PEST分析とは? やり方や目的、事例などをわかりやすく解説

フレームワークのひとつである「PEST分析」を行うことで、企業を取り巻く外部環境をよりよく理解でき、ビジネス成功に必要な戦略を立てられます。PEST分析という名前しか聞いたことがない方にも、PEST分析とは何か、概要や行う目的、行う手順、成功させるポイントや具体的な事例などをわかりやすく紹介します。

PEST分析とは

PEST分析とは、ビジネスを成功に導くために、企業を取り巻く外部環境について把握し、分析するマーケティングフレームワークのことをいいます。 PEST分析の「PEST」とは、「政治的要因(Politics)」、「経済的要因(Economy)」、「社会的要因(Society)」、「技術的要因(Technology)」の頭文字を取ったもので、どの項目がどれくらい自社に影響を与えるのかを分析します。 分析対象となる外部環境は「マクロ環境」と呼ばれる「政治」「経済」「社会」「技術」の4つとされています。これらの視点から、外部環境の変化を把握することにより、自社が今後とるべき戦略を効果的に分析できます。 時代ごとの流行や世界の状況などの日々変化する外部環境を常に捉えておくことで、自社にどのような影響があるのかを考え、今後の事業戦略をどのように行うかなどを正確に判断するための重要な情報を得られます。 4つの要因は外部環境のなかでも「マクロ環境」と呼ばれる環境に分類されており、会社の活動に間接的に影響を及ぼす外部環境、または市場を取り巻く外部環境のことを意味するとされています。 マクロ環境に関する分析のことを「マクロ環境分析」と呼び、PEST分析もこのマクロ環境分析のひとつとされています。 また、マクロ環境の他にも、企業活動に直接影響を及ぼす「ミクロ環境」と呼ばれる外部環境が存在します。たとえば顧客や競合他社、サプライヤーや投資家などが含まれます。 PEST分析を行うことにより、自社にとっての事業機会の可能性や、影響を及ぼす恐れがある脅威を洗い出し、社会の変化に応じた今後の自社の動き方などを予測し、ビジネスを成功させるためのマーケティング戦略や事業戦略を立てられます。

PEST分析における4つの要因

ここからはPEST分析を構成する4つの要因について、詳しく解説します。

Politics:政治的要因

政治的要因(Politic)とは、企業に影響を与える政治や法律、税制などの行政面における動向のことをいいます。 具体的に以下のようなものが挙げられます。 ・政策の見直し ・政権交代 ・条例の改正 ・法改正 ・規制緩和 ・税制の見直し ・国際関係の変化  ・補助金の交付 など 政治的要因は、市場全体の動きに大きな変化をもたらす可能性が高く、その動向は企業にとって脅威にもなり得ます。一方で、ビジネスを成功させる機会ともなる重要な項目です。 例えば、会計ソフトを提供する会社の場合は、電子帳簿保存法の改正などという政治的要因を分析することで、他社よりも迅速に市場に対応した準備を行えます。また、食品業界で規制緩和という要因を分析することで、新しい市場開拓の計画策定や、必要なリソースの確保などをいち早く行えます。 このように、常に政治的要因を分析し続け、変化に応じた対策を講じることが企業の成長につながります。

Economy:経済的要因

経済的要因(Economy)とは、企業に影響を与える景気や経済成長率、賃金などの経済面における動向のことをいいます。 具体的には、以下のようなものが挙げられます。 ・景気の動向 ・株価の変動 ・金利の変動 ・消費の動向 ・為替の変動 ・賃金の動向 ・失業率の変動 ・原油価格の変動 など 経済的要因は、特に会社の売り上げや財務状況などに影響のある項目です。 例えば、景気が悪化すると消費者の購買意欲は下がり、景気が上がると需要は高まります。為替の変動によって人件費や原材料のコストなどの価格高騰があった場合は、企業の支出も大幅に増えてしまいます。 また、賃金が上昇すると消費者動向にも変化が出てくるので、製品やサービスの売り上げ増減に直結します。 これらの動向を分析し、起こり得るリスクを最小限にするために、商品・サービス価格の見直しや生産工程の改善、新規市場開拓の検討といった施策を行うことが重要です。

