アプリを導入したきっかけ
日本では、投資をしている方は3割程度となっています。それ以外の7割は投資には関心がないか、関心があっても一歩踏み出せていない方です。これまでのマーケティングの中心は既存の投資家または投資に関心の強い方でしたが、近年「人生100年時代」が叫ばれる中、今は投資と縁遠い“生活者”こそ自助努力で資産形成をする必要が出てきました。一方で当社を含めた証券業界はその層へうまくアプローチできずにいます。このままでは業界が縮小してしまう、顧客のパイを広げなければいけないという危機感は、同業者であれば誰もが持っていると思います。その中で、東証としては投資無関心層との接点を持つため、2016年4月に金融リテラシーサポート部を新設、同年12月にオウンドメディア「東証マネ部!」を立ち上げました。東証マネ部!を公開した後、集客施策を打っていたこともあり徐々にではありますがPVが伸びていきました。
ただ、運用していくうちに、「スマートフォン経由の流入が圧倒的に多い」ことと、「直帰率が高い」ことに気づきました。広告を出稿したり、ニュースメディアに掲載されたりすれば流入自体は一気に増えるのですが、目当ての記事だけ読んですぐ離脱してしまうんです。コンテンツを回遊し、何度も東証マネ部!を閲覧してくれるロイヤルユーザーの獲得を目指していたので、直帰率が高い状態は解消しなければいけません。
では、ロイヤルユーザーを獲得するにはどうすればいいのかと考えたとき、アプリが最適だと判断し、開発に踏み切りました。私自身、自分のライフスタイルから考えてもアプリ対応は必須だと考えていました。私はスマートフォンを利用する際、Webよりも圧倒的にアプリを使うことが多いんです。若い方だとなおさらその傾向は強い。アプリというチャネルを持っていないことは、そのまま機会損失に繋がると感じていました。
なぜYappliか?
Yappliを知ったきっかけは、私が普段使っている名刺管理アプリの広告でした。「初期費用が安く開発できるアプリサービス」というようなキャッチコピーを見て、すぐに話しを聞きたいと思い、問い合わせフォームから連絡しました。商談でプレゼンを聞かせていただいて、これはいけると思い、その日のうちに上長に直談判。情熱を込めた説明の末、GOサインを得ることができました。
ポイントは、まず価格です。アプリ開発には数千万円かかるという話を聞いていたので、それなりの予算を覚悟していました。ところが、Yappliはイメージしていた価格を遥かに下回っていました。
上長はクルマが好きなので、「高級自動車を買わなければいけないと思っていたのが、実際は軽自動車で済むんです。」と例え話を交えて説明したらすんなり理解してくれましたね。管理画面の使いやすさ・分かりやすさも大きなポイントでした。プログラミングができない私でも操作できますし、OSのアップデート時は自動更新してくれるので、アップデート時の弊社負担はゼロです。実際、更新についていけず使えなくなるアプリが多いと聞いていたので、導入後の負担は重視しましたね。また、開発スピードが早いとは聞いていたものの、契約後たった3ヶ月でローンチできたのには驚きました。
アプリを導入してどうか?
アプリ導入によって、様々な方面で効果を感じています。
まずは定量的な成果から。「東証マネ部!」サイト流入のうち約1割がアプリ経由で、重要な流入チャネルに成長しました。アプリDL数自体は現在約2.4万DL(2018年11月現在)を突破しています 。一般的なアプリからすると少なく見えるかもしれませんが、我々の想定するロイヤルユーザーの母数から見ると非常に大きな数字です。課題としていた直帰率の高さも、アプリで解消することができました。アプリ経由のユーザーは、1セッションごとの平均ページ閲覧数が2.8で、他の流入チャネルと比べると圧倒的に高い回遊率となっています。
数字以外の定性的な成果も感じています。
弊社が開催するセミナーの集客をアプリでも行っているのですが、アプリ経由で申し込まれる方が一定数いるんです。関心の高いユーザーにしっかりとリーチできている証拠だと思います。
また、2018年7~9月に漫画「インベスターZ」のドラマが放映されていたんですが、当社もなにか関連施策をやろうと考えました。そこで、アプリ内に「インベスターZ」を1~3話無料で読める電子書籍を設置しました。
投資はよく分からないけど漫画なら読みたいという層にはまずは漫画を読んでもらう。そこから「もう少し勉強してみようかな」と思った方にはアプリ内の他コンテンツを読んでいただくという、カスタマージャーニーが描けています。この流れを作れるのはアプリならではだと感じていますね。
今後の展開
私の所属するチームはオンライン施策を推進していますが、部署全体としてはセミナーや施設見学などオフラインでのコミュニケーションも重視しています。実際に足を運んでいただける方は投資に対してモチベーションが高いですし、直接お話しさせていただくことでより興味を持っていただけます。そのため、今後はオフラインとアプリをより連動させていきたいですね。まだイメージ段階ではありますが、例えば施設見学とアプリを組み合わせてARコンテンツを追加した見学コースを構築するとかでしょうか。
投資に関心のない層を引き上げるのは時間も労力もかかります。しかも手間がかかる割には、ビジネスとしてのリターンはそれほど多くありません。ビジネスとして利益を得ていかなければならない一般の企業にはなかなかリソースを掛けられない分野です。そんな他の企業が挑戦しないからこそ、私たち東証が率先して取組むべきだと考えています。
一人でも多くの“生活者”が投資家となり、日本の株式市場が盛り上がっていく、ひいては日本の経済全体が活性化する、そんな壮大な社会課題をユーザー視点に立ち、解決していきたいです。