ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリストの伴です。
今回もNRF2025の話題から、小売の巨人ウォルマートについてお伝えします。
オープニングキーノートでCEOのジョンファーナー氏がAIについてNVIDIAと語るなどNRFでも存在感抜群でした。
小売の進化の中でウォルマートの取り組みは欠かせず、近年ではリテールメディアの成功(アマゾン、ウォルマート以外は苦労してますね)、生成AIによる検索などCX変革、従業員アプリによるEX改善(離職率低減、即戦力化)など多くのテクノロジー投資を成功に導いてます。
2025年の目玉はデータ分析プラットフォーム「Walmart Luminate」から改名した”Scintilla(シンティラ)”じゃないでしょうか。
シンティラはラテン語で「火花」を意味し、データから得られる洞察が新たなアイデアや戦略の「火花」となることを象徴しています。
その機能を簡単に説明すると
1)Shopper Behavior
サプライヤーに、カテゴリー全体の市場動向や競合製品のパフォーマンスを分析を解放。
顧客の購買パターンやブランド間のスイッチング動向を理解し、マーケティング戦略の最適化に役立てることが可能。
2)Digital Landscapes
コンテンツ品質スコア機能は製品詳細ページの完成度を評価して画像や説明文などの要素を総合的にスコアリングしてくれます。
また、カテゴリートラフィックヒートマップは特定カテゴリ内での顧客の活動を4時間単位で視覚化することでサプライヤーは顧客が「製品閲覧」、「カートに追加」、「購入」している時間を把握し、マーケティング戦略の最適化に活用できるようになるなど、「購買行動データ」を活用できるようにしています。
3)Customer Perception
サプライヤーがWalmartの顧客から直接フィードバックを収集することが可能となります。
Walmartの招待制コミュニティ「Customer Spark Community」のメンバーからの高い応答率(平均30~40%)を活用し、迅速かつ信頼性の高いリサーチ機能の提供に加えて、サプライヤーが製品を実際の顧客の家庭に送り、日常生活の中で使用してもらうことで、リアルな使用感やフィードバックを得る機能が追加されました。
これで、製品開発(市場投入前のフィードバック)やマーケティング戦略の選定(製品の機能性、価格設定、メッセージングなどに関する洞察)にもウォルマートの顧客のデータが活用できるようになります。
さらにこれら3つの機能から得た情報も元に
4)Insights Activation機能で直接ウォルマートのリテールメディアに入稿でき、その結果も含めたパフォーマンスは、
5)Channel Performance機能でオムニチャネルでの販売状況の詳細まで把握する事ができます。
シンティラが実現するのは、商品、顧客、購買のデータに顧客行動、顧客体験情報を紐付けたファーストパーティーデータの解放です。
また、2024年12月に買収完了したスマートテレビのVIZIOにより家庭内でのデータの取得とTVへのリテールメディア枠拡大まで進んでいます。
最後に、ウォルマートのファーストパーティーデータの解放はサプライヤーだけではなく従業員にも向いています。
従業員向けアプリ「Me@Walmart」でシフト管理やコミュニケーション、タスク管理をしていますが、そこにAIエージェントを投入し在庫や売れ行きからのタスクの優先付けや業務アドバイスをする様に進化しています。
多くの小売企業は、いまだに「POSデータ+ID付き顧客データ」の活用にとどまっていますが、ウォルマートはさらに一歩先へ進み、商品データ・行動データ・体験データを組み合わせて活用しています。
この進化のスピードには驚かされますね。
今後、他の小売企業がどのようにこのモデルを追随するのか楽しみです。