AR(拡張現実)がEC・O2Oアプリを激変させる?IKEAやZARAの事例で検証

2018年のアプリ開発トレンドのひとつが、AR(拡張現実)。GoogleはAndroid向けツール「AR core」を2018年2月に正式リリースし、Appleも2018年6月に「AR Kit」の新バージョンの提供を開始。ARを使ったアプリ開発環境が整いつつある。

ECやO2O、オムニチャネル関連アプリでも、ARの人気は急上昇中。IKEAやZARAといったブランドの公式アプリでも、ARを採用している。

特に小売では、バーチャルで商品を試せる点がARの大きな強みだ。ECやO2Oに関わるアプリにとって、ARは今後必須となる機能かもしれない。そこで参考になるARアプリ開発事例をジャンル別に紹介しよう。

ECアプリのAR事例:IKEAではARを使ってアプリで家具の試し置きができる

2017年から日本でもECをはじめたIKEA。EC開始とほぼ同じ時期に、ARを使って家具を試し置きできるアプリをリリースした。これはスマートフォンのカメラで室内を撮影すると、ARを使ってIKEAの家具を試し置きできるというもの。Appleと共同開発したアプリだけあって、ARの精度にも定評がある。さらにIKEAでは、ARアプリで試した家具をECで直接購入できるという動線も用意されている。

こうしたARによる家具シミュレーション機能は、IKEAのほか「FURNI」や「島忠ホームズ」などのアプリにも採用されている。家具のように購入前に試しづらい商材では、ARによるシミュレーション機能は効果的だ。

オムニチャネルアプリのAR事例:ZARAは着用したモデルがバーチャルで登場

リアル店舗だけではなくECにも力を入れ、オムニチャネル戦略を進めるファストファッションブランドのZARA。2018年からアプリの活用に取り組んでいる。2018年5月には、日本で初めてアプリとオンラインストアに特化した店舗を東京六本木にオープンした(※期間限定のポップアップストア)。

また、ZARAではAR体験ができる「ZARA AR」アプリの試験導入を実施した(※現在は終了)。国内の一部店舗でこのアプリを使うと、商品を着用したモデルがスマートフォンのカメラを通して見られるという仕組み。

アパレルのAR活用と言えば、自撮り画像と商品を組み合わせたバーチャル試着というイメージが強い。しかしZARAではあえて着用したモデルが見られるようにした点がポイントだろう。さらにARの画像をSNSでシェアできるようにしたという点も興味深い。

商品購入の後押しとしても有効だが、店舗やECを含めたブランド全体のイメージ向上・話題性という目的にフォーカスした施策と言えそうだ。またモデルがバーチャルに登場するARなら、ユーザーがARで試着するよりシンプルな技術で導入できるメリットもある。

O2OアプリのAR事例:化粧品の接客にARアプリを活用

化粧品業界もARに注目している業界のひとつだ。ARを使ったバーチャルメイクなら、化粧落としせずさまざまなバリエーションを気軽に試せる。

例えば大手化粧品メーカーのコーセーでは、店頭で販売するスタッフ向けのARアプリを開発した。このアプリは静止画だけではなく、顔の動きにも対応。よりリアルなバーチャルメイク体験ができる。

化粧品業界ではネットプロモーションも増えているが、カウンセリングに重点を置いてまずは来店させたいというケースも多い。コーセーではあえて店舗のみでAR体験ができるようにし、オンラインなどで告知して来店につなげるという戦略がうかがえる。また店舗の接客オペレーションが効率化できるという点も大きなメリットと言える。

EC・オムニチャネル・O2OにおけるARのアプリ活用事例を見ると、「ARを使っていかに従来とは違う新しい体験をユーザーに提供できるか」という点を各社重視していることがわかる。単に商品を紹介するだけのアプリよりも、ARを使った「体験型アプリ」がますます注目を集めるだろう。