国内アプリ700万DL突破、香港版もスタートへ。無印良品が考えるユーザーコミュニケーションとは

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無印良品といえば、「MUJI passport」アプリで、マイルが貯まるサービスをいち早く取り入れ、店頭とECの垣根を超えたサービスを提供しています。今回、国内700万ダウンロードを突破し、中国、台湾、そして香港でもアプリの提供を開始しました。良品計画WEB事業部長である川名常海さんにお話を伺いました。

 

「無印良品」とインターネット

 

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まず、アプリの話をする前に、私たちのデジタルマーケティングの歴史をお話しした方が良いかも知れません。無印良品は、2000年にECを開始しました。まだ世の中にはデジタルマーケティングという言葉もありませんでした。各社がインターネットを使って何かを始めなければと思っていた時代です。ご多分に漏れず当社もECと「ものづくりコミュニティ」を開始しました。

2003年頃からから、ネットストアにご来店されるお客様にとっても店舗が重要な接点なんだと気付いたんです。ウェブサイトのアクセス数は毎年右肩上がりに増えていて、このお客様は一体何が目的でにサイトに訪れているのかを真剣に考えました。

サイトに訪問しているお客様の40%はECを利用している、残り60%はECを利用していないお客様です。この比率は、実は今も変わっていなくて、買い物をする前に商品情報を調べたり、新商品やキャンペーン情報などを見ています。

1人のお客様がネットも、店舗も行ったり来たりしているわけです。
自分も消費者として当たり前にやっている購買行動だと思います。
ECサイトで直接商品を購入しなくても、店舗に来店して買っていれば、それもECと言えるでしょう。また、購買だけでなく、商品レビューを書いたり、コミュニティに参加して、新商品や商品の改善アイデアを投稿いただくなどの行動も、お客様のブランドへの参加と捉え、重要な接点だと考えています。
2004年頃から、まだO2O(Online to Offline)という言葉はありませんでしたが、クーポンメールなどでオンラインから店舗へ誘導をしていました。今ではオムニチャネル化が進んで、当たり前のことですが、その当時はお客様のことを考えて何をするべきなのかを考えていました。

 

2008年、スマートフォンとSNSの登場でお客様が変わる

 

2008年以降、SNSのタイムラインで友達の投稿したラーメンの写真から見たところから始まり、検索、購買、最終的には食べたラーメンの評価をSNSで発信するというような、お客様の購買行動を頭に描きながらやってきたのですが、実際のところ、お客様が、SNSで情報に接触して、WEBに来て、そこから本当にお店に行ったのか?買ってもらったあとに、コミュニティにどう発言しているのか?こういうことは、2013年くらいまでは、まだ本当の意味では追いかけきれていませんでした。

特に、デジタルの接点からリアルの接点のところは。無印良品週間も、クーポンメールを提示してくださるお客様をレジでカウントしていただけなので、いわゆる個としてはとらえられていませんでした。ただ、お客様のことをもっと理解して、適切なマーケティングコミュニケーション、あるいはもてなしをして、長い関係性を作っていくうえでは、やはり一人ひとりのお客様としてちゃんと認識していくことが、非常に大事だなと常に思っていました。、そこで企画したのが「MUJI passport」、アプリの形をした会員証です。

お買い物の際にアプリをレジで提示して頂くことで、お客様のネット上での購買行動とリアルの購買行動がつながります。

通常のCRMであれば、そのお客様が買ったのか、買わなかったのか、航空会社であれば飛行機に乗ったのか、乗らなかったのか、どのくらいの距離を乗ったのかなど、お客様の購買行動をRFM分析などを行って、売上を向上させていくものです。

無印良品では既存のCRMの考え方にプラスして「無印良品への参加度」という考え方を持っています。購買だけでなく、店舗にチェックインした、あるいはブランドサイトに来て商品を調べたり、「欲しい」「持ってる」「コメント」などをするなど、購買以外でもマイルが付くしくみです。

他にも、商品を買った後に、「くらしの良品研究所」に来て、改善アイデアを投稿してくれたり、新規の商品開発アイデアを投稿いただくと、そこでもマイルが付くようになっています。だから、いわゆる世の中にある金銭的なポイントということではなく、お客様と無印良品との関係性を示す、ひとつのものさしという考え方になっています。
なので、ポイントが高い人ほど、無印良品という活動への参加度が高いという、とらえかたをしています。

 

MUJI passportは何故アプリという形を取ったのか?

 

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当社のアプリの特徴に「プロダクトロケーター」があります。「ストアロケーター」は、各社がされていると思いますが、店舗がどこにあるのかという情報です。私たちは、その商品が、どこにあるのかを調べやすくすることを追求しています。店頭でも、その問い合わせが多かったこともありますが、商品軸でどの店舗に在庫があるのかを調べることができます。コンビニであれば、どの店舗でも同じような品揃えですが、無印良品の場合、有楽町店のような大型店舗もあれば小規模なところまで様々です。

例えば、この「プロダクトロケーター」で商品在庫を調べて、提示された地図に沿って来店し、レジで会員証を提示する、といった一貫した購買行動をスムーズにナビゲートするにはウェブベースのものよりもUXが高いアプリという結論にいたりました。

 

お客様の方がずっと先をいく現在

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スマートフォン、SNS時代の購買行動において、お客様の方がずっと先にいて、企業側が対応できていないと感じることが多々あります。

当社の商品に「チョコがけいちご」という人気のお菓子があり、半分に切った写真をInstagramに投稿しました。その写真がとても評判がよく、世界中から「いいね」やコメントをたくさん頂きました。

翌日、ECサイトの在庫はすべて売り切れです。調べてみると、中国から注文が殺到していました。Instagramは、個別にリンクが貼れない、コンバージョンが測れない、そういうことはお客様にとっては全く関係ありません。

越境ECに未対応でも、欲しい商品があれば世界中から注文が入ります。今は、お客様の方がインターネットの活用において圧倒的に先をいっている状態で、欲しい商品があれば、翻訳ツールを使い、買い物代行サービスを使って注文をします。

企業から発信される写真は、綺麗によりよく見せているから、Instagramのハッシュタグ検索などで実際の利用写真を調べる。お客様の方が企業よりもクレバーです。

 

今後の展開について・まとめ

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アプリは国内の他、中国、台湾で展開をしていて、7月より香港版を開始しました。国内720万ダウンロード、中国290万、台湾27万と順調に推移しています。(2016年8月22日現在)

今後は、、各国でそれぞれ構築していたECを中心とするマーケティングプラットフォームをこれまで日本で構築してきたものをベースに再構築していく予定です。そうすることにより、世界中の無印良品ファンに一貫した無印良品体験を提供していきます。

今回は、無印良品の川名さんにお話を伺いました。オムニチャネルという言葉が使われはじめてから時間が経過し、本当の意味で店舗とECの企業にとってどうあるべきなのかを考える時かも知れません。スマートフォン、SNSの登場で自分自身の消費行動や、消費する前の知識を得る方法などは確かに変わったと思っています。サービスを提供する側として、お客様にどんな価値を提供するのかを、CRMやMA(マーケティングオートメーション)などを検討する前に、きちんと把握しておく必要があると感じました。

 

プロフィール:
株式会社良品計画 WEB事業部 部長
川名 常海(かわな・つねみ)

1992年良品計画入社し宣伝販促業務を担当。2004年より現在のWEB事業部に所属。ECサイト「無印良品ネットストア」、顧客との共創を目的としたコミュニティサイト「くらしの良品研究所」、モバイルアプリ「MUJI passport」など無印良品のデジタルマーケティング全体を統括。特に統合的マーケティング・コミュニケーション視点での展開が評価され、One Show、TIAA、文化庁メディア芸術祭、モバイル広告大賞、Yahoo Creative Awar、CODE AWARD等受賞。

 

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