“買いたい”から“行きたい”へ。 ​​​​​​​アメリカ発、体験型小売の元祖が描く、時代を超えて愛される魅力とは。

ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリストの伴です。

今回は10月16日〜18日まで、アメリカシカゴで行われたSHOPTALK2024 FALLの内容からお届けします。
SHOPTALKは3月のラスベガス、5月にバルセロナ、そして10月にシカゴと年に3回も行われる小売業向けのイベントです。

シカゴでは初開催のため、登壇者も参加者も新たな顔ぶれが多かった様です。
そんな中でも2日目のキーノートで登壇した、「ビルド・ア・ベア・ワークショップ」のCEOシャロン・プライス・ジョン氏がユニファイドコマースの取り組みについて語りました。

登壇するシャロンCEO(左)

シャロン氏がCEOを引き継いだ2013年に379ミリオンドル(約568億円)だった売上はコロナ禍の2021年に255ミリオンドル(約382億円)まで落ち込んだものの、
2022年以降は過去最高益を3年連続で上回り、2024年度は486ミリオンドル(約729億円)と今注目の企業です。

ビルド・ア・ベア・ワークショップは、顧客が自分だけのぬいぐるみを作ることができる体験型の小売の元祖とも言われている企業で、
綿の入っていない状態のぬいぐるみ(通常はクマ)を選び、それに自分で綿を詰めたり、洋服やアクセサリーでカスタマイズしたりすることができます。

また、心音のするデバイスや、香りや、録音した音声チップなども入れることが可能で、子連れの家族が楽しむ体験型小売として人気です。

また、クマのぬいぐるみだけでなく、「トレンドアニマル」と言われる人気の動物(カピバラやカエルなど)やコラボレーションにより、
ポケモンやスターウォーズなどの限定版も多く販売されコレクターにも人気です。

店舗では綿を詰める体験と様々なカスタマイズが可能

シャロン氏が「消費者中心のブランドを構築しデータ主導の意思決定をする事が信条」だと言う様に、2000万人を越えるファーストパーティデータを軸に製品開発や顧客とのコミュニティの構築を行っていると言います。
そしてその基軸でもあるロイヤルティプログラムはポイントがつくだけでなく、コミュニティへの参加や同社が運営する「Build-A-Bear Foundation」を通じた事前活動にも参加できる仕組みです。

シャロン氏は「お祝いをする方法、思い出を共有する方法、その瞬間をマーケティングすることが重要で、エスノグラフィー調査(行動観察調査)の結果でも出ている」と言っていました。

1997年に創業した体験型店舗の元祖は、その体験自体が思い出となり、単なるぬいぐるみではない特別なモノを手にいれる瞬間の演出を続けています。
だからこそ、時を超えた今の時代でも子供達は「ぬいぐるみを買って欲しい」ではなく、「ビルド・ア・ベア・ワークショップに行きたい」と言うのでしょう。

エグゼクティブスペシャリスト 伴 大二郎
小売業界においてCRMの重要性に着目。一貫してデータ活用の戦略立案やサービス開発に従事した後、2011年にオプト入社。マーケティングコンサルタントを経て、2015年よりマーケティング事業部部長として事業拡大に向けた組織作りに着手。マーケティングマネジメント部やOMO関連部門等々を立ち上げ、統括しながらエグゼクティブ・スペシャリストという立場から社内外への発信活動を行う。2021年6月、ヤプリに参画。