Z世代に最適化したマーケティング施策とは?ポイントと事例を紹介

マーケティング担当者にとって「自社商品が若い世代に支持されるかどうか」は重大課題となることが少なくありません。近年、若い世代に向けたマーケティング施策で特に注目されているのが、「Z世代」の存在です。

今回は、Z世代の定義や特徴、Z世代マーケティングが求められている背景について解説します。Z世代向けマーケティング施策のポイントや、実際にZ世代から支持されたマーケティング施策の成功事例も紹介していますので、ぜひ自社の施策を検討する際にお役立てください。

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Z世代の範囲と呼称の由来

近年、メディア等で頻繁に見かけるようになったZ世代という呼称。実際にはどの年代を指しているのか、正確に把握されているでしょうか?まずは、Z世代とされる世代の範囲や呼称の由来について整理していきます。

Z世代は1997年以降に生まれた世代

Z世代の明確な定義はありませんが、日本貿易振興機構(JETRO)が発行する「ニューヨークだより」(2018年10月)では「1997年以降」に生まれた世代が「ポストミレニアル」または「ジェネレーションZ」と位置づけられています。よって、一般的にはこの年代の人々が「Z世代」と呼ばれていると考えて良いでしょう。2022年時点であれば、25歳以下がZ世代にあたります。

Z世代という呼称の由来

そもそもなぜ「Z世代」と呼ばれているのか、実はその由来は過去の世代と関係があります。実は、Z世代以前に「X世代」「Y世代」と呼ばれてきた世代もあったのです。

<Z世代以前の世代の呼称例>

・X世代:1965~1980年生まれの世代

・Y世代:1981~1996年生まれの世代

Z世代以前の世代は、10~20代半ば頃までにバブル崩壊を経験してきたのがX世代、20代のうちにスマートフォンが発売されていたのがY世代と考えてください。X世代には日本が豊かだった時代の記憶が残っていますが、Y世代になるとリーマンショックなど不景気なニュースのほうが印象に残っていることでしょう。世代間の感覚の違いは、こうした社会情勢に少なからず影響を受けてきた結果ともいえます。

Z世代は、X世代・Y世代に続く世代という意味を表しています。なお、Y世代を「ミレニアル世代」、Z世代を「ポストミレニアル世代」と呼ぶこともあります。

Z世代の特徴

 Z世代をターゲットとしたマーケティング施策を講じるには、この世代の特徴を把握しておく必要があります。Z世代に多く見られる特徴をまとめましたので、確認していきましょう。

デジタルネイティブ

Z世代は、生まれたときからデジタル機器が存在していたという意味で、「デジタルネイティブ」と呼ばれることがあります。日本でiPhone 4が発売された2010年当時、Z世代は最年長でも3歳です。物心ついた頃からインターネットに常時接続されたデジタルデバイスに慣れ親しんできた世代といえます。SNSに関しても「新たに台頭したサービス」ではなく、「元々存在していたサービス」として認識しているのです。

ブランドにこだわらない

 特定のブランドやステータスに強くこだわらないのも、Z世代に多く見られる特徴です。バブル期に代表されるような好景気を経験することなく成長してきたため、「誰もが憧れるもの」や「高価なもの」に価値を感じるのではなく、自分自身が心地良いと感じるかどうかを重視する傾向があるようです。テレビなどのマスメディアが発信する流行やブームに影響されるのではなく、個性や自分らしさを大切にする世代といえるでしょう。

社会問題や環境問題への関心が高い

 Z世代はサスティナビリティやSDGsの概念に早い段階でふれているため、社会問題・環境問題に高い関心を寄せる傾向があります。人種差別問題やジェンダー不平等問題、LGBTQなどのマイノリティに対する差別といった問題に敏感で、より良い社会にしていきたいという思いが強い人が多いのです。

実際、世界的な有名アパレルブランドが余剰在庫を焼却処分していたことに反発し、不買運動に発展した事例もあります。SNSを通じて常に情報を共有しているZ世代にとって、社会問題や環境問題は決して他人事ではないのです。

安定志向

 Z世代は、リーマンショック後の経済不況や、東日本大震災といった厳しい社会情勢を目の当たりにしてきたため、リスクを取って成功を目指すよりも安定志向を好む人が多いといわれています。昇進を目指して出世競争に邁進することよりも、安定的に収入を得られることを重視する傾向が見られます。

無理をしてまで人よりも贅沢な暮らしをするよりも、自分らしく堅実に暮らしていくほうが良いと考える人が多いのです。見方によっては保守的に映る志向があるのも、Z世代の特徴といえるでしょう。

多様性への理解度が高い

幼少期からインターネットにふれ、多種多様な価値観を吸収してきたZ世代は、多様性への理解度も高いといわれています。最大公約数的な「普通」という感覚を押しつけられることを嫌い、人種や性別にかかわらず自分らしく生きられることを大切にしているのです。そんな背景が後押しとなっているのか、近年の学校では女子生徒もパンツスタイルの制服を選べるようになったり、小学生のランドセルが男女別の色使いではなくなったりと、さまざまなところで多様性に配慮する動きが見られます。

