ECアプリに動画コマース機能は必要なのか?

スマートフォン向けの動画広告市場が今大きな伸びを見せている。2019年には2,000億円を超えるという予測を立てているところもある(※)。こうしてモバイル動画広告が浸透する中、ECアプリで動画の活用を考えたいと考える人も多いかもしれない。すでに動画でEC購入促進する「動画コマース」をアプリに取り入れる企業も出てきている。

とはいえ動画と言えば、制作コストがネックとなり慎重になることも多い。まずは動画コマースの基本をおさえつつ、ECアプリに動画を利用するメリット・デメリットをチェックした上で検討したい。

※出典:「サイバーエージェント、2017年国内動画広告の市場調査を実施」(サイバーエージェント)

動画コマースの基礎知識

ECで動画を利用して購入につなげることを動画コマース(ビデオコマース)と呼ぶ。動画コマースで一般的なのが、商品紹介を動画で行うケース。アパレルブランドなら実際に着用している様子を動画で紹介するケースも増えている。化粧品やアウトドア用品なら、具体的な使い方を動画にしてPRするケースも多い。テレビ通販を行う企業の場合、テレビで放送した動画をECサイトやアプリで見られるようにするケースも一般的になってきている。

海外ではさらに進化した動画コマース事例もある。ある海外のアパレルブランドではショートフィルムを自主制作、作品に登場するアイテムをオンラインで購入できるようにした。ブランドイメージを訴求する動画を制作するところは多いが、ECのために映像作品をゼロから作るというのは新しい取り組みだろう。

動画コマースのメリット

(1)画像では伝わりづらい商品情報を伝えられる

テキストや画像よりもユーザーに多くの情報を伝えられるため、商品について詳細に解説できるのが強み。詳しい説明によって、購入の後押しになりやすい点が動画の大きなメリットと言える。商品紹介だけではなく作り手のインタビューを紹介したり、購入者が実際に使っている様子を紹介したりするケースもある。

(2)アプリや動画サイト、SNSで動画を活用できる

制作した動画は、YouTubeなどの動画サイトのほかSNSやアプリなどのチャネルで活用できる。動画サイトやSNS経由で拡散されれば、新規顧客の獲得にもつながりやすい。

動画コマースのデメリット・注意点

(1)制作費がかかる

モバイルでの動画をメインに考えるなら、画質などのクオリティはさほど重視されない。ただし撮影・編集にかかるコストはある程度見込んでおく必要がある。社内で対応するケースもあるものの、負荷がかかりすぎると他の業務に支障が出るので注意したい。

(2)効果測定しづらい

動画コマースの場合、KPI設定にも注意が必要だ。他の広告と同じようにクリック数(つまり動画再生回数)を指標することも多いが、これではユーザーが最後まで動画を見たかまではわからない。動画の場合最後まで視聴したかという「再生完了率」も把握できるようにしておきたいところ。あわせて動画から購入につながったかどうか判別できるように設定しておくこともポイントと言える。従来のWebサイトや広告と指標や事前準備方法が異なることを知っておこう。

動画コマースの最新トレンド「ライブコマース」とは?

ライブコマースとは、ライブ放送で商品紹介を行い、視聴ユーザーとリアルタイムでコミュニケーションしながら販売する手法。フリマアプリをはじめライブコマースを導入するところも増えている。ただし現状のライブコマースは、タレントやインフルエンサーによるものが主流。エンターテイメント性が高く、双方向のやり取りができる点が人気を集めている。

モバイルならどこにいても動画を見られるため、ライブコマースとモバイルアプリの親和性は高い。(とはいえ視聴時間が限られるという課題もある)また、ライブ配信を行う体制作りや、ライブ放送開始までに集客することも必要。

ライブコマースは一般的な動画コマースよりもハードルはやや高い。まずはライブにこだわらず、動画コマースをベースに検討したほうが導入しやすいと言えそうだ。なおアメリカでは「EC企業の半数がすでに動画を提供している」というデータもある。(※)今後もECでの動画活用はますます日本でも一般的になるはず。アプリ開発でも、積極的に動画を活用できる環境を整えておきたい。

※参考:「売上TOP1000社の半数が動画を使う米国EC企業、なぜ利用する? どのように訴求する?」(ネットショップ担当者フォーラム)