なぜ複数アプリの開発が必要?アプリをブランドや機能別に分けるメリット

アパレル企業を中心に、ブランドごとにアプリを分割して提供するケースが少しずつ出てきている。従来のアプリ開発といえば、なるべく1つのアプリに機能を集約するのが定説。ところがアプリの機能が多すぎて複雑化してしまい、ユーザーにとって使いづらくなることもあるようだ。

ただし複数アプリを提供する場合、担当者としては開発コストや運用の手間など懸念するポイントも多いだろう。1つのアプリにまとめるか、複数アプリに分割するか…判断するためには、アプリを複数にするメリットや注意点をチェックしておきたい。

複数アプリに分割する3つのメリット

(1)ターゲットごとに最適なアプリを提供できる

アパレル企業がブランドごとにアプリを提供する場合、想定ターゲットがブランドごとに異なるという理由が大きい。それぞれターゲットを絞って必要な機能を提供できれば、ユーザーの満足度が上がりロイヤリティ向上につながる。

アパレル以外にも複数アプリを提供する業界もある。例えば銀行など金融機関では、口座管理とローンのアプリを分けて提供することが多い。この場合アプリを分割することで機能がシンプルになり、ユーザビリティ向上や問い合わせ数の減少につながるというメリットもある。

ただしターゲットが異なるといっても、「アプリとしてリーチしたいターゲット」が似てしまっている場合は要注意。あらためてアプリを分割する目的とアプリで想定するターゲットを整理しておこう。

(2)段階的なアプリ提供が可能になる

まずはトライアルとして1つのブランドでアプリを提供。その後実績を積んでから他のブランドへ展開する、という進め方もアプリ分割で可能になる。多くのブランドを持つ企業において、「いまいちアプリの効果が見えてこない」というときはアプリ分割が有効だ。

(3)アプリ単位でプッシュ通知やクーポンの配信回数・タイミングを調整できる

1つのアプリに統合すると、ユーザーにとって関係ないプッシュ通知やクーポンを受け取る可能性が高まる。複数のブランドから頻繁に通知が来てしまうと、ユーザーがアンインストールするきっかけになりかねない。

一方アプリを分割すれば、他のブランドのプッシュ通知やクーポンを送る回数やタイミングを気にせず配信できる。ブランドごとにプロモーション担当者が分かれているときは、アプリも分割する方法も検討したい。

アプリを複数に分割するときの注意点

Googleの開発者向けガイドのページでは、複数アプリに分割するときのチェックポイントを紹介している。まずはここに掲載されている項目を検討しよう。

https://developer.android.com/distribute/best-practices/engage/pros-and-cons?hl=ja

なおアプリ開発現場で注意したいのが「複数アプリの開発環境を共通化できるか」という点。複数アプリをそれぞれスクラッチ開発(独自開発)してしまうと、当然ながら開発コストやリリースまでの期間が大きく膨れ上がってしまう。

あわせて、アプリで登録するデータの取り扱いもポリシーを決めておきたいところ。できるだけ複数アプリのデータを統合管理できる環境を整えておくと、運用がスムーズだろう。

効率的に複数アプリを運用するコツ

複数アプリを提供するときは、開発とあわせてアプリ運用についても考えておくべきだ。やはりアプリ数が増えれば、その分サポートなど運用時のタスクは増える。

アプリ開発ツールを使えば、複数アプリでも効率化な運用につながりやすい。スクラッチ開発の場合、複数アプリにそれぞれ新機能を追加するのはそれなりに大変だ。一方アプリ開発ツールなら、管理画面から新機能を搭載できる。(機能はツールが提供するものに限られるが)マルチプラットフォームのツールであれば、OSごとにプログラムをそれぞれ開発する必要がない。そのため、複数アプリでもスピーディーな追加開発が可能だ。

また、複数アプリ運用で大きな負担になりがちなのが、バージョンアップ対応。アプリ開発ツールを使っていれば、基本的にツール側で対応してもらえるところが多く、業務負荷を減らせることができる。

ただしアプリ開発ツールによって、アプリ数やダウンロード数にあわせて料金体系が変わることも。特にダウンロード数による従量課金のサービスの場合はアプリ提供数でランニングコストが大きく変わるため、事前にチェックしておきたい。