マーケティング分析とは? 目的やコツ、代表的な手法を8つ紹介

マーケティング戦略の成果を最大化するためには、見込み客や既存顧客の潜在的な需要を発掘し、競合他社にはない顧客体験価値の創出が求められます。そこで重要な役割を担うのが「マーケティング分析」です。本記事では、マーケティング分析の重要性や具体的な分析手法、企業の推進事例などについて詳しく解説します。

マーケティング分析とは

マーケティング分析とは、自社分析や競合分析、市場調査、需要分析といった多角的なリサーチに基づき、見込み客の潜在需要や消費者の購買行動などを分析する施策の総称です。マーケティングは商品やサービスを販売する仕組みを指す概念であり、リサーチや商品開発、販売促進、広告宣伝、営業活動といった一連の構造を意味します。このマーケティング戦略の方向性を定めるとともに、組織全体でビジョンを共有するために欠かせないのがマーケティング分析です。
現代はデジタル技術の進歩・発展に伴って市場の成熟化が進み、顧客や消費者のニーズは多様化していく傾向にあります。このような時代において市場のニーズを捉えるためには、オンラインやオフラインの垣根にとらわれることなく、多様なチャネルからデータを収集・分析するプロセスが必要です。 そして、自社の立ち位置やプロダクトの優位性、競合他社の動向や需要動向の変遷、産業構造の変化や国際的な経済動向といったデータを収集・分析し、そこで得た知見を経営戦略に活用することが、マーケティング分析の役割となります。 市場のトレンドや消費者ニーズを把握するマーケティングリサーチについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

マーケティングリサーチとは? 手法や流れを理解してビジネス戦略に活かそう

 

マーケティング分析の重要性

マーケティング戦略を推進する本質的な目的は「利益の最大化」です。事業活動において売上を拡大する方法は、原則として「新規顧客の獲得」「顧客単価の向上」「購買頻度の上昇」の3つしか存在しません。これは、米国の経営コンサルタントであるジェイ・エイブラハム氏が提唱する原則であり、「売上の三原則」と呼ばれています。つまり、企業が持続的に発展するためには、競合他社にはない付加価値を創出するとともに、新規顧客の開拓と既存顧客のロイヤルカスタマー化を推進しなくてはなりません。 しかし、先述したように現代はデジタル技術の発展に伴い市場の成熟化が進み、商品やサービスはコモディティ化し、顧客ニーズは多様化かつ高度化していく傾向にあります。さらに、消費傾向はモノ消費からコト消費(※)へと変化しているため、機能的価値に基づく訴求で差別化を図るのは容易ではありません。 独自の顧客体験価値を創出するためには、顧客理解を深める必要があり、見込み客の潜在需要や消費者インサイトを発掘するマーケティング分析への戦略的な取り組みが重要課題となります。

※モノ消費:個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費しているという考え方。
コト消費:単に機能的価値を消費するだけでなく、その商品やサービスを通した一連の体験を消費しているという考え方。

マーケティング分析の目的

事業活動においてマーケティング分析を実施する主な目的は、以下の4点です。

・自社の状況を客観視する
・PDCAを繰り返しやすくなる
・新たな発想を得る
・売上を上げる

自社の状況を客観視する

マーケティング戦略の立案・策定における重要課題のひとつは「ポジショニング」です。ポジショニングとは、競合他社との差別化ポイントやプロダクトの優位性を明確化することであり、市場における自社の立ち位置を確立する一連の施策を指します。 このプロセスでは経営状況を俯瞰的に分析することが大切であり、このフレームワークを用いることで、自社の立ち位置や長所・短所が具体化されます。自社の相対的な立ち位置を客観的に把握できれば、思い込みや先入観に左右されないデータを起点としたマーケティング戦略を推進可能です。

