海外小売業の多くが導入するO2O施策「クリック&コレクト」のメリットとは?

多くの人がほぼ1日中スマートフォンを手にしている現在、企業にとってはそんな人たちの意識をいかに自社のブランドに向けてもらうかが大きな課題です。特にリアル店舗を持つ業種、たとえば小売業やサービス業においては、ネットやモバイルからいかに顧客をリアル店舗に誘導し、体験を深めてもらえるかが重要です。オンラインからオフラインへの誘導策は「O2O」と呼ばれ、各社がさまざまな形で試みています

海外ではもはや標準の「クリック&コレクト」

中でも海外の小売業で広く採用されているO2O施策のひとつが、「クリック&コレクト」や「BOPUS(Buy Online, Pick Up in Store)」と呼ばれるものです。これは、顧客がネットで購入した商品を自宅に配送するのではなく、リアル店舗で受け取れるようにするサービスです。eMarketerによれば、北米では小売業の62%で導入されており(※1)、大企業ではもはや標準と言ってもいいほど普及しています。

せっかくネットショッピングで店舗に行かずに買い物ができるのに、なぜユーザーはクリック&コレクトを選ぶのでしょうか? 主な理由は、コストとスピードです。店舗受け取りであれば配送料が低額または無料になったり、自宅配送より早く受け取れたりするのです。

顧客にも店舗にもうれしいサービス

クリック&コレクトによってECと店舗のシステムを連動させていれば、ECから店頭の在庫を確認できます。そして顧客の近隣店舗に在庫があって顧客自らそこにおもむいてくれるのであれば、配送コストはかかりませんし、即日受け取りが可能になります。顧客にとっては、配送時に家にいなければいけない負担もありません。また顧客の近隣店舗に在庫がない場合でも、企業側にかかるコストは従来の店舗からの「取り寄せ」と同等で済みます。

ECでは配送手段の画面で脱落するケースが少なからずあります。eMarketerの米国での調査によると、元々買う気がなかった人を除くと、脱落する理由の中でもっとも大きいのが配送料、次いで配送にかかる時間となっています(※2)。クリック&コレクトによって低配送料・配送時間短縮のオプションを提供すれば、このような脱落を防げると考えられます。つまりクリック&コレクトは、顧客にとっても企業にとってもメリットのある施策なのです。

Amazon時代を生き抜いたBest Buyも導入

たとえば米国の家電量販大手・Best Buyは、Amazonの攻勢で競合量販店が続々と倒産する中、店舗とオンラインをうまく融合したことで生き延びたと言われています(※3)。Best BuyがECで販売した商品の3分の1は店舗で受け取られていると推定されており、ほとんどの店舗には受け取り専用コーナーが設けられています。顧客は店舗での受け取り時に商品を最終確認できるだけでなく、必要な周辺機器や消耗品について店員の助言を受けることもできます。つまり店舗にとってはクロスセルの機会が生まれるのです。また店を訪れることで、顧客はオンラインとは比較にならないほどさまざまな商品を目にし、手を触れてみることにもつながります。

このためBest Buyに限らず、WalmartやTargetといった大規模スーパー、百貨店大手のMacy’sやNordstrom、J.CrewやGap、Zaraといった大手アパレルなど、大手企業ではほとんどの事業者がこの仕組みを導入しています。

さらに米国では、都市部を除いて駐車場のある大きな郊外型店舗が一般的です。そういった店舗では駐車場の通路にピックアップ専用エリアが設けられており、そこに車を停車させれば店員が商品を持ってくる「カーブサイドピックアップ」というサービスを導入しているケースもあります。

「オンラインで買って店舗で返品」も、顧客と企業双方にメリット

クリック&コレクトだけでなく、オンラインで購入した商品を店舗で返品する仕組みも一般的になっています。海外では日本に比べて気軽に購入して気軽に返品する人が多く、最近ではサイズを試すために複数購入し、自分に合ったサイズ以外は返品するといったことも一般化しています。Narvarの調査によればアパレル商品を過去1年で返品したことのある人は40%に上っています(※4)。返品を配送で行うには郵便局や宅配業者窓口に商品を持っていく必要があり、その前に商品を箱に入れたり配送伝票を作ったりするのも煩雑です。そのためオンライン購入品の店舗での返品を可能にすれば、顧客にとっては負担の軽減になり、企業にとっては来店機会の創出となるのです。

このようにクリック&コレクトや店舗での返品受付を行うことで、企業と顧客の両方にメリットが生まれます。海外と日本で事情の違う部分も多少ありますが、日本企業で取り入れられる部分も大きいのではないでしょうか。

参考:

※1:https://retail.emarketer.com/article/bopus-remains-challenge-many-retailers/59dbf40cebd4000aa48d8e6d?ecid=NL1014

※2:https://retail.emarketer.com/article/fmcg-purchase-patterns-shift-worries-about-shipping-costs-ease/59dd3faeebd4000aa48d8e6f?ecid=NL1014

※3:https://www.marketwatch.com/story/this-is-how-best-buy-gets-so-many-of-its-customers-to-come-into-its-stores-2017-05-24

※4:https://www.statista.com/statistics/806122/most-returned-items-reverse-logistics-united-states/



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