スマホファースト時代に必要な、モバイルマーケティングとは?

Webサイトの充実やバナー広告、リスティング広告、SEOなどが、これまでのインターネット上でのマーケティングでした。しかし、スマートフォンが世代やライフスタイルを問わず多くの利用者に普及したことで、マーケティングのあり方にも変化が起きています。多くの企業が手始めにスマートフォン用のWeb画面を用意するようになりましたが、それだけでは不十分。スマートフォンファーストの時代に必要となる「モバイルマーケティング」の本質と、具体的な施策について紹介します。

モバイルマーケティングとは?

「インターネット広告の基本実務(インターネット広告基礎用語集)2016年度版」によれば、モバイルマーケティングとは「モバイル機器を介して、生活者に商品やサービスの認知・理解を促進する活動」を意味します。ここでの「モバイル」とは、「移動できる通信機器」としてのスマートフォンやタブレットパソコン、小型のノート型パソコンなどです。

モバイルマーケティングが注目される背景には、ネット利用者も利用時間も、モバイル機器によるものが増えているからにほかなりません。総務省の「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」では、インターネットの利用時間はモバイル機器(同調査ではスマートフォンと携帯電話・PHS)がもっとも長い結果となっています。

Webマーケティング・デジタルマーケティングとの違いは?

「モバイルマーケティング」に似た用語として、「Webマーケティング」「デジタルマーケティング」があります。それぞれの違いを理解しましょう。

Webマーケティングは、Webサイト上で文字や画像、動画などを使って商品やサービスの告知をしたり、消費者や利用者からの質問に答えたりすることです。情報伝達だけでなく、自社のWebサイトから申し込みや購入を受け付けたり、ネット通販のサイトに誘導したりする仕組みも含め、Webマーケティングと総称します。

自社のWebサイトへの誘導は、ポータルサイトへのバナー広告の出稿や、検索結果に表示されるリスティング広告などが中心となります。そしてこれらは、スマートフォンが登場する前の、デスクトップパソコンやノートパソコンがネット利用機器の主役だったころの有力なマーケティング手法だったわけです。

これらは、もちろん今でも主要なマーケティング手法です。しかし、友人同士、あるいはネット上で知り合った新しい仲間たちとの間で情報を公開し、交換できるSNS、アプリケーションソフトの急増に伴い、マーケティングの手法も進化しました。Webサイトの情報発信に加え、電子メールやSNS、アプリなどを複合的に活用した「デジタルマーケティング」の時代になったのです。

モバイルマーケティングは、このデジタルマーケティングが、スマホシフトの影響を受けて、より進化したものであると言えるでしょう。

「スマホシフト」による二つの変化

モバイルマーケティングの前提となる「スマホシフト」。ただし、これは単にユーザーが使うデバイスが変わったというだけの話ではありません。ユーザーが多様化したこと、そして24時間どこにいても、オンラインの状態が続くというような「ユーザーの行動」そのものが変化したこと。スマホシフトがもたらした、この二つの重要な変化について、見ていきましょう。

スマホシフトで多様化するユーザー

「平成30年 通信利用動向調査(総務省)(PDF)」によると2018年のスマートフォン世帯普及率は79.2%です。なお、もうひとつのモバイル機器であるタブレット型パソコンの普及率は40.1%となっています。

ここで重要なのは、スマートフォンの普及で「女性」と「10代」のインターネットユーザーが増えたことです。従来、プライベートの場において、PCのユーザーは多くの場合、成人男性が中心でした。女性や子どもはときおりそれを借りるという使用形態が多かったのです。しかし、携帯電話からスマートフォンに切り替えたことで、女性のインターネット利用が拡大しました。同じように、中学生や高校生の携帯ユーザーも、スマートフォンに移行し、コミュニケーションの手段をメールからSNSに変え、動画を共有し、ゲームや写真の加工のアプリケーションソフトをダウンロードして楽しむようになりました。

さらに、高齢者へのスマートフォンの普及も進んでいます。さきほどの総務省の調査では、70代でも、27.2%がスマートフォンを保有しており、今後もますます普及していくことが予想されます。

これは、マーケターにとっては、リーチできるユーザーが多様化したことを意味します。女性や子ども、高齢者へのマーケティングにおいても、モバイルマーケティングが有効になったということです。

