アプリのプッシュ通知に取り組みつつ、WebやSNS、メールマガジンなども実施している企業が多数だろう。こうした複数のチャネルを活用するクロスチャネルマーケティングは、顧客との接点を増やせる点が大きなメリットだ。
しかし、クロスチャネルマーケティングには注意すべきポイントも。特にチャネルの特性にあわせた使い分けは必須だ。複数チャネルで単純に同じ情報を流すだけでは、かえって情報過多になりユーザー離れが進む。
チャネルごとにユーザーが求める情報は大きく違う。とはいえチャネルの使い分けがなかなかうまくできないと悩む人も多い。そこでクロスチャネルマーケティングの基本と、アプリ・Web広告・SNSの使い分け方を紹介したい。
・クロスチャネルマーケティングの定義
今は1ユーザーが、PCやスマートフォンなど複数デバイスを使いこなす時代。複数のチャネル(デバイス・媒体)を活用して、ユーザーとのコミュニケーションを深めるのがクロスチャネルマーケティングの狙いだ。
ユーザーとの接点が増えれば、ユーザーに最適なタイミングで情報を届けることができる。また複数チャネルでブランドメッセージを統一することで、ブランディング効果も期待できる。
・アプリ、SNS、Web広告のそれぞれをどう使い分ける?
クロスチャネルマーケティングでは、まずチャネルの特性を理解した上で使い分ける必要がある。代表的なチャネルであるモバイルアプリ・Web広告・SNSの違いをチェックしておこう。
(1)モバイルアプリ
到達率の高いプッシュ通知をはじめ、豊富な機能を搭載できるモバイルアプリ。ユーザー属性のほか位置情報などのデータを収集できる点もメリットだ。一方ユーザー側でアプリをインストールするハードルがある。
つまり、ロイヤリティが高いユーザーとなるため、新規ユーザー獲得よりロイヤリティ強化を意識した情報発信を心掛けたい。例えばモバイルアプリユーザーだけに新情報を先行発表するのも有効だろう。
(2)SNS
アプリとWeb広告の中間に位置するのが、LINEやFacebookなどのSNS。SNSならフォローするだけで、インストールや個人情報の入力は基本的に不要だ。またSNSはモバイル利用率が高いためアプリほどではないが情報の到達率も高めだ。一方Web広告ほど広範囲ではないが、シェアが広がれば新規ユーザーの開拓にもつながる。
SNSで気をつけたいのは、ユーザー層もアプリとWeb広告の中間、つまりライトユーザーという点。ゆるいつながりはあるが、ロイヤリティは高くない。
SNSから購入など次のアクションにつなげるにはハードルがあるため、売上などを指標にすると厳しい。そこでSNSでは、ライトユーザーの囲い込みやブランド認知向上につなげることを目標にしたい。例えば話題になりやすいコンテンツ・キャンペーン情報の発信を意識してシェアによる拡散を狙う方法もある。
(3)Web広告
Criteo社による調査では、マーケターが実践している広告チャネルは「ディスプレイ広告」(40%)とトップとなり、SEOやソーシャルメディアマーケティングより高い結果が出ている。(※1)
リターゲティング広告もあるが、Web広告の強みは新規ユーザーを開拓できる点。媒体数が多く、短期間で接点のなかったユーザー層へ幅広くリーチすることができる。
ただし自社やブランドを認知していないユーザーへの訴求が前提。インセンティブなどわかりやすい特典が求められる。
またWeb広告では継続したコミュニケーションをとることは難しい。自社サイトや自社モバイルアプリ(BtoBの場合はメールマガジンなど)への導線という位置づけにしたほうが進めやすい。
・クロスチャネルマーケティングで成功するために必要なものとは?
クロスチャネルマーケティングでは複数のチャネルを使うため、どうしても運用の負荷がかかる。さらにカスタマージャーニーマップによりユーザーの行動パターンを想定した戦略が必要。つまりマーケティング戦略はより複雑になる。
効率よくクロスチャネルマーケティングを行うために、注目されているのがMAなどのマーケティングツール。各チャネルのデータを統合できたり、運用オペレーションを自動化できたりするメリットがある。
しかしメールやWeb、SNSと比べるとモバイルアプリはまだ歴史が浅く、アプリ開発ツールとMAが連携できないケースもあるので要注意。アプリの開発を考える際には、MAなどマーケティングツールとの連携が可能かどうかは重要なポイント。必ずチェックしておきたい。