従業員エンゲージメントとは? 高め方や測定方法を解説

企業の成長と従業員エンゲージメントは密接に関連しています。ここでは、従業員エンゲージメントが企業にもたらすメリット、エンゲージメントを高める具体的な手段や測定方法などを分かりやすく解説します。働きやすく、活気のある職場づくりなどに取り組んでいる企業の方はぜひ参考にしてください。

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働き方や仕事における価値観が変化している昨今において、従業員が自身の日々の仕事に満足できるような体験を提供することで、組織エンゲージメントを高める方法について丁寧に解説。組織エンゲージメントの向上はなぜ近年、そして今後より大切になっていくのかや、アプリなどのデジタルツールを活用して、従業員の業務を効果的にサポートする方法などを紹介します。

従業員の満足度を上げる組織エンゲージメントの高め方

従業員エンゲージメントとは?

従業員エンゲージメントとは、自社の企業理念について従業員が深く理解・共感し、会社へ貢献したいと積極的に意欲している状態のことです。日本語では、「愛社精神」などの概念が近いといえます。
一般的に、従業員エンゲージメントの高さは、企業に対する従業員の信頼度や貢献度にも影響すると考えられているため、多くの企業がその改善に取り組んでいます。
従業員エンゲージメントと類似した概念、混同しがちな概念として「ワークエンゲージメント」や「組織エンゲージメント」もあります。
ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して適度な熱意や距離感で向かい合えているかといった、精神的な健全度を示す指標です。ここでは仕事に対するモチベーションを失っていないか、逆に仕事に入れ込みすぎてワーカホリックになっていないかなどが問題になります。
従業員エンゲージメントは仕事に対する姿勢というより、従業員と企業間の信頼関係へ焦点を当てています。そして、この従業員エンゲージメントとワークエンゲージメント両方を含む包括的なエンゲージメント概念が、組織エンゲージメントに当たります。

関連記事:ワークエンゲージメントとは? 高める方法や事例を解説

従業員エンゲージメントの重要性

企業は、従業員エンゲージメントを従業員個人の問題として捉えるのではなく、企業の組織的課題として捉えることが重要です。その主な理由には、「人材の確保」と「働き方の変化への対応」の2つが挙げられます。

人材の確保

日本では現在、多くの業界・企業で人材不足が深刻化しています。 その理由のひとつは、少子高齢化によって生産年齢人口が減少している影響です。
総務省の資料によると、1995年には約8,700万人存在した生産年齢人口は、2021年には約7,450万人まで減少しており、2040年には6,000万人を下回る見込みです。働き手になる人口そのものが少なくなりゆく中で、企業間の人材獲得競争は激化し、優秀な人材を雇用することは年々厳しくなっています。
そこで、企業としては既存人材の従業員エンゲージメントを強化することを通して自社の魅力を高め、既存の従業員に長く働いてもらうだけでなく、優秀な人材を呼び寄せるための材料とすることが重要になっています。

参照元:生産年齢人口の減少|総務省

働き方の変化への対応

従業員エンゲージメントが重視されるようになったのは、働き方の変化へ対応し、既存人材を定着させる必要性が増したことも大きな理由です。
終身雇用制度が実質的に崩壊し、人材の流動性が高まった現在では、優秀な人材がキャリアアップなどを目的に転職してしまうことも多くなっています。
また、仕事に対する価値観の多様化や、テレワークなどのフレキシブルな働き方の定着により、従業員間、または従業員と企業間の信頼関係が希薄になりつつあるのも問題です。
感情的なつながりが薄い状況では、職場の人間関係やチームワークに支障が出やすくなったり、少しの不満や少しの好条件で他社へ転職しやすくなったりしてしまいます。先述のように新規人材の確保が難しくなっている状況で、既存人材の定着もうまくいかないという状態では、企業の持続的成長など望むべくもありません。
その点、従業員エンゲージメントを高めれば、既存の従業員は自社をかけがえのない存在として認識するようになり、すぐに転職に走るようなことは少なくなります。従業員と強固な信頼関係を築けている会社は、求職者にとっても魅力的な就職先・転職先になるので、優秀な人材を呼びこむための材料にもなります。
つまり、従業員エンゲージメントの改善は、「新規人材の採用強化」と「既存人材の定着」という2つの面で非常に重要な取り組みです。

従業員エンゲージメントの要素

従業員エンゲージメントの細かな定義は企業ごとに異なることも多いですが、本質的な要素としては「理解度」「帰属意識」「行動意欲」の3つが挙げられます。

理解度

理解度とは、従業員が企業理念を深く理解し、それに共感している状態を指します。
企業のビジョンや方針を明確に理解し、その達成に向けての役割を認識することは、従業員が会社へ貢献するうえで不可欠な要素です。そのため、企業にとって、自社に対する従業員の理解度の高さには、従業員が積極的に仕事へ取り組み、事業方針やその目標達成に沿った行動をとりやすくなるというメリットがあります。
このように理解度は、従業員の生産性向上やコンプライアンスの向上などにつながる要素です。

帰属意識

帰属意識とは、従業員が組織の一員としての自覚を強く持っている状態を指します。
この感覚が強いほど、従業員は自分の所属する組織を大切にし、組織の成長や成功に対して強く当事者意識をいだきがちです。企業にとっては、従業員が組織に対して高い帰属意識を持つことで、離職率の低下、生産性の向上、そして組織全体としての結束力強化などのメリットがあります。
また、良好な人間関係や職場環境は従業員の満足度や幸福感を高め、良好なパフォーマンスの発揮へとつながります。

行動意欲

行動意欲とは、自分から積極的に仕事に取り組もうとするモチベーションのことです。

企業のため自発的に行動する従業員は、仕事の品質向上、問題解決、改善の提案などにより、企業の持続的成長を促進します。また、従業員の行動意欲の強さは、各人のキャリアアップやスキル向上への熱心さにつながるため、組織の長期的な人材強化のためにも大切な要素です。つまり、従業員の高い行動意欲は、組織の成長と従業員自身の成長を促す原動力になります。

従業員エンゲージメントを高めるメリット

上記のことからも分かるように、従業員エンゲージメントの向上は、企業のさまざまな側面にポジティブな影響を与えます。その具体的な内容は以下の通りです。

業績が向上する

従業員エンゲージメントを高めることで、組織全体の生産性を高め、自社の業績を向上できます。
これは従業員が企業の理念や方針を正確に理解し、その達成に向けて積極的に行動するようになるためです。
また、後述するように、従業員エンゲージメントの向上が離職率の低下や優秀人材の確保、チームワークの強化などに役立つことも深く関係していると考えられます。実際に、民間企業や研究機関などの調査でも、従業員エンゲージメントと企業の業績には正の相関関係があることが示されています。

参照元:事務局資料 日本の生産年齢人口の見通し|経済産業省 (P.9)

離職率を抑えられる

従業員エンゲージメントを高めることは、離職率の抑制にも効果的です。自社に思い入れのある従業員は、自社の価値を深く理解し、共感し、そこに自分が帰属して貢献することに大きな喜びを感じているからです。
たとえ企業が少々の業績不振などに見舞われても、彼らは自社を見放すどころか、かえって奮起してくれる可能性があります。 したがって、従業員エンゲージメントの改善によって、企業は既存人材の定着を促進して組織を安定させ、離職の穴埋めに伴う中途採用や教育のコストも抑制できます。
求職者は就職先を選ぶ際に、離職率の低さによってその企業での働きやすさなどを推し量るため、離職率の低下は結果として優秀な人材の確保にも結びつく要素です。

従業員のモチベーションがあがる

企業に貢献する意欲が高い従業員は、強いモチベーションを持って自分の業務に励みます。
たとえ在宅勤務などで、上司からの視線を気にしなくていい環境でも、モチベーションの高い従業員は手を抜いたりすることはありません。
むしろ、プライベートの時間を使って仕事に役立つ知識やスキルの勉強を自発的に行うといった、前向きな行動が見られることもあります。
このように、高いモチベーションは従業員の生産性向上や企業の業績向上にもつながる重要な要素です。自分の努力が具体的な成果として現れることで、さらにモチベーションがあがるという好循環が生まれることも期待できます。

職場の雰囲気が明るくなる

従業員エンゲージメントを高めることは、従業員同士の結束を強くし、職場全体の雰囲気を明るくするうえでも有効です。従業員エンゲージメントの高い企業において、従業員は自社への共感や帰属意識などを媒介に連帯感を強め、自社の業績向上などの共通した目標に向かって互いに助け合います。
また、エンゲージメントの高い従業員は主体的に業務へ関与するため、会議などでも意見や提案が活発に飛び交うようになり、職場の活性化やイノベーティブな企業風土の醸成にも寄与します。

顧客満足度が向上する

従業員エンゲージメントの向上は、顧客満足度の改善にもつながる要素です。
企業理念への理解や共感を深めることで、その従業員は企業の求める模範的な人物像へと近づき、接客態度など顧客サービスの品質向上を実現します。
また、従業員が自社に信頼や愛着を持ち、生き生きと働いている様子は、直接的あるいは間接的に顧客へも伝わるものです。 こうした形で、従業員エンゲージメントの向上は、顧客満足度の向上や自社のブランドイメージの改善に寄与します。
これらは、既存顧客の定着によるLTV(顧客生涯価値:ライフタイムバリュー)向上や口コミによる新規顧客獲得など、企業の業績向上にもポジティブな影響を与えます。

従業員エンゲージメントを高める方法

では、従業員エンゲージメントを高めるに当たって、企業は何をしたらいいのでしょうか。以下では、そのために役立つ方法を紹介します。

企業理念や企業の目標を明確にする

まず大切なのは、従業員に理解・共感してもらうべき企業理念や目標、ビジョンなどを明確にすることです。
これらを従業員に浸透させるためには、さまざまな手段があります。たとえば、研修・教育の場やキックオフミーティングで教え込んだり、社内報で経営陣が繰り返し述べたりするなどです。企業によっては、模範社員を表彰する制度を設けていることもあります。

従業員エンゲージメントを調査する

従業員エンゲージメントを効率的に改善するためには、社内の従業員エンゲージメントを調査し、現状把握を正確に行うことも重要です。その結果を基に、エンゲージメントが低い部門や職種、特定の個人などを特定すれば、原因の分析や、それぞれに対する適切な改善策の提案を行いやすくなります。
従業員エンゲージメントが低い部門や個人は離職のリスクが高いと推測されるので、調査によって早期のテコ入れを可能にすれば、離職率の抑制にも直接的な効果を見込めます。具体的な調査方法については後で詳述するので、そちらを参考にしてください。

コミュニケーションを活性化させる

それぞれの現場はもちろん、経営陣も含めて全社的にコミュニケーションを活性化させることも大切です。人間関係の希薄な職場、従業員同士が没交渉な職場では感情的なつながりは築けません。もし職場がそうした状態であれば、従業員同士のコミュニケーションを活性化させるために何らかの施策が必要です。
具体的な施策としては、オンラインを含む1on1ミーティングやサンクスカード、シャッフルランチの実施、社内SNSの活用などが挙げられます。また、経営陣は一方的に情報発信を行うだけでなく、従業員側の意見を聞いたり双方向的にコミュニケーションをしたりすることが重要です。

関連記事:社内コミュニケーションを活性化させたい! 方法や取り組み事例を解説  

ワークライフバランスに対応する

従業員のワークライフバランスに配慮し、働きやすい環境を整備することも欠かせません。
具体的には、フレックスタイム制度やテレワークの導入、出産・育児や介護を対象にした休暇制度の整備などが挙げられます。 また、これらの制度を導入するだけでなく、実際に利用しやすい風土を醸成することも大切です。たとえば、上層部が率先して制度を利用する、制度の利用率に具体的な目標を設けて、それを達成した部門を表彰するなどの施策が挙げられます。

適切なフィードバックを行う

「優れた成果を出した従業員を称賛する」「課題に直面している従業員には助言やサポートを提供する」など、適切なフィードバックをすることも重要です。
具体的には、上司-部下間の定期的な1on1ミーティングの実施などが挙げられます。 また、評価者側の管理職に対して、部下を適切な仕方で評価し、フィードバックできるように教育をすることも大切です。適切にフィードバックを行うことで、従業員は会社が自分を公正に評価し、気にかけてくれていると実感し、エンゲージメントを高めやすくなります。

キャリア形成を明確にする

従業員のキャリア形成を明確に示すことも大切です。従業員は自社に貢献することが自分のキャリアアップや成長にどのように結びつくのかを理解し、より一層仕事に励みやすくなります。
また、キャリアアップへの支援は、企業への信頼度向上をもたらします。 従業員のキャリアパスを明確にする方法としては、キャリアデザイン研修の実施が有効です。たとえば、管理職に着任する従業員や、30歳や40歳など人生の節目に立っている従業員を対象とした研修は当事者にとって役立ちます。ほかには資格取得の支援制度を整備することなどもおすすめです。

社内制度や職場環境を見直す

社内制度や職場環境の整備なども欠かせません。
公正な人事評価制度や適切な報酬制度を整えることはもちろん、労働環境の確認にも注力する必要があります。具体的には、例えば以下のような対策が求められます。

  • 職場の安全性を確保する
  • 清潔で快適なオフィス環境を提供する
  • 適切な休憩時間を設ける
  • 福利厚生を充実させる

制度や職場環境の見直しに当たっては、従業員が実際に何を望んでいるのかニーズを的確に把握しなければいけません。
たとえばIT関係の職場であれば、最新のデバイスや通信環境が使えることに魅力を感じる従業員が多いと考えられます。
このように、自社の従業員の特性を考慮して施策を講じることが大切です。

従業員エンゲージメントを測定する方法

上記でも触れたように、従業員エンゲージメントを改善するには、まずはその現状を調査・測定することが必要です。その方法としては、主に「センサス調査」と「パルスサーベイ」の2種類があります。

センサス調査

センサス調査とは、一般的に年に1回程度の長期スパンで実施する調査方法です。質問項目が100以上に及ぶこともあるため、従業員エンゲージメントに影響を与える可能性のあるさまざまな要素について評価できます。
これによって、自社や従業員のエンゲージメント状況の全体像を正確に把握し、長期的なトレンドやパターンを明らかにすることが可能です。
その反面、センサス調査は質問項目が多いため、1回当たりで従業員に与える負担は大きくなります。同じ理由から、調査結果を分析し、改善策を立てるための時間や労力も大きくなりがちです。

パルスサーベイ

一方、パルスサーベイは週や月など、短期サイクルで頻繁に測定する調査方法です。自然と、その都度の従業員エンゲージメントの「パルス」、つまり現状を捉えることが主な目的になります。
パルスサーベイの質問項目は通常10~20項目程度のことが多く、回答者・担当者共に1回当たりの負担は大きくありません。とはいえ、実施頻度が多いため、総合的な負担は大きくなります。
パルスサーベイの最大の利点はその即時性と柔軟性です。たとえば、大きなプロジェクトの開始、組織の再編、新しい施策の導入など、特定のイベントに際して従業員の反応をタイムリーにすばやく評価できます。
他方で、質問項目が少ないことから、調査結果から客観的かつ深遠な洞察を得たい場合には不向きです。
このようにセンサス調査とパルスサーベイは、その特徴やメリットデメリットが対照的なので、自社のニーズに応じて使い分ける必要があります。

従業員エンゲージメントを向上させた事例

最後に、これか取り組み始める企業の参考として、従業員エンゲージメントを向上させることに成功した企業の事例を2つ紹介します。

スターバックス コーヒー ジャパン

国際的にカフェ事業を展開するスターバックスでは、従業員をパートナーと呼び、共に企業理念を達成する仲間としているのが特徴です。
具体的には、キャリアロードマップのモデル例を明確に提示したり、研修やフォローアップの機会を充実させたりすることで、従業員のキャリア支援を積極的に行っています。また、本社の各部署で求める人材を「社内公募」という形で募集・採用しているのも特徴です。これによって各店舗で従業員が積んだ経験を本社に還元すると共に、会社の中でも従業員に多様なキャリア選択の機会を与えるようにしています。

参考:スターバックスで広がる可能性 |スターバックス

Sansan株式会社

ITを活用した名刺管理サービスなどを提供するSansan株式会社も、従業員エンゲージメントを高める取り組みを積極的に実施している企業です。同社では、異なる部署の従業員が一緒に食事をし、互いをより深く理解するための「Know Me」や、7~10月の間で自由に3連休を取得できる「チャージ休暇」など、従業員のコミュニケーションを促進し、ワークライフバランスを重視した独自の制度を導入しています。
また、業務に役立つ書籍やツールの購入・導入費用を補助するなど、従業員の成長を支援する施策を展開しているのも特徴です。

参考:働く環境 | Sansan株式会社

まとめ

従業員エンゲージメントを向上することは、生産性の向上、離職率の低下、顧客満足度の向上など、企業の持続的成長にとって重要なカギになります。それには、企業理念の明確化、コミュニケーションの活性化をはじめ、さまざまな施策が必要です。本記事を参考に、ぜひ改善に向けて取り組んでください。

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