ブランディングという言葉は現代社会で広く使われ、一般的なマーケティング用語としても定着しました。
一方で、ブランディングの目的や、どのような手法があるのかを詳しく説明するのは容易ではないと感じる人もいるのではないでしょうか。
今回は、ブランディングの目的と効果のほか、具体的な手法などについて解説します。ブランディングの有力な手段のひとつであるアプリを使った強化方法や注意点もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
ブランドとブランディングの違い
始めに、ブランドやブランディングが何を表している言葉なのかを整理しておきましょう。ブランディングとは、一般用語として使われる「ブランド」とは異なる意味合いを持つため、定義を正確に把握しておくことが大切です。
ブランド:識別可能な状態
ブランドを一言で表すとすれば「識別可能な状態」です。
ある商品を見たりサービス名を聞いたりした場合、ほかの企業の商品・サービスとは異なる特有のものとして消費者が広く認知している状態を、「ブランドが確立されている」と表現します。
一般的に、世の中ではブランドと聞くと、高級品を連想するケースが少なくありません。ブランド品という言葉が象徴するように、高級志向のものをブランドと呼ぶ傾向はあります。しかし、マーケティングにおけるブランドは、必ずしも高級品を指すとは限らない点に注意しましょう。
ハンバーガーチェーンと聞くと「マクドナルド」を連想する人が多いといったように、ある商品やサービスが広く認知され、その分野の代表格として知られている状態がブランドといえます。
ブランディング:ブランドを形成するためのあらゆる活動
ブランディングとは、ブランドを形成するためのあらゆる活動を表しています。
マクドナルドのロゴマークや代表的な商品を大半の人が認知しているのは、マクドナルド社のブランディング戦略が成功を収めているからです。
具体的には、シンボルマークやキャッチフレーズ、商品名、企業名、プロダクトデザイン、コーポレートカラーなどがブランディングにおいて重要な役割を果たします。
ブランド価値は、単に「有名である」「よく知られている」ことで確立されるものではありません。消費者にブランドへの愛着を感じてもらい、特別な存在として認識してもらうことによってブランディングは成功したといえるのです。
ブランディングの種類
ブランディングという言葉の響きからは、まず「対顧客」「対消費者」の戦略をイメージするかもしれません。しかし、それらの戦略はブランディングの一側面に過ぎないのです。
ブランディングには大きく分けて、「アウターブランディング」と「インナーブランディング」の2種類があることを押さえておきましょう。
社外に向けたブランディングである「アウターブランディング」
アウターブランディングとは、社外に向けたブランディングを指します。
消費者はもちろんのこと、取引先など自社以外の関係者全般がアウターブランディングの対象です。社外から見た場合の自社に対するイメージや愛着の度合いが、アウターブランディングの成否を見極めるヒントになると考えてください。
例えば、同じ加工食品を販売しているA社とB社があるとします。実際には、2社の製造工程や品質管理のレベルがほとんど同じだったとしても、「なんとなくA社のほうが安心できる」「A社はきちんとした企業だ」と多くの消費者や取引先が実感しているようなら、A社はアウターブランディングに成功しているといえるでしょう。このように、アウターブランディングは企業や商品全般に対するイメージも含めて、企業への信頼度を測るバロメーターとなるのです。
社内に向けたブランディングである「インナーブランディング」
インナーブランディングは、社内に向けたブランディングを指します。異なる言い方をすれば、従業員の自社に対する評価の高さや愛着度の度合いと表現できるでしょう。
例えば、商品を顧客に提案する際に「うちの商品なら自信を持ってすすめられる」と従業員が本心から感じている場合と、「仕事なのでやむをえずすすめている」と感じている場合の違いをイメージしてください。従業員が自分の言葉で熱心に商品をすすめ、能動的に営業・販売活動へと取り組める環境であるのは、前者であることが明らかです。
このように、インナーブランディングは従業員の業務への取り組み方やモチベーションを大きく左右します。ブランディングは社外を対象とした戦略に限らず、社内に向けた戦略ともいえるのです。
インナーブランディングについては、こちらの記事で解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
ブランディングの目的と効果
企業がブランディングに取り組む目的としては、主に下記の5点が挙げられます。ブランディングの目的と効果を正確に把握し、その重要性をつかんでいってください。
価格競争の脱却
現代社会は、市場に商品やサービスがあふれているのが実情です。そのため、消費者は必要に迫られて商品を購入するというよりは、価値が感じられるもの、愛着がわくものを選ぶ傾向があります。
単に「他社よりも安い」「よりお得に購入できる」というだけでは、消費者に選び続けてもらう根拠としては弱いといわざるをえないのです。
また、安易に価格競争へと突入することは、企業にとって大きなリスクとなる可能性をはらんでいます。商品やサービスの質を維持し、安定供給を続けるには、一定のコストがかかることは避けられません。値引きには限度があるため、価格競争を続けてもいずれかは限界を迎えることは明らかでしょう。価格面以外の付加価値を生み出すには、企業独自のブランディングが欠かせないのです。
利益率を上げる
一般的に、消費者は有名な商品やよく知っている企業が提供するサービスを選ぶ傾向があります。ブランディングが功を奏して企業や商品・サービスに対する認知度が高まると、自社の商品が「選ばれやすい」状況を作ることができるのです。結果的に、必要最小限の広告宣伝費で商品・サービスを効率良く販売できるようになり、利益率を上げることにも寄与します。
同時に、商品・サービスに対する顧客の愛着度が高まれば、継続的に利用し続けてもらえる確率も高まります。リピーターが増加すれば、企業に対して一人の顧客が生涯にもたらす利益(LTV)も向上するでしょう。多額の広告宣伝費を投じて新規顧客の増加を目指さなくても、リピーターが商品を購入し続けてくれる状況を作るのは、ブランディングの大きな目的となります。
企業の社会的な価値を向上させる
ブランディングは、企業の社会的な価値の向上にも効果を発揮します。企業としての理念や方針が社内外に広く浸透すると、顧客や取引先に安心感をもたらす傾向があるのです。思考や嗜好、目標が共有できる相手に安心感を抱く点は、人も企業も同じといえます。企業としての姿勢や世の中への関わり方が認知されるほど、企業の社会的な価値は向上していくはずです。
社会的価値が高いとされる企業が提供する商品やサービスは、認知度や信頼性の低い企業の商品・サービスよりも、注目が集まりやすくなります。ブランディングに成功すれば、企業価値の認知が商品への注目を集め、注目が集まることで社会的な価値がいっそう高まるという好循環を生み出すことができるのです。
人材の確保
ブランディングは、人材の採用においても重要です。著名な企業の商品が信頼されやすいのと同様に、就職・転職希望者からも認知されやすいのは知名度の高い企業です。企業の理念や方針が広く知られるほど、優秀な人材の目にとまる機会も増えるはずです。ブランディングに注力することは、優秀な人材を確保する上でも必須の施策といえます。
また、インナーブランディングに取り組むと、従業員の離職を防ぐ効果も期待できます。従業員が企業の理念や方針に価値を感じていれば、従業員の推薦によって新たな人材が入社を希望するリファラル採用も増えていくでしょう。そのような環境が構築されれば、採用コストも抑えられます。
知的財産の法的保護を行う
企業にとって、プロダクトデザインや商品名、シンボルマークといったブランドイメージを象徴するものは、すべて財産です。他社による模倣や、知的財産権の侵害は防がなくてはなりません。
そこで必要なのが、ブランディングの一環として行う商標登録や意匠登録です。ブランディングに注力することは、自社の知的財産権に対する意識を高め、あらかじめ適切な対応策を講じておくことにもつながるのです。
ブランドが消費者・顧客にもたらすメリット
ブランドに関する施策や戦略は、企業側がメリットを得るためのものと捉えられがちですが、実は消費者・顧客にもメリットをもたらします。具体的には下記に挙げる2点で、消費者・顧客はブランディングのメリットを享受しているのです。
探索コストの低減
消費者・顧客が商品を探す際、「よく知っているブランドの商品が見つかった」ことが購入の決め手となるケースは少なくありません。消費者は、商品を吟味している過程で知っているブランドの商品がなければ、機能面や価格面などを比較して商品を選定する必要があります。
しかし、すでにブランディングが確立された商品を見つけたら、「このブランドの商品なら間違いない」という安心感を抱くことができます。ブランドを確立することは、消費者の探索コストを低減することにもつながっているのです。
リスク回避
消費者・顧客が商品やサービスを選ぶ際には、リスクを回避したいという意識が働きます。対価に見合ったサービスを受けられるかどうか、期待する効果が得られるかどうかといった点を、消費者・顧客は常に案じているからです。
そこで、確固たるブランドが確立されている商品を見れば、消費者は「このブランドの商品なら大きな問題はなさそうだ」と判断できます。消費者はリスクを回避するために比較検討するための手間や時間を削減できるだけでなく、安心して購入に踏み切ることができます。リスクが回避できるという点は、消費者にとって感情面でも大きなメリットとなるのです。
ブランドへの忠誠度を測る「ブランドロイヤリティ」
顧客が継続してそのブランドを購入する程度がわかる「ブランドに対する顧客の忠誠心や愛着のこと」をブランドロイヤリティと言います。
ブランドへ顧客が愛着度高く思えば思うほど、そのブランドが持つ製品やサービスの購入頻度、売り上げが上がり、また周囲にブランドについて推奨をすることで、顧客拡大につながるため、顧客のブランドロイヤリティは正しく計測し、高めていくことが必要です。
ブランドロイヤリティについては以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
ブランディングの成功事例
最後に、ブランディングに成功した事例の中でも、特に有名なケースを3つご紹介します。それぞれの事例で成功を収めたブランディングの種類と、具体的な施策をぜひ参考にしてください。
マツダのブランディング:リブランディングによる成功事例
自動車メーカーのマツダは、リブランディングに成功した事例として知られています。リブランディングとは、既存のブランドを再構築することを表すマーケティング用語です。
リブランディングにおいてマツダが打ち出したのは、「Be a driver.」というコンセプトでした。他社が車そのものの性能や機能性を前面に打ち出していた中、同社は車ではなくそれらを利用する「人」にスポットライトをあてたのです。
車が常に登場しながらも、家族やパートナーとのエピソードを主軸に構成されたテレビCMは、多くの反響を呼びました。車そのものではなく「乗る人」を想う企業として、マツダは独自のブランドポジションを確立したのです。
スターバックスのブランディング:独自の付加価値を提供した成功事例
スターバックスが登場する以前まで、カフェチェーンの差別化は独自のメニューや割安な価格設定によって推進されるべきものと考えられていました。しかし、スターバックスが着目したのは、空間の演出とそこで得られる顧客の体験でした。印象的なロゴマークを軸に、「スターバックス=おしゃれ・スタイリッシュ」といったイメージを浸透させることで、独自の付加価値を提供してきたのです。
その結果、ほかのカフェチェーンと比べてメニューが高価格帯であるにもかかわらず、「スタバでコーヒーを楽しむ」というスタイルは消費者に広く認知されることとなりました。
Dove(ダヴ)のブランディング:消費者の共感を獲得した成功事例
「Dove(ダヴ)」は、ボディソープのブランドとして知られています。従来、石鹸は体の汚れを落とすための日用品として位置付けられていました。そこで、Doveの販売元であるユニリーバは、「汚れを落とす」だけでなく、「肌に潤いを与える」という新たな価値を石鹸に付加し、他社との差別化を図りました。
現在、ユニリーバは「本物の美しさを、本物のケアから」というコンセプトを打ち出しています。自分自身が元来持っている美しさを知ってほしいというブランドメッセージは、世界中の女性から高い支持を得ました。このブランディングは、商品を利用する消費者が本質的に求めている価値を追求し、多くの共感を獲得することに成功した事例といえるでしょう。
まとめ:ブランディング戦略を成功に導こう
ブランディングは、顧客とのつながりや共感性を高める上で重要な戦略です。確固としたブランド価値を築くことは、消費者の探索コスト低減やリスク回避にもつながります。今回解説してきたポイントや成功事例などを参考に、ぜひ自社のブランディング戦略を構築してみてください。