体験を大切にする

 Z世代は物心ついた頃からインターネットにふれ、シェアリングエコノミーやサブスクリプションといったサービス形態にも慣れ親しんでいます。そのため、物を「所有」することへの執着があまりなく、物を買うためにお金を使うことに価値を見いださなくなっている傾向もあります。物を買うよりも、自身の価値観がアップデートされるような体験をすることや、仲間と体験をシェアすることに価値観を見いだしている点も大きな特徴です。「所有」から「体験」へとZ世代による価値観の移り変わりがあることで、商品の背景にあるストーリーや哲学・価値観といった形のないものの重要度が増しているといえます。

Z世代マーケティングが求められている背景 

現在、Z世代をターゲットとしたマーケティング施策が強く求められているのはなぜでしょうか。そこには、いくつかの要因がありますが、中でも重要度の高い3つのポイントをご紹介します。

新たな価値観への対応

 前述のとおり、Z世代はこれまでの世代とは異なる新たな感覚・価値観を持っています。従来は問題なく成功していたマーケティング施策がZ世代には響かなかったり、場合によっては批判の対象となったりすることも考えられるのです。

顕著な例は、性別にもとづくセグメンテーションです。男性向け・女性向けといったセグメンテーションは、場合によっては性差による区別を際立たせ、差別的なニュアンスで受け止められるおそれがあります。そのため、ターゲティングやペルソナ設定の際には、従来の男性像・女性像といった先入観にとらわれないことが大切です。Z世代の新たな価値観が、従来のマーケティング手法に影響を及ぼす可能性は十分にあるのです。

消費者の中心となる世代への対応

Z世代にはすでに成人して社会に出ている層がいることからも明らかなように、今後ますます社会での影響力や発言力を強めていくことが予想されます。Z世代が消費者の中心となる時代は、すでに目前まで迫っているのです。今後はZ世代向けのマーケティングが、中核的な施策として位置づけられていくことでしょう。

そこで注意したいのは、価値観の変換です。従来は違和感なく受け入れられてきた施策であっても、Z世代が嫌悪感を抱くようなマイナス効果をもたらす可能性は十分にあります。ターゲットを明確化するために打ち出した「男らしさ」や「ステータス感」といったコンセプトが、かえって批判の的となることも想定されるのです。Z世代が消費者の中心となる時代を見据えて、業界を問わずあらゆる企業がマーケティング施策の方向性を見直す時期に来ているのかもしれません。

情報発信の最適化

 SNSに慣れ親しんできたZ世代に照準を合わせるには、情報発信の方法も見直していくことが求められます。Z世代の若者の中には、検索エンジンではなくSNSのハッシュタグで検索する人も増えており、従来のWebマーケティングだけでは届けたいメッセージが消費者にリーチしにくくなる可能性もあります。

ご存じのように、SNSを活用したマーケティングは、ユーザーとの距離感が従来のマーケティング施策よりも近いです。そのため、双方向のやりとりが可能なSNSの特性を活かして、よりパーソナライズした施策を打ち出していく必要があるでしょう。

また、SNSでシェアされやすいコンテンツの開発や、口コミ効果を目指すバイラルマーケティングといった手法の導入も視野に入ってくるはずです。SNSが主要なメディアとして重要な位置を占める時代を見据え、情報発信の最適化を図ることが多くの企業に求められています。

Z世代マーケティングのポイント

Z世代の特徴を踏まえた上で、今後注力していくべきマーケティング施策を検討したいという方も多いでしょう。ここでは、Z世代に向けたマーケティング施策のポイントを、3つご紹介します。

親近感・人間味が感じられるコンテンツを展開する

Z世代マーケティングの軸となるキーワードは「親近感」です。デジタルネイティブであるZ世代は、物心ついた頃からデジタル広告にふれてきており、いわゆる「やらせ」や誇張表現を鋭く見抜きます。あらかじめ用意された台本や演出に沿って巧みに制作されたコンテンツを用意したつもりでも、それがZ世代には受け入れられない可能性があるでしょう。

そうした傾向を踏まえると、コンテンツを制作する際には「オリジナリティ」や「人間味」を重視する必要があることがわかります。企業担当者の人柄が伝わる言葉を添えたり、いわゆる「中の人」(企業の情報発信担当者など)の本音が垣間見られるようなメッセージを込めたりすると、オリジナリティがあり人間味の感じられるコンテンツとなるはずです。オリジナリティと聞くと「作り込む」イメージを抱きがちですが、Z世代に向けては、親しい友人に語りかけるときのような自然な伝え方を意識することが大切となります。そこに親近感や人間味が感じられれば、Z世代に抵抗なく受け入れられるコンテンツになる可能性があるからです。