Society:社会的要因

社会的要因(Society)とは、企業に影響を与える人口動向や流行り、文化などを含む社会全体の動きのことをいいます。 具体的には、主に以下のようなものが挙げられます。 【社会的要因(Society)の例】 ・人口の増減 ・世帯数の増減 ・文化の変化 ・習慣の変化 ・生活様式の変化 ・教育の変化 ・流行の変化 ・世論(風潮)の変化 ・社会問題 ・宗教 など 社会的要因は、政治的要因や経済的要因とは異なり、明確な決まりや数字があるわけではなく、変化が漠然としていて把握が難しい項目です。 少子高齢化や一人暮らしの増加などによって、スーパーやコンビニで一人用商品の販売が促進されたことも社会的要因の分析による一例です。また最近では、国連が掲げる「SDGs」に取り組む企業が多く見受けられます。「SDGs」は働き方改革や成長市場の創出、再エネ・省エネなど、地球環境への配慮やあらゆる人が活躍できる社会の実現といった内容を含みます。これらを積極的に推し進めることで、企業は社会からの評価や信頼性を高められます。また、持続可能なビジネス成長や新たなビジネス開拓、優秀な人材の獲得にも寄与することが期待されます。 このように、社会的要因をより的確に把握・分析して必要な行動を起こすことが、企業の成長につながります。

Technology:技術的要因

技術的要因(Technology)とは、企業に影響を与えるテクノロジーや技術の革新などによる動向のことを指します。 具体的には以下のようなものが挙げられます。 ・AI ・IoT/IT ・メタバース・AR ・ビッグデータ ・機械学習 ・自動運転システム ・ブロックチェーン ・開発技術 ・生産技術 ・設計技術 ・特許 など 技術的要因は、会社全体の業務効率を変動させる可能性があり、事業の成長・衰退に直結する項目です。 技術が進歩すると自社で扱う技術が陳腐化し、他社との競争に乗り遅れてしまいます。 また、テクノロジーが開発されると、新たな市場が開拓される可能性があるので、大きなビジネスチャンスを掴むことも可能です。 映画業界を例に取ると、最近ではオンラインの技術が急速に進み、消費者はストリーミング配信サービスを利用して、自宅にいながらいつでも映画鑑賞ができるようになりました。また、ARやVRなどの新テクノロジーの台頭で、体験型の映画鑑賞が可能になりました。これらの変化は映画館の存在価値の見直しに直結します。PEST分析によってこれらの変化が企業に与えるリスクを特定し、消費者動向をいち早く捉えられれば、効果的なマーケティング戦略を策定できます。

PEST分析が重要な理由

事業を成功させるための事業戦略・マーケティング戦略の策定には、PEST分析を行うことが効果的とされています。それは、外部要因が事業の成功または失敗に関わることがあるためです。実際に分析を行う前に、そのため、まずはPEST分析の重要性を理解しておくことが大事です。 PEST分析で取り扱う4つの外部環境は日々絶えず変化しています。それらの外部環境を分析することで、変化に迅速に対応するための戦略を策定できます。また、潜在的なリスクを特定し、それらのリスクを最小限に抑えたり回避したりするための戦略も立てられます。 例えば、自社の製品やサービスが法律改正によって販売規制あるいは規制緩和されたり、消費動向の変化で需要が減少・増加したりなど、さまざまな影響がもたらされることが考えられます。そのため、これらの外部環境を定期的かつ正確に分析し、今後の動きを予測していくことがビジネスの成功につながります。いっぽうで、外部要因の分析をせずにビジネスを推し進めていくと、政策の見直しや景気の動向、流行や世論の変化などの影響を予測できず、市場に潜む思わぬリスクからビジネスの失敗を招いてしまいかねません。

PEST分析を行う目的

PEST分析を行う際は、最初に目的を明確にしておく必要があります。 PEST分析を行うのは、企業だけの力ではコントロールできない外的要因を分析して、環境の変化に合わせたマーケティング活動を行って自社の優位性を確保することが目的です。また、新たな業界への新規参入や、既存事業の撤退を行う際などの判断にも役立てられます。 PEST分析は、もともとは、米ハーバード大学経営大学院の経営学者のフランシス アギュラー氏が考案したものです。その後、経営学者であるノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールの教授、フィリップ・コトラー氏が著書の中で提唱したことにより、広く知れ渡りました。著書「コトラーの戦略的マーケティング」では、いかに環境分析が大事であるかを説いており、「調査を行わずに市場参入を試みることは、目が見えないのに市場に参入しようとするようなもの」と語っています。 ビジネスの成功には、外部環境の要因を分析して戦略的な意思決定をするためのPEST分析が欠かせません。変化の激しい外部環境で、それに適した製品やサービスを提供し、自社の優位性を保ち続けることがビジネス成功の秘訣です。 フィリップ・コトラー氏が提唱した購買プロセスの理論、カスタマージャーニーの解説はこちら https://yapp.li/magazine/4822/

