パーソナライゼーションの3つの要素とは?一人ひとりに合わせた「使われるアプリ」の作り方

あたながスマートフォン・アプリで見ている表示画面を、他の人も同じように見ているとは限りません。テクノロジーが進化したいま、アプリの画面は「パーソナライズ」されている可能性が高いのです。

マーケティングを行う側としてもは、パーソナライゼーションの実現はもはや必要不可欠となりました。それはアプリでも同じです。「使われる」アプリを作り出すためには、アプリを使うユーザー一人ひとりの情報をもとにさまざまな調整を行い、その人に役立つコンテンツを提供しユーザー・エクスペリエンスを最大化しなければならないのです。

では、アプリにおけるパーソナライゼーションとはどのようなものなのでしょうか。その重要性や手法、実例を見ながら考えていきましょう。

そもそもパーソナライゼーションとは?

パーソナライゼーションとは、顧客のニーズへ適切に応えられるように、一人ひとりへ提供するコンテンツを出し分けることを指します。顧客の購買行動などのデータを分析し、ユーザー・エクスペリエンスを最大化するのです。

「パーソナライゼーション」と「カスタマイゼーション」の違い

パーソナライゼーションと間違われやすいマーケティング用語が「カスタマイゼーション」です。カスタマイゼーションは顧客自らが自分の希望に合うように設定することを指すのに対し、パーソナライゼーションは企業側がバックエンドで行うものを意味します。

例えば、アマゾンが顧客の検索・購入履歴をもとにホームページに出す商品を調整することはパーソナライゼーションになる一方、顧客がアマゾンからどのようなメールマガジンを配信希望か自分で設定することはカスタマイゼーションとなります。

パーソナライゼーションの場合、顧客は自分がみているコンテンツが、隣の人のそれとは全く異なるものであることに、気づかない可能性もあるのです。

現代は「ハイパーパーソナライゼーション」の時代?

現代の消費者はスマートフォンに限らず、タブレット、ウェアラブルデバイスなど、2つから3つのデバイスを日常的に利用しています。すると、企業はそれらのデバイスからあらゆるデータを入手することができ、より深入りしたパーソナライゼーションである「ハイパーパーソナライゼーション」が可能となります。また、顧客側も、自分に合ったものかどうかを重視して購入を決めるようになりつつあります。

Forbesの「ハイパー・パーソナライゼーション」へ向かうD2C美容業界によれば、シャンプーやリップなどの美容品を一人ひとりに適した形で提供するために、提供商品の種類が500億を超えるメーカーもあるようです。

テクノロジーが進化し、よりユーザー個々人に特化したコンテンツを提供できるようになった現代は、「ハイパーパーソナライゼーション」の時代だと言えそうです。

なぜパーソナライゼーションが重要?

スマホが普及している現代、アプリの数も何百万種類と存在します。しかし、Localyticsの調査によると、アプリをダウンロードした後に、そのアプリをたった1回しか使わないというユーザーの数は21%もいるようです。つまり、せっかくダウンロードしてもらっても5人に1人が1回しかアプリを使わないという計算になるのです。

アプリをダウンロードした後に再度使ってもらうためには、ユーザーの印象に残るアプリを提供する必要があります。つまり、いかに質が高く、ユーザー・エクスペリエンスの良いアプリを作ることができるかが勝負を左右するのです。

ユーザーエクスペリエンス向上のためには、ユーザー個人が求めているコンテンツを提供することが一番です。そこで必要となるのが、パーソナライゼーション。自分の興味のあるコンテンツが提供されるアプリは、ユーザーの印象に残り2回、3回と使ってもらうアプリへと成長します。

パーソナライゼーションの3つの要素

パーソナライゼーションを行うには、まずユーザーの個人情報を集め、彼らがどのようなコンテンツを欲しているのか理解することが必要です。ここでは、パーソナライゼーションの元となる、代表的な3つの要素を紹介します。

デモグラフィック(人口統計学的属性)

ユーザーの性別、年齢層、趣向など、統計学的な属性をもとに、ユーザーにとって関連性のあるコンテンツを提供する方法は、もっともオーソドックスなやり方と言えるでしょう。

デモグラフィック情報を集める方法はいくつかありますが、アプリをダウンロードした際に、ユーザーに入力してもらう方法が一般的です。それから、FacebookやLINEなど、ソーシャルメディアのアカウントからアプリにログインしてもらい、情報を得る方法もあります。

コンテキスト(背景情報)

ユーザーがアプリを使う時間帯、デバイスの種類、地域情報など、アプリを使っている「背景情報」のことを「コンテキスト」と呼びます。これらの情報が取得できれば、アプリをパーソナライゼーションする絶好のチャンスとなります。

例えば、アパレルショップのアプリであれは「時間限定セール」やユーザーから近い店舗の情報をリアルタイムでアプリから提供することができます。通知機能やスマートフォンのロケーション履歴を用いることにより、ユーザーにタイムリーなコンテンツを提供できるようになるでしょう。

ビヘイビアー(行動)