PDCAを繰り返しやすくなる

市場や経済の動向は常に移り変わるものであり、自社を取り巻く環境の変化に伴って、マーケティング戦略の方向性も見直さなくてはなりません。したがって、マーケティング戦略は策定して終わりではなく、「計画(Plan)」→「実行(Do)」→「評価(Check)」→「改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続ける継続的な改善が必要です。マーケティング分析によって施策の成果を定量的に分析できれば、フィードバックに基づいて施策の改善点や効率化を図るポイントを可視化できます。

新たな発想を得る

革新的なアイデアやサービスを生み出すためには、既存の枠にとらわれない発想力や、新しい価値を生み出す創造力、柔軟かつ論理的な思考力などが求められます。こうした創造的思考を生み出すためには膨大な情報のインプットが必要であり、そこで重要となるのがマーケティング分析の実践と、PDCAサイクルによる継続的な改善です。 仮設と検証を繰り返すことで施策の精度が高まり、自社の経営課題を客観的に把握できるとともに、見込み客の潜在需要を発掘するといった、新たな発想を得る一助となります。

売上を上げる

先述したように、売上を拡大する方法は基本的に「新規顧客を開拓する」「顧客単価を上げる」「「購買頻度を高める」の3つしかありません。見込み客の購買行動や消費者心理を多角的に分析し、潜在的な需要をリアルタイムで発掘できれば、効果的な広告宣伝や営業活動が可能となり、新規顧客の獲得率が上昇します。 また、既存顧客のニーズを深掘りできればロイヤルカスタマー化が促進され、アップセルとクロスセルによる顧客単価の向上が見込めるとともに、顧客が持つ熱量の増大による購買頻度の上昇が期待できます。

マーケティング分析に用いる主な8つの分析方法

マーケティング分析にはさまざまなフレームワークが存在しており、自社の経営体制やビジネスモデルに適した手法を選択しなくてはなりません。ここでは、マーケティング分析に用いられる代表的な手法を8つご紹介します。

3C分析

「3C分析」とは、「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合他社)」「Company(自社環境)」という3つの「C」を分析する手法です。

・Customer:参入市場の規模や成長性、見込み客のニーズ、顧客の購買行動、法規制の動向などを分析します。
・Competitor:競合他社の立ち位置や市場占有率、新規参入や代替品の脅威、商品やサービスの長所・短所といった競合環境を                                 分析するフェーズです。
・Company:自社の企業理念や経営ビジョン、ビジネスモデルの強み・弱み、現状の市場占有率、資本力などを分析します。

3C分析の主な役割は、大局的な視点に基づくマーケティング戦略の立案と策定です。「Customer」で市場の動向や見込み客の潜在需要などを深く掘り下げ、「Competitor」で競合他社の経営戦略や顧客層、強みや弱みなどを明らかにし、「Company」で自社の経営状況を客観的に分析したうえで、3つの「C」の要素を踏まえつつマーケティング戦略の方向性を定めます。 このプロセスを踏むことで、内部環境と外部環境の双方から事業展開に関する課題を洗い出すとともに、参入市場における競争優位性を発掘することが可能です。

5フォース分析

「5フォース分析」は、自社を取り巻く外部環境の競争要因を「3つの内的要因」と「2つの外的要因」に分類し、参入市場の競争環境を分析するフレームワークです。5フォース分析における3つの内的要因は「参入市場の競合」「サプライヤー(売り手)の交渉力」「顧客(買い手)の交渉力」を指し、2つの外的要因とは「代替品の脅威」と「新規参入業者の脅威」を意味します。これらの要素を分析することで、市場の競争要因を明確化することが5フォース分析の役割です。
具体的には、競合他社との力関係、原材料や部材を供給するサプライヤーとの力関係、顧客や消費者など買い手との力関係といった3つの内的要因を分析し、業界構造のパワーバランスや収益構造、予測コストなどを明らかにします。そして、自社のビジネスモデルを脅かす代替品の存在や、新規参入業者の脅威度といった2つの外的要因に基づいて、市場の将来性や参入価値を分析するのが基本的なプロセスです。 これにより業界全体の構造や競争要因を把握できるため、市場への新規参入や撤退を考えるうえで欠かせない手法となります。

