あらゆる業界で利用が進むAI(人工知能)。実はモバイルアプリのマーケティングにおいても、現在「AI」は外せないトレンドワードになりつつある。2018年7月には、ユニクロが公式アプリでAIを利用したサービスを開始。多くのメディアで大きく取り上げられている。
アプリでAIを活用する場合、大きく2パターンに分かれる。1つめはユーザーの嗜好や行動履歴をAIが分析し、ユーザーに商品をおすすめする「レコメンド機能」。2つめはAIチャットボットがユーザー対応を担う「アシスタント機能」だ。
特にECアプリで、レコメンド機能やアシスタント機能を搭載するケースが目立っている。パーソナライズ化によりユーザーのロイヤリティが向上するメリットも大きいが、EC運営側にとっても実はメリットがある。
AIアプリに乗り遅れないためにも、それぞれのパターンでの事例を踏まえ、AIを導入するメリットはおさえておこう。
SHOPLISTアプリは、ユーザーが持つアイテムをもとにAIがおすすめを提案
AIによるレコメンド機能は、特にファッション系ECアプリでよく使われる。ユーザーの閲覧履歴や購入履歴などのデータをもとに、自動的におすすめ商品を提案するという機能が一般的だ。
しかし最近は違った手法で提案を行うアプリも出てきた。例えば、ECサイト「SHOPLIST」のアプリにあるレコメンド機能。これはユーザーが所有するアイテムを撮影すると、その画像からユーザーの好みを判断、商品をおすすめするというもの。AIによる画像検索エンジンを利用したサービスだ。
画像検索を使ったAIレコメンド機能の場合、新商品やユーザーが自分で探さないような商品をおすすめできる点が特徴。このエンジンを開発した企業によれば、AIレコメンド機能利用者のCVRは、利用しないユーザーの1.63倍という結果もある。(※1)最適化されたおすすめが実現すれば、売上アップにつながるというわけだ。
※1出典:https://markezine.jp/article/detail/29473
問い合わせ対応可能数が倍に!ユニクロのAIアシスタント機能
レコメンド機能とあわせてAI活用が進んでいるのが、チャットボットを使ったAIによる自動接客サービス。このAIアシスタント機能をアプリに導入して話題となったのが、ユニクロ。2017年の試験導入を経て、2018年7月に「UNIQLO IQ」というAIチャットボットサービスを公式アプリでスタートさせた。この機能は、チャット形式でユーザーが質問をするとAIが対応するというものだ。
チャットボットは商品に関する質問への対応程度、というイメージがあるのではないだろうか。しかし「UNIQLO IQ」のAIではコーディネートや雑誌掲載情報、店舗在庫などにも回答。ユニクロでもこのサービスをアプリ版コンシェルジュと位置づけている。
ユーザー向けにパーソナライズ化できるメリットだけではなく、サポートの効率化という面でのメリットも大きい。実際にユニクロでもAIチャットボット導入により、電話やメールで来ていた問い合わせの半数以上がチャット経由に切り替わった。そのためサポート対応可能量も増え、前年比で2倍の問い合わせ量に対応できる体制になったという。(※2)
※2出典:http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2018/09/ai-5.html
こうした取り組みは他のECアプリでも進んでいる。AIレコメンド機能とAIアシスタント機能を組み合わせ、よりパーソナライズ化するアプリもある。例えば2018年10月にファッションアプリ「メチャカリ」ではAI機能の搭載を発表。チャット形式でパーソナライズスタイリングを行うサービスを導入している。
AI導入にはアプリ開発環境の整備が必須
アプリでレコメンド機能やアシスタント機能を搭載するためには、アプリの開発環境がポイントとなる。そもそもAIで自動化するためには、あらかじめユーザーの行動データなどさまざまなデータを収集し、分析する仕組みが必要だ。MAなどのマーケティングツールと連携ができるアプリ開発環境を整えなければならない。
SHOPLISTやユニクロのアプリ事例を見ると、今後EC系アプリにおいてはAI導入が大きなポイントになりそうだ。今のうちからアプリ開発環境をあらためて再チェックしておくべきだろう。