BtoB企業が考えたい、ユーザーファーストな顧客接点の作り方

インターネットを使い、自ら簡単に情報収集を行えるようになった今、BtoB企業に対する顧客の購買行動にも変化が起きています。

HubSpot社の調査によると、見込み顧客の60%は、検討段階で営業担当者とやり取りする前に、自分で選択肢を調査して、ある程度絞り込みたいと考えており、さらに20%は、どの製品を購入するかを決めてから、決定段階で営業担当者と話したいと考えています。
つまり、営業と対面する前までに、ある程度の意思決定が行われているため、いかに顧客が自社の商品情報と接する機会「顧客接点」を作れるか、またその情報を魅力的に顧客に伝えられるかが勝負となっているのです。

顧客接点の多様化が進む中、多くの企業は客先を直接訪問する営業活動に加え、顧客へのDMやカタログ配布、メール配信にWebサイトの拡充など、様々なチャネルを活用し、顧客接点の強化を試みているかと思います。

しかし、手を尽くしても「いまいち効果が出ない」「接点を作れている実感が湧かない」という声も多く聞かれます。

今回はこの問題の原因と、それをデジタルで解決した企業の取り組みについてご紹介します。

顧客接点を考える上で大事な「顧客視点」

顧客と接点を持つ際、その手段には様々なチャネルが存在します。

製品サイトを用意したり、メールやパンフレットなどを顧客に送ったり、見込みのある顧客には、訪問の機会を作り営業し、日々情報を届け、接点を持つことを心がけているかと思います。

しかし、顧客にとって、そのチャネルは適切でしょうか。

例えば、小売業やサービス業、専門職など、顧客がオフィスワーカーではない場合、メールやWebサイトをこまめにチェックすことは難しいものです。
また、新商品のパンフレットや、製品カタログなどを中心に情報を届けている場合、今その製品が必要ではない顧客が、それを必要になる時まで手元に取っておいてくれるでしょうか。

このように、企業側が使い慣れてきた、扱いやすいチャネルが、受け取り手にとって最適なチャネルであるとは限らないのです。

また、使い方が難しい、パンフレットでは魅力が伝わりにくいといった商材の場合、実際に使い方を説明するというような対面営業は欠かせません。
しかし、全国に顧客が点在していたり、販売代理店などを要する場合、隅々まで情報を均一に届けることは簡単なことではありません。マンパワーで解決するには当然ながら限界があり、顧客の中に情報のムラができてしまいます。

このように、自社の顧客における適切なチャネルを軸に設計できていない場合や、マンパワーに頼った接点に依存している場合、顧客接点が足りていない可能性があるのです。

顧客が利用しやすいチャネルから考える

では、どのようなチャネルを用意し、接点強化に努めれば良いのでしょうか。

ここで鍵になるのが、「モバイルファースト」の発想です。多くの現代人にとって、もっとも身近なデバイスであるスマートフォンをビジネスに活用することで、今まで解決できなかった課題を解決することができます。

具体的には、紙のカタログをスマートフォンに最適化した形で電子化したり、動画を配信するのがおすすめです。すでにWebサイトに商品情報を掲載しているという場合でも、スマホだと見づらかったり、ブラウザから製品サイトを検索するのは顧客に負担がかかります。

アプリを用意することで、いつも、必要な時にスムーズに情報を閲覧できるようになり、紙カタログやWebサイト、メールなどに散らばった情報を集約する役割も果たします。

とはいえ、せっかくアプリに情報を集約しても、休眠してしまった顧客の場合、がわざわざ自ら情報にアクセスしてくることは稀でしょう。

そこで、アプリの最大の特徴でもある「プッシュ通知」を活用します。
プッシュ通知はメールに比べ、3倍の開封率があると言われており、ダイレクトに顧客に情報を届けることができます。

また、アプリをダウンロードした時にアンケートを取ることによって、顧客の属性に応じたプッシュ通知の配信や、アプリの表示内容を属性に合わせ、出し分けることも可能です。

このように、顧客が利用しやすいチャネルを考え、プッシュ型で情報を届けることで、攻めの顧客接点を作ることができるのです。

具体的な企業の取り組み

最近は、自社アプリによる顧客接点の強化に力を入れる企業が増えています。ここでは具体的な企業の取り組みをご紹介します。

「全国約22万軒もあるサロンを網羅するのには限界が…」 ホーユー株式会社

Before

プロユース、サロン様向けに商品を展開しています。全国のサロン様に情報をお届けするには、自社の営業はもちろん、全国にある販売代理店様を通じて行うのですが、全国に約22万軒もあるといわれているサロン様を隅々まで網羅するにはどうしても限界があります。

ホーユーの営業や、代理店様にとって簡単な紹介ツールで、尚且つ理美容師さんへもっと直接的に商品の魅力を伝えるための方法はないか?とずっと考えていました。

After

アプリを導入して、何より理美容師さんに直接的に有益な情報を届けられる体制が構築できたのは大きいですね。働き方改革の影響で、サロンの営業終了後に行う講習ができないサロン様が増えてきていたので、それに代わる手段としても、アプリはすごくフィットしたんです。

また、営業担当からは、重い資料を持ち歩かなくてもアプリがあればすぐに商品紹介できるようになってとても助かるという声をもらっています。プッシュ通知が届くのもあり皆が見るようになりましたね。また商品紹介資料の印刷コストを大幅に削減できました。 

詳しくはこちら:https://yapp.li/voice/hoyu.html

他にも、日本電気株式会社(NEC)では、運営していたビジネスポータルサイト「wisdom」をリニューアルし、アプリ化しました。それまではペルソナを40代の部長職に設定し、情報発信はメルマガを中心に行っていましたが、リニューアル後は35歳前後の、これからの社会を担うビジネスリーダーに変更しました。その際「タッチポイントはメルマガのままでいいのか?」という意見があがり、今後のデジタルマーケティングを推進していくにあたりアプリ活用は不可欠と考えたと言います。

また、会員組織向けにWebサイトと分厚い辞書のような製品カタログを郵送することで、情報発信を行なっていたという医薬メーカー。アプリを導入することで、今まで紙では実現できなかったタイムリーな情報提供を可能にし、医療機器の使い方といったレクチャー動画なども配信できるようになりました。さらに、大変だった紙の更新作業の手間やコストも大幅にカットしています。

まとめ

BtoC企業では、多くの企業がアプリに情報を集約し、ユーザーファーストの顧客接点を設計しています。しかし、BtoB企業においては、アプリの活用は一部の企業に止まっています。

冒頭でお伝えしたように、顧客の6割が営業とのやりとりを発生させる前に、自分で選択肢をある程度絞り込みたい考えているのですから、適切な接点が作れていない場合、企業自身も気づかぬうちに機会損失が起きている可能性があります。

今やスマーフォトフォンは若者だけのものではなく、ビジネスパーソンにとっても最も身近なデバイスとなっています。自社の顧客に寄り添い、どんなタッチポイントが顧客にとってより喜ばしいかを考えた時に、「スマートフォンアプリ」という選択肢を持ってみてはいかがでしょうか。