PEST分析

「PEST分析」とは、「Politics(政治的な要因)」「Economics(経済的な要因)」「Society(社会的な要因)」「Technology(技術的な要因)」という4つの要素を分析し、それらが自社の事業活動に及ぼす影響を分析するフレームワークです。

・Politics:法規制や税制の変化、政権交代、補助金制度、外交関係のパワーバランスなど、政治的な要因が与える影響を指します。
・Economics:インフレやデフレ、経済成長率、外国為替市場の動向といった経済的な要因が及ぼす影響です。
・Society:人口動態や高齢化率、流行、ライフスタイルなどの社会環境の変化が与える影響を指します。
・Technology:デジタル技術の進歩・発展によって生じる影響を意味します。

PEST分析の役割は、法規制や経済の動向、文化や世論、技術革新などのマクロ環境を俯瞰的に分析し、事業活動において生じ得るリスクに備えることです。世の中の流れを大局的な視点から分析することで、自社を取り巻く環境の変化に対し、柔軟に対応できる可能性が高まります。

SWOT分析

「SWOT分析」とは、内部環境の「Strengths(強み)」「Weakness(弱み)」と、外部環境の「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」を分析するフレームワークです。

・Strengths:自社の優位性や長所などを指し、内部環境のプラス要素を意味します。
・Weakness:不得手な領域や不足している要素といった、内部環境のマイナス要素を指す概念です。
・Opportunity:社会や経済などの外部環境の変化によって生じ得るプラスの要素を意味します。
・Threats:外部環境の変化によって発生しかねないマイナス要因を指します。

外部環境は、自社ではコントロールできない不確定な要素であり、市場や環境の変化によってプラスにもマイナスにも働く可能性があります。こうした不確実性に備えるためには、コントロールできない外部環境の機会や脅威を分析し、不確実な環境のなかでいかに自社の強みを活かしつつ、弱みを克服するかを考えなくてはなりません。 内部環境の長所と短所、そして外部環境のプラス要素とマイナス要素を組み合わせて分析し、経営課題を把握するとともに、市場に存在するビジネスチャンスを発見することがSWOT分析の役割です。

STP分析

「STP分析」とは、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」という3つのプロセスを組み合わせたマーケティング分析のフレームワークです。

・Segmentation:参入する市場の細分化を意味します。
・Targeting:細分化された市場のなかで見込み客を選定することです。
・Positioning:参入市場のなかで自社の立ち位置を確立するプロセスを指します。

STP分析の目的は、マーケティング戦略の明確化と顧客ニーズの把握、そして競合他社との差別化です。具体的には、まず「Segmentation」で見込み客を属性別に分類し、「Targeting」で各セグメントにおける最も購買意欲の高いターゲット層を絞り込み、「Positioning」で自社製品の強みや競合製品との相違点を明確化します。 このプロセスを経ることで、販売戦略の方向性や見込み客のペルソナ、市場における自社の優位性などを言語化・数値化できます。

4P分析

「4P分析」とは、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」という4つの「P」を関連付けて分析するフレームワークです。具体的には、まず自社が提供する商品やサービスの長所・短所、競合製品との差別化ポイントなどを洗い出し、そのプロダクトの適正価格を中長期的な経営戦略に基づいて分析します。そして、プロダクトを届ける最適な物流経路を考え、見込み客への具体的な訴求方法を策定する、というのが4P分析の基本的なプロセスです。
4P分析の目的は、市場環境分析を通して立案されたマーケティング戦略を具体的な行動レベルに落とし込むことにあります。3C分析やSWOT分析などを経てマーケティング戦略の方向性を定めたなら、次は「何を」「いくらで」「どこで」「どのように提供するのか」を策定しなくてはなりません。そこで重要な役割を担うのが4P分析であり、市場の成熟化とともに多様化していく顧客ニーズに対応するべく、4つの「P」を関連付けながら、販売促進や広告宣伝の具体的な施策を定めていきます。