SNS対策を強化する

Z世代をターゲットとしたマーケティング施策において、SNS対策の強化は必須項目です。従来の広告に見られた「伝える」「届ける」という発想ではなく、ユーザー間でシェアを重ねることで拡散してもらうという発想を持つことが大切です。商品やサービスを直接的に訴求するよりも、エンターテインメント要素を取り入れたりユーザー参加型の企画を打ち出したりして関心を寄せてもらうほうが、結果的に高い広告効果が期待できるでしょう。

口コミ効果を狙うバイラルマーケティングでは、あからさまに「宣伝らしさ」を打ち出さないことが重要です。フォロワーがシェアしたくなる・人に教えたくなるコンテンツを意識してください。ただし、企業であることを伏せて一般消費者を装った情報発信をすることはステルスマーケティングにあたり、消費者の信頼を失墜させる原因にもなります。口コミ効果を狙う場合にも、企業であることは明示する必要がある点には注意してください。

インフルエンサーマーケティングを導入する

Z世代から支持されているインフルエンサーを起用するのも効果的な施策のひとつです。すでにZ世代から一定の支持を得ている人物であれば、抵抗なく受け入れられる可能性が高く、メッセージも届きやすくなるでしょう。

ただし、ただインフルエンサーに自社商品を紹介してもらうという「宣伝」の手法ではなく、あくまでも自然な形で「実際に使ってもらう」ことが大切です。かつてテレビドラマで俳優が着ていた洋服が話題を呼び、爆発的に売れる現象が見られたように、ビジネス色を出さない工夫が必要となります。そのためには、インフルエンサー自身に裁量を与えて自由に商品について語ってもらい、同世代の消費者に届きやすいメッセージを自然な形で発信してもらう手法をおすすめします。

Z世代マーケティングの事例

 続いては、Z世代マーケティングに成功した事例として、特に有名なケースをご紹介します。これまでマーケティングに携わってきた経験が長い方ほど、意外なところにZ世代を惹きつける要素があることに気づくのではないでしょうか。

「チェキ」(富士フイルム)の事例:アナログ体験だからこそZ世代の話題となった

 インスタントカメラ「チェキ」のZ世代における流行は、スマートフォンで手軽に高解像度の写真が撮れるようになった時代だからこそ成功した施策として有名です。発売から20年以上経っているにもかかわらず、チェキがZ世代に人気を博した要因は、デジタルデバイスにはない「アナログ体験」だったといわれています。

実際に写真がプリントされるまで、どのような写真が撮れたのかがわからないワクワク感は、スマートフォンのカメラやデジタルカメラでは得られない体験です。カメラそのものの性能や写真の鮮明さではなく、「いっしょに写真を撮って楽しむ」という体験にフォーカスすることで、人気を博した事例といえます。

サイバーエージェントの事例:制作過程を公開した「今日好きダンス

 「ABEMA」の恋愛リアリティ番組「今日、好きになりました。」の出演者によるダンスがTikTokで話題になった事例です。SNSでダンス動画を見たZ世代が当番組へと流入し、若年層の視聴者増加につなげることに成功しています。

この施策のユニークな点は、最初はあえてTikTok以外のSNSで興味・関心を高めていったことにあります。外部サービスに情報が遷移しにくいTikTokの特性を踏まえ、TikTok外での認知拡大に注力したのです。そして、認知が高まったタイミングでTikTokにダンス動画を投稿し、動画の最後に「番組がきっかけで生まれたダンス」であることを紹介します。すると、ダンスに興味を持った視聴者がABEMAに訪れてくれるという流れができました。各SNSの特性を押さえた施策の設計が、功を奏した好例といえるでしょう。

「マロッシュ」(カンロ)の事例:ダンス動画がZ世代にシェアされ、多くのユーザーへのリーチに成功

 

飴やグミを展開しているカンロも、同社の人気商品「マロッシュ」でZ世代マーケティングを行っています。ダンス動画で人気のTikTokクリエイターにダンスの振り付けを依頼し、そのダンスをWebCMで展開。人気俳優とZ世代に人気のクリエイターがいっしょになってダンスを踊り、「マロッシュ」の宣伝をしています。

TikTokにはダンス動画を投稿するユーザーも多いことから、2次拡散が行われやすい点も特徴です。ダンス動画はさまざまなZ世代にシェアされ、結果的に多くのZ世代ユーザーへのリーチに成功したマーケティング事例といえます。

アプリマーケティングなら、Z世代の価値観や心をつかむことにも役立ちます

 Z世代を対象としたマーケティング施策は、従来のマーケティンとは大きく異なっています。マス広告からパーソナライズ広告への移行はこれまでも進められてきましたが、今後はいっそう個人の体験や共感に照準を合わせたマーケティング施策が求められていくでしょう。

パーソナライズした施策を講じやすい手法としては、アプリをマーケティングに活用するのも有効な方法です。アプリならではのプッシュ通知やコンテンツの出し分けといった機能を駆使すれば、自分なりの判断軸や価値観を大切にするZ世代の心をつかむことにも役立ちます。「Yappli」では、アプリを活用したマーケティング施策を見据えた開発・導入支援を行っています。Z世代に向けたマーケティング施策をアプリで実現したい方は、ぜひYappliにご相談ください。