【ShortNote】わかることと、わからないことで、名作はできている(4月3日配信分)

 

数年前にとあるきっかけで、世界的に活躍する日本料理店の料理長にお話を伺ったことがありました。付け焼き刃の知識しか持たない私にも、料理に対する向き合い方や哲学を懇切丁寧に語ってくださった中で、今なお覚えていることがあります。それは、おせち料理について。

正方形の重箱に様々な料理を詰める際に、まずメインディッシュを中央に据え、その周りを◯×ゲームのごとく、上下左右が対称になるように配置していく。そうすることで、バラつきがなく、整ったデザインに仕上げられるのだと。ここまで聞いて、なるほどわかると思ったのですが、話はこれで終わりではありませんでした。料理長は、上下左右が対称になるよう配置しつつ、最終的には、わずかに非対称になるように配置を変えることもあるとおっしゃったのです。それはなぜか。

全ての要素が正しく綺麗にまとめられているデザインは、しばしば面白みに欠ける。感情に訴えかけてくるものが足りないから、セオリーから少しズラすことで、違和感を生み出す。その違和感に人は関心を抱き、好き、あるいは嫌いという感情に結びついていくのだと。

つまり、感情を動かす優れたコンテンツは、わかることと、わからないことの両方でできている。映画や漫画などで、回収されていない伏線が残っている方が長く話題になりやすいのも、まさにこういうことなのだなと思いました。

※本記事は、yappliで配信をしているコラムメール「ShortNote」で配信をしたコラムを転載しております。

和泉真

大学卒業後、コピーライター/プランナー/クリエイティブディレクターとして複数の広告会社を経験。三越伊勢丹や東急ハンズ、東急百貨店やJINSなどの広告プロモーションやブランディング施策の企画・制作を担当。2021年にヤプリに入社し、マーケティング担当としてコンテンツマーケティングなどに取り組んでいる。