いつでもどこでもオンライン

また、スマートフォンやタブレット型パソコンなどのモバイル機器は、外出先や乗り物での移動中、そしてベッドの中でまで、時間や場所を問わずに使うことができます。スマートフォンの利用者はショッピング中でもスマホを片手に持ち、そのストアの商品についてWebを参照するような購買行動をしています。このように、従来であれば「オフライン」とみなされるような状況でも、ユーザーはオンラインと接続するのが当たり前となったことが、マーケティングを変化させる大きな要因となりました。最近では、小売業を中心に、OMO(Online Merges with Offline)という言葉も提唱されています。

そして、モバイル機器によるメディアの利用時間はアプリケーションを介したものが84%に達しているというニールセン デジタルの調査結果もあります。ここが重要なポイントのひとつです。スマホ上では、なんらかのアプリケーションソフトを介して、Webへの接続やコミュニケーションが行われているのです。

日本のモバイル広告費は1兆円以上

では、こうしたユーザー側の変化を受けて、マーケティングが実際にどうモバイル主体になっているのかを見てみましょう。

電通が発表した「世界の広告費成長率予測」によると、2018年の世界のテレビ広告のシェアは34.9%、一方のインターネット広告などデジタルによるものは39.0%で、その2019年の成長率の予測は11.5%です。中でもモバイル機器による広告の成長率は21.4%と高く、2020年には総広告費に占める比率が3分の1に迫るという勢いです。

そして、電通の別の調査によると、日本でもモバイル広告費が増加していることがわかります。テレビ広告費よりはやや下回りますが、2018年のインターネット広告費は1兆4,480億円に拡大し、そのうちのモバイル広告費は70.3%を占める1兆181億円にもなったというのです。

モバイルマーケティング4つの方法

こうした広告以外に、モバイルマーケティングにはどのような方法があるのでしょうか? 以下では、代表的な4つの方法について具体的に紹介します。

アプリ

モバイルマーケティングの主役といえば、やはりアプリです。前述のように、スマホ上では、ユーザーが意識している/していないを問わず、アプリを使っている場合が多いからです。無料でダウンロードしたゲームで遊んでいる際に、広告に接触するパターンもありますが、近年では各社がマーケティングのために自社アプリを開発するケースが増えています。

電子メール・SMS

電子メールや、電話番号で通知できるSMS(ショートメッセージサービス)を利用することで、TPO(時間・場所・機会)に合わせて、伝えたい情報をユーザーに届けることができます。例えば、ある催し物への来場者の電子メールのアドレスをその場で取得し、帰宅時間に合わせて謝礼のメールや次回の案内を送ることができます。受け取る側もいつでも知ることができるので、郵送で届けるDMのように、「気づかない」「情報が伝わるのが遅れる」といった心配もなくなります。

Bluetooth機能・iBeacon

さらにそれをもう一歩進めたのが、位置情報サービスやBluetooth機能とiBeacon(屋内や会場等での位置特定・測位システム)を使ったモバイルマーケティングです。その人のいる位置や場所がわかると、その状況に適した広告や通知をタイムリーに送ることができるので、購買行動への訴求力が高まります。

QRコード

スマートフォンのカメラ機能をQRコードのスキャナーとして使うことで、QRコードを利用したマーケティングも可能になります。例えば、店頭でQRコードを読み取ると商品の詳細情報を読み取れる仕掛けをつくることで、購買意欲が高められます。QRコードから、クーポン利用を促進することも可能です。

これらの方法は、どれか一つに絞るというよりは、目的にあわせて組み合わせていくことで、より効果が発揮できるはずです。

モバイルマーケティング成功の鍵はアプリ

自分のお気に入りのブランドのアプリをスマホにインストールし、そこから直接、購入するという行動が一般的になっている現在、モバイルマーケティングを成功させるには、もはや「アプリがないと話にならない」と言っても過言ではありません。アプリをダウンロードしてもらうことが、ユーザーとの貴重な接点の確保となるのです。「スマホファースト」でマーケティング施策を立案することがあたりまえになったいま、モバイルマーケティング成功の鍵となるアプリをまだ導入していないマーケターの方は、ぜひアプリ開発を検討してみてはいかがでしょうか。