バリューチェーン分析

「バリューチェーン分析」とは、事業活動を「主活動」と「支援活動」に分類し、どの工程で付加価値が創出されているのかを可視化する分析手法です。企業の事業活動は購買や製造、物流、販売などの主活動と、調達や財務会計、人事管理、技術開発、インフラ管理といった支援活動に大別されます。プロダクトが顧客に渡るまでの間には「調達」→「生産」→「在庫管理」→「物流」→「販売」→「消費」というサプライチェーンが存在し、このフローに内包される主活動と支援活動の連鎖を「バリューチェーン」と呼びます。主活動と支援活動を細分化して分析し、それぞれの工程で生み出される付加価値や解決すべき課題を具体化することが、バリューチェーン分析の主な役割です。
たとえば、バリューチェーンを詳細に分析し、コスト過多に陥っている領域を特定できれば、収益性や利益率の改善につながります。また、高い付加価値が生み出されている工程を特定することで、自社の強みや競合他社との差別化ポイントを具体化するとともに、経営リソースを集中的に投入すべき領域が明確化されるといったメリットもあります。

ファネル分析

「ファネル分析」とは、商品やサービスの認知から購入に至るまでのプロセスを分析するフレームワークです。「Funnel(ファネル)」は「漏斗(ろうと)」を意味する英単語であり、マーケティングの領域においては、見込み客がプロダクトを認知してから購入に至るまでのプロセスを図式化したもののことです。見込み客が顧客化するまでの間には「発見・認知」→「興味・関心」→「比較・検討」→「購入・申し込み」というプロセスがあり、段階を経るごとに見込み客の数は漏斗状に絞り込まれていくのが大きな特徴です。
ファネル分析の目的は、「発見・認知」→「興味・関心」→「比較・検討」→「購入・申し込み」のプロセスを分解し、見込み客が離脱する原因を特定することにあります。たとえば、「比較・検討」の段階に移行した見込み客が「購入・申し込み」に至らなかった場合、そこには何らかの解決すべき課題が存在するはずです。ファネル分析によってボトルネックを可視化できれば、具体的な改善策を立案できるため、施策の合理化や成約率の向上につながります。

マーケティング分析でのコツ

マーケティング分析を実施する際は、いくつか押さえるべきポイントが存在します。なかでも重要となるのが、以下に挙げる5つです。 ・社内全体で連携する ・施策導入後に見直しする ・顧客ニーズの多様性に向き合う ・顧客のフォローアップを充実させる ・マーケティングツールの導入

社内全体で連携する

マーケティング分析における重要課題のひとつが、全社横断的な情報共有による、部門の垣根を越えた連携体制の構築です。マーケティングの業務領域は市場調査や商品開発、販売促進、広告宣伝、営業活動など多岐にわたるため、プロジェクトに関わるすべての従業員がマーケティング分析の目的を共有しなくてはなりません。マーケティング分析に携わる従業員が目的を理解し、そのビジョンをチーム全体で共有することで、認識の不一致や解釈のズレを最小化し、プロジェクトの円滑な進展に貢献します。

施策導入後に見直しする

先述したように、マーケティング戦略は一度の実践で終わりではなく、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善に取り組まなくてはなりません。絶えず変化していく市場に対応するためには、施策の効果判定を行うとともに、仮設と検証を繰り返しながらブラッシュアップしていく必要があります。たとえ望むような成果を得られなかったとしても、PDCAサイクルを回し続けることでデータやナレッジが蓄積され、分析精度の向上や施策の合理化につながるという好循環を生む一助となるでしょう。

顧客ニーズの多様性に向き合う

現代は、消費者の購買行動に「インターネットを活用した情報検索」や「オンライン上での口コミと情報共有」などが加わり、情報リテラシーの向上に伴って顧客ニーズは多様化かつ高度化していく傾向にあります。市場の成熟化によって商品やサービスがコモディティ化し、競合他社との差別化が困難になりつつある現代では、いかにして顧客ニーズの多様性に向き合うかが重要です。このような時代において市場の競争優位性を確立するためには、勘や経験といった曖昧な要素に依存しない、データドリブンな経営体制の構築が求められます。