PEST分析のやり方

実際にPEST分析を行うためには、あらかじめ分析する方法や手順を押さえておく必要があります。全体の流れを知っておくと、より効率的に分析できます。 PEST分析の大まかな流れは以下のとおりです。 1. ゴールを設定する 2. 分析する要因を洗い出す 3. 4つの環境要因に分ける 4. 「事実」と「解釈」に分ける 5. 事実を「機会」と「脅威」に分ける 6. 短期的なものか長期的なものかに分ける 7. 分析結果を施策に落とし込む ここからはPEST分析を行う方法について順を追って、解説していきます。

手順1. ゴールを設定する

目的を明確にするのと同時に、達成すべきゴール(目標)設定も行います。ゴールを設定することにより、PEST分析で決まるマーケティングの方向性が正しいかどうかを判断できるためです。例えば新規市場の開拓や新しい製品やサービスの開発など企業によって設定内容はさまざまですが、ゴール設定を行うことで情報収集の範囲が明確になり、情報に対してより効率的で的確な評価を行えます。 それでも外部環境は範囲が広く、流動性もあり情報も溢れています。そのため、情報収集に手間と時間がかかり、困難に感じる場合もあるでしょう。そのため、PEST分析では必要な情報を精査することが重要です。自社に関連しない事柄、あるいは関連性が低いものは切り捨て、必要かつ信ぴょう性の高いものを選び分析することが重要です。

手順2. 分析する要因を洗い出す

次に、事業に関する情報から、分析対象となるものを集めていきます。新聞やメディア、調査資料などから情報を収集しましょう。集める情報は、公的機関などのできるだけ信頼性の高い機関からのものを扱います。必要に応じて、机上調査だけでなく、自分自身で足を運び、実態調査を行うことも効果的です。

手順3. 4つの環境要因に分ける

次に、手順2で洗い出した事業に関する情報を、4つの外部環境のどれに分類されるのかを判断し、振り分けを行いましょう。 どの要因に分類できるか迷うこともあるかもしれませんが、自社に影響を与える外部要因を認識すること自体がPEST分析の目的であるため、あまり厳密に考えすぎる必要はありません。 この時点で、洗い出した情報は正しいのか、企業に及ぼしそうな要素を網羅できているか、時代のトレンドやキーワードは押さえられているかなども併せて確認しておきましょう。

手順4. 事実と解釈に分ける

次に、手順3で分類した4つの要因を、「事実」と「解釈」のどちらかに振り分けましょう。 PEST分析において、必要な情報は事実のみなので、分析者の主観的な解釈が入っていないかを確認します。 せっかく時間をかけて情報を収集しても、正確に事実を精査できないと、有効な分析結果を得られません。 事実とは「実際、現実に発生していること」を指し、解釈とは「その事項に対する個人の考え」を意味しています。 例えば、「空港の利用者が減少している」、「航空券の価格が上がっている」という2つの情報がある場合には、以下のように分類します。 【事実と解釈の振り分け方の例】 事実 ・空港利用者の減少 ・航空券の価格高騰 解釈 ・航空券の価格高騰による空港利用者の減少 正確な数値が出ているものであれば、実際に発生している事柄であるため事実として分類します。 一方で、発生しているその状況を個人で判断しており、なおかつ因果関係が確認できないものは、解釈として分類します。 特にインターネット上には情報が溢れており、事実と解釈の精査が難しいため、時間をかけて丁寧に行うことが大事です。

手順5. 事実を「機会」と「脅威」に分ける

「事実」洗い出せたら、つづいてはその情報が自社にとっての「機会(チャンス)」なのか、「脅威(リスク)」なのかを判断し、振り分けます。 自社にとってプラスで、有利となる情報である場合は機会(チャンス)に、自社にとってマイナスであり、不利となることが予測できる情報の場合は脅威(リスク)として分類します。 ただし同じ事実であっても、企業によって機会(チャンス)となるのか、脅威(リスク)となるのかは異なります。 そのため、自社の立場を考慮して、機会(チャンス)と脅威(リスク)のどちらに分類できるのかを見極めることが重要です。 例えば、格安スマホ会社の出現は、大手携帯キャリア会社にとっての脅威に分類できます。 しかし、サービスのクオリティやバリエーションなどで差別化を図り、顧客に訴求できれば、新たな層の顧客を取り込む機会になる可能性もあります。 脅威に見える要因であっても、工夫次第では機会になるケースもあるということです。 この時点で、さらにその事実の緊急性や重要性も押さえておくと良いでしょう。緊急かつ重要な事項は、素早い対応を行う必要があるからです。

