【ShortNote】vol.12 “自由さ”こそが、サイゼリヤの顧客体験価値を爆上げさせていると思う (7月3日配信分)

先日、インターブランド社の調査による「顧客体験価値(CX)ランキング TM 2023」が公開され、日経クロストレンドなどでも取り上げられています。具体的な調査項目については割愛しますが、堂々の第一位は帝国ホテルでした。個人的に注目したのは第二位のサイゼリヤで、同社に寄せられた意見で多いのはコストパフォーマンスの良さだったようですが、私がサイゼリヤの顧客体験価値が高いと思う理由は、“自由だから”だと思うのです。

ここで遡ること2年前、とあるイタリア人フードライターによってアップされたnoteの記事がネット上で大変話題となりました。マッシさんという方による「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」というものなのですが、このタイトルからして、もうおかしい(褒め言葉)。記事内ではサイゼリヤのメニューを使ったアレンジメニューの作り方を余すことなく紹介しており、私も実際にアレンジしてみたところ、ものすごく美味しくて驚きました。

何より良いなと思ったのは、記事の冒頭に書かれている、『イタリア料理のいいところは「自由さ」だ。』という一言。これはまさしくイタリア料理の本質だと思われ、そう考えるとサイゼリヤでは確かに、オリーブオイルや塩、粉チーズなど、一人ひとりが自由に料理をアレンジできるサービスが充実していることに気づきます。

もちろん、どのメニューも安くて美味しいですが、サイゼリヤに行った後のあの満足感は、色々な調味料で味変しながら食べたり、ドリンクバーで自分だけのモクテルを作ったりする、あのちょっとしたワクワク感からくるものではないでしょうか。そして、それこそがイタリア料理の本質とも言える“自由さ”に通ずるものであると、イタリア人のマッシさんが具体的なアレンジ方法とともに教えてくれた。だから多くの人々の心を打ち、実際にサイゼリヤに足を運ばせたのでしょう。

サイゼリヤがもし、ただ表面的にイタリア料理を安く提供するだけでは、帝国ホテルに次ぐ顧客体験価値を感じてもらえなかったはずですし、マッシさんの記事も出てこなかったはず。体験をつくる上での一つの理想系が、サイゼリヤにはあると私は思っています。

和泉真

大学卒業後、コピーライター/プランナー/クリエイティブディレクターとして複数の広告会社を経験。三越伊勢丹や東急ハンズ、東急百貨店やJINSなどの広告プロモーションやブランディング施策の企画・制作を担当。2021年にヤプリに入社し、マーケティング担当としてコンテンツマーケティングなどに取り組んでいる。