顧客のフォローアップを充実させる

企業が持続的に発展し続けるためには、既存顧客のロイヤルカスタマー化を促進する仕組みが不可欠です。そのためには、既存顧客のフォローアップ体制を整備し、顧客満足度の最大化を推進する仕組みを構築しなくてはなりません。商談成立後も継続的なコミュニケーションを図る、カスタマーセンターの応対品質を高める、あるいは購入者限定の情報を発信するなど、フォローアップ体制を整えることで既存顧客のエンゲージメントとロイヤルティの向上につながります。

マーケティングツールの導入

マーケティング分析を効率的に進めるためには、ITシステムの戦略的な活用が欠かせません。マーケティング領域を支援するデジタルソリューションを活用することで、部門を横断した業務連携やデータドリブンな経営体制の構築につながります。マーケティング分析を推進するうえで活用したいITシステムとして挙げられるのは、「MA」「SFA」「CRM」「ABM」の4つです。

MA

MAは「Marketing Automation」の略称で、マーケティング活動の自動化と効率化に特化したITシステムです。顧客情報を一元的に管理するとともに、メール配信機能やスコアリング機能、属性別のコンテンツ配信、アクセス解析といった機能を搭載しています。これらの機能によって、新規顧客の獲得から見込み客の育成を効率化し、マーケティング活動の推進を総合的にサポートします。

SFA

SFAは「Sales Force Automation」の略称で、「営業支援システム」と訳されるソリューションです。顧客情報の管理や商談状況の進捗管理、営業パーソンの行動管理、営業情報の可視化、顧客へのメール配信などが可能であり、営業活動におけるフローの合理化と効率化を支援します。見込み客や顧客との折衝情報を詳細に管理し、属人化しがちな営業領域の標準化に寄与するシステムです。

CRM

CRMは「Customer Relationship Management」の略称で、顧客との関係性を管理・強化するソリューションです。顧客の購入履歴や売上高構成比、コンタクトセンターの対応状況などに加え、趣味や嗜好といったサイコグラフィックデータまで管理できます。新規顧客の獲得は、既存顧客への販売と比較して5倍のコストを要するとされており、CRMの活用による顧客関係の最適化が重視されています。

ABM

ABMとは「Account Based Marketing」の略称で、自社にとって成約確度の高い顧客を分析・選別するITシステムです。主にBtoB向けのマーケティング領域で用いられるソリューションであり、購入履歴や売上高、取引履歴などから自社にとって利益が大きい顧客を絞り込みます。MAと似た機能を備えていますが、ABMは自社にとって成約確度の高い顧客のみにアプローチする点が異なります。

分析ごとの例

ここでは、マーケティング分析の代表的な手法を、企業の事業活動に当てはめながら解説します。事例からマーケティング分析の本質を抽出し、自社のビジネスモデルに応用してください。

【3C分析の事例】任天堂

IT革命以降の家庭用ゲーム機は、コアゲーマーをターゲットとするハイスペック型が主流となっており、ライトユーザーのゲーム離れが加速していました。そこで任天堂は、スペック競争から脱却し、ライトユーザーがカジュアルにゲームを楽しめる世界観を打ち出します。競合他社と同じ土俵で争うのではなく、ライトゲーマーの取り込みに焦点を当て、ライバルとは一線を画すシェアの獲得を目指しました。その結果、「Wii」や「Nintendo Switch」といったライトユーザー向けのプロダクトを生み出し、独自のポジショニングを確立しています。

・Customer(顧客・市場) コアゲーマーが市場の中心となっており、ライトユーザーのゲーム離れが加速
・Competitor(競合他社) 競合他社はコアゲーマーをターゲットとしたハイスペック機に注力
・Company(自社環境) 「マリオ」や「ヨッシー」など、子どもから大人まで愛されるキャラクターが自社の強み