ユーザーの行動履歴をもとにアプリをパーソナライズする方法もあります。例えば、あるブランドのECサイト上で、靴のコンテンツをタップする頻度が高いユーザーがいるとしましょう。アプリはそのユーザーの興味がありそうな他の靴に関するコンテンツをだけを表示するようにパーソナライズします。また、ユーザーがある特定の商品を既に購入している場合、その商品の関連商品がセールになった際に通知を行うなど、やり方は様々です。

デモグラフィック情報やコンテキスト情報に比べると、ビヘイビアー情報をもとに行うパーソナライゼーションはバックエンド側の調整が難しくなります。しかし、ユーザーの行動をもとにパーソナライゼーションを行うということは、他のどのような方法よりも効果的なパーソナライゼーションを行う手助けにもなります。

GDPR、CCPA……。データ活用には注意も必要

個人データをもとにマーケティングを行うことは企業にとって当たり前になっています。その一方、企業の個人情報活用が進むにつれ、それに対する消費者側の反発が起こるケースも出てきています。また、消費者の個人情報を守るという意味で、国レベルでの規制も強化される流れにあります。

2018年の5月にはEU圏のGDPR (General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)が施行されたほか、2020年の1月からはアメリカのカリフォルニア州でCCPA (California Consumer Privacy Act、カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行される予定です。今後も個人情報の取り扱いについては様々な議論が起こると予想されており、データの活用には注意も必要となります。

アプリのパーソナライゼーションを行うには、ユーザーの様々な個人情報を分析することが大切です。しかし、個人情報の扱いには注意が必要だということもしっかりと覚えておきましょう。

アプリのパーソナライゼーション事例3選

アプリにおけるパーソナライゼーションの大切さや注意点は理解できたでしょうか。では、実際にアプリのパーソナライゼーションを上手に行っている実例を見てみましょう。

スターバックス

世界中で有名なスターバックスコーヒーのアプリは、パーソナライゼーションを常に心がけています。スターバックスのアプリでは、すでにアプリが所持している顧客データをもとにパーソナライズされたスペシャルクーポンを提供できるよう作られています。ユーザーが通常どのコーヒーを頼むのか、どの時間帯に購入しているか、どこのお店に行くのか、などの「ビヘイビアー」情報を有効活用しているのです。

例えば、普段からデカフェの飲み物を購入するユーザーが店舗の近くを歩いたとすると、「デカフェ商品のクーポン」がアプリに通知される一方、通常はスイーツを購入しないユーザーには「スイーツ1個無料」というクーポンが表示されます。このように、スターバックスはユーザーの趣向に合ったコンテンツを提供し、パーソナライゼーションに力を入れています。

ナイキ+ランクラブ

ナイキのフィットネスアプリは、一般的なトレーニングコンテンツを提供するのではなく、ユーザーの個人レベルに合ったコンテンツを提供します。ユーザーは、まず初めに自分のエクササイズゴールを設定します。その後、アプリはユーザーのフィットネス達成度を記録し、それらをもとにユーザーがゴールを達成するために最適なトレーニング内容を自動的に推奨するのです。自分のレベルに合うトレーニング内容が提供されるため、ユーザーはまさに「パーソナルトレーナー」と一緒に運動をしているような達成感を得ることが可能になります。

一人ひとりの体型や運動量が違うからこそ、トレーニング内容もパーソナライゼーションが必要不可欠となります。しかし、パーソナルトレーナーを雇うお金や時間がない人のために、アプリを通して同じ感覚を与えるナイキのアプリは、スポーツに欠かせないパーソナライゼーションを徹底したアプリと言えるでしょう。

Airbnb

宿泊アプリのAirbnbは、ユーザーのアプリ上での行動情報をもとに、提供するコンテンツをパーソナライズしています。Airbnb上では宿やエクスぺリエンス(現地の人が案内するツアー)を予約することができます。ユーザーが検索機能を使うと、過去の旅程、観光地の好みなどの情報をもとに、ユーザーの好みに合ったの宿やエクスぺリエンスを推奨します。

それだけでなく、旅先にあるレストランや観光名所までも個人の好みに合わせて推奨してくれます。例えば、スポーツを好むユーザーに対してはコンサート会場ではなくスポーツ博物館をアプリがおススメします。旅行をするとき、山ほどあるレストランや観光地のどこへ行けばよいか迷ったことはありませんか?そんな時、このようなパーソナライズされたおすすめスポットのコンテンツはユーザーにとってとても役に立つコンテンツとなるはずです。

A/Bテストも駆使してユーザーエクスペリエンス向上をしよう

設定したパーソナライゼーションが適切かどうかを判断するためには、A/Bテストが有効です。アプリのアップデート作業をする前に、特定のユーザーにA/Bテストを行うことにより、パーソナライゼーションの精度を向上できるかもしれません。

例えば、アパレルアプリで「おすすめ商品」の出し方をパーソナライズすると仮定します。A/Bテストをすることにより、男性は同じような商品を一気に見ることを好む一方、女性は同類の商品ではなく着こなしアイテムの一覧を欲しているというようなことがわかるかもしれません。これらの情報をもとに、さらにアプリのパーソナライゼーションを発展させることができます。

アプリのパーソナライゼーションがうまく行けば行くほど、顧客の体験は豊かになり、ブランドへの愛着が増します。データ・ドリブンを心がけて、パーソナライゼーション施策を成功させましょう。