スマートフォン向けアプリを自社で独自開発(スクラッチ)した企業にとって、運用後の悩みが手間とコスト。そこで今、CMSを使ったスマートフォンアプリの開発が人気を集めている。実際にこの1~2年でアプリ開発向けCMSのサービスは急速に増えている。
社内にCMSのようなシステムの導入提案するときは、やはり下準備が欠かせない。まずはアプリCMSの基本的なメリットとあわせて、CMSの選ぶポイントを整理しておきたい。
・CMS(Content Management System)とは
CMSとは、プログラムの知識がない方でも管理画面からコンテンツの登録・更新ができるシステム。Webサイトの構築においては「WordPress」をはじめ、CMSを導入するケースが主流となっている。
CMSで開発するメリット
(1)ゼロから独自開発するよりも低コスト・短期間でできる
アプリではiOS・Androidと別々に開発したり、OSアップデート時に追加開発したりする必要がある。マルチプラットフォームに対応したCMSならOS別に開発する必要がなく、期間やコストを大幅に抑えられるだろう。OSアップデート時にもCMS側で対応してくれることも多く、運用時のコストや手間が省けるというメリットがある。
(2)専門知識がない社内担当者でも、運用しやすい
CMSではプッシュ通知やクーポン配布といったよく使う機能は、システム担当ではない人でも簡単に操作できる設計となっている。多くのCMSではタイマー設定など自動機能が充実しているので、社内作業の効率化が見込める。
(3)デザインなど独自にカスタマイズしたいときにも対応できる
ブランドイメージを重視するアパレル系などでは、アプリデザインも重要だ。デザインのためにアプリを独自開発するところもあるが、CMSでも実はデザインの自由度が高いのが一般的。(※CMSによってカスタマイズできる範囲は異なる)
スマートフォンアプリCMSの選び方、5つのポイント
多様なCMSサービスがある中、「どう選んでいいかわからない」という方も多いだろう。まずは必ずおさえておきたい5つのポイントを紹介しよう。
(1)アプリ担当者が使いやすい管理画面設計か
CMSはプログラムなどの専門知識を持たない担当者でも運用できるのが大きなメリット。そのため直感的に操作できる管理画面設計のCMSを選びたい。
さらにチュートリアルやサポート体制が充実しているかも要確認。できればこうした点をチェックするためにも、無料トライアルがあるCMSサービスを選びたいところだ。
(2)アプリの追加機能を増やしやすいか
アプリの場合、最初からフルスペックでリリースするケースはむしろ少ない。ユーザーの動向やトレンドにあわせて機能をプラスしていくケースが多いだろう。そこで機能の追加しやすさもチェックしておきたい。
(3)アプリのユーザビリティがチェックできるか
管理画面の使いやすさとともに、ユーザー画面の使いやすさも重要だ。使いづらかったり動作が不安定だったりすると低いレビューが増え、ダウンロード数も伸び悩む。できればデモ版を準備してもらえるCMSサービスなら、社内でも検討しやすい。
(4)アプリの効果測定がしやすいか
アプリ立ち上げ後の効果について、社内へ報告しやすいかどうかも担当者としては気になるところ。そこで分析ツールが用意されているかも事前に確認しておきたい。特にEC系アプリなら、ECシステムと連動した効果測定が不可欠だ。
(5)アプリのセキュリティ対策がされているか
独自開発と違ってバグによる不正アクセスなどの問題は少ないものの、アプリ導入においてセキュリティにも配慮したい。セキュリティ対策状況を各CMSサービスに確認するのが基本だが、どんな業界・企業への導入実績があるかを知っておくと参考になる。
例えば高いセキュリティレベルが要求される銀行などのアプリ開発実績があれば、安心度が高まると言える。
すでにアプリ独自開発をしている場合、CMSをどう検討する?
現状すでに独自開発したアプリを導入している場合、CMSに移行すべきか悩みどころ。コスト、リソース、機能という3つのポイントで比較してみよう。
(1)コスト
独自開発では開発費の減価償却状況なども影響するが、まずは今後2年間にかかるコストを試算してみるという方法がある。
OSアップデートや機能追加にかかるコストは、スクラッチの場合どうしても膨らみがち。かえってCMSへ移行した方がコストダウンできる可能性が高い。一度それぞれの費用を試算してみることをおすすめしたい。
(2)リソース
CMS導入で社内リソースを減らせれば、コストダウンの一つと言える。独自開発では開発会社に委託しても、検証や社内調整など社内リソースはそれなりにかかる。こちらも独自開発とCMSでかかるリソースを比較してみよう。
(3)機能
独自開発アプリでは、軽微な機能追加でも意外と高額の見積もりが出てくることもある。一方CMSなら、最近トレンドの機能も標準で用意されているというケースも多い。CMSで対応できるかどうか、一度チェックしてみたほうがよいだろう。