【5フォース分析の事例】マクドナルド

マクドナルドにとって、モスバーガーやロッテリアといった競合の存在は脅威ではあるものの、成熟業界に比べれば市場の競争性は高くないといえます。すでに市場での地位を確立しているため、新規参入業者による脅威は皆無といっても過言ではありません。さらにグローバルな供給先を複数もっているため、サプライヤーに対する交渉力が非常に強い立場です。しかし、消費者は自由に飲食店を選べるため、売り手への交渉力は強くありません。代替品の脅威としては、ほかのファストフードや低価格帯の飲食店、コンビニエンスストアなどが挙げられます。

・参入市場の競合 強い競合がいるものの、業界の競争性自体は高くない
・サプライヤー(売り手)の交渉力 食材を大量に仕入れるため、自社に優位性がある
・顧客(買い手)の交渉力 他店を自由に選べるため、消費者に優位性がある
・代替品の脅威 ほかのファストフードや低価格帯の飲食店、コンビニエンスストアなど
・新規参入業者の脅威 ハンバーガーチェーンとしての地位を確立しているため、新規参入業者による脅威はない

【SWOT分析の事例】トヨタ自動車

トヨタ自動車は、高い技術力と効率的な生産体制を強みとしており、弱点といえる軽自動車の領域においてもコンパクトカーの販売で高い成果を創出しています。しかし、海外販売比率が高いため、為替の変動によって売上高が大きく左右されます。外部環境要因の機会として挙げられるのは、環境意識の高まりから新市場が拓かれつつあること、または新興国の購買力向上などです。ただし、世界的なIT企業の参入によるシェアの低下や、国内では少子高齢化による売上高の低迷が懸念されています。

・内部環境の「Strengths(強み)」 高い技術力と効率的な生産体制
・内部環境の「Weakness(弱み)」 海外販売比率が高く、外国為替市場の変動による影響が大きい
・外部環境の「Opportunity(機会)」 環境意識の高まりや新興国の購買力向上
・外部環境の「Threat(脅威)」 IT企業の自動者業界参入や国内の少子高齢化

【STP分析の事例】ユニクロ

ユニクロは、低価格かつ高機能な商品の提供により、ほかとは異なるポジショニングを確立しているアパレルブランドです。カジュアル志向とベーシック志向を主体とする市場のなかで、「フリース」や「エクストラファインメリノセーター」など、トレンドに左右されないシンプルなアイテムが人気を博しています。「ヒートテック」や「エアリズム」など、低価格ながら高品質かつ高機能なアイテムが多数ある点も、ユニクロが支持される理由のひとつです。

・Segmentation(セグメンテーション) 安価で手に入れられる高品質かつ高機能な普段着
・Targeting(ターゲティング) カジュアル志向とベーシック志向
・Positioning(ポジショニング) 一時的なトレンドに左右されない普遍的なアイテムの供給

【4P分析の事例】スターバックス

スターバックスは、高価格戦略によるブランディングを推進しており、高品質なオリジナル商品が人気を博しています。単にコーヒーを提供するだけでなく、サードプレイスの提供を理念としている点もスターバックスの魅力です。また、国によって提供するサイズを変え、立地や人材などの環境をブランドイメージに合わせている点も大きな特徴です。各地の主要駅やショッピングモール、人の往来が多い中心街などに店舗を構え、大きな宣伝活動をすることなく口コミによってブランド価値を保っています。

・Product(製品) 高品質なオリジナル商品
・Price(価格) 高価格戦略によるブランディング
・Place(流通) 各地の主要駅、ショッピングモール、人の往来が多い中心街など
・Promotion(販売促進) 広告宣伝に依存しない口コミによるプロモーション

マーケティングに関して知っておくといい用語

マーケティング分野では一般的に、馴染みの薄い専門的な用語を使用するケースが少なくありません。ここでは、マーケティングの領域に携わるうえで把握しておきたい専門用語を5つご紹介します。

AIDMA(アイドマ)

