ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリストの伴です。
今回もスペイン・バルセロナで開催された Shoptalk Europe 2025 の現地レポートからお届けします。
ご紹介するのは、オランダ発のラグジュアリーブランド 「Rituals(リチュアルズ)」。25年前、ユニリーバ出身のレイモンド・クルースターマン氏が地下の小さなオフィスで創業。現在では、世界1500店舗・年商1000億円超というグローバルブランドに成長しています。
「私たちは美しさを売っているんじゃない。気分を良くするために存在している」
レイモンド氏が創業当初から掲げてきたこの言葉が、すべてを物語っています。
Ritualsが扱うのはシャワージェルやキャンドル、ルームスプレーといった日用品ですが、それらは”ただ使うもの”ではありません。
シャワーは「身体を洗う行為」ではなく、「一日の始まりに心を整える儀式」
キャンドルは「香りを楽しむアイテム」ではなく、「夜の静けさを祝う灯り」
このように、“無意識なルーティン”を“意味あるritual(儀式)”へと変えることで、顧客の感情を変えるブランド体験を生み出しています。これは単なるD2Cモデルでも、プロダクトアウトでもなく、「感情のトランスフォーメーション」ビジネスだと言えます。
10%の利益を「地球と人のために」
Ritualsは、純利益の10%をウェルビーイング向上のために寄付する「Profit Pledge」を宣言しています。
その実行力と透明性が評価され、「B Corp(ビーコープ)」(※) 認証も取得。
(※) B Corpとは:「ビジネスの力でよりよい社会をつくる企業」に与えられる国際認証制度。
ここにあるのは、“売ること”ではなく「どう生きたいか」「どう共感されるか」という、ラグジュアリーブランドにとっての新たな問いかけです。
House of Rituals:売り場ではなく、“自分を取り戻す場”へ
アムステルダムの旗艦店「House of Rituals」は、まさにこの哲学を体現する空間です。
・ウェルカムティーでお迎え
・水を使った「ハンドリチュアル」で心をほぐす
・脳波に働きかける「Brain Massage Pod」や「Mind Spa」
・静けさと感覚に満ちた空間設計
ここでは「買う」が目的ではなく、「戻る」「整う」「癒える」ことが価値として提供されているのです。
今年のShoptalk Europeでは、多くのブランドが「ラグジュアリーの再定義」や「意味を重視する消費」について語っていたのが印象的でした。Ritualsが掲げるのは、”Calm is the new luxury(静けさこそ、最大の贅沢)”
成熟市場で企業が生き残るには、”何を作るか”ではなく、“なぜ存在するのか”というブランドの存在理由が問われる時代に来ているのだと、強く実感させられました。
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