手順6. 短期的なものか長期的なものかに分ける

手順5で機会か脅威かによって分類した情報を、つづいてそれぞれ短期的に自社に影響を与えるのか、あるいは長期的に自社に影響を与えるのかを判断し、振り分けます。 流動的な状況のなかで情報を精査するには、それらの要因が自社にどのくらいの期間、影響を与えるのかを理解しておくことが重要です。時系列が分かると、対応すべき事柄の優先順位を把握できるためです。

手順7. 分析結果を施策に落とし込む

手順1~6の手順で分析を行い、得られた結果を事業やマーケティング戦略の策定に落とし込みましょう。 分析結果を参考に、具体的に自社がどのような方針を採るのかを考えます。施策に優先的に落とし込むのは、緊急性と重要性が高く、短期で考慮すべき項目です。 例えば、「需要の低下による利用者の減少」という要因に対しては、プロモーションを行ったり、キャンペーンを実施したりして短期的かつ迅速な対処を行いますが、「AIによる無人チェックイン」などのテクノロジーは、サービスとして実装されるまでに時間がかかるので、長期的に対策を検討する、というような具合です。 PEST分析の他に「3C分析」、「5フォース分析」、「4P分析」、「SWOT分析」などと呼ばれるフレームワークも併せて活用し、最終的な事業方針を決めることも有効です。

PEST分析を成功させるポイント

PEST分析は、事業の方向性を決定するうえで大変有効的な分析ですが、誤った方法で行ってしまうと、きちんとした結果を得ることができません。せっかく時間と手間をかけて分析を行っても、全てが無駄になってしまいます。 そこで、ここではPEST分析を成功させる5つのポイントについて解説します。

短期的な施策には使わない

PEST分析は、短期的な施策には向いていません。PEST分析で分析対象となるのは、政治や経済などの、企業が自力でコントロールできないマクロ環境です。そのようなマクロ環境は、1週間や1カ月といった短期間に変化が現れるものではなく、年単位などのようにゆっくりと変移していきます。そのため、中長期的な施策には向いていますが、短期的な事業には不向きです。

常に情報収集を行う

PEST分析は日々変化し続ける外的環境を対象に分析するので、常に情報を収集することが重要です。 例えば、法律の改正や株価の動きなどは、いつ大きな変化があるか分かりません。そのため、分析する際は環境や流行などの変化に敏感になり、常に新しい情報を収集しておく必要があります。 変化し続ける外部環境の情報を常に掴めれば、進めるべき事業の方向性をより正確に判断できます。

変化だけではなく影響も予測する

PEST分析で得た情報から、外部環境の変化だけに着目するのではなく、その変化から起こり得る今後の動き・事象を予測することが非常に大切です。 得られた分析結果だけをもとに事業の構想を考えてしまっては、競合との差別化を図ることは難しいでしょう。 競合に差をつけるためには、外部環境の変化のみならず、その変化によって考えられる「影響」を予測する必要があります。 例えば、「若い世代の自動車所有率が減少している」という情報と「アプリやインターネットのサービスが普及している」という情報から、「公共交通機関の経路や時刻表の検索に関するアプリやサービスの人気が高まる」という予測ができます。 このように、未来の動きを見据えた戦略を構想できれば、競合よりも先に手を打つことが可能です。

テンプレートを活用する

PEST分析を行う際は、あらかじめ枠が決まっているテンプレートを活用するのもおすすめです。 PEST分析で対象とする4つの外部環境は情報の範囲が広いため、多角的な視点からその事柄について捉えられますが、情報の本質を捉えることが難しくなってしまい、的確な結果を得ることが困難になる場合もあります。 上手に視点を切り替え、本質的な結果を得るためにテンプレートを使えば、分析プロセスや思考を整理しやすくなります。

複数の分析手法を組み合わせる

PEST分析だけでなく、他の分析手法を組み合わせるのも有効な手段です。PEST分析は外部環境を分析する手法なので、内部環境の分析は行いません。ビジネスの成功はさまざまな要因から成り立っています。製品やサービスの質も要因のひとつです。そのため、ビジネスを進めるにあたっては、外部環境の情報だけを分析して施策に落とし込むだけではなく、市場や自社内部の状況を併せて理解しておくことも重要です。

PEST分析と組み合わせられる分析手法

ビジネスを成功に導くために行うフレームワークには、PEST分析以外にもさまざまなものがあります。 PEST分析と併せて行うことで、より的確な結果を導き出すことができ、より正確な施策や戦略立案をしやすくなります。 そこで、ここではPEST分析と組み合わせができる、5つの分析手法を詳しく紹介します。

5フォース分析

「5フォース分析」とは、外部環境のなかでもミクロ環境の分析を行う手法で、5つの脅威について分析を行うフレームワークです。 5フォース分析の「フォース」が意味するのは、競争要因のことであり、事業を進めるにあたってリスクとなり得る事項のことを指します。 脅威とされる5つの要因は以下です。 ・競合他社との競争 ・売り手(サプライヤー)の交渉力 ・買い手(顧客)の交渉力 ・新規参入の障壁 ・代替品・代替サービスの脅威 会社にふりかかる5つの脅威を洗い出して分析することで、自社の強み、弱みを把握でき、自社の問題点や改善点を明確にできます。また、競合他社の弱点を見つけることで、新しいビジネスチャンスを生み出せるかもしれません。さらに、競合環境を理解することで、将来的なリスクマネジメントや企業戦略の策定に役立ちます。

SWOT分析

SWOT分析とは、分析対象となる内部環境と外部環境の両面を洗い出し、それぞれをプラス面とマイナス面に分類することによって、事業戦略の方向性を決める分析方法です。 内部環境とは、自社における資産力や製品・サービスの品質や価格、ブランド力などのことであり、外部環境とは、法律や経済、市場、競合などの動きのことを意味します。 SWOT分析の「SWOT」は、「Strength(強み)」、「Weakness(弱み)」、「Opportunity(機会)」、「Threat(脅威)」の頭文字を取ったものです。 「Strength(強み)」は内部環境におけるプラス要因であり、「Weakness(弱み)」はマイナス要因です。 「Opportunity(機会)」は外部環境におけるプラス要因、「Threat(脅威)」がマイナス要因です。 この分析によって、企業における内部環境、外部環境を理解でき、現状の課題や改善点を見つけられます。例えば、強みを生かした新商品の開発、弱みに対する改善策の立案、機会を生かした新たな市場参入、脅威に対する新たな差別化戦略など、ビジネス戦略を方向づけたり、新たなマーケティング施策を打つのに役立ちます。

3C分析

3C分析とは、2つの外部環境とひとつの内部環境を分析の対象とし、成功要因と課題を見つけるフレームワークのことです。3Cの「C」は「Customer(市場・顧客)」、「Competitor(競合)」、「Company(自社)」の3つの頭文字を取ったものです。「Customer(市場・顧客)」と「Competitor(競合)」は、外部環境に分類され、「Company(自社)」は内部環境に分類されます。 これら3つ要因のうち、「Customer(市場・顧客)」では、市場の成長率や顧客のニーズ、消費の動向などを把握します。 「Competitor(競合)」では、競合他社のシェアや対応方法、業界における位置づけ、自社と顧客層や商品が似ている競合他社の有無などを調査します。 「Company(自社)」では、自社の方針や理念、資本力、強み、弱み、既存の商品やサービスの状況などを確認します。 PEST分析と同様に、事実の情報を集めることが重要なので、机上調査だけでなく実際に自身で足を運び調査を実施すると、より質の高い戦略を策定・実行できます。

4P分析

4P分析とは、4つの視点から自社の製品やサービスを分析することにより、どのような戦略をとるべきかを考えるためのフレームワークです。 4P分析の「P」は、「Product(自社の製品・サービス)」、「Price(価格)」、「Place(販売場所・提供方法)」、「Promotion(販促活動)」の頭文字です。 PEST分析やSWOT分析、3C分析などによって、「自社がどの市場を狙うべきなのか」、「自社の位置づけはその市場においてどういった状況なのか」などを導き出してマーケティング戦略を立てたとしたら、4P分析はそのマーケティング戦略を踏まえた具体的な施策立案の段階に行う分析です。 「Product(製品)」とは、どのような製品・サービスを販売するのかを結論付けるために、「顧客のニーズを満たすのか」「その製品・サービスの特徴やメリットは何か」などを考え、その商品・サービスの役割を明確にします。 「Price(価格)」とは、いくらで製品やサービスを販売するのかを結論付けるために、「妥当な価格はいくらか」「採算がとれるのか」「競合他社の価格帯はどうか」などを考慮します。 「Place(流通)」とは、製品やサービスを販売する場所や提供方法を決めるために、「ターゲットとする層の顧客に販売できる場所なのか」「どのような販売方法をとるべきか」などを考え、どこで売るか、どのように売るかを考えます。 「Promotion(販売促進)」とは、もっとも効果的な商品やサービスの販促や宣伝方法を決定するために「どのようにすれば認知してもらいやすいか」「リピーターになってもらうにはどうしたらいいのか」などを考えます。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、事業を「主活動」と「支援活動」の2つに分け、それぞれの工程を細分化し分析することで、どのような付加価値がどこに発生しているかを導き出すフレームワークのことです。 バリューチェーン分析により、細かく各工程を分析していくことで、自社の強みや弱みを知ることができます。 例えば、製造の段階でスピードと製品のクオリティの両面が優れていたとしても、物流のスピードが遅かったり製品が途中で破損したりすると、ユーザーに届けられた製品の最終的な価値は下がります。このような場合、「製造段階では強いが物流には弱みがある」、と分析できます。 バリューチェーン分析でおける「付加価値」とは、商品やサービスにプラスされる価値のことで、それによって利用者の満足度が上がるもののことを指します。 例えば、以下のような項目が付加価値の例です。 ・納品されるまでが早い ・クオリティが高い ・クオリティが一定 ・バリエーションが多い ・利便性が高い など どこでどのような内容の付加価値がどのくらい生まれているのかを確認すると同時に、工程ごとに生じるコストや問題点なども併せて分析します。 その結果から、余分なコストを削減したり、他社と差別化できる部分を強化したりすることが可能です。

PEST分析の事例

実際にPEST分析を活用することで、効果的な事業成長を果たしている企業があります。そのなかでも「ユニクロ」と「伊藤忠商事」の例を挙げて、PEST分析の効果について解説します。

ユニクロ

国内のアパレル業界をリードするファッションブランドの「ユニクロ」は、国内のみならず、海外でも人気が高く多くの店舗があります。 海外での人気の秘密には、国や地域ごとに異なるニーズを把握し、マーケティングを行っているという点にあります。国内と海外では、政治や経済、文化、気候など、あらゆる外的要因が異なるため、ユニクロでは国・地域ごとにPEST分析を行っていることでも有名な企業です。 近年では、新型コロナウイルス感染症の拡大後に大きなビジネス成長を遂げました。 在宅で行うリモートワークの急増に伴い、スーツの需要が減りましたが、同時にオンライン会議などで見られてもいい服装の需要が高まりました。 それにより、家で快適に着用でき、なおかつリモート会議で着ていても恥ずかしくない服装としてユニクロの商品が注目を浴びました。 また、ネットでオーダーした商品を近くのお店で受け取れるという、実店舗とEコマースを融合させたサービスを提供したことにより、さらなる売り上げ増加につながったとされています。 環境要因の影響を考慮した「機会」と「脅威」の把握に成功した大きな事例です。

伊藤忠商事

伊藤忠商事では公式サイトにおいて、実際に予測した2030年までの外部環境に関するPEST分析の結果を載せています。 政治的要因としては「先進国の政治的指導力への信頼が揺らぐなか、政策は国内政治と国民の生活の安定を重視、企業への視線が厳しくなるなかでのビジネス展開」との見解を出しています。 経済的要因としては「先進国経済は人口頭打ちで成長鈍化、新興国経済は成長力格差が拡大するなか成長する分野とピークアウトする分野のバランスを見極め」といった分析を行っています。 社会的要因としては、「グループ企業理念「三方よし」のもと、商品・サービスの提供や新規ビジネスの創出、資産入れ替え等を通じて、社会課題の解決を図る」という分析結果を出しています。 技術的要因としては、「急激な技術革新と消費者の行動の変化に対し、「マーケットイン」の発想で取り組むことにより、ビジネスモデルの変革を推進」と、結論付けています。 同社は、PEST分析を通じて、マクロ環境要因の影響を踏まえた「リスク」と「機会」を十分に把握し、時間や環境などのさまざまな変化に応じて柔軟な対応・変革を進め、さらなる競争優位を構築していくという事業戦略を打ち出しています。

まとめ

「PEST分析」は、政治、経済、社会、技術という4つの外部環境を分析することで、競合環境の理解やビジネスチャンスの発見、将来的なリスクへの対策を早期に講じられ、ビジネスを成功に導きます。マーケティング戦略の立案にはPEST分析を活用し、さらなる事業の成長に繋げましょう。

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