「AIDMA(アイドマ)」とは、「Attention(認知)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字をとった略称で、消費者の購買行動を表すフレームワークです。 消費者が商品やサービスを購入する際は、「プロダクトの存在を知る」→「プロダクトに興味を抱く」→「プロダクトが欲しくなる」→「プロダクトを覚える」→「プロダクトを購入する」というプロセスを辿るのが一般的です。この購買プロセスを表したモデルがAIDMAであり、それぞれの段階によって見込み客の購買意欲は大きく異なります。そのため、広告宣伝や営業活動を仕掛ける際は、見込み客がどの段階にいるのかを分析したうえで、各プロセスの購買意欲に合わせたアプローチを仕掛けなくてはなりません。

AISAS(アイサス)

「AISAS(アイサス)」とは、インターネットが普及した現代市場における消費者の購買行動を表すフレームワークです。「Attention(認知)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の5つで構成されており、認知と関心まではAIDMAと同じプロセスを辿ります。しかしAISASは、そこからWeb上でプロダクトの情報を検索したうえで比較検討し、その後に商品やサービスの購入に至る点が大きな特徴です。さらにプロダクトの購入後にWebサイトやSNSなどを通じて情報を共有するという購買行動が加わります。 マスメディアが主流の時代はAIDMAに基づく購買行動が一般的だったものの、SNSが隆盛を極める現代では、AISASが基本の購買行動モデルとなりつつあります。

ペルソナ

「ペルソナ」とは、自社の顧客となり得る架空の人物像を意味する概念です。本来は古典劇で使用される「仮面」を指す言葉ですが、心理学者のユングが人間の外的側面を仮面に例えてペルソナと呼称し、それが転じてマーケティング分野で「見込み客の詳細な人物像」を意味する用語として浸透しています。 具体的には、見込み客の「年齢」「性別」「住所」「職業」「学歴」「家族構成」といったデモグラフィックデータに加え、「性格」「価値観」「悩み」「習慣」「趣味」「嗜好」などのサイコグラフィックデータまで深掘りする点が大きな特徴です。ペルソナを設計する本質的な目的は顧客理解の深化であり、ターゲットの人物像を詳細に掘り下げることで、見込み客の潜在的な需要や消費者インサイトを可視化します。

セグメント

「セグメント」とは「区分」「分類」「断片」などを意味する言葉であり、マーケティングの分野では、特定の属性ごとに細分化されたグループを意味する用語です。先述したSTP分析における「セグメンテーション」と同義の用語といえます。 セグメントの目的は、「対象市場の特定」と「リソースの集中」です。ターゲット層を広く設定すると訴求ポイントが曖昧になり、購買意欲の高いニーズを捉えきれません。参入市場に存在するユーザーを「年齢」や「職業」、「趣味」「年収」といった属性に応じてグループ分けすることで、対象となる見込み客を絞り込むことが可能です。そして、各グループのコアなニーズを掘り起こし、その一点にリソースを集中することで、効率的なマーケティング戦略を仕掛けられます。

キャズム

「キャズム」とは「深い溝」を意味する概念であり、マーケティングの領域では、「新しいプロダクトが普及するために乗り越えなくてはならない障害」を指す用語です。新しい技術や革新的なアイデアに基づくプロダクトは、普及の初期と中期に深い溝があり、この障害を乗り越えられずに脱落する商品やサービスが少なくありません。市場に投入された多くの新商品が、成長期に入る過程で深い溝に落下するため、新市場を開拓するためにはキャズムを乗り越える必要があります。 このような現象を乗り越えるためのアプローチは「キャズム理論」と呼ばれており、キャズムを乗り越えるためには参入市場を狭く深く定義し、細分化された市場のなかでいかにして確実にシェアを獲得していくかが重要である、とされています。

まとめ

マーケティング分析とは、市場調査に基づいて見込み客の潜在需要や購買行動を分析する一連の施策です。マーケティング分析には複数の分析手法があり、自社のビジネスモデルに適した手法を選択しなくてはなりません。新しい時代に即したデータドリブンなマーケティング戦略の展開を目指す企業は、ぜひ下記資料をご一読ください。

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