ファーストパーティクッキーとは? 活用例やサードパーティクッキーとの違いを解説

クッキー規制がますます厳しくなり、従来のようにサードパーティクッキーを用いた広告運用なども難しくなりました。
そこで注目を集めているのがファーストパーティクッキーです。本記事では、ファーストパーティクッキーの概要や特徴、活用例などについて詳しく解説します。

ファーストパーティクッキーとは?

ファーストパーティクッキーとは、Webサイトのドメインから直接発行されるクッキーのことです。ファーストパーティクッキーについて知るには、まずクッキーに関する基礎的な知識を得ておく必要があります。

クッキーとは?

クッキー(Cookie)とは、一度Webサイトにアクセスし入力したユーザーの情報を一時的に保存できる仕組みのことです。保存される情報には、ユーザー名やパスワードなどのログイン情報をはじめ、ショッピングカートに入れた商品情報などが挙げられます。 ユーザーが快適にインターネットを利用できるようにするために、開発されました。

日常的にインターネットを利用している人にとって、クッキーは身近な仕組みです。 たとえば、アクセスするたびに様々な接続情報を入力することは、WEBサイトをよく利用するユーザーにとってはストレスとなります。
クッキーを活用することによって、ユーザー情報や商品情報などを記憶するため、以下のような状態を可能にしています。

  • 過去に訪れたことがあるWebサイトへアクセスする際、ユーザー名やパスワードが入力された状態にする。
  • 日ごろ利用しているECサイトへアクセスした際、ショッピングカートに前回購入しなかった商品をそのまま残す。

そのため、その都度接続情報を入力しなくて良いことは、ユーザーにとって手間が省けます。利用しやすいWEBサイトと認識される可能性が高くなり、結果的にWEBサイトへの訪問人数の増加や滞在時間の長期化に導くことができます。なお、クッキーと混同されやすいものにキャッシュがあります。キャッシュも、ブラウザにWebページ情報を一時的に保存する仕組みであり、キャッシュのおかげで過去訪れたWebページがスピーディーに表示されます。双方の大きな違いは、保存する内容です。クッキーはユーザーの入力データや利用環境などを、キャッシュはWebページの内容そのものを保存します。

また、クッキーはWeb広告の配信にも欠かせない技術のひとつです。たとえば、リターゲティング広告であればWebサイトから離脱したユーザーのクッキーを追跡し、別のWebサイトで広告を表示できます。

ファーストパーティクッキーとは?

クッキーは2種類あり、ファーストパーティとサードパーティに分類できます。双方の違いはクッキーの発行元です。訪問したWebサイトのドメインが発行したクッキーをファーストパーティと呼びます。 ユーザーが特定のWebサイトへ訪れると、ドメインからファーストパーティクッキーが発行されます。その結果、一度Webサイトへログインすると、以降は保存された入力データを利用できるため、スムーズなログインが可能です。また、ECサイトでの購入履歴および、ショッピングカートに追加した商品情報も保存されるなど、ユーザーにとって便利な仕組みです。 ブロックされにくく、より高精度な効果測定やトラッキングを実現できる点が特徴です。

一方、Webサイトを横断する形でクッキーを付与できない、Webサイトの負荷が増大するおそれがある、といったデメリットがあります。
また、近年はファーストパーティデータに注目が集まっています。ファーストパーティデータとは、WEBサイトに訪れた顧客情報を自社で収集したデータのことです。クッキーも、自社で収集した分に関してはファーストパーティデータに分類されます。 ファーストパーティデータについてより詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

ファーストパーティデータとは? 活用方法や収集方法などを解説

サードパーティクッキーとの違いとは?

サードパーティクッキーは、訪問したWebサイトのホストではない、第三者から付与されたクッキーです。
たとえば、訪問したWebサイトにバナー広告が掲載されているケースでは、広告を配信しているサーバーからサードパーティクッキーが付与されます。

サードパーティクッキーの魅力は、Webサイトを横断したトラッキングを行える点です。これは、リターゲティング広告を思い浮かべるとよく分かります。リターゲティング広告は、サードパーティクッキーの情報をもとに、Webサイトを離脱したユーザーに対し広告の配信を行います。

また、広告の効果測定にも活用できます。 Web広告を運用する際には、どの程度の成果に結びついたのかを検証しなくてはなりません。広告経由のサードパーティクッキーを保持しているかどうかをチェックすれば、配信広告がどの程度成果に結びついたのかを確認できます。

ほかにも、アフィリエイト広告やアトリビューション分析などにも、当該クッキーが活用されています。 サードパーティクッキーは、広告主にとってメリットの大きい仕組みです。なぜなら、自社が運営しているWebサイト以外にも広告を配信でき、離脱したユーザーの追跡もできるからです。 結果、興味を失いかけていたユーザーに再度購入意欲を湧かせたり、忘れかけていた情報を思い出させたりといったことが可能です。

ファーストパーティクッキーが注目される背景

ファーストパーティクッキーが注目される背景として、世界的にプライバシー保護の強化が叫ばれ始めたこと、AppleやGoogleなどがサードパーティクッキーの廃止に動き始めたことが挙げられます。

プライバシーに関する法律の強化

近年、プライバシーに関する規制の強化に踏み切る国が増えています。 日本でも、2005年に施行された個人情報保護法が幾度にもわたり見直しと改正が行われ、直近では2022年4月に改正法が施行されています。これにより、企業や事業者の責務が新たに追加されました。個人情報の漏えいや毀損などによって個人に不利益をもたらす場合、企業には報告や通知が義務づけられています。

また、個人情報の不当、不適切な利用を禁じる旨が明記されたのも大きな変更ポイントです。 アメリカでも、プライバシー保護の機運が高まっています。アメリカのカリフォルニア州では、2020年にカリフォルニア州消費者プライバシー法なる法律が誕生しました。
通称CCPAと呼ばれる同法律は、カリフォルニア州で暮らす人々の個人情報を守るための法律です。 もともと、カリフォルニア州は個人のプライバシー保護強化に熱心な州で、過去には幾度となくプライバシー関連の規制や法律を強化してきた州です。しかし、時代の変化なども鑑みた結果、より厳格なルールを求めCCPAを制定しました。
CCPAの特筆すべきポイントは、世界中の企業や個人が罰則の対象になる点です。もちろん、日本も例外ではありません。また、ときに数十億円の高額な制裁金が課せられる点にも注意が必要です。

ヨーロッパ諸国でも、プライバシー保護強化の動きが進んでいます。代表的な動きとしては、GDPR(EU一般データ保護規則)の誕生が挙げられます。個人情報の保護と扱いに関するルールを定めた法令であり、EU域内の国々に適用される点が特徴です。 なお、EU域内に支店を展開している、EUへ商品を納入しているといった日本企業も、GDPRへの対処が求められます。CCPAと同様に、厳しい罰則が用意されているため、適切な対処が必要です。

AppleやGoogleの姿勢の変化

ファーストパーティクッキーが注目を集めている理由として、AppleやGoogleなど世界的な企業の動きが挙げられます。

Appleは、以前から個人のプライバシー保護強化に意欲的であり、その旨を公式HPにも記載しています。「アプリは黙々と働くだけ、プライバシーには干渉しない」と公式HPに明記しており、Safariブラウザにおけるサードパーティクッキーも全面廃止しました。(※)

また、Googleも、サードパーティクッキーの廃止に向けて動いています。もともと、同社は2020年の時点で2022年にはサードパーティクッキーを廃止すると公言していたものの、その後予定を延期しました。2023年から廃止を開始、と変更したものの、再度2024年の後半から段階的に廃止を進める、と改めています。
Googleの方針が二転三転したのは、同社ができるだけ長くサードパーティクッキーを使いたかったため、ではありません。当該クッキーの代替手段開発において、新たなテクノロジーの評価とテストを実施するための時間を要したためです。 世界を股にかける巨大企業2社が当該クッキーの廃止を決めた理由は、ユーザーに同意を得ることなく送信されることが多いうえに、第三者がユーザーのアクションをトラッキングできてしまうために、個人のプライバシーを害するリスクがあるからです。

(※)Apple公式サイト

クッキーのカテゴリー

不可欠なクッキー

クッキーのカテゴリーは、国際商業会議所のガイドで四つに分類されており、そのひとつが不可欠なクッキーです。Webサイトに実装されているシステムが正常に機能するために必要なクッキーを指します。 あくまで、システムの正常な稼働に要するクッキーであるため、そのほかの機能はありません。
たとえば、アクセスユーザーがどのページを閲覧したのか、どの程度の時間滞在したのかといった情報の取得は不可能です。 不可欠なクッキーの情報は、運営しているWebサイトのクッキーポリシーに明記されるケースが一般的です。不可欠なクッキーの名称をはじめ、「パフォーマンスクッキーの無効化」といった目的、期限などを明記します。

機能性クッキー

機能性クッキーは、アクセスユーザーがより快適かつ便利なWebサイトの利用ができるように活用されるクッキーです。機能性クッキーによって、ユーザーが過去にアクセスしてきたことがあるのかを判断できるため、ユーザーにマッチしたメッセージ、メニューの表示を行えます。
また、離脱したユーザーに対し、パーソナライズした広告の表示を可能にするのも機能性クッキーのおかげです。ただ、これに関してはユーザーが拒否すれば機能しないことがあるため注意が必要です。

パフォーマンスクッキー

パフォーマンスクッキーは、アクセスユーザーから取得した利用データに基づき、Webサイトをより使いやすくする目的に活用されます。パフォーマンスクッキーによって、どのページへアクセスしたのか、どの広告をクリックしたのかといった情報を取得できるほか、特定ページへのアクセス頻度なども把握可能です。
Webサイトのパフォーマンスを測定でき、効果的な改善を行えます。Webサイト内でユーザーがどのように行動しているのか、といったことも把握できるため、結果に応じた適切な対処が可能です。さまざまな情報を取得できるものの、デバイスから個人の特定はできず、ユーザー情報も匿名化されます。

ターゲティングクッキー

ターゲティングクッキーは、主にリターゲティング広告運用時に活用できるクッキーです。Webサイトに設置されているWeb広告の運用者が設定できるサードパーティクッキーで、ユーザーが離脱したあとも別サイトで関連性の高い広告を表示します。

ファーストパーティクッキーの活用例

ログイン情報や入力情報が保存される

ファーストパーティクッキーの活用により、ユーザーがアクセス先で入力したデータの一時的な保存が可能です。過去に訪問してログインしたWebサイトであれば、一定期間のあいだ接続情報が残されるため、再度訪れた際スムーズにログインできます。 この仕組みは、ユーザーにとって大きなメリットです。アクセスするたびに、ユーザー名やパスワードなどの情報を手入力するのは手間がかかり、面倒です。一方、ログイン情報が保存されていれば、再度アクセスしたときにユーザー名やパスワードを入力する必要がなく、すぐにWebサイトの閲覧や商品・サービスの購入ができます。
企業側のメリットは、機会損失や顧客の流出を回避できる点です。アクセスする都度、データを入力してログインしなければならないとなれば、顧客は面倒と感じてしまうかもしれません。その結果、「他社のWebサイトで購入しよう」となるおそれがあります。

ECサイトでのカートに商品が保存される

通常、ユーザーがカートに追加した情報は、一度ECサイトから離脱してしまうと空になってしまいます。しかし、クッキーで商品情報が保存されていれば、再度ECサイトを訪れた際に、商品を選び直す手間が省けます。 ユーザーにとって、購入しなければならなかった商品を思い出せる点もメリットです。購入するつもりで商品をカートに追加したものの、買わずに離脱した場合、必要な商品のことを忘れてしまうかもしれません。クッキーで情報が残されていれば、前回訪問した際の記憶が蘇り、購入しなければならなかった製品を入手できます。
企業側のメリットとしては、ECサイトから離脱したユーザーが再度アクセスしてきた場合、カートに残っている商品を購入してもらえるかもしれない点です。顧客や利益の取りこぼしを回避することに繫がります。

アクセス情報を分析できる

クッキーの活用によって、アクセス情報を分析できマーケティングに役立てられます。
Webサイトを運営するうえで、アクセス情報の分析は重要です。 クッキーを保存すれば、ユーザーがどのような時間帯にアクセスしているのか、接触頻度や滞在時間などを把握できます。これらの情報からWebサイトの弱点を読み取ることができ、改善に向けた具体的な対策が可能です。

たとえば、13〜15時のあいだにアクセスが集中しているとします。こうした情報を把握できれば、もっともアクセスが集まる13〜15時に、Webサイトで重要な情報を発信する、キャンペーンやセール情報をお届けする、といった施策を行えます。
また、ユーザーのWEBサイトの滞在時間が極端に短いと考えている場合、Webサイトの設計やデザインなどに問題があるかもしれません。ユーザーが求める情報をスピーディーに見つけられない、視認性が悪く見にくい、ページの読み込み速度が遅いといったWebサイトでは、アクセスユーザーがすぐ離脱してしまうおそれがあります。ユーザーが、どの広告をクリックしたのか、どのページをよく読んでいるのか、といったこともクッキーの活用により把握できます。

このように、ユーザーの趣味嗜好、関心などを理解できれば、今後のマーケティング施策に役立てられます。

ユーザーに関心のある商品を表示できる

クッキーを活用すれば、ユーザーのアクションに基づいて関心のある商品を提案できます。過去にアクセスしたWebページや購買履歴などから情報を読み解き、広告の最適化が実現可能です。
ユーザーのメリットは、自分の趣味嗜好にマッチする広告を表示してもらえる点です。インターネット上には数々の広告が溢れており、なかには、まったく興味を抱けないものもあり、人によってはストレスの原因となるかもしれません。
クッキーを活用すれば、このような状況を回避できます。 広告を配信する企業側のメリットは、売上や利益の拡大につながる点です。ユーザーが興味をもちそうな広告を配信することで、クリックしてもらいやすくなり、WEBサイトへの滞在時間を長美化せることができます。それにより、CVの向上が期待できます。

ファーストパーティクッキーの保存期間

ファーストパーティクッキーの保存期間はAppleとGoogleとで異なります。
Appleのファーストパーティクッキーの保存期間は1日です。同社のブラウザ「Safari」には、ITPと呼ばれるトラッキング防止機能が実装されています。 ITPのリリース以降、2018年9月までは30日間の有効期限でしたが、2019年3月には7日間、同年5月には1日となりました。

Googleの場合は、400日間の有効期限が設けられています。 もともと、Googleの「chrome」ブラウザに有効期限はありませんでした。しかし、chrome104から事情が変わり、2022年にchrome104がリリースされて以降は400日間が上限となっています。デフォルトの有効期限として2年間で発行しようとしても、有効期限の400日間に調整されます。

ファーストパーティクッキーがうまく機能するクロスドメイン

本来、企業がWEBサイトで複数ドメインを使用して運営を行っている場合は、別のサイト扱いとなるため、ドメインを跨ぐサードパーティクッキーとして扱われることになります。 そのため、Webサイトを横断する場合にはサードパーティクッキーと判断され、規制の対象となります。これを回避するには、クロスドメインの設定が有効です。
複数サイト間でクロスドメイン設定を行えば、同一ドメインと判断されファーストパーティクッキーとして機能させることができます。 クロスドメインの設定は、GoogleとAppleで異なります。 Googleであれば、Google Analyticsを用いてトラッキングコードの編集を行い、参照元除外リストの設定やフィルタ作成を行う必要があります。それぞれ運営の際には注意しましょう。

まとめ

世界各国でプライバシー保護を強化する動きが加速化しており、法規制も行われています。サードパーティクッキーは廃止の一途をたどっていますが、ファーストパーティクッキーなら規制の対象にならないため、うまく活用すればまだまだビジネスへ役立てられます。なお、脱クッキー時代を見据えているのなら、以下の記事を参考にしてみてください。

脱クッキー時代に、アプリマーケティングが重要性を増す理由