かつては必要な素材をわざわざデザイナーの事務所に届け、写真は先方にフィルムスキャナでデータ化してもらい、デザインの上がりもバスや地下鉄を乗り継いで取りに行く……というのが日常だった。

それが今では写真素材がそもそもデータであるし、やり取りもクラウドを使えばそれで済む。

 

これはあくまで一例であり、業務上のあらゆる場面で進んだITの導入によって膨大なマンパワーの削減が可能となったわけだ。

自分の見立てでは、そこで生まれた時間的余裕をいかに活かすかで、編集者としてのその後が大きく変わったと考えている。

 

これは本当に人それぞれで、ヒマになったり、自分の仕事がなくなったことをこれ幸いと連日飲みに行ってしまう先輩がいる一方、新たな企画を提案したり数字が取れる著者探しにエネルギーを費やしたり、電子書籍やサブスクといった方面の勉強を始める人もいた。

 

自分の場合は煩雑な実務から解放された分、雑誌の付録業務に力を入れ、そこで製造元である中国企業との窓口を務めてやがて中国語を習得。

気がついたら出版業界を飛び出して中国で暮らすようになっていたわけで、クリエイティブかどうかと言われるとあまり自信はないものの、時間を無駄にはしなかったと思っている。

 

結局のところ、これだけ情報技術の進歩が早い以上、今まで人の手でやっていたことが機械任せになっていくのは当然の帰結である。

 

そこで生まれた空き時間にただふてくされているか、それともイマジネーションを膨らませて将来を見据え、必要なスキルの取得に費やすか。

はたまたDXで仕事を奪われてしまったと嘆くか、面倒な作業を機械に押し付けて自由な時間を作れたと考えるかで、あなたのキャリア、そして未来は変わってくる。

 

IT化は自分が次のステップに行くためのチャンスをもたらすものと捉え、ぜひ一人でも多くの方に、新たなことにチャレンジしていただきたいと願